よりよい未来の話をしよう

COLUMN

格差構造の破壊者:ミシェル・フランコの描く世界

映画は世相を反映すると言われるが、そのあり方は様々だ。現代社会が直面する諸問題に対し、いかなる方法でアプローチするか。それこそ、表現者の腕の見せ所であろう。環境問題、セクシュリティー、ジェンダー、越境、移民、差別、ハラスメント、人権…。映画…

連載「わたしと選挙」を考える - 第2回 コムアイ (アーティスト)-選挙も音楽も、ユートピアもディストピアも。すべて同じ“世界”だ。

私たちは、「政治」や「選挙」とどう接点を持ち、そしてどう関係し合っていけるのだろうか。2022年夏に参議院議員通常選挙を控え、あしたメディアでは「わたしと選挙」をテーマに連載を掲載する。あなたと政治との関わり、あなたと社会との関わりのヒントに…

連載「わたしと選挙」を考える ー 第1回 eri (DEPT 代表)ー 「あたりまえ」は必死に求めるものではない。 政治=生活だからこそ、自分ごととして考えたい

2021年10月、衆議院議員総選挙が行われた。街中では投票を促す広告やニュース番組が溢れ、比較的若者層ユーザーが多いSNSでも、選挙がトレンドになる様子も見受けられ、政治参加への機運の高まりを感じさせた。しかし、蓋を開けてみると「戦後3番目に低い投…

ソーシャルメディアは、情報大戦の兵器になる。 しかし、反戦の狼煙にもなる。

広告が描く「貧乏で野蛮な共産圏」 昨年、"Meddle in the New Zealand Election" という広告キャンペーンが、世界的に高く評価された。和訳すると「ニュージーランドの選挙に介入しよう」というタイトルだ。 youtu.be 海外在住のニュージーランド国民は100万…

ウクライナ映画上映会:活動レポート

戦争と映画上映 前回のコラムを書いて以来、1ヶ月をほぼ全てウクライナ映画上映企画のために費やしてしまったので、なかなか他の映画のことに頭が向かない。なので、今回のコラムもウクライナ企画の活動報告となってしまうことをお許し願いたい。別の映画に…

「人それぞれ」と私たちを突き放し、「キャンセル」で人をコントロールする社会

よく耳にする言葉「人それぞれ」 最近、大学生と話していると「人それぞれ」という言葉をよく耳にする。テーマを設定して議論する授業でも、結局のところ「人それぞれだから…」となってしまい、盛り上がりを欠くことも多い。大人になっても「人それぞれ」と…

ウクライナ映画緊急上映:その意図、内容、そして祈り

ベルリンから東京へ 2年振りにベルリン映画祭に出かけてきたので、本コラムではその様子を詳しくレポートするつもりだった。素敵な作品を多く見ることができて、観客を入れて開催される国際映画祭の醍醐味も十分に味わい、充実したベルリンだったので書きた…

なぜ、「草食男子」は若者叩きに使われるようになったのか

ラベリングとは、特徴的な事実をもとにしてある人物やある物事の評価を類型的かつ固定的に定めることを指す。私たちは、「Z世代」「独身貴族」、遡れば「団塊の世代」など、キャッチーなフレーズでさまざまなグループ分けと、その存在の認識を繰り返してきた…

美男美女しかいないディストピア ~多様な世界には、多様な広告が必要だ~

僕には、知的障がいのある弟がいる。 ...と書くと、数々の困難やそれを乗り越えた感動のストーリーを期待されるかもしれない。 しかし、残念ながら、そういう内容は本稿には出てこない。 障がいのある弟の存在は僕にとってただの日常であり、それ以上でも以…

ドキュメンタリー雑感:エンタメ化、国際化、そしてジャーナリズム化の傾向について…

『香川1区』©ネツゲン ドキュメンタリーとは何か。その定義を語り始めたら本が1冊書けてしまう。いや、僕には書けないけれど、ドキュメンタリー製作の現場に身を置いたこともあるし、観客としても好んで鑑賞し、いったいドキュメンタリーとは何なのかという…

未知なる国の発見:「ジョージア映画祭」への誘い

『懺悔』(c) Georgia Film ,1984 (c) RUSCICO, 2003Monanieba/1984年/ジョージア映画/カラー/153分/スタンダード/字幕:松澤一直 監修:児島康宏 それまで知らなかった映画監督の「発見」が、映画祭を運営する側としても、そして観客としても、この上ない喜…

未来を語る人ばかりだから、広告の過去の話をしようと思う。

本連載は、「あしたメディア」の「社会を前進させる情報発信」というコンセプトに賛同し、国内外の先進的な広告事例の紹介を目的としている。しかし、今回は「きのう」の話からはじめることをお許しいただきたい。 誰もが知っていた広告を、誰も知らない 199…

濱口竜介と杉田協士:2021年の国際映画祭を賑わせたふたりに共通するもの

あらゆるイベントがそうであったように、世界の映画祭も2020年はコロナの大波に飲まれ、規模縮小や延期や中止を余儀なくされた。そして2021年は、本来の形に近づける努力がなされながら、多くの映画祭が何とか無事に実施されたようである。しかしカンヌは例…

ハッピーエンドを求める気持ちを後押しする、”ロマンティック”が持つ力

私はハリウッドの作るロマンティック・コメディ映画の大ファンです。 ちょうど大学生の頃がメグ・ライアンの全盛期で、彼女が監督/脚本家のノーラ・エフロンと組んで次々とヒット作を放っていました。『恋人たちの予感』(1989)でニューヨークの勝気なキャ…

リム・カーワイ監督:アジアと日本を繋ぐ軽やかなドリフター

©️Shigeo Gomi リム・カーワイという監督をご存じだろうか。大阪を拠点のひとつにしながら、軽やかなフットワークで世界中を舞台にした映画作りを続けている監督である。新作『COME & GO カム・アンド・ゴー』は日本がアジアの一部であることを強く意識させ…

文化と歴史を生む”祭り”。音楽フェスはこの先も歩み続けられるか?

音楽フェスという文化は、果たして、この先も続いていくことができるのだろうか。2021年の時点から振り返ると、たった2年前の光景が、もはや遠い過去のように思える。たとえば、前夜祭も含めて4日間で約13万人が来場した「フジロック・フェスティバル ’19」…

動く少女マンガ大陸 女の生き様は恋愛だけに集約されない

ふだん少女マンガに触れない人は、少女マンガを「美男美女によるキラキラした恋愛を夢いっぱいに描くジャンル」だと思ってるんじゃないだろうか。わたしは大学でマンガについて教えているが、初回授業で学生たちに少女マンガのイメージを訊くと、いま書いた…

ターゲティングできない、という価値。

出典:elleair公式ホームページよりhttps://www.elleair.jp/attento/talk/ 「40歳のあなたの目の下のブヨブヨにおすすめです!」 買い物に出かけて店員がこんな接客をしてきたら、あなたはどう思うだろう。もう二度とここには来ないと決意して、店を後にする…

いま支払うお金は誰を支えているのだろう。 「いつもの買い物」で社会は変えられる。

自分が支払うお金がどこに行くかを考えたことはあるだろうか? たとえばファーマーズ・マーケットで農家の人から直接野菜を買ったとする。手渡したお金は、農家の売り上げになる。農家は、その野菜を種から育てるために、器具や肥料、水など、栽培に必要な様…

投票に行かない7つの理由に真剣に返答してみます。

今年のハロウィン(10月31日)は衆議院選挙の投開票日。「投票に行くことは国民の大事な権利」と言われても、何となくピンと来ないという人も多いかもしれません。 投票に行く人を増やすための活動を展開するNO YOUTH NO JAPANで代表をしている中で、これま…

『スウィート・シング』:アメリカン・インディペンデントの幸せな系譜

アメリカのインディペンデント映画と聞いて、すぐにジョン・カサヴェテスの名前を出すのは単純過ぎるとの誹りを免れないかもしれないけれど、もう条件反射のようなものなのでしょうがない。愛の裏側を生々しい人物観察を通じて活写したジョン・カサヴェテス…

もはやバトルでは人の関心は得られない。 「おもしろい」という感覚の前進と希望

去年あたりから、テレビで新世代の女性芸人の活躍を見ることが多くなった。バラエティのひな壇に何人もの女性芸人が座るようになったし、女性同士がバトルを仕掛けあうトリガーのような役割を女性芸人がしなくてもよくなった。深夜帯ではあるが、女性芸人が…

『君は永遠にそいつらより若い』:モラトリアムの先にあるもの

大学生が日本映画の主人公になるケースがとても少ないように思われるのは、気のせいだろうか。いや、それなりの数はあるのかもしれないけれど、どうも高校生に比べると分が悪い気がする。メジャー系とインディペンデント系を問わず、女性の高校生を主要なキ…

広告は女性をどう描いてきたのか、そして、どう描いていくのか。

(Image:Mary Long/Adobe Stock) 東京五輪で新体操のドイツ女子チームが着用した「ユニタード」が注目を集めている。従来のレオタードは、脚の付け根から下が完全に露出していた。一方、ユニタードはスパッツのようにくるぶしまで覆われているのが特徴だ。…

フランス映画最前線:カンヌ映画祭に見る多様性のゆくえ

コロナの影響を受けて世界の映画祭も中止やオンライン移行を余儀なくされている中、その動向がもっとも注目されたのが、カンヌ映画祭(以降、カンヌ)だ。2020年は残念ながら中止。カンヌ側は意地を張るかのように「中止」という言葉を使わず、ノミネート作…

石井裕也監督の世界:真っ当さというモチベーション

メジャーとインディペンデントの双方で支持される稀有な監督:石井裕也監督 石井裕也監督作品が立て続けに公開されている。2020年の『生きちゃった』でいつになくシリアスな石井作品に驚かされたのも束の間、今年は『茜色に焼かれる』に次いで『アジアの天使…