よりよい未来の話をしよう

矢田部吉彦

格差構造の破壊者:ミシェル・フランコの描く世界

映画は世相を反映すると言われるが、そのあり方は様々だ。現代社会が直面する諸問題に対し、いかなる方法でアプローチするか。それこそ、表現者の腕の見せ所であろう。環境問題、セクシュリティー、ジェンダー、越境、移民、差別、ハラスメント、人権…。映画…

ウクライナ映画上映会:活動レポート

戦争と映画上映 前回のコラムを書いて以来、1ヶ月をほぼ全てウクライナ映画上映企画のために費やしてしまったので、なかなか他の映画のことに頭が向かない。なので、今回のコラムもウクライナ企画の活動報告となってしまうことをお許し願いたい。別の映画に…

ウクライナ映画緊急上映:その意図、内容、そして祈り

ベルリンから東京へ 2年振りにベルリン映画祭に出かけてきたので、本コラムではその様子を詳しくレポートするつもりだった。素敵な作品を多く見ることができて、観客を入れて開催される国際映画祭の醍醐味も十分に味わい、充実したベルリンだったので書きた…

ドキュメンタリー雑感:エンタメ化、国際化、そしてジャーナリズム化の傾向について…

『香川1区』©ネツゲン ドキュメンタリーとは何か。その定義を語り始めたら本が1冊書けてしまう。いや、僕には書けないけれど、ドキュメンタリー製作の現場に身を置いたこともあるし、観客としても好んで鑑賞し、いったいドキュメンタリーとは何なのかという…

未知なる国の発見:「ジョージア映画祭」への誘い

『懺悔』(c) Georgia Film ,1984 (c) RUSCICO, 2003Monanieba/1984年/ジョージア映画/カラー/153分/スタンダード/字幕:松澤一直 監修:児島康宏 それまで知らなかった映画監督の「発見」が、映画祭を運営する側としても、そして観客としても、この上ない喜…

濱口竜介と杉田協士:2021年の国際映画祭を賑わせたふたりに共通するもの

あらゆるイベントがそうであったように、世界の映画祭も2020年はコロナの大波に飲まれ、規模縮小や延期や中止を余儀なくされた。そして2021年は、本来の形に近づける努力がなされながら、多くの映画祭が何とか無事に実施されたようである。しかしカンヌは例…

リム・カーワイ監督:アジアと日本を繋ぐ軽やかなドリフター

©️Shigeo Gomi リム・カーワイという監督をご存じだろうか。大阪を拠点のひとつにしながら、軽やかなフットワークで世界中を舞台にした映画作りを続けている監督である。新作『COME & GO カム・アンド・ゴー』は日本がアジアの一部であることを強く意識させ…

『スウィート・シング』:アメリカン・インディペンデントの幸せな系譜

アメリカのインディペンデント映画と聞いて、すぐにジョン・カサヴェテスの名前を出すのは単純過ぎるとの誹りを免れないかもしれないけれど、もう条件反射のようなものなのでしょうがない。愛の裏側を生々しい人物観察を通じて活写したジョン・カサヴェテス…

『君は永遠にそいつらより若い』:モラトリアムの先にあるもの

大学生が日本映画の主人公になるケースがとても少ないように思われるのは、気のせいだろうか。いや、それなりの数はあるのかもしれないけれど、どうも高校生に比べると分が悪い気がする。メジャー系とインディペンデント系を問わず、女性の高校生を主要なキ…

フランス映画最前線:カンヌ映画祭に見る多様性のゆくえ

コロナの影響を受けて世界の映画祭も中止やオンライン移行を余儀なくされている中、その動向がもっとも注目されたのが、カンヌ映画祭(以降、カンヌ)だ。2020年は残念ながら中止。カンヌ側は意地を張るかのように「中止」という言葉を使わず、ノミネート作…

石井裕也監督の世界:真っ当さというモチベーション

メジャーとインディペンデントの双方で支持される稀有な監督:石井裕也監督 石井裕也監督作品が立て続けに公開されている。2020年の『生きちゃった』でいつになくシリアスな石井作品に驚かされたのも束の間、今年は『茜色に焼かれる』に次いで『アジアの天使…