よりよい未来の話をしよう

人生に「起業する」という選択肢があってもいい

人生に起業という選択肢を持つ

「自分で事業を起こしたい!」創業支援の現場には、このように起業によって夢をかなえたいと考える人が相談にいらっしゃいます。私は中小企業診断士として創業を希望される方の相談に乗り、支援する仕事をしています。世の中の1人でも多くの人が「起業したい」という想いを持ち、事業を成功させてほしいと考えています。なぜなら、起業によって事業を成功させ、お金を儲けることは社会を前進させることにつながるからです。

“儲ける”と聞くと、なんとなく汚いとか卑しいなどと思ってしまう人もいるかと思います。しかし、事業を通じて稼いだお金を正しく使うことは、それ自体が社会貢献であるといえます。「三方(さんぽう)よし」という、江戸時代の商人の間で使われた言葉があります。売り手よし、買い手よし、世間よし。良い商売をすることで、関わった人みんなが幸せになるという考え方です。

A社は素晴らしい商品をつくったので、B社に買ってもらえました。(売り手よし)

B社はその商品を使って、さらに成長・発展することができました。(買い手よし)

B社は成長し、別の会社からも商品を買い、雇用を生み、税金を納めることで地域が発展しました。(世間よし)

“世間”とはすなわち社会のこと。儲けたお金を正しく使うことで、社会がよりよくなっていく。これが「三方よし」の考え方で、商売人が持つべき道徳心ともいえるものです。

「近代日本資本主義の父」と称えられる渋沢栄一は、著書『論語と算盤』(国書刊行会、1985)で次のようなことを語っています。

・商売は、利益追求のみでも道徳のみでもうまくいかない。その両方が必要である
・正しく稼ぎ、それを正しく社会に還元するサイクルを確立してこそ会社は永続する

事業は、お金儲けだけを考えてもだめ、かといって意識だけ高くてもお金がなければ何も達成できない。だから、儲けたお金を社会のために正しく使うことができる企業だけが長続きするんだ。ということです。

道徳なくして経済なし。道徳心を持った誠実な経営ができる人が求められている時代であると感じます。あしたメディアは、社会を前進させる情報発信を行うことをコンセプトとしています。そのコンセプトに共感される読者の皆さんにこそ、起業するという選択肢を持ってほしい。そして道徳心を持った立派な経営者になってほしいと考えています。

しかしながら、日本の一般的な教育課程においては、起業家を目指したり育成するための教育があまりされていないのが実状です。経営者を志す人材が育ちにくい社会構造になっているのです。

創業相談にいらっしゃる方には、「確定申告?そんなの教わってないです!」とか「税金について知らないことが多すぎる!」など、これまで自分は何を学んできたのかと絶望される方が少なからずおります。そこで今回のコラムでは、起業するメリットと具体的な起業の手順について触れたいと思います。

なお、本コラムの主な目的は「人生に起業するという選択肢を持ってもらう」ことであって、むやみに起業を推奨するものではありません。豊かな人生を送るための一つの選択肢として捉え、お読みいただければ幸いです。

成功の秘訣は「マルチステージ」

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100 年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016)という書籍がベストセラーになりました。現代に生きる私たちは100年以上生きるといわれていますが、その人生100年時代をどう生きればいいのかについて書かれています。

まず本書の重要なメッセージとして、これからは3ステージの人生では立ち行かなくなるということが述べられています。3ステージの人生とは、教育、仕事、引退の3つで構成される人生です。図で表すと次のようなイメージです。

教育を終えたあとは会社員や公務員といった雇用者としてキャリアをスタートさせ、60歳代に引退を迎えるという人生です。シンプルですね。ほとんどの人は人生を3ステージで考えてきたことでしょう。

“私たちは100歳まで生きる“といいました。では、60歳代で定年を迎えたとすると残りの40年あまりをどう生きればいいのでしょう?当然ながら、引退を迎えると給料がストップしますが生活費は必要です。多くの人は年金や貯蓄、運用資産でまかなうことになるでしょう。しかし、40年以上残された人生を豊かに過ごせるのかといわれると、不安な人のほうが多いはずです。

そのため、私たちは100歳まで生きる想定で人生を設計する必要があります。『LIFE SHIFT』では、これからの私たちは3ステージから「マルチステージ」へと思考を切り替える必要があると述べられています。

マルチステージとは、簡単にいえば「生涯に複数のキャリアを持つ」ことです。たとえば会社員として勤務しながら副業やボランティアなどを行う。会社を退職し、大学院に入って学びなおす。起業して経営者になる。このようにキャリアの移行が行われる人生を、マルチステージの人生といいます。マルチステージの一例として、次の図をご覧ください。

この例は、雇用者(会社員や公務員など)として勤務しつつ副業を開始し、数年かけて起業するための準備をし、その後は経営者として独立します。70代以降は金銭的、時間的に余裕が生まれ、社会貢献活動にも取り組む人生を歩むようになるというシナリオです。

このシナリオであれば会社員時代に起業し、まずは副業から“小さく始める”ことで、給料をもらいながら徐々に事業を軌道に乗せていくことが可能です。「そんなに簡単に起業がうまくいくわけない!」と思われるかもしれません。起業に失敗する方も多くいるのが実状です。しかし、失敗の原因には“準備不足”ということが少なからずあります。

近年は副業や兼業を許可する会社も増え、働き方が変わりつつあります。このシナリオのように本業で安定した給料を得ながらゆっくりと時間をかけて準備することができれば、失敗のリスクを抑えることができるはずです。独立に成功することができれば、60歳代以降も働き続けることが可能になるでしょう。定年はないのですから。

このマルチステージの例゙では、「自分が引退する時期を、自分で決められる」という状態が実現している点がポイントです。起業を成功させることができれば、「定年後の収入をどうするのか」という悩みが解消されるようになります。

長寿化時代における起業のメリット

3ステージの人生にはもう1つ大きな問題があります。それは、「収入を一か所からに頼っている」ということです。会社員や公務員といった雇用者のほとんどは、そこからの給料収入だけに依存している状態です。安定を求めて会社員になったつもりが、長寿化時代においては安定の意味が異なってしまうことにお気づきでしょうか。

日本人は特に、優秀な若者ほど安定志向が強い傾向があり、公務員や大企業への就職を目指すことが多いといわれています。たしかに、大企業の社員や公務員になることができれば毎月の収入は安定するでしょう。とはいえ、大企業も倒産しない保証はありません。公務員でも職場になじめない、仕事がつまらなく苦痛で辞めたいと思うかもしれません。これを安定している状態と呼べるでしょうか。

この問題の解消には「収入先を複数持つ」方法も有効とは思いますが、何よりも「自分で稼ぐ力を身につける」ことです。稼げるスキルを持っていれば、起業して自分の事業を持てるようになります。稼げるスキルの一例として動画編集やプログラミングなどがありますが、このような世の中に求められるスキルを持つことこそ、長寿化時代における「真の安定」といえるのかもしれません。

そして身につけたスキルを活かせる事業を起こすことで、よいスタートがきれるはずです。人生をマルチステージで設計し必要なスキルを身につけ、自分の事業を起こして軌道に乗せる。そうすれば60歳代以降も継続的な収益を得続けることができるようになるでしょう。

「定年がなくなる」、「自分の力で稼げるようになる」という2つを達成できる可能性がある。これが人生100年時代において起業することの大きなメリットなのです。

お金の悩みを減らすことから始める

ここまでお金の話ばかりしてきました。あしたメディアをご覧になっている皆さんは、社会を前進させたい、社会貢献をしたいとの想いを持たれている方が多いかと思います。そのような想いを強く持つ人こそ、まず自分自身のお金の悩みを減らすことを優先してほしいと思います。

人はお金の悩みが少なくなると、本当に自分がやりたいことに時間が使えるようになります。昔から「金持ち喧嘩せず」といわれています。お金持ちは心に余裕があるから争わないということです。人はお金のことで悩んでいると、他人のことまでなかなか気がまわらないものです。そのため、お金の悩みを減らすことは、他人の幸せや社会貢献について考える余裕をもつことにつながります。

「ノブレス・オブリージュ」という言葉があります。noblesse(貴族)とobliger(義務を負わせる)を合わせた言葉で、「高貴なる身分の人は、社会に対して責任と義務を負う」という意味になります。より簡単にいえば、「お金持ちの人こそ、社会のためになる振る舞いをしよう!」ということです。Amazonの創業者ジェフ・ベゾス氏やMicrosoftの創業者ビル・ゲイツ氏などは、多額の資産を慈善活動に寄付しており、ノブレス・オブリージュの典型例といえるでしょう。

「社会を前進させたい」という想いを持つことはとても立派です。しかし、本当に前進させるためには気持ちだけでなく、行動が伴わなければなりません。起業して成功し、お金の悩みから解放されること。そしてノブレス・オブリージュの精神を持つことで、社会を大きく前進させる影響力を持つことができるようになります。

ベゾス氏やゲイツ氏は起業して成功し、社会に大きな影響をもたらす存在となりました。ふたりとも創業最初から人格者だったわけではないはずです。お金持ちになって心に余裕が生まれた結果、社会のことを真剣に考え、ノブレス・オブリージュを果たせる人物となったのではないでしょうか。

まずは自分自身のお金の悩みとしっかり向き合う。そして起業して成功し、社会を大きく前進させる人がひとりでも多く登場することを願います。

次章からは具体的にどのような手順で起業するのかについて解説します。

起業の手順

「起業したい!」と思っても、次に何をすべきかわからないという人は多いものです。ここからは起業準備から事業開始までを、「事業構想」「事業計画書作成」「手続き」「資金調達」「支援制度の活用」の5つのステップで紹介していきます。

起業準備(1事業構想)

やりたいこと、できること、やるべきことは?

「起業するといってもアイデアがないなぁ・・・」

そう思った人は、次の「3つの輪」を考えてみてください。この3つの輪が重なることを事業化する、というものです。

やりたいこと・・・情熱をもって続けられる事業かを考えます。
できること・・・自分が持っているスキルや能力を活かせる事業かを考えます。
やるべきこと・・・誰かの悩みを解決したり、社会にニーズがあるかを考えます。

ここで多くの方が、「情熱はあるんだけど、自分にはできることなんて何もないよ!スキル不足だ!」と考えてしまいがちです。しかし焦る必要はありません。今すぐ起業するというわけではないのです。マルチステージの思考を持てばしっかりと準備ができるはずです。会社に勤めながら専門学校に通って学んだり、誰かの仕事を手伝って見習いから始めたりしつつ、必要なスキルをゆっくりと獲得していけばいいのです。

理解者はいるか?

起業を成功させる人の特徴として、“良きパートナー”が存在していることが多いといわれています。起業には情熱が必要ですが、その情熱を末永く維持させるためにも、理解者がいると心強いものです。家族はもちろん、それ以外にもあなたの事業を応援してくれる人を探しましょう。

小さく始められるか?(スモールスタート)

失敗のリスクを減らすために重要なのが「小さく始めること」です。最初から大きな資金を投じる事業は資金不足に陥りやすく、失敗する可能性が高まります。

たとえば飲食店の場合、最初から店舗を借りると毎月の家賃の支払いが必要です。しかし、開業当初から黒字化することは稀ですので、やがて資金が尽き、廃業することになります。ネットだけで販売すれば、店舗は必要ありません。シェアキッチンやキッチンカーを使って活動することから始めてもよいでしょう。また、最初は1人だけで始められる事業を考えたほうが無難でしょう。これが「小さく始める」です。

起業準備(2事業計画書作成)

事業構想がある程度まとまったら、次に事業計画書を作成します。事業計画書の作成は大変ですので、作成しない人はとても多いのです。しかし、次の理由から事業計画書の作成は必須であると断言します。

1.頭の整理ができる
事業開始にはたくさんの考慮するべきことがあります。事業計画書を作成する過程で、 いろいろ検討するべきことに気づくことができます。たとえば収支計画を作ることで、半年間赤字が続くと資金不足に陥る、といったことがわかります。

2.事業内容を専門家などの第三者にチェックしてもらい、意見をもらうことができる頭の中には立派な計画があっても、それが文書化されていなければ他人に伝えることはできません。実現性の高い計画かどうか、専門家等のチェックを受けることができます。

金融機関から融資を受ける場合は作成しなければなりません。融資審査の際に提出を求められるためです。

事業計画書の記載事項に決まりはありませんが、少なくとも次の内容は盛り込みたいところです。記載のポイントと、外国人向け観光ビジネスを始める例を併せて示します。

記載項目 ポイント 記載例
創業の動機 創業したいと思ったきっかけを書く。情熱
があることをしっかり伝える。
以前から自分の語学力を活かし、外国人に日本の
文化を伝える仕事がしたいと考えていたため。
経営理念 目指す姿を簡潔に表すキャッチコピー。抽象的でOK。 日本文化を世界に届ける
事業内容(ビジネスモデル) 実現可能性が高いことが伝わるよう、事業
内容を具体的に記載する。
外国人向けに観光地を案内するサービスを立ち上げる。観光地を紹介するYouTubeチャンネルを開設し、魅力を発信。
知り合いのYouTuber 集客は公式ウェブサイトとSNSで行う。
経営者のプロフィール 事業を成功させるためのスキルをどのようにして身につけてきたのかをアピールする。 2010年:○○大学卒業 2010年:○○株式会社 入社 営業職。表彰歴あり 2015年:○○株式会社 入社 マネージャー職。 管理スキルを獲得
強みやセールスポイント 自分の持っている強みやセールスポイント
を書く。
語学力(英語、中国語)がある 影響力の大きいYouTuberの知り合いがいる
顧客ターゲット 誰を顧客として想定しているのかを、できるだけ具体的に絞って書く。 当該地域に観光に来た外国人
市場ニーズ 市場が求める商品やサービスであることの
根拠を示す。数値を使うことが望ましい。
地域内の外国人観光客が前年比3%増加。日本文化を理解したいという要望が大きい。また、地域に競合がないため、市場を独占できる
必要経費 開業時に必要な設備や運転資金について、
金額を列挙する。
ウェブサイト構築費xx万円 社用車xx万円 パソコンxx万円
資金の調達方法 開業時に必要な資金をどうやって確保する
のか示す。
自己資金xx万円
借入xx万円
収支計画 事業の採算見通しについて、具体的な数値
を使って記載する。算出根拠も明確に。
【初年度売上高】xx万円
【経費】人件費xx、家賃xx、支払い利息x
x・・・
【利益】xx万円
スケジュール 開業する前と、開業後軌道に乗せるまでにやるべきことなどをスケジュール化する 1月:起業準備、HP制作 2月:許認可取得 3月:会社設立 4月:補助金申請

以上の項目について、自分ひとりの力で完成させることは難しいものです。しかしご安心ください。世の中には、専門家が事業計画書を無料で確認してくれるサービスがたくさんあります。事業計画書をある程度作成したら、相談に行って専門家にチェックしてもらうことをお勧めします。
無料相談を行ってくれる窓口には、次のようなものがあります。

1.地元の商工会・商工会議所
商工会・商工会議所とは、地域の企業を支援することを目的とした、公的な団体です。全国各地にあり、町村の区域を商工会が、市の区域を商工会議所が管轄していることが多いです。皆さんがお住いの地域を管轄する所があるはずなので、ウェブサイトなどで所在地を確認したのち、相談に行くとよいでしょう。

2.日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。創業サポートデスクやビジネスサポートプラザといった、創業に関する無料相談窓口があります。

3.自治体の創業支援窓口
皆さんがお住いの市区町村には、創業を積極的に支援している自治体もあります。市役所や区役所などのウェブサイトをチェックしましょう。

また、これらは事業計画書をチェックしてくれるだけでなく、セミナーや補助金などの有益な情報を教えてくれることもあるので、積極的に活用していきましょう。

起業準備(3手続き)

事業計画書が作成できたら、いよいよ開業のための手続きに入ります。

事業形態を決める

事業形態は大きく個人事業主か、法人(株式会社や合同会社など)にわけられます。起業する際はいずれかを選ぶ必要があります。とはいえ「小さく始める」ことを考えると、まずは個人事業主として開業することをお勧めします。個人事業主は次の面で有利です。

・開業手続きが簡単で、無料
・会計帳簿や決算書類の作成が簡単で、自分で作成可能(無料)

開業手続きは税務署に開業届を出すだけで済むため、とても簡単です。開業後は毎年、確定申告を行う必要があります。しかし個人事業主はこの作業が法人に比べて簡単なので、自分の力だけで済ませることが可能です。

一方、法人の場合は個人に比べてお金がかかります。まず、会社の設立費用が株式会社の場合は約25万円かかります。しかし、それ以上に負担が大きいものはランニングコストです。たとえば毎年作成する決算書類は、税理士に作成を依頼することになります。その費用は年間20~40万円ほど必要といわれています。他にも、法人住民税の均等割という、たとえ業績が赤字であっても納めるべき税金が毎年7万円程度かかります。
それでも、次の場合は法人を選ぶべきかもしれません。

1.社会的信用力が必要
「うちは相手が法人とじゃないと、取引しないよ〜」というスタンスの会社があります。こういった会社と取引しないといけない場合、こちら側も法人である必要があります。

2.節税が必要
売上がそれなりにあると、法人のほうが税金が安く(節税効果が高く)なります。目安として、もし年間の売上高が1000万以上あった場合は、個人よりも法人のほうが納める税金が少なくて済むとお考え下さい。

いずれにしても、個人か法人かの判断はとても難しいので、迷う場合は専門家への相談をお勧めします。

開業届 or 会社設立を行う

個人事業主の場合は開業届を所轄の税務署に提出することで開業手続きが終了です。(郵送やインターネットでも可能)また、税負担を減らすため、開業届と併せて青色申告承認申請書も忘れず提出しましょう。

法人の場合は、会社設立を行います。最近では「会社設立 Freee」や「マネーフォワード クラウド会社設立」といった便利なサービスが登場し、司法書士などの専門家に依頼せずともウェブ上で会社設立できるようになりました。

許認可を取得する

事業内容によっては許認可が必要な場合があります。許認可とは事業を行うために必要な手続きで、「届出」「登録」「許可」「認可」「免許」の5種類に分類されます。

たとえば飲食業であれば保健所に「許可」をもらう必要があります。許可を得ていない状態で事業を始めると違法になるため注意が必要です。自分の事業に必要な許認可がわからない人は、専門家に相談するとよいでしょう。

起業準備~事業開始(4資金調達)

創業融資の申請

事業を始めるにあたって、自己資金(自分で貯めたお金)は十分にあるでしょうか。小さく始めたとしても創業当初は必須な設備を購入したり、赤字が続いても事業を継続していくための資金(運転資金といいます)など、それなりの資金が必要となります。

そこで、創業融資を受けるかどうかを検討することになります。「融資?つまり借金でしょ?利子があるから借りたくない!」と思う人もいるかもしれません。たしかに借金というとネガティブな印象ですが、融資を受けるイコール、ネガティブとは限りません。金融機関との信用関係を構築できるというメリットがあります。「借りたお金を遅れることなく返していく」ことで返済実績をつくり、信頼に足る人物であることが示せます。

また、遅れなく返済するためには余裕のある時に借りておくこともポイントです。本当にお金に困ったときに貸してくれる金融機関はまずありません。借りれるうちに借りておく、ということを検討してみましょう。

ただ、融資を受けたいと思っても、事業経験のない者にお金を貸してくれる金融機関は少ないものです。しかし政府系の金融機関である日本政策金融公庫の「新創業融資」であれば貸してくれる可能性があります。この制度は創業時(開業してから2期を過ぎていない期間)しか申請できないため、注意してください。

当然ながら、借りたお金の返済には利子の支払いが発生します。借りるか借りないかの判断は自己責任です。迷ったら専門家に相談しながら慎重に検討しましょう。

クラウドファンディング

近年、起業家にとってクラウドファンディングは資金調達の有効な手段になっています。また、自分の商品やサービスをたくさんの人に知ってもらえる効果も期待できます。目標額を達成するためには、画像・動画コンテンツの制作や、プロモーション活動などしっかりとした準備が必要になります。

自治体によってはクラウドファンディングの実施に補助金を出してくれるところもあるので、探してみるとよいでしょう。

事業開始(5支援制度の活用)

世の中には様々な支援制度があります。にもかかわらず、これら制度を上手に活用できている人はあまりいません。まず、あることを知らないし、利用しようと思っても仕組みが複雑で理解できないことが多いからです。

支援制度の中でも特に活用したいものが補助金・助成金です。これらは原則、返済義務のない「もらえるお金」です。ただし、申請すれば誰でも必ずもらえるわけではなく、審査があり、採択を受ける必要があります。これらを理解したうえでしっかりと活用し、事業を育ててほしいと思います。

利用可能な補助金を探す

ではどのように補助金を探すのか。補助金制度の所管は大きく「国」「都道府県」「市区町村」の3つに分けられ、その数は膨大です。そこで、使えそうな補助金を探すための便利なサイトをお伝えします。

J-Net21(https://j-net21.smrj.go.jp
このサイトから支援制度を一括で検索することができます。都道府県、市区町村単位で検索することができますので、利用できる補助金を漏れなく探すことができるでしょう。

著者のお勧めの補助金は、「国」の補助金である「小規模事業者持続化補助金」です。販路開拓や業務効率化を目的とした取り組みに対し補助金を出してくれるもので、創業間もない時期でも申請することができます。その名の通り、小規模事業者(従業員の人数が5名以下などの基準がある)が使える制度で、小さく始める事業者にとって強い味方となります。

この補助金を推奨する理由は次の通りです。

1. 申請手続きが比較的簡単
2. 採択率が比較的高い

「小規模事業者持続化補助金」で検索すれば特設サイトが見つかりますので、そこから内容をチェックしてみましょう。

なお、補助金は原則、後払いであるということに注意してください。そのため実際にお金がもらえるのはずいぶん後のことになります。申請に関する要件については、補助金ごとに募集要項等があるので、内容をよく確認しましょう。

まとめ

長くなりましたが、本コラムでは起業のメリットと、その具体的な手順についてお伝えしました。特にお伝えしたいことは次の3点です。

1.社会を前進させる方法として、起業は有効な手段のひとつである
2起業は、豊かな人生を送るための手段のひとつである
3起業するなら、事業計画書の作成は必須

自分が経営者になるなんて考えたこともない、と思っている人も多いかと思います。たしかに、経営者という人生は決して平坦なものではないでしょう。時には困難な状況に遭遇することも多々あることでしょう。

しかしどうやら私たちは100年以上生きるようです。それはチャレンジする者にとって可能性に満ちていることを意味します。失敗してもやり直せばよいし、その経験は次に活かせるでしょう。また、自分を支えてくれる家族、ともに苦難を乗り越えた仲間の存在は一生の財産となるでしょう。

「社会を前進させたい」このような気持ちを持っている人ほど、起業という選択肢を持ち、人生を長い目でみつめ、やがては社会に大きく貢献する人間になってほしい。そして人に感謝される豊かな人生を歩んでほしいと思います。

 

文:石井里幸(中小企業診断士)

 

(注)本コラムに記載された見解は各ライターの見解であり、BIGLOBEまたはその関連会社、「あしたメディア」の見解ではありません。