
いまや誰もが当たり前に利用しているインターネット。だが、そんなインターネットの存在がもしかしたらその人の歴史や社会に、大きく関わっている可能性があるかもしれない…。この連載では、さまざまな方面で活躍する方のこれまでの歴史についてインタビューしながら「インターネット」との関わりについて紐解く。いま活躍するあの人は、いったいどんな軌跡を、インターネットとともに歩んできたのだろう?
▼これまでの記事はこちら
今回お話を伺うのは、高校2年生のときに同級生で結成したというスリーピースバンド・丸竹夷。卒業後は音楽活動に専念し、今は全国ツアーの真っ只中だ。
彼女らがその名を全国に知らしめるきっかけとなったのは、ある1つの投稿からだった。その投稿についたいいねは8万以上。1000万以上のリーチを獲得し、布袋寅泰からもコメントがついた。
バンドメンバーと学校でBE MY BABYやって停学になりかけた(•ᴗ•; ) pic.twitter.com/d67fUMmigK
— 姫花 (@himechi_bbluv) 2024年3月8日
彼女たちは、この投稿がバズったのは「狙い通り」と話す。SNSも大事な音楽活動のひとつと捉える彼女らのこれまでと今、これから目指す先について聞いた。

SNSアカウントは6個を使い分け
丸竹夷の皆さんは現在18歳とのことですが、初めてインターネットに触れたのはいつですか?
姫花:私は携帯を持ちはじめた小学3年生くらいのとき。当時はまだガラケーでした。
莉音:私も同じくらいの時期で、小3か小4のときです。友達とLINEのやりとりをしていましたね。
紅留美:私が携帯を持ったのは2人よりも少し遅くて、中学生のときでした。それまでは家のパソコンを使ってインターネットを見ていました。
小学生からLINEがあったんですね!中高生のときにハマっていたSNSはありますか?
姫花:TikTokですかね。音楽に合わせてダンス動画を撮っていました。
莉音:あとはSnapchatとかもやってたなぁ。
紅留美:Instagramを始めたのもそのくらいです。
今のティーンはアカウントを何個も持っていると聞いたことがあるのですが、本当ですか?
姫花:そうですね!私はInstagramのアカウントを6個くらい持っています。
6個も…!
姫花:オフィシャルアカウントと、友達専用と、いろんな用途で使い分けているんです。メンバー3人だけが見れるアカウントもあるなぁ。思い出をシェアしたり記録をしたりするのに使っています。
ほかのお2人もそれくらいお持ちなんですか?
莉音:私も同じくらいアカウントを持ってます(笑)。
紅留美:私は6個もないですが…アニメが好きなので、推し活用のアカウントを作って使い分けています。

高校で出会ってバンドを結成するまで
それぞれ、音楽とはどのように出会ったんですか?
紅留美:姉が吹奏楽をやっていて、私も中学校では吹奏楽部に入っていたので、吹奏楽の音楽をよく聴いていました。あとは、ゲームのWii Uがインターネットに繋げられたので、そこからYouTubeを開いて、初音ミクさんとか今の米津玄師さんとかボカロ音楽を聴くのが好きでした。
莉音:私はおじいちゃんがバンドをやっていたり、兄弟も名前に音楽にまつわる言葉が付いていたり、もともと音楽が好きな家族なので自然と聴く機会が多かったです。この前も、おじいちゃんがボーカルで出ているジャズライブを観にいきました。私自身はカネコアヤノさんなど、邦ロックをよく聴いています。
姫花:私も家族が音楽好きだったので、小さい頃から家でB'zやBOØWYが流れていました。それから流行りの音楽は、TikTokで流れている音楽や、ドラマや映画の主題歌から知ることが多かったです。
皆さん聴いてきたジャンルが違うんですね。3人は高校で出会われたんですよね。
莉音:はい。皆同じクラスで、私と姫花は同じ軽音部でした。
姫花:でも実際の部活では月に1,2回くらいしか演奏をする機会がなくて。兄の勧めもあって、部活以外でもバンド活動をやってみたいと、莉音を誘いました。
莉音:私はそれまで趣味でギターをやっていて、軽音部に入ってからベースも触るようになっていました。そこで姫花に誘われて、本格的にバンドとしての活動を始めましたね。
ドラムはたまたま同じクラスだった紅留美さんに白羽の矢が立ったと。
紅留美:実は私はずっとモデルに興味があったんですが、目指す勇気もなく、大学に行って普通に就職するのかなと思っていたんです。でもバンドに誘ってもらって。やることもないし、いいよと誘いを受けたら、いつの間にか本格的にやるように(笑)。
好きな音楽のルーツはそれぞれ全く違うようでしたが、方向性の違いで喧嘩することはなかったんですか?
姫花:そうですね。趣味の違う音楽もあれば合う音楽もあって。お互いに好きな音楽をシェアしあって、いろんなジャンルを聴きながら、いいね!と話すことも多いです。
普段はどのように曲作りをされているんでしょうか?
姫花:主に私が作曲、莉音が作詞をして、3人で仕上げていくことが多いです。でもそれぞれが1曲ずつ作って持ち寄ったり、みんなでAメロ、Bメロ、とパートを分けて作ることもありますね。私だけが作ると自分の聴いてきた音楽が反映されてしまうのですが、皆がお互いに持っている音楽を合わせて形にしていく感じが楽しいですね。
今は一緒に住んでいて、すぐそばにスタジオもあるとか。
紅留美:そうですね。ある程度の防音設備も整っているので家のなかで練習することもありますし、皆でスタジオに入ることもあります。
莉音:たまに実家に帰るんですけど、そのときも楽器を弾いています。

この3人ならバズる!と思った
バンドを結成されてからすぐに、「BE MY BABY」をカバーしたXのポストがバズり、インターネットで一躍有名になりましたよね。そのときのことも聞かせてください。
姫花:オリジナル楽曲もまだないときですね。私はずっとバンド・BOØWYやB'zの音楽を聴いていてギターカバーの投稿をしていたんですが、その反応が良かったんです。だから同じように、JK(女子高生)が3人でこの曲をやったら確実に可愛い!バズる!と思ったんです。
莉音:結成してすぐぐらいやったよなぁ。
あの投稿は、姫花さんの狙い通りだったんですね。バズった後にこうなって欲しい、という想いはあったんですか。
姫花:なんでも良いからまず知名度が欲しくて。結成してすぐは3人とも技術も経験もなかったんですが、それでも時間は過ぎていくじゃないですか。JKの時間も限られているから、できることをやろうと、まず発信して知ってもらうことから始めました。
莉音:最初のライブに来てくれたお客さんも、投稿を見てくれたお客さんばっかりやったよな。
バズってから活動も忙しくなったと思うんですが、学業と音楽の両立は大変じゃなかったですか?
姫花:両立できてなかったですね(笑)。学業より音楽が優先やった。
莉音:卒業直前に単位がギリギリであることが分かって、急いで頑張りました。
紅留美:同時に卒業ライブのワンマンも控えていたから、あのときは大変でしたね…。
姫花:でも学校の皆も応援してくれていて、文化祭のステージなんかは先生たちも見に来てくれていました。
文化祭のライブ映像も盛り上がっていましたよね!事前に振り付け動画を皆に送ったと聞いたんですが…。
莉音:そうなんです。事前に自分たちで振り付けを撮影して、軽音部のグループラインに送って拡散してもらいました。あとから恥ずかしくなったけど…。
姫花:3人で振り付けを踊っている動画を撮って、アプリで人数を増やして盛り上がっている雰囲気を出して(笑)、自分たちの曲『はむはむGX』に合わせて背景も宇宙に加工してました。

これから自分たちの音を見つけたい
高校生のときの皆さんも素敵ですが、雰囲気を変えた今の皆さんも素敵ですよね。
姫花:JKのときは存分にJKを使い倒そう!と思っていたんですが、ガラッと雰囲気を変えてみました。そのなかでイメージカラーを統一しようという話になり、私が普段赤が好きなので、赤にしました!
ふたりは大丈夫だったんですか?(笑)
莉音&紅留美:…はい(笑)。今は普段着も赤で、お店に行っても赤い服を探しちゃいますね。
卒業後、現在は全国47都道府県をめぐるツアー『京炎一閃』の真っ最中ですよね。
姫花:まだまだ9公演目ですが、この前も3日連続でライブしました。しんどいこともあるけど、見たことのない土地に行くことは楽しいですね。ライブ終わりの温泉も最高です。
莉音:これまでは対バンをあまりしてこなかったので、今回は他のバンドをライブで観て勉強になりますし、色んな方と仲良くなれて嬉しいです!
紅留美:「BE MY BABY」の投稿から見ていたよという方が会いにきてくれたりとか、いつもSNSでメッセージをくれていた人とお話できたりして、嬉しいです。あと、愛媛に行ったときに、人生で初めて打ち上げ花火を見たんです。皆で見れて良かったです。
色んな出会いを楽しまれているんですね。SNSでもツアーの様子がアップされていますが、普段の投稿は皆さんでやっているんですか?
姫花:そうですね。後は動画も撮ってアップしています。動画はインパクトを大事にしていて、最初の2秒で惹きつけられるようなものにしようと意識していますね。あとは、フォントとかフィルターとかも、3人でLINEで送りあって確認して決めてます。
音楽活動をされる一方でしっかりとSNSについても考えていて凄いです!今後の目標について教えてください。
姫花:自分たちの音を見つけることですかね。皆のルーツが違うから今は色んな音楽をやっていますが、丸竹夷らしい音楽性を見つけていきたいです。大きな目標としては…昨日ちょうど3人で話して「スタジアム、行くぞー!」って決意表明しましたね。そのために少しずつ経験を積んでいきたいです。
莉音:来年は夏フェスに出たいよね、って話もしていました。地元だと「京都大作戦」というフェスがあるので、いつか出たいです!
紅留美:バンドとしての活動はもちろんですが、他にも色んな仕事をしてみたいです。夢だったモデル関係の仕事もいつかできたらいいな。
これからのご活躍も楽しみです。ありがとうございました!

<今回のインターネットポイント>
デジタルネイティブ世代の台頭は、音楽活動の形を根本から変えた。子ども時代からネット環境に親しんできた世代にとって、音楽はCDやテレビで出会うものだけでなく、オンラインで「探し」「共有する」対象となった。2000年代半ばには、YouTubeがグローバルに広がり、プロに限らず個人が自作曲やカバー動画を公開できる環境が整った。日本ではニコニコ動画を通じて「歌ってみた」やVOCALOIDといったカルチャーが生まれ、ネット発のクリエイターが脚光を浴びるようになった。
2010年代に入ると、TwitterやInstagramといったSNSがアーティストとリスナーを直接つなぎ、作品の拡散やファンとの交流を加速させた。さらに2016年のTikTok登場以降は、短尺動画を起点とした「バズ」が音楽発見の主要経路となり、再生回数の伸びがそのままキャリア形成に直結する事例も増加した。
現在はYouTube ShortsやInstagram Reelsなど、各プラットフォームが短尺動画に注力しており、若手アーティストにとってSNS上での反響が活動初期の飛躍を決定づける。丸竹夷が投稿したカバー動画が数千万リーチを獲得したのも、まさにこうした時代の延長線上にある。インターネットは今や、音楽を届ける手段であると同時に、活動を成り立たせる前提条件そのものとなっている。

丸竹夷(まるたけえびす)
2024年3月に京都で正式結成された、スリーピースバンド。デビュー曲『はむはむGX』はMVが4ヶ月で100万回再生、限定CDは1ヶ月で2,000枚の売上、タワレコ京都店で週間チャート1位を獲得。2025年3月には現役JKながらファーストアルバム『丸竹夷』リリース&京都劇場2daysライブを成功させる。同年6月にはリアレンジアルバムとDVDリリースを実施し、現在は47都道府県をまわる『京炎一閃』ツアー中。
取材・文:conomi matsuura
編集:カネコハルナ
写真:chisato ten
最新記事のお知らせは公式SNS(Instagram)でも配信しています。
こちらもぜひチェックしてください!
