
ここ数年、筋トレ・ヨガ・ランニングなど、若者の間で運動がさらに流行しているように思われる。運動を楽しむ人が増える一方で、運動が「社会人としての自己管理のひとつ」「やらないといけないもの」のように語られることも少なくはないのではないだろうか。
そんななか志村美希さんは、学生時代に陸上で全国レベルでの結果を残してきた経験を持ちつつ、現在はランニングモデル・タレントとして「ランニングは頑張りすぎなくてもいい、ということを伝えたい」という思いで活動されている。
志村さんはランニングとどんな風に付き合い、楽しみ続けているのか?話を伺った。

「強くなるために」から「自分と向き合うために」へ
陸上部に入部した中学時代から、800m走の競技を始めた志村さん。ただ走ることが好きで、入部を決めたという。
「中学時代は純粋に走ることが好きで、はじめは『ただ速く走りたい』という思いで走っていました。中3になり記録が伸びてきたタイミングでコーチに『全国を狙ってみないか』と言われ、そのために陸上部に入ったんじゃないのになぁと思いながらも、みんなが目指すのでそれが普通なのかなと考えていました。
それくらいの時期に、YouTube等で過去の都大会の決勝タイムを調べていたんですよね。当時よく動画に出てきていたのが、白梅学園に所属されていた卜部蘭先輩でした。蘭先輩がどの試合の動画でもダントツで勝っている姿を見て初めて憧れの選手ができ、自分も強い選手になりたいと思うようになりました」
その後は、陸上の強豪校である白梅学園高校・日本体育大学に所属。「強くなりたい」という一心で競技人生に励んだ。
「高校・大学では周りの選手がすごく強かったので、とにかくみんなに付いていくのが必死で。そのなかで、高校ではインターハイに行くという目標を叶えることができ、大学でも全日本インカレと日本選手権に出るという思いで走ってきて、それを叶えることができました。
大学では記録も伸び、これからもイケるなという自信はありましたが、陸上は大学までで辞めるという気持ちでずっと走ってきたので、自分に可能性を感じられているうちに辞めようと思いました。これまで競技でガツガツ頑張る陸上を続けてきたので、大学卒業後は陸上から少し離れてみようと思い、ヨガのインストラクターを1年ほどやっていました」

その後、程なくしてランニングモデル・ランニングタレントとしての活動を始められた志村さん。志村さんは現在、どんな意識で走っているのだろうか?
「競技時代は『より速くならないと』『負けちゃいけない』という思いから切羽詰まった気持ちで走っていたのですが、いまは、ランニングが自分と向き合う時間になっています。私は多く走る時期・あまり走らない時期がバラバラなのですが、それでも習慣の1つになっています。
ヨガのインストラクターをしていたときは忙しく、ほとんど走れていませんでした。ヨガのお仕事はうつ病により休職した後に辞めたのですが、少し元気になったタイミングで元々のランニング仲間と会うようになったり、ひとりでも外に出てジョギングしたりするなかで、徐々に心が健康になっていくのを感じていました」
ランニングをお仕事としている現在でも、プライベートで走る時間は、志村さんにとって大事な時間になっているという。
「走ることで、日常生活のなかの時間を区切ることができています。ずっと自宅でYoutubeの動画編集をしながら『もうこんな時間...今日も走りに行けない...』『ご飯食べないと...』といった気持ちで過ごしているときは、自分の気持ちも整理できなくて、部屋も散らかり出して...と、精神的に健康ではないことが多いと思っていて。
一方で、時間を作って2km, 5kmといった短い距離をゆっくりでもよいから走ってみると、モヤモヤしてたものが整理できて...走ると元気になる感覚があります。
走っている最中は何も考えないことが多いですが、走ることで生活リズムも整うし、『走る時間』『作業する時間』『ご飯を食べる時間』とそれぞれの時間に集中できるようになるイメージですね」

「私でもランニング始められそう」と思ってもらいたい
YouTubeやSNSでランニングの魅力をポップに伝えている志村さん。発信をする上で大切にしていることについては、こう話す。
「取り繕わずにリアルを届けるようにしています。あまりSNSに出したくないような、サボっている時間についても伝えていたり(笑)。完璧じゃないところを私が発信することで、『もともと競技をやっていた私』『フルマラソンを2時間47分で走る私』でもサボるときはあるんだなと知ってもらった方が、みんなもあまり追い込まれずにランニングを楽しめるんじゃないかなと思って...(笑)。
私の視聴者の方には、ランニングをしていない方も多いんです。ランニングや陸上競技をやる人は真面目でストイックなイメージを持たれることが多いので、私の発信を見て『自分でもできそうだな』と思ってもらえたら嬉しいです」
動画で「数ヶ月怪我で走れなかった」と話していたこともある志村さん。そのようなときは、どんな気持ちで過ごしているのだろうか?
「SNSで『今日は何キロ走りました』と発信している人も多いので、走れないと焦ってしまいますよね。ただ、なんていうのかな...怪我の間にしか気づけないこともあると思うんです。調子がよいときはタイムを追うことや楽しむことに注力するけれど、どのフォームが悪くて怪我に繋がったんだろう?と振り返る余裕ができるので。
私は競技時代に1,2回ほど疲労骨折をしたのですが、そのときに監督に言われたのが先ほどの考え方だったんです。 みんなが大会に向けてガツガツ頑張っているなか、自分は補強トレーニングや止まりながらできる運動しかできなかったのですが、この考え方のお陰で『故障の期間も悪くない』と捉えられるようになったかもしれません」

SNSでの発信と並行して、全国のマラソン大会をゲストランナーとして盛り上げる活動にも積極的だ。
「お仕事でマラソン大会に呼んでいただいているものの、走ってる最中やランナーの方と触れ合ってるときは、私にとって素の自分でいられる時間なんですよね。
応援するなかで、最終関門に間に合うかギリギリの方が残りあと30秒のタイミングで必死に関門を突破しようと走る姿や、皆がゴールに向けて力を振り絞っている姿を見ると、胸が熱くなります。これは、ひとりで走っているだけでは感じられない気持ちですね。
それは学生時代の応援とも違った感覚で。大学の部活では女子800m走のブロックだけでも30名以上の選手が在籍しており、そのなかで関東インカレや日本インカレに出れるのは3名だけだったんです。お互い高め合える存在ではあるものの、皆ライバルだったので」
大会では、自身もコースの一区間を走りながら応援することで、より多くをランナーに伝えられると感じているそう。
「単に応援するだけだと、ランナーの方に伝えられることは少ないと思っています。一方で、自分が走った上で応援するのだと、『あと少しで給水所がありますよ』『あと何メートルでゴールですよ』等を実感を持って皆さんに伝えられるんです。
また、自分も走ってきて『この坂がつらかった』というのが分かると、より応援に熱が入る気がします」

心と体の声を聴き、「走ってもいいかな」と思える日に走る
志村さんが本格的にフルマラソンを始めたのは、実は3年ほど前からだという。
「競技ではずっと800m走をやってきたので、あまり長い距離は走れなかったんです。最初は40分くらいまでしかジョギングができず、それ以上は退屈だなと思っていました(笑)。
マラソンに移行する練習も最初は嫌でしたね。長い距離をゆっくり走るのが苦手で。そこから、ジョグを3kmから5kmにしてみようというように、少しずつ距離を伸ばしていきました。最初は10kmでもつらかったのですが、いまでは10km以上走らないと『走った』と思えない感覚になっています」
現在はマラソンシーズン中だが、毎週のように全国の大会を飛び回っている。マラソン前には、いつもよりも走る頻度や長さを増やすこともあるそう。
「私は0か100かの性格なので、何週間も走らない期間もありますが、大会前にスイッチが入ると詰め込んで走ることもあります。
競技時代、インターハイに行く、日本インカレに行く...等、自分が立てた目標を全部クリアしてきたので、この人生を崩したくないというのがあるのかもしれない...。マラソンでも、例えば『東京マラソンをこれくらいのタイムで走る』と決めたら、自分との約束を破りたくないんです」

時期によって走る量は様々だと話す志村さんに、ランニングを始めてみたいと思っている人へのアドバイスを聞いた。
「義務にしないのがよいと思います。『走んなきゃ』という意識だとやりたくなくなってしまうので、一日を過ごすなかで『今日は走ってもいいかな...』と思えたら走る、でよいと思っています。
丸一日座っているお仕事でも、疲れて外に出る意欲が無くなってしまうときもありますよね。そんなときは、走らずに美味しいご飯を食べて寝るでよいと思っていて。むしろ、たくさん動いたけれどそこまで心が疲れていない日に走ってみるとか、その日の心や体の声を聴けるとよいと思います。」
「ランニングはお風呂の前のルーティンとなっている」と話す一方で、非日常である旅行とも相性がよいという。
「旅行中に現地で走るのがすごく好きなんです。なんだろう...初めての街だと、事前に検索して目的地を決めてから向かうことも多いと思うのですが、走らないと気づけない観光地の良さがあると思うんです。
たとえば、走るなかで季節のお花や有名な建物が目に入ったり、距離感が掴めて位置関係がよくわかるようになったり。私自身、走る途中で立ち止まって写真を撮ったり、疲れたら途中で歩いたりします。
いまはインターネットやAIがあるので、たとえば『名古屋 ランニングコース』と検索して走りやすいルートを調べて、ホテルから走っていくこともあります。元々訪れる予定の無かった場所にも行けて面白いです!」
また、人と走ることもランニングの醍醐味の1つになっているそう。
「私の周りは朝に走る人が多くて、日焼けをしたくない私は夜ひとりで走ることが多いですが...(笑)、人と一緒に走るとやっぱり元気になりますよね。友達と『このパン屋さんに行こう』『朝一でコーヒーを飲みに行こう』、と予定を立てて走りに行くのもよいですよね」

最後に、志村さんが今後の活動で目指していることや、やっていきたいことを教えてもらった。
「あまり目標は無いかもしれません。引き続き、私の活動を見てくれている方には『ランニングを気楽に楽しんでいいんだ』と知ってもらいたいし、そのなかで『ランニングよいな』と思って始めてみてもらえると嬉しいです。1kmから走るのでも、途中で歩いてしまってもよいし。つらくなったら辞めて、また走りたくなったら走ればよいと思うんです。私も坂が来たら歩きますし(笑)。
SNSでタイムの速い人や毎朝走る人を見ると、焦ってしまうこともあると思うのですが、ランニングの一番の良さって、個人競技で、誰でもすぐ始められるスポーツということだと思うんです。『自分のペースで続けるのが一番だよ』ということを、みんなに伝え続けたいなと思います!」

志村美希(しむら・みき)
ランニングモデル・ランニングタレント。
日本体育大学卒で、陸上競技800mでインターハイ、全日本選手権など数多くの全国大会に出場・入賞した経験を有する。現在はSNSを通じてランニングの魅力を伝える活動や、各地のマラソン大会のゲストランナーとしての活動を行っている。
Youtube:https://www.youtube.com/@mikichannelo
Instagram:https://www.instagram.com/mikkitygram/
TikTok:https://www.tiktok.com/@mikkkity
X:@mikkkkkity
取材・文: Risa Murayama
編集:conomi matsuura
写真:服部芽生
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