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マイクロモビリティが目指す、より良い社会。Limeの考える安全性と環境配慮とは

電動マイクロモビリティの利用者数が増えている。手軽に乗車でき、環境負荷の少ない電動マイクロモビリティは、都市部では重要な移動の選択肢となっているだろう。

では実際、その安全性と環境への配慮はどこまでなされているのだろうか?

2024年、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス・Limeが日本に上陸した。世界32カ国で展開されているLimeは、細部に至るまで環境配慮や、安全面への工夫をされているという。

あしたメディアでは、Limeのカントリー・マネージャー兼アジア太平洋地域統括責任者であるテリー・サイ氏に話を伺い、Limeの考える安全性と環境配慮について、包み隠さず教えてもらった。

カントリー・マネージャー兼アジア太平洋地域統括責任者 テリー・サイ氏

Limeって?

Limeとは、どんなサービスですか?

Limeは、32カ国で展開している電動マイクロモビリティシェアリングサービスです。日本では2024年8月から東京の8区でサービスを展開しています。

利用できる車体は電動キックボードと電動シートボードの2種類。アプリから乗車予約をして借りることができます。

マイクロモビリティはコンパクトで利便性が高いため、渋滞緩和、公共交通の届かないエリアでの移動、高齢者の移動支援や、観光の促進、環境負荷の低い街づくりなど、多岐に渡る社会課題の解決のために利用されています。

日本上陸の経緯

Limeが日本でサービスを開始した経緯を教えてください。

日本の、特に東名阪は人口密度が非常に高いです。これはイギリスのロンドンやフランスのパリにもいえることですが、自動車や電車などの公共交通機関では移動の需要に追いついていません。

それを解決するために少しでも役に立てたらと、日本でもサービスを展開するに至りました。

実は2019年の8月に会社を設立し、福岡市とKDDIのサポートのもと実証実験をしていました。上陸する準備はすでに整っていたんです。

しかし2021年、新型コロナウイルスが流行し、日本での展開を中止することが余儀なくされました。計画より遅れてしまいましたが、その間に、かなり時間をかけて準備をすることができました。

具体的に準備ではどのような点に力を入れましたか?

特に日本の法令に沿った車両を提供することと、安全性に配慮しました。

Limeは社内にエンジニアやデザイナーが在籍しており、全世界で統一の車両を提供していますが、細かい部分は地域によって調整しています。日本でも、車体の幅や長さ、ライトなどに関する厳しい法令があります。JATA(日本自動車輸送技術協会)と連携し、それらをひとつひとつクリアするために調整を重ねました。

日本の法令は、基準が細かくて厳しそうなイメージがあります。

厳しい法令があることは、最終的にお客様が安心で安全な車両に乗ることができるので、とても良いことです。

弊社のエンジニアやプロジェクトチームにとっても、フィードバックを受けて調整していく工程は有意義なことだったと思っています。

独自のシートボード

実際に上陸して2ヶ月。どのような反応がありましたか?

特に人気なのは着座式の電動シートボードですね。かごが付いているので利便性が高く、車体が安定しているので1回あたりの走行距離も長くご利用いただけます。

実は、キックボードとシートボードで元の枠組みは同じです。パーツを標準化をすることで、環境負荷を減らしながら、新しいバリエーションを作れるように、エンジニアと工夫を重ねました。

(左)電動シートボード、(右)電動ボード

電動シートボードはより安定しているので安心して乗ることができそうです。

キックボードの利用者は比較的若い方が多い印象ですが、シートボードは高齢の方でも安心して使っていただけるのではと感じています。

座って倒れないようにとか、荷物を置いて転ばないように、色々試しながら現在のデザインに落ち着きました。

マイクロモビリティの安全性

電動マイクロモビリティは、その安全性が話題になることも多いですが、Limeで実施されている安全性に対する取り組みはありますか?

Limeは全世界で総走行距離が10億キロ、利用回数は6億回以上にもなるため、世界中から走行データが集まってきます。蓄積されたデータをもとに、PDCAサイクルを回しながら素早く改良を加えています。そのなかで、ハードウェアとソフトウェアの両方において安全面の対策をしています。

ハードウェアの安全対策

まずハードウェアの面では、Gen4シリーズの車体を自社で開発・生産管理しており、その設計には非常に気を使っています。

例えば、タイヤ。従来に比べて150%ほど大きくしました。これは、縁石に乗り上げた際の事故を防ぐなど、安全に配慮して車体を設計したためです。

警察の方と会話するなかで、縁石に乗り上げて事故するケースが非常に多いと聞きました。試乗会ではタイヤが大きくなるだけでも、安心感が全く違うと感想をいただいています。

より安定感のあるタイヤに改良

ほかにも、ハンドルの形状にも気をつけています。ハンドルが真っ直ぐだと肘が出てしまうため、Limeのハンドルは丸く設計し、自然に脇が締まるようなデザインにしました。

今時点で日本の車体には最新のハードウェアを使用していますが、皆さんからのフィードバックを通して随時改良を重ねていく予定です。

ソフトウェアの安全対策

ソフトウェアではどのような安全対策をされていますか?

ソフト面では、ヘルメットセルフィというシステムを導入しています。

これは、乗車前にお客様が自分でヘルメット着用写真を撮ってアプリに提出するというもの。

これまで、ヘルメットの着用はお客様の努力義務でした。なかには自分の髪型が変わってしまうので着用を嫌がる方もいらっしゃいます。ヘアスタイルも大事だと思うですが…安全性はより大事です。少し利益を削ったとしても、安全に繋がる習慣づくりを周知していけたらと思っています。

ほかにも、日本での情報が蓄積してきたら、マップのなかに危ないエリアなどを反映するなど、今後ソフトウェアを適応させていきたいです。

マイクロモビリティの環境配慮

Limeの環境配慮についても聞かせてください。

なんといっても、Limeのミッションステートメントは、「電動マイクロモビリティを公共交通手段として発展させ、カーボンフリーでサステナブルな未来をつくる」ということ。

移動手段としてキックボードを使うと、カーボンフリーで環境に良いという意識は、すでに持っていらっしゃる方も多いかもしれません。

具体的な環境対策

実際のところ、他の交通手段と比べて、どれくらい環境に良いのでしょうか?

現在、走行1kmあたりのCO2排出量は、26g。タクシーを利用すると大体250gが排出されるので、約9分の1まで抑えています。

Lime会社説明資料より抜粋。(調査:ドイツ Fraunhofer ISI

これだけLimeの排出量が低いのは、生産の段階からCO2をどれだけ減らすかを意識しているから。

生産工場の機械にソーラーパネルで発電した電気を使ったり、運送車にガソリン車を使わずにEV車を使ったりしています。細かいことですが、この積み重ねで排出量を抑えています。ここまでCO2排出量の削減にこだわっているのは、マイクロモビリティサービスのなかでもLimeだけだと思います。

また、より環境負荷を減らすため、車体をできるだけ長く使ってもらえるように設計をしています。今の車体は、だいたい5年間は使える設計。他のメーカーより2倍以上長く使えるように設計されています。ちなみに日本の場合はとても丁寧に使っていただいているので、ひょっとしたらさらに長く使えるかもしれません。

Limeのこれから

まだ現在は東京と沖縄でのサービス展開ですが、全国に広げる予定はありますか?

2024年11月現在は東京都で10区のエリアと、沖縄県那覇市のみで展開していますが、おかげさまで好評をいただいています。来年以降、他のエリアにも広げていきたいなと考えています。

テリーさんご自身が感じるLimeの魅力はどこにありますか?

Limeには先程もお伝えした、環境課題を解決するという同じミッションをともに考える仲間たちが集まっていて、毎日とても刺激を貰います。

今、日本では交通の混雑が課題です。さらに少子高齢化で、高齢者の方の移動手段がないことも課題となっています。

私はより良い社会を作っていきたい、と思いながらキャリアを歩んできましたが、Limeのメンバーと一緒であればすぐにその解決策に向けて動ける、と感じます。

また個人的な話なのですが、日本に住み始めて20数年、これまで日本の皆さんにとても良くしていただいて、住めば住むほど日本が好きになっています。そんな日本の方々に、恩返しがしたいと思っています。

おわりに

まだ、世に浸透してから間もない電動マイクロモビリティ。その安全性向上と環境配慮のための取り組みは、日夜続けられている。乗り手である私たちも、安全に交通マナーを守りながら、より環境に配慮した移動手段を選択したい。

 

取材、執筆:conomi matsuura
編集:日比楽那
写真:Lime提供

 

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