よりよい未来の話をしよう

ファッションにもエシカルでサステナブルな選択を。

はじめに

2020年のアカデミー賞授賞式のドレスコードは「サステナブルであること」だった。SDGsの概念が広がるにつれて、ファッションの分野でも環境や人権を意識したアイテムが増えつつある。できることなら環境や人権を意識したアイテムを身につけたいと考えている人も増えているのではないか。しかし身近でそのようなアイテムを探すにはどうするべきか。この記事ではエシカルでサステナブルなファッションを見分ける方法や日本発のブランドを紹介する。

サステナブルとエシカルとの違い

「サステナブルファッション」と「エシカルファッション」の違いをあなたは説明できるだろうか。これらの言葉は似ているが少し意味が異なる。

サステナブルは、直訳すると「持続可能な」という意味を持つ。つまり、サステナブルファッションとは、「衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した」(※1)ファッションのことである。

一方で、エシカルとはどのようなものか。直訳すると「倫理的な」や「道徳的な」という意味があるように、素材選びから廃棄まで、地球環境だけではなく人権や、人以外の生き物までをも思いやったファッションを指す。エシカル消費という言葉を聞いたことはあるかもしれないが、ここで使われているエシカルと同義である。

他の記事をチェック:エシカル消費とは?その意味と事例を徹底解説

どちらも地球の環境や生物への配慮を行う点では同じであるが、サステナブルファッションは「持続可能な社会」を目指す。つまり、エシカルな行動を個人が続けた延長上にサステナブルな社会が存在するという関係性があるのだ。ファッション産業は、原材料の調達、生地・衣服の製造、そして輸送から廃棄に至るまで、それぞれの段階で環境や人々に悪影響を与える可能性がある。具体的には製造プロセスにおけるCO2排出、原料となる植物の栽培や染色などで大量の水が必要であること、余った生地が廃棄されること、低賃金・長時間の労働環境などが問題として考えられる(※1)これらを見直し、環境や人権の観点からの負荷を少しでも軽減しようという取り組みがエシカルでサステナブルなファッションなのだ。

※1 参考・引用:環境省「SUSTAINABLE FASHION これからのファッションを持続可能に」(2021)
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

エシカル・サステナブルなアイテムを見分ける方法

これらの取り組みを行っているアイテムをどのように見分ければよいのか。そのために参考になる方法をいくつか紹介する。

国際フェアトレード認証ラベル

1つ目が国際フェアトレード認証ラベルの製品を選ぶことだ。フェアトレードは、原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易の仕組みのことだ。

スーパーや小売店で他の製品に比べて安価で販売されている日用品や食料品を見かけたことはないだろうか。このような製品の販売背景には原料生産国への支払いが不当で、生産者が正当な対価を得ていない可能性が高い。また、生産性を上げるための農薬の過剰な投与は農地土壌汚染や、生産者の健康被害を引き起こしていることもある。

これらの問題を防ぐため誕生したのが、国際フェアトレード認証ラベルの仕組みだ。国際フェアトレード認証ラベルを取得するには、適正価格や長期的な取引を促進するための「経済的基準」、児童労働や差別を禁止する「社会的基準」、有機栽培の奨励や土壌・水源・生物多様性の保全を促進する「環境的基準」の3つの基準を満たしていることが条件だ。これらの基準を満たしている製品であることから、フェアトレード認証ラベルが付いた製品を購入することは、開発途上国の経済的自立の支援や環境保全につながるのだ。(※2)

国際フェアトレード認証ラベル(※2)

※2 参考:Fairtrade Label Japan「フェアトレードミニ講座」
https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/course.php

オーガニックコットンの使用

2つ目がオーガニックコットンが使用された製品を選ぶことだ。オーガニックコットンとは、遺伝子組み換えの種は使わず、概ね3年以上化学薬品を使っていない畑で栽培され、製品になるまでのすべての工程でできるだけ化学薬品を使わずに作られたコットンのことだ。ただし上記農法で栽培されたコットンが全てオーガニックコットンと呼ばれるのではない。一定の基準を満たし認証機関から認証されたコットンのみがオーガニックコットンとして認められるのだ。認証機関により基準は異なるものの共通の基準は存在する。「原料がオーガニック認証を受けていること」と「トレーサビリティ(※3)を確保していること」だ。基準の厳しさや栽培に手間隙がかかることもあり、オーガニックコットンの生産量は全綿花生産高綿の1%未満でしかない。しかし、2019年8月から2020年7月に世界で生産されたオーガニックコットンの生産量は前年度と比較して4%増の24万9153トンを記録し、4年連続で増加している。このことから今後も生産量は増加していくことが予想される。(※4)

オーガニックコットンが使用された製品を選ぶことのメリットとして、農家の暮らしの向上に寄与することが挙げられる。オーガニックコットンは公正な価格での取引や、買取の保証、子どもたちが労働することなく学校に行ける時間を作ることなどを保証しているためだ。(※5)

※3 用語:ある製品がいつどこで誰によって作られていたのかを追跡できる状態にすることをトレーサビリティと呼ぶ。ファッションにおいては製造や輸送の工程における温室効果ガスの排出量、水の使用量、水質汚染など環境負荷の把握や、ムリな労働を課していないかといった労働環境の把握などが該当する。
※4 参考:繊研新聞社「世界の有機綿生産高 19~20年度は4%増で過去最高」
https://senken.co.jp/posts/organic-cotton-210730
※5 参考:NPO日本オーガニックコットン協会「どうしてオーガニックコットン!?」
https://joca.gr.jp/about-organic-cotton/why-organic-cotton/

エコファーの使用

3つ目がエコファーの使用されている製品を選択することだ。近年、動物福祉と環境保全の観点から動物の毛皮を利用した商品は減少傾向にある。代わりに使用されているのがエコファーだ。エコファーとは主にアクリル繊維から作られた素材である。リアルファーと異なり、動物の犠牲を必要としない。エコファーを用いるメリットには動物の犠牲が不要になるだけでなく、合成繊維であることを生かし天然のファーにはない色合いや柄表現も可能となる。また手入れが簡単で、耐久性が高いなどのメリットも挙げられる。(※6)

エコファーの台頭とともに動物毛皮の使用廃止を宣言するブランドも登場している。例を挙げるとアルマーニ、グッチ、バーバリーなどの名だたるラグジュアリーブランドも宣言している。また、国家単位でもファーに対する意識が変わりつつある。具体的には法律で毛皮生産を禁止しようとする動きがヨーロッパを中心に生まれており、イタリアやオランダなどをはじめとし、すでに16の国で禁止されている。

ここで紹介した方法以外に当てはまらないものでも、独自にエシカルでサステナブルな取り組みをしているブランドは存在する。例えば、商品発送時に包装を簡易的にすることも当てはまるだろう。上記の方法以外にも、自分が買おうとしているアイテムが環境や人権などに配慮したものであるかはぜひチェックしてみてほしい。

※6 参考:日本化学繊維協会(化繊協会)「エコファー」
https://www.jcfa.gr.jp/about_kasen/katsuyaku/25.html

日本発のエシカルなブランド・アイテム

ここまでは海外のブランドの取り組みや国際的な認証制度について紹介をしてきたが、日本発のオシャレでエシカルなブランドの紹介をする。あわせてクリスマスのプレゼントにぴったりなアイテムも紹介するのでプレゼントを決めかねている方がいればぜひ参考にしてもらえればと思う。

oblekt

人と環境に優しいモノづくりを目指したブランドで、ファッションの楽しさを損なうことなく環境に優しい選択肢を取れる製品作りを心がけている。無駄なものを限りなくそぎ落とし、長く愛用できるデザインにこだわり、サスティナブル、エコ素材を使用していることが特徴だ。

oblektのおすすめ商品は、「アップサイクル バスクボーダーT」。ユニセックスで着用可能なルーズなシルエットが特徴のボーダーTで、素材にはリサイクルした綿と、ポリエステル製の廃棄部分を解かし、再度、新しいポリエステルとして生まれ変わらせた素材を混紡し使用している。

商品のページはこちら:oblekt「アップサイクル バスクボーダーT」

PLAGLA

PLASTIC(プラスチック)とGLASSES(メガネ)をあわせた造語を名前の由来とするメガネブランド。プラスチックは燃やす際のCO2の排出による地球温暖化や廃棄による海洋汚染の要因になることから環境に対してネガティブなイメージを持たれやすい。一方で、私たちの生活を豊かにし、生活に根付いていることからゼロにはし難い側面もある。であれば、プラスチックともっと良い付き合い方をするためにもネガティブなイメージだけを先行さないようにしたい、という考えもPLAGLAという名前に込められている。PLAGLAの特徴は、ペットボトルをリサイクルしてフレームを作っていることだ。また売上の一部は公益財団法人「海の羽根募金」に寄付され、全国の海岸清掃や保全活動の費用に使われるので、PLAGLAを購入することで間接的に自然環境を守ることにもつながるのだ。

PLAGLAのおすすめ商品は、「PG-02 BLACK / 調光レンズ」。調光レンズとは紫外線量によってレンズの色味が変化するレンズで、室内では透明なレンズ、屋外ではサングラスに変化する。つまりサングラスとメガネがこの商品ひとつで兼用できてしまうため複数所持する必要がなくなるのだ。また、レンズ拭きはリサイクルペットボトルから、専用ケースは再生紙を使用してつくられている点もポイントだ。

画像1枚目は室内で着用した際の透明なレンズ。2枚目が屋外で着用した際にサングラスの色味に変化したレンズ。

RYE TENDER

ニット製品を取り扱うRYE TENDERは、他ブランドの生産過程で廃棄されるはずだった残糸・残布を用いてニット製品を製造するブランドだ。通常のブランドの生産プロセスとは異なり、デザインに合わせて素材を選ぶのではなく、利用する原料をもとに商品開発を行い素材の持つ本来の魅力を引き出すデザインプロセスを実施している。

RYE TENDERのおすすめ商品は、「PINE SCARF」。こちらの商品には「OFF×MULTI」というマルチカラーの商品が存在する。このカラーは少量で単色だけでは製品になり得ない残糸を複数組み合わせて製品にしたものだ。この工夫からは可能な限り素材の廃棄を少なくしようというブランドの気概が伝わってくる。これからの寒くなる季節にスカーフを贈り物に選んでみてはどうだろうか。

商品ページはこちら:RYE TENDER「PINE SCARF」

EQUALAND

EQUALANDは衣服からファッション雑貨まで幅広く取り扱うブランドだ。生産過程にストーリーを持ち、ジェンダーレスで軽やかに、タウンでもホームでも心地よく、日々の生活に寄り添う大人の「日常着」をコンセプトにしている。使用する素材は、可能な限り地球環境に負荷をかけない素材を前提に、快適な着心地と素晴らしい機能性を持ち合わせた天然素材を追求している。ブランドの通販サイトでは素材ごとに製品を検索することができることから、素材にこだわっているブランドであることがわかる。EQUALANDのおすすめ商品は、「【TRESSE 】SOPHIE ヘアバンド」。サイドが細くなっているので、より頭にフィットしコンパクトに見せてくれ、長時間つけても痛くならず、自宅や外出にも利用できるといった機能性を兼ね備えている。また素材は洋服在庫の生地を活用して作られていることから地球環境にも配慮された製品だ。

商品ページはこちら:EQUALAND「【TRESSE 】SOPHIE ヘアバンド」

KAPOK KNOT

素材のKAPOK(カポック)に、結び目を意味するKNOT(ノット)を合わせた言葉をブランド名の由来とするファッションブランド。アパレル業界の大量生産・大量廃棄という負のシステム、そのシステムが生み出す弊害を目の当たりにした創業者が、カポックに出会ったことがきっかけで生まれたブランド。「消費者」「生産者」「環境」の3つの視点に立ち、製品ができてから届くまでに関わる全ての人たちに寄り添ったものづくりに注力している。

カポックとは、主に東南アジアで収穫される、木の実から取れるコットンだ。カポックの特徴は、軽さと機能にある。 カポックは従来のコットンの1/8の軽さだが、 寒い時には、湿気を吸い、暖かく発熱し、 暑い時には、湿気を放出し、涼しく快適にするという優れた素材だ。カポックは高機能な繊維でありながら、その軽さと短さ故に繊維にすることが難しく、商品化が困難な素材であったが、大手企業との研究開発の末、カポックの商品化に成功した。カポックのメリットとして木の実から取れるので木の伐採を行う必要がないことや、水鳥を殺す必要がないことが挙げられる。またKAPOK KNOTはアパレル業界で見受けられる下請け孫請けが慣例化した分業制ではなく独自のサプライチェーンを構築している。そのためカポックの特性を活かした高品質な製品を中間流通を省くことで通常より安価で販売し、消費者がサステナブルファッションに参加するハードルを低くしているのだ。

KAPOK KNOTのおすすめ商品は「カポックダウン ヴィンテージブランケット」。中綿にはカポックを用いているため、軽量ではあるがダウンの暖かさを備えている。また、ウール生地には、京都の老舗生地屋さんの倉庫で眠っていた生地を利用しているため環境にも配慮されている。

商品ページはこちら:KAPOK KNOT「カポックダウン ヴィンテージブランケット」

ファッションにおいても未来のための選択を

サステナブル・ファッションに向けた取り組みが進められているなか、個社では解決が難しい課題に対して、協働して解決策を導き出していくための企業連携プラットフォームであるジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)が2021年に設立された。JSFAは2050年までの適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロを実現を目標としている。

日本では、製品を買う際にエシカルでサステナブルな取り組みをしているかどうかを基準に選ぶことはまだまだ少ないと思う。しかし日本にもこのような取り組みを行う企業は確実に増えてきている。私たちがそのような基準で商品を選ぶようになれば、必然的にエシカルな生産に踏み込むブランドがさらに増えていくのではないだろうか。消費者として、エシカル消費に取り組むことで良い循環に貢献することができるのだ。ファッションロスゼロを実現するためには、企業の努力だけではなく私たち消費者がファッションにおいても未来のための選択を行うことが必要不可欠だ。

※本記事に掲載している商品の在庫状況については各ブランドの商品ページよりご確認ください

 

文:吉岡葵
編集:白鳥菜都

 

本記事に記載された見解は各ライターの見解であり、BIGLOBEまたはその関連会社、「あしたメディア」の見解ではありません。