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エシカルファッションブランドとは?日本と海外のおすすめをメンズ向けブランドも含めて紹介

2013年にバングラデシュで起きたラナプラザ崩落事故を契機に、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とするファストファッションを支える途上国の劣悪な労働環境が国際的な批判にさらされ、サステナブルなファッション「エシカルファッション」への転換が急務となっている。この記事では、エシカルファッションに取り組むブランドや、普及に向けた取り組みを紹介する

エシカルファッションとは何か

まず、エシカルファッションの定義についてまとめたい。エシカルファッションとは、環境、社会、倫理的要因を考慮したファッションアプローチのことを指す。具体的には、環境に配慮した素材の使用、フェアトレードの実践、労働者の権利保護、動物愛護、廃棄物削減などを通じて、ファッション産業のサステナビリティを追求する取り組みである。

エシカルファッションの背景と歴史

エシカルファッションが注目を集めるようになった契機として、2013年にバングラデシュで発生したラナプラザ崩落事故が挙げられる。バングラデシュは世界第3位の衣料品輸出国であり、多くの縫製工場が存在するが、この事故により、ファストファッションを支える途上国の劣悪な労働環境が国際的な批判にさらされることとなった。(※1)

さらに、ファッション産業が環境に与える影響の大きさも問題視されるようになり、サステナブルなファッションへの転換が急務となっている。例えば、ファッション産業は年間930億立方メートルもの水を消費し、50万トンのマイクロファイバーを廃棄しているという報告もある。(※2)

エシカル消費との関連性

消費者庁は、エシカル消費を「人や社会・地域・環境に配慮した消費行動」と定義している。(※3)つまり、エシカル消費とは、単に商品やサービスの価格や品質だけでなく、その背後にある社会的・倫理的な価値を重視する消費スタイルなのである。

そして、エシカルファッションは、エシカル消費の考え方に配慮して作られたファッションであると言えるだろう。

ファストファッションとの違い

エシカルファッションは、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とするファストファッションとは対極に位置する概念である。ファストファッションは、最新トレンドを低価格で提供することを重視するあまり、環境負荷や人権侵害などの問題を引き起こしてきた。

一方、エシカルファッションブランドは、環境や社会に配慮した素材調達やフェアトレードの実践、サプライチェーンの透明化などを通じて、サステナブルなものづくりを追求している。両者の違いは、利益追求を最優先とするか、社会的責任を果たすことを重視するかという価値観の相違に集約できるだろう。

※1 参考:国際労働機関「ラナプラザ崩壊事故から10年:その後の変化と課題」
 https://www.ilo.org/ja/resource/%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B6%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%8B%E3%82%8910%E5%B9%B4%EF%BC%9A%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%8C%96%E3%81%A8%E8%AA%B2%E9%A1%8C
※2出典:環境省「ファッションと環境」
 https://www.caa.go.jp/policies/future/topics/meeting_006/materials/assets/future_caa_cms201_1209_02.pdf
※3出典:消費者庁「エシカル消費」
 https://www.ethical.caa.go.jp/ethical-consumption.html

▼さらに詳しく歴史や定義を知る

エシカルファッションブランドの選択基準

エシカルファッションブランドを選ぶ際には、いくつかの基準を考慮する必要がある。以下では、環境、労働者、動物福祉、フェアトレード、トレーサビリティ、サーキュラーエコノミーの6つの観点から、ブランド選びのポイントを解説する。

環境への配慮

エシカルファッションブランドは、製品のライフサイクル全体を通して環境への影響を最小限に抑えることを目指している。そのため、例えばリサイクルポリエステルなどの環境配慮型素材の使用、水や化学物質の使用量削減、再生可能エネルギーの活用など、様々な取り組みを行っている。(※2)

また、製品の長寿命化やリサイクル性の向上、廃棄物の削減にも注力しており、これらの取り組みを通じて、ファッション産業が環境に与える負荷の低減に貢献している。ブランド選びの際には、こうした環境配慮の姿勢を重視することが大切だ。

労働者の権利と適正な労働環境

エシカルファッションブランドは、製造工程に携わる労働者の権利を尊重し、適正な労働環境の確保に努めている。具体的には、適正な賃金の支払い、労働時間の管理、安全衛生の確保などが挙げられる。(※4)

特に開発途上国では、児童労働や強制労働、低賃金、長時間労働など、労働者の権利が軽視される傾向にあるため、ブランドには労働環境の改善に向けた積極的な取り組みが求められる。労働者の権利を尊重し、適正な労働環境の整備に注力するブランドを選ぶことが重要だ。

動物福祉への配慮

エシカルファッションブランドは、動物性素材の調達において動物福祉に配慮している。例えば、羊毛の調達では、無麻酔で皮膚や肉の一部を切り取る「ミュールジング」という羊に苦痛を与える行為を行わない牧場から調達することなどが該当する。

また、動物実験を行わない、毛皮を使用しないなど、動物の権利を尊重する姿勢も特徴だ。消費者として、動物性素材を使用する場合は、動物福祉に配慮した調達方針を持つブランドを選ぶことが望ましい。

フェアトレードの実践

フェアトレードとは、開発途上国の生産者に適正な価格で継続的に取引することを通じ、生産者の生活改善と自立を目指す仕組みだ。エシカルファッションブランドの中には、フェアトレード認証を取得している原材料を調達したり、自社でフェアトレード原則に基づいた取引を行ったりしているブランドもある。

フェアトレードを実践することで、貧困削減や生産者コミュニティの発展に寄与できる。フェアトレードに積極的に取り組むブランドは、社会的責任を果たす姿勢の表れとして評価できる。

トレーサビリティ(製造過程の透明性)

トレーサビリティとは、製品の原材料調達から製造、流通に至るすべての過程を追跡・確認できる仕組みだ。エシカルファッションブランドは、サプライチェーンの透明化を図り、どこで、誰が、どのように製品を作っているのかを明らかにすることで説明責任を果たそうとしている。

トレーサビリティを高めることは、サプライチェーン上の人権侵害や環境破壊のリスクを特定し、改善につなげるために不可欠だ。製造過程の透明性を重視し、積極的に情報開示を行うブランドを選ぶことが賢明だ。

サーキュラーエコノミーの実践

サーキュラーエコノミーとは、資源を循環させ、廃棄物を出さない経済モデルだ。エシカルファッションブランドは、リサイクル素材の活用、製品の長寿命化、リペア・リメイクサービスの提供など、サーキュラーエコノミーの実践に取り組んでいる。

こうした取り組みを通じて、資源の有効活用と廃棄物の削減を図り、ファッション産業のサステナビリティ向上に貢献している。製品ライフサイクル全体を視野に入れ、サーキュラーエコノミーを実践するブランドを支持することが肝要だ。

▼サーキュラーエコノミーについてもっと知る 

※4 出典:デロイトトーマツ「繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第10回 児童労働に対する繊維業界の責任」
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/strategy/cbs/jp-cbs-sdgs-senken-10.pdf

日本と海外の代表的なエシカルファッションブランド

エシカルファッションは、環境や社会、倫理的な観点から生産されるファッション製品を指す。ここでは、日本と海外の代表的なエシカルファッションブランドについて見ていく。

日本のエシカルファッションブランド

日本には、独自の視点からエシカルファッションに取り組むブランドが存在する。例えば、CFCL(シーエフシーエル)は、3Dニッティング技術と再生素材を活用することで、環境負荷を最小限に抑えた製品を提供しており、デザイン性の高さも注目されている。女性用のみならず、ユニセックスのラインナップも充実している。(※5)

また、takes.(テイクス)は、竹を100%使用した製品を開発するなど、環境に優しい素材選びに力を入れている。竹は成長が早く、水や農薬をほとんど必要としないため、注目を集めているサステナブルな素材である。こちらも、性別を選ばないシンプルなデザインが特徴だ。(※6)

欧米のエシカルファッションブランド

欧米では、環境保護や社会貢献を重視するブランドが多く見られる。米国のFrank & Eileen(フランク・アンド・アイリーン)は、女性の活躍推進と持続可能な経営を両立させることを目指しており、トレーサビリティの高さが評価されている。(※7)

スウェーデンのDEDICATED.(デディケイテッド)は、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルなどの環境配慮型素材を使用したストリートファッションを展開しており、若者を中心に人気を集めているブランドだ。(※8)

また、THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)は、環境保全活動や社会貢献活動に積極的に取り組んでおり、エシカルな企業姿勢が支持されている。(※9)同様に、パタゴニアも環境問題に対する先進的な取り組みで知られ、サステナブルファッションの代表的なブランドとして認知されている。(※10)

各ブランドの特徴と取り組み

これらのブランドに共通しているのは、単なるものづくりにとどまらず、社会や環境への配慮を重視している点だ。例えば、フェアトレードの実施によって生産者の適正な労働環境を確保したり、リサイクル素材の使用によって資源の無駄を省いたりするなど、様々な工夫が凝らされている。

一方で、エシカルファッションは比較的価格が高くなる傾向があり、一般消費者にとっての購入のハードルの高さが課題として指摘されている。

しかし、私たち一人ひとりが意識的な消費行動を心がけることで、ファッション産業のサステナビリティは着実に前進していくはずだ。エシカルファッションブランドの取り組みを参考にしつつ、自分なりのエシカル消費のスタイルを確立していくことが求められている。

※5 参考:CFCL公式サイト
 https://cfcl.jp/pages/consciousness
※6 参考:takes.公式サイト
 https://takes.jp/
※7 参考:Frank & Eileen公式サイト
 https://www.frankandeileen.com/
※8 参考:DEDICATED.公式サイト
 https://dedicated-brand.jp/
※9 参考:THE NORTH FACE
 https://www.goldwin.co.jp/tnf/
※10 参考:パタゴニア公式サイト
 https://www.patagonia.jp/home/

エシカルファッションの課題と注意点

エシカルファッションは環境保護や社会的責任を重視するファッションのアプローチ法であるが、いくつかの課題や注意点が存在する。ここでは、エシカルファッションを選択する際に留意すべきポイントについて説明していく。

グリーンウォッシュのリスク

グリーンウォッシュとは、実際には環境に配慮した取り組みを行っていないにもかかわらず、環境に優しいイメージを与えることで消費者を惑わすマーケティング手法を指す。エシカルファッションブランドを選ぶ際は、企業の主張を鵴呑みにせず、第三者機関の認証取得状況などを確認することが重要である。

例えば、オーガニックコットンを一部使用しているからと言って、その製品が完全にサステナブルとは限らない。製造工程全体を見渡し、包括的な視点から判断を下す必要がある。さもなければ、自身の消費行動が「エシカル」の名の下に利用されるだけに終わってしまうだろう。

▼グリーンウォッシュについてもっと知る 

高価格による手の届きにくさ

エシカルファッションは、従来の大量生産・大量消費型のファストファッションと比べると、どうしても価格が高くなりがちである。これは、適正な賃金の支払いや環境に配慮した素材の使用など、製造工程に関わるコストが上乗せされるためだ。

手の届きやすい価格帯にあることは、エシカルファッションが広く一般に普及するための重要な条件の一つと言える。ブランド側には、製造工程の合理化などを通じたコストダウンの努力が求められよう。同時に、消費者の側にも、多少高価でも環境や社会に配慮した商品を選ぶ意識の変革が必要不可欠だ。

認証制度の複雑さと統一性の欠如

エシカルファッションの基準を判断する際、各種の認証制度が参考になる。代表的なものとしては、オーガニック製品に与えられるGOTS認証や、リサイクル素材の使用割合を示すGRS認証などがある。しかし問題なのは、こうした認証制度が乱立し、統一性に欠けている点だ。

例えば、ある認証ではオーガニック素材の比率に着目する一方、別の認証では製造工程におけるCO2排出量を重視するなど、各認証の評価基準はまちまちである。消費者からすれば、何を信頼して良いのか判断に迷う場面が多い。認証制度の統合や、わかりやすい情報開示が求められている。

エシカルファッションの普及に向けて

エシカルファッションの普及には、消費者、企業、政府、教育機関など多様なステークホルダーの協力が不可欠である。各主体が果たすべき役割と取り組みについて、以下で詳しく見ていく。

消費者の意識改革と行動変容

エシカルファッションの普及には、消費者一人ひとりの意識改革と行動変容が何より重要である。消費者は自らの消費行動が環境や社会に与える影響を理解し、エシカル消費を実践していく必要がある。

具体的には、エシカルファッションブランドを積極的に選択し、長く着られる良質な服を購入することが求められる。また、不要になった服は、リサイクルやリユースを通じて循環利用することも大切だ。こうした意識的な行動の積み重ねが、ファッション産業全体の変革を促していく。

企業の社会的責任と情報開示

ファッション企業には、環境保護や人権尊重といった社会的責任を果たすことが求められる。そのためには、サプライチェーン全体で、環境配慮型素材の使用、フェアトレードの実施、労働環境の改善などに取り組む必要がある。

同時に、企業は自社の取り組みを消費者に分かりやすく伝えることも重要である。原材料の調達から製造、流通、販売に至る全工程の透明性を高め、トレーサビリティを確保することで、消費者の信頼を獲得することができる。

政府による支援と法整備

エシカルファッションの普及には、政府の積極的な支援と法整備も欠かせない。例えば、環境配慮型素材の研究開発への助成、エシカルファッションブランドの認証制度の導入、サプライチェーンの透明化を求める法規制の強化などが考えられる。

また、政府は消費者教育の充実を図ることで、エシカル消費の意義や実践方法を広く国民に浸透させることも重要だ。行政、企業、市民団体が連携し、多角的にエシカルファッションを推進していく必要がある。

教育機関におけるサステナビリティ教育

将来を担う子どもや学生に対するサステナビリティ教育も、エシカルファッションの普及に大きな役割を果たす。学校教育のなかで、ファッション産業が抱える課題や、エシカル消費の意義を教えることで、持続可能な社会づくりに貢献する意識の高い消費者を育てることができる。

また、大学などの高等教育機関では、サステナブルファッションに関する専門的な教育プログラムを充実させることも求められる。環境や社会に配慮したものづくりができる人材を輩出することで、ファッション産業の変革を牽引していくことが期待される。

以上のように、エシカルファッションの普及には、消費者、企業、政府、教育機関など社会全体で取り組むことが不可欠である。ファッションを通じて持続可能な社会を実現するために、一人ひとりが自覚を持ち、できることから行動に移していくことが何より大切だ。

まとめ

エシカルファッションは、エシカル消費の一環として捉えられ、私たちの消費行動が環境や社会に与える影響を自覚することの重要性を示している。その成立条件としては、環境保護、リサイクル、フェアトレード、労働環境の改善、伝統技術の継承など、包括的な視点が不可欠である。

ファッション産業は、大量の水資源消費や廃棄物の排出、児童労働や低賃金労働など、様々な課題を抱えている。エシカルファッションブランドは、こうした問題の解決に向けて、環境に優しい素材の使用や製造工程の改善、サプライチェーンの透明化などに取り組んでいる。

エシカルファッションのさらなる普及に向けて、消費者がエシカルなブランドを選択することと、企業側がエシカルな生産体制を整えることの両方が重要だ。

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文・編集:あしたメディア編集部

 

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