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ラブブ、ちいかわ、ミャクミャク…キャラクタービジネスの流行サイクルはどう生まれる?

「ラブブ」や「ちいかわ」などのキャラクターは日本や中国などの東アジア地域で誕生し、多くの人々を魅了している。また、大阪・関西万博の公式マスコットキャラクターである「ミャクミャク」は、出始めこそネガティブな反応もあったが、その後の巻き返しはすさまじく、別キャラクターとのコラボや限定商品が売り切れ続出になるなど大阪以外の場所でも目にするようになった。

国や地域を超えた人々がキャラクターに親しみ、カルチャーを楽しんでいるが、それらの流行はどこから来て、何が人々を魅了しているのか。それらは単なるブームとして終わりはくるのか。東アジアからキャラクターカルチャーやIPビジネスが生まれる背景を探る。

ラブブとちいかわの違いと流行のきっかけ

「ちいかわ」は日本のイラストレーター・漫画家のナガノ氏による作品で、2017年以降、X(当時のTwitter)でのイラスト漫画のシェアが原点となっている。テレビアニメやぬいぐるみなどを通して国内文化圏を基盤に成長し、2025年11月時点の数値を見ても、Xだけで434万人がフォローしている。この数字はポケモン公式(271万人)、任天堂公式(560万人)と比べても世代や国・地域を超えて人気を集めていることがわかる。

ちいかわはキャラクターの魅力に加え、ストーリー性にも共感が彫られている。日常でふと訪れる寂しさや小さな喜びなどを描写し、感情に長けた表現が支持に繋がっている。主にグッズ展開・アニメ化・公式配信やちいかわカフェの展開で認知が広がった。韓国や中国といった東アジアの国々からネットミームなどを通して広がり、世界的に人気な日本のIPとして成長を遂げている。



【公式】『ちいかわ』第1話「かためのプリン/ホットケーキ」

「ラブブ(LABUBU、拉布布)」は中国企業の 「POP MART(泡泡瑪特)」発のキャラクター。香港をルーツにもつデザイナー、カシン・ロン(龍 家昇)氏がデザインしており、日本では昔から取り入れられている抽選+ブラインドドール方式(中身が開けてみないと分からない形式)という商法が世界的に話題を呼んだ。特に、BLACKPINKのリサやリアーナ、デュア・リパなどの著名人によるSNS投稿をきっかけに世界的に広まり、大ヒットしたといわれている。中国市場を基盤としてから日本・アジア圏へ流入し、EC上の売買ランキングでは上位に入るなど実績があり、台湾ECでは取引ランキングトップ10入りもしているデータもある。(ちいかわは2位、ラブブは9位)(※1)

また、世界的なトレンドとの関連はいずれにも見られている。たとえば、ラブブはチャームの流行と結びつき、バッグやスマホケースなどにキャラクターアイテムやぬいぐるみなどをつけるスタイルが若者文化と合致した。冒頭で挙げたK-POPアイドルのブランドバックにキャラクターチャームをつけるというのはラブブ以外にも他のPOP MARTキャラクターや「モンチッチ」、サンリオの「日焼けキティー」など汎用性がある。

※1 出典:自由時報 「電商公布上半年熱銷IP排名 Labubu贏過初音」
https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/5107830

どのように人気を得たのか?

それぞれ愛されるキャラクターではあるが、展開したプロセスやバックグラウンドには異なる点もある。 ちいかわはSNSを通した漫画、TVアニメから東アジアを中心にグッズや常設カフェなどの体験、インバウンド旅行の目的としても展開、物語を通してよりキャラクターへの共感がキーポイントになっている。一方で、ラブブはPOP MARTの一つのキャラクターから人気に火がつき、抽選+ブラインドドール方式という「遊び性・希少性」を持たせたグッズ戦略と、インフルエンサーがファンにつくことでより広く爆発的にポップアイコンとして人気を得た。



POP MART | THE MONSTERS PIN FOR LOVE Series

前者のちいかわに見られる共感性やストーリー性は日本で生まれるキャラクターの特徴として顕著である。可哀想に!氏による「おぱんちゅうさぎ」や韓国のWebtoon(韓国発の縦読み漫画)作家、イ・ジュヨン氏による「パンパンくんの日常」もまた、それぞれ日々のあるあるやつい同情してしまうようなシーンの切り取りと少し憎らしく、愛くるしい複数のキャラクターの群像劇が特徴である。

また、ちいかわの作者であるナガノ氏はイラストレーターとして「自分ツッコミくま」や「もぐらコロッケ」など様々なキャラクターを作り出し、ちいかわリリース前の時点でXは33万人のフォロワーを有していたのに比べ、POP MARTの日本1号店は2022年7月にオープン。ブームまでは約2〜3年のブランクがある部分も違いがある。

ネガティブな声から巻き返した異例の万博キャラクター

近年話題を呼んだキャラクターといえば、大阪・関西万博の「ミャクミャク」も挙げられる。 発表時、ビジュアルのインパクト・不気味さゆえにネット上で「怖い」「気持ちが悪い」というネガティブな反応がXなどのSNSプラットフォームを通して見受けられた。しかし、時間とともにメディア報道・作品展開が進むに連れて受容側の見方が変化していった。

アイコニックな見た目に魅了され、多くの人たちがグッズを購入し、1日あたり約5億6000万円の売上を記録。日本国際博覧会協会によれば、8月時点で約800億円を記録しているといい、万博の黒字化に貢献したという結果もでている。(※2)



大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」プロモーションビデオ(90s)

万博開催中には「#ミャクミャクの日記」(※3)として実際に出会える存在としてリアルタイムでストーリーを共有したほか、YouTubeやSNS で「知られざる世界」など再評価系動画やいわゆる二次創作作品も多く作られている。このような「炎上や不評からキャラクターの再評価・愛着化」のプロセスは、過去の万博はもちろん、IP戦略において異例ともいえる。

ミャクミャクは2025年4月から複数回に渡りサンリオキャラクターとのコラボ商品を販売するほか、POPMARTのラブブとのコラボも10月1日発表され愛されるキャラクターとしての地位を確立していった。

IPを有する日本国際博覧会協会(万博協会)によれば、大阪・関西万博IP(ロゴマーク、ミャクミャク、デザインシステム、大阪・関西万博の名称)に関する商品へのライセンスや協賛者・出展者、政府・自治体・関係団体等による使用期限について、従来は閉幕日(10月13日)までとしていたが、経過措置として、来年26年の3月末まで継続するとの判断に至った。また、10月24日にはオフィシャルストアが大阪・北区のジュンク堂書店大阪本店にオープンし、600人もの行列ができている。

万博のキャラクターとしては、2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」の「モリゾーとキッコロ」なども今なお愛知県などでは見ることができ、活用としてSDGsや地域活性化などに貢献することは考えられるが、今後の活躍も期待したい。

※2 出典:臨時理事会 会議資料 - 大阪・関西万博
https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/20251007_rijikaisiryou.pdf
※3 出典:大阪・関西万博公式HP 「#ミャクミャクの日記」:
https://www.expo2025.or.jp/dailylife/

世界のIP流行はギャルとネットミーム職人が作る?

キャラクタービジネスがこれだけ大きな産業として発達したのにはギャル・Y2Kカルチャーの普遍化、特にチャーム・アクセサリーカルチャーのリバイバルやK-POPカルチャーとの親和性など、さまざまな巡り合わせが複合的に重なった結果ともいえる。

特に若年女性をはじめとした文化圏ではそれらのキャラクターなどのチャームを「自己表現ツール」「文脈の共有」として使う動きが強まっている。2000年代前半、平成時代の携帯ケースやバッグへのじゃら付けが「平成女児ブーム」と共にリバイバル。韓国カルチャーにおける「推しトレカケースデコ」や、「fwee」「BRAYE」などキーホルダーになるコスメもまたそれらと相互に影響を与え合い、バイラルに拡大した要因となっている。

流れは世界的に広がり、ファッションブランド「ミュウミュウ」や「バレンシアガ」の2024年春夏コレクションでも確認できる(※4)他、前述のBLACK PINK・リサなどK-POPアイドルなどが用いることでクール、ハイセンス層へも受容されていった。結果としてハイブランド×アクセサリー・チャームという方程式は成り立つようになり、一部のファンが支えていた基盤を、インフルエンサー層などがファッションの一部として取り入れることで、専門誌やスナップ投稿でキャラグッズの露出が増えてより幅広い層にも波及したことが伺える。

また、ネットミームの存在もまた、キャラクタービジネスの成功にはなくてはならないカルチャーの1つである。

有名な動画としては2022年に鎌倉でぬいぐるみを使った動画撮影(ぬい活)をしていたメルユウさんのちいかわがトビに攫われるわずか2秒の動画(※5)がキャラクターの性格とマッチして51万人がいいねを押している。その後、猫ミームとハチワレのコラボミームなども認知獲得に繋がっている。

中国発ソーシャルプラットフォーム「小紅書(RED)」や「抖音(中国版TikTok)」では独自のネットミームも確認できる。ちいかわ(吉伊卡哇)のアニメ声優の声をAI生成した上で、中国の地方都市の話を掛け合わせて組み込んだ動画や、教室でのワンシーンといったテンプレートから、うさぎが「到ー!」と言いながら膨らむミームなど独自ミームが誕生しており、それらはダンス動画や中国本土のデジタルサイネージなどにも反映されている。

※4出典:ELLE Singapore How to Style the Bag Charms Trend, Plus Where to Shop https://elle.com.sg/fashion/bag-charms-trend/
※5 出典:X  멜유 ᐡᴗ ̫ ᴗᐡ₎♡o。🎀 @i_melody_you https://x.com/i_melody_you/status/1583358514390388736

IPビジネスは流行に終わるのか

従来のIPビジネスはグッズ売上に大きく依存していたが、IP所有企業(キャラメーカー/出版社等)はライセンス収入、コラボ、サブスク展開、デジタルキャラクター展開など多様化を図っているという。NFT・メタバース展開、デジタルキャラ(VTuber・3Dモデル)などが次の拡張軸になる可能性として実践されている。流行後も持続して愛されるためのリブランディング・キャラの世代交代・ストーリー更新やコミュニティ主導企画(ファンがキャラを拡張する活動)との共創は欠かせない。国際展開・ローカライズ展開による複数市場展開はより必要不可欠になるといえるだろう。

IPは流行の波に乗ることで注目を集めるが、同時に長期化・ブランド化を図れないと一過性に終わるリスクも高く残っている。実際に、ラブブは初期から安定供給や価格の下落に伴いPOP MARTは2025年9月の段階で時価総額も2兆円弱下落した。(※6)

安定性を持たせるには、ストーリー性、拡張性、ファンコミュニティ育成、コラボ戦略、メディアミックス展開などが鍵になってくる。POP MARTもこれらを見越してストーリーの構築としてアニメシリーズ『LABUBU与朋友們(仮:ラブブと仲間たち)』や劇場版を制作中。(※7)また広州や上海、マカオなどでの大規模POP UP、中国・北京郊外の朝陽公園にあるPOP MART公式のテーマパーク「POP LAND」はLABUBUと出会える観光スポットとして人気を高めている。

世界的ヒットの可能性は、海外市場でのキャラクター文化理解の違いやローカライズ、すでに地位を確立している競合キャラクターとバッティングしていないかなどを踏まえてスケールできるかにかかっている。この記事で扱ったようなラブブ・ちいかわ・ミャクミャクの流行構造を参照しつつ、今後のキャラクタービジネスを注視していきたい。

※6 出典:Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-15/T2MASYGP9VD300
※7 出典:POPBEE:泡泡瑪特大宇宙:拉布布將推出動畫?被發現悄悄申請《Labubu 與朋友們》著作權! 
https://popbee.com/lifestyle/labubu-and-friends-animation-pop-mart-season-1

 

文:宮木 快
編集:卜部奏音

 

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