日常生活の中で、インターネットの「検索」をしない日があるだろうか?
私たちの生活には、すでにインターネットがあらゆる側面で浸透し、インターネットから得た情報を元に生活をしていると言っても過言ではない。その際に私たちが使っているのが、GoogleやYahoo!などの「検索エンジン」と呼ばれるインターネット上の情報を検索するシステムである。
情報を収集するためのプラットフォームに過ぎないと思われがちな検索エンジンだが、じつはさまざまなバリエーションがあり、最近では使うだけでソーシャルグッドにつながるものもあるという。「ソーシャルグッドと言っても、何から始めたら良いのだろう?」そう思ったときに、毎日使う検索エンジンから見直してみるという選択肢があるかもしれない。
それではいくつか、ソーシャルグッドにつながる検索エンジンを紹介してみたい。
検索による広告収入を社会貢献活動に振り分ける
基本的に検索エンジンは広告収入をもとに運営されている。その広告収入を、ソーシャルグッドな活動に振り分け、社会貢献につなげている検索エンジンがあるようだ。
<検索が植樹活動につながる Ecosia >
独・ベルリンの企業が開発した検索エンジンで、ユーザーが検索をすることで発生する広告収入の8割を植樹活動を行う非営利団体に寄付しており、これまですでに1億本以上の植樹がなされているという。実際に検索ページへアクセスすると、その時点で植樹された木の本数が表示されるデザインになっており、自分たちの検索行動による貢献度がわかりやすいことも特徴だ。また、運営体制においても環境負荷の低減を目指しており、自社でもつ太陽光パネルで生み出したエネルギーを、検索システムの稼働に用いているそうだ。同時にユーザーのプライバシー保護も重要視しており、検索履歴から個人情報を収集することや、広告会社にユーザー情報や検索履歴を売ることを避ける仕組みを取っている。様々な面で、ユーザーと、そして地球に優しい検索エンジンだと言えるだろう。
<検索で世界の水質環境を改善する giveWater >
広告収入を世界の水質衛生環境の改善を行う団体に寄付しているのが、こちらのgiveWaterだ。具体的な寄付実績などはまだ公開されていないが、毎月の貢献実績を公式サイトで公表していく予定としている。検索やデジタル広告の分野で20年以上のキャリアを積んだ創設者が、検索行為を水質環境改善とつなげたいという想いで始めた検索エンジンだそうだ。サイト内では、世界の水問題に関する情報やデータも公開されている。
これまでにない概念で検索エンジンの可能性を拡げる
広告収入を通じた寄付以外にも、そもそも既存の検索エンジンの在り方を見直し、新たなチャレンジを行なっているサービスがあるようだ。
膨大なデータ処理が求められる検索エンジンのサーバーは、大量の電力を消費する。この実態を課題と捉え、エコフレンドリーな検索エンジンを目指すのが、オーストラリアの技術者によって開発されたEkoruだ。検索処理を行うサーバーはCO2の排出が小さい水力発電でまかなわれ、サーバーの冷却についてもエアコンは使用せずに、冷水を通したチューブを張り巡らせることで電力消費を抑えている。また、収益の約6割を国際的な海洋保護団体に寄付しており、海洋プラスチックゴミの除去や海藻を植える海の緑化活動に取り組んでいる。検索エンジンの画面には、Ekoruを使うことで抑えられているCO2の排出量などが表示され、こちらも利用者の貢献度を可視化するデザインが取られている。
<広告が表示されない検索エンジン Neeva >
元Googleの開発・広告部門担当者と元YouTubeのマネタイズ部門の担当者が立ち上げたサービスであり、2021年にサブスクリプション型の有料版としてスタートし、現在では無料版もローンチされている。既存のビジネススキームである広告収入ではなく、有料のプレミアムプランから収入を得るサブスクリプション型のビジネスモデルの実現によって、広告が一切提供されないことが特徴だ。広告が表示されないだけでなく、Neevaは利用者の個人情報が第三者に提供されない仕組みにもなっており、具体的に利用者のデータがどのように使われているか、サイト内で詳細に明示している。その点、プライバシー保護の観点からも安心な検索エンジンであると言えよう。
Neevaの創業者でCEOのSridhar Ramaswamy氏は、「現行の広告のビジネスモデルでは、ユーザー視点で広告を表示しないことや個人に関するデータを保護することが難しいと感じていた」と言う。また生み出された富を正しく共有したい、という想いがあったことからも、新たな形の検索エンジンの提供を開始したそうだ。インターネットを使う中で、広告をわずらわしく感じたことのある人は、少なくないだろう。本当にたどり着きたい情報にスムーズにアクセスできるという点からも、ユーザー目線のサービスであると言えるのではないだろうか。
なお、2022年3月現在ではまだアメリカ国内のみの展開となっており、日本で利用できるようになるのはもう少し先になりそうだ。
検索エンジンから、ソーシャルグッドにつながる行動を選択してみよう
これまで、なんとなく提示された検索エンジンを当たり前に利用し、その検索エンジンを変えるということすら考えたことのない方も多いのではないだろうか。何気なく、けれども毎日の生活の重要なツールとして使っている検索エンジン。それをなんとなくのまま使うのではなく、社会にとって良いものを「選択」してみることも、ソーシャルグッドにつながる第1歩になりそうだ。
文:大沼芙実子
編集:篠ゆりえ