よりよい未来の話をしよう

輝くクリスマスの裏側で。ホリデーシーズンに環境問題を見つめ直そう

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12月25日、もうすぐ多くの人が楽しみにしているであろうクリスマスがやってくる。大きなツリーに美味しそうなケーキ、鮮やかなイルミネーションに大事な人に渡すプレゼント。1年で1番、街中がキラキラと輝く季節だろう。

この季節は「クリスマス商戦」「クリスマス消費」に向けて企業が一斉に動く時期でもある。ギフトだけで見ても日本ではクリスマスの市場規模は約5800億円とも言われている。バレンタインの1520億円や母の日の4300億円など、他のイベントと比べても群を抜いてものが売れる。(※1)さらに、日本だけではなく、海外でもホリデーセールが開催されるなど、経済的な動きが活発である。

※1 参照:矢野経済研究所「ギフト市場白書2020」

鮮やかなクリスマスの裏側で

そんなクリスマスだが、ものが多く売れるということは、たくさんものが作られているということの裏返しだとも取れる。そして必ずしも売れるとは限らないそれらの商品は「ロス」となってしまう可能性もあるのだ。例えば、スーパーやコンビニで大量に並ぶクリスマスケーキやチキン。必死に在庫を売ろうと道に出て販売を行うお店のスタッフの様子や、毎年25日の夜中には値引きされた状態でお店に残っている商品を見かけるだろう。

さらに、この季節ならではの商品といえばクリスマスツリーも挙げられる。日本では造木のクリスマスツリーが一般的だが、欧米を中心に海外ではクリスマスツリーとして本物のもみの木を使用する地域も数多く存在する。アメリカだけでもクリスマスツリーの市場規模は数千億円にものぼり、ワンシーズンに2500万~3000万本もの生のクリスマスツリーが出荷されている。(※2)一見、植物の生産が盛んに行われるきっかけにも見えるが、問題はクリスマスが終わった後である。クリスマスツリーとして購入されたもみの木は役目を終えるとまだ葉っぱが青いうちに、捨てられ、燃料として利用されることが多い。クリスマスツリーは切り株の状態で販売される。そのため土に植えて根を張らせ、育てるといった使い方は一般的ではなく、各家庭ごとに毎年買い替えられる。買われてもいずれは廃棄され、買われなくても切り株となってしまうことで自然な状態よりは短命となってしまうのである。

その他にも、イルミネーションには多くの電力が使用されているし、この季節にはプレゼントのラッピングに使われる梱包材の消費が増えたり、ものの配送が増えることによって車などの稼働も多くなる。このようにクリスマスの裏側には、経済だけではなく地球環境に与えられる大きな影響も潜んでいるのだ。この季節を彩る商品や街中を盛り上げる装飾の数々は、見方を変えると私たちの生活や環境にじわりじわりと負荷をかけてくるものでもあると言えるのかもしれない。そんな状況を問題視し、近年ではさまざまな企業や地域がクリスマスの環境負荷を減らす取り組みに乗り出している。

※2 参照:Gigazine 「「クリスマスツリー」の市場規模はアメリカだけで数千億円、その実態とは?」
https://gigazine.net/news/20201207-economics-christmas-trees/

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クリスマスケーキを残さない

クリスマスシーズンの食品ロスは、恵方巻きや土曜の丑のうなぎなどと並んで近年、社会問題となっている。各家庭での消費量には限りがある一方で、企業にとっては重要な商戦となる季節商品。過剰な在庫が生まれがちだ。

そんななかで、企業が取り組み始めたのが完全予約制での生産である。当日の駆け込み購入なども見込めるこの季節、かつでは店頭で多めの在庫を抱えて置くスタイルが一般的であった。しかし近年は需要に見合った販売を促進するため、予約制での販売を行うお店も増えているのだ。例えばコンビニ大手のファミリーマートは2019年よりクリスマスケーキを完全予約制で販売している。ケーキ以外のチキンなども予約制を取り、季節商品のフードロス削減を目指しているという。同様の戦略を取った2020年の土曜の丑の日では、店舗での廃棄金額は約80%の減少(※3)となり、この取り組みには大きな効果があると考えられる。

また、同じくコンビニ大手のローソンでもクリスマスケーキの予約制に取り組んでいる。ローソンでは昨年、余剰のケーキやクリスマス向けのお惣菜などをこども食堂等の施設に寄付するといった取り組みも行なっており、食品ロスの削減に取り組んでいるようだ。

今年も、すでに動き始めているクリスマスケーキやクリスマスメニューの販売。上記のようなコンビニでも今年もまた予約販売を強化する取り組みが行われている。食品ロスの問題は、個人や家庭の廃棄よりも企業による廃棄量が多くを占めていることはよく知られている。消費者だけではどうにもならない問題において、企業の率先した動きがロス減少の鍵を握っていると言えるだろう。

※3 引用:ファミリーマート「「食品ロス削減」に向けて、季節商品の完全予約制2年目へ2020年土用の丑の日(うなぎ関連商品)の販売結果について~実施前と比較して食品ロスは約80%減少~」
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2020/20200824_04.html

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自然の光をイルミネーションに

さらに、企業だけではなく、街や地域としてクリスマスのエコな活動に取り組んでいる人々も存在する。例えば北海道の札幌市では日本で1番最初に始まったとされるイルミネーション「さっぽろホワイトイルミネーション」(※4)が開催されている。毎年11月の下旬から2月中旬まで開催されるこのイベントでは、83万個もの電球が街を彩る。日本三大イルミネーションの1つとしても知られている大規模なイベントだ。

それだけの大規模なイルミネーションであれば電力の消費も激しそうである。しかしこのイベント、実は「エコ・イルミネーション」としても知られている。白熱電球に比べて消費電力が少ないLEDの使用はもちろんのこと、廃食油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料を会場内の電力として使用している。さらに、イルミネーションによってどうしても削減できない分の電力消費の埋め合わせとして「カーボン・オフセット」(※5)にも取り組んでいる。

また、千葉大学の学生によるソーラーイルミネーションも環境を意識したイルミネーションのひとつの例だろう。2011年から開催されているイルミネーションで、クリスマスの時期に合わせて開催されている。期間中に学生が朝からソーラーパネルを屋外に設置し、日没後に日中に集めた太陽光で夜間のイルミネーションを灯すのである。このように、何気なく見ているイルミネーションも裏側では環境を意識した取り組みが行われ始めているのだ。楽しい雰囲気のクリスマスのなかにも、フードロスや電力の問題など、環境を意識した流れができつつある。

※4 参照:第41回さっぽろホワイトイルミネーション
https://white-illumination.jp/ecoaction/

※5 用語:日常生活や経済活動を通して排出される二酸化炭素などの温室効果ガスについて、削減しようと努力をしたうえで、どうしても削減できない分の全部または一部を、それに見合った植林・森林保護・温室効果ガスの削減活動などへの投資によって、埋め合わせすること。

地球にとっても優しいクリスマスに

ここまで、企業や団体の活動を紹介したが、消費者となる私たちにもできることがある。それは買いすぎないこと、買ったら余らせないことである。買い物の基本と言えば基本なのだが、気分も盛り上がるこの季節、ついつい余計なものまで買ってしまうという人も多いのでは。先述したクリスマスツリーであれば、人工ツリーでもなく、使い捨てのモミの木でもなく、最近ではレンタルツリーという選択肢もある。プラスチックを使用した人工ツリーがどんどんと増えたり、すぐに焼却されてしまうモミの木が増えるよりも、1度生産された木を長く使うという選択ができるのである。

私たちのこうした選択が、企業をより強く動かすきっかけにもなる。せっかくのクリスマス、私たち1人1人にとっても、地球にとっても優しい時間にするために、今一度クリスマスの消費を見直してみるのはいかがだろうか。


文:白鳥菜都
編集:篠ゆりえ