よりよい未来の話をしよう

「SDGs 17.パートナーシップで目標を達成しよう」とは?身近なパートナーシップの在り方を見直してみよう

恋人や配偶者のことを、「パートナー」と呼ぶ人に出会うことが増えた。関係性に上下を感じさせないフラットな呼び方として、または性別を限定しない呼び方として広まりつつある。かつてより、パートナーを他者として尊重し、関係性を見直そうとする風潮も生まれてきている。
さらに、「パートナーシップの問題」は、上に挙げたような恋愛・結婚にまつわるものだけとは限らない。職場における同僚や会社、取引先とのパートナーシップ、政治や経済の世界では国同士のパートナーシップまで広げて考えることができる。

この記事では、これまでに「あしたメディア」にて掲載してきた記事を振り返りながら、「パートナーシップ」について考えてみたい。

SDGsにおける「パートナーシップ」

「パートナーシップ」とはひと言で言うと協力関係のことを指す。組織同士や、個人同士、あるいは組織と個人など、複数の人が協働して何かに取り組むときに使用されることが多い。
ここで、SDGsに話を移したい。SDGsが17のゴールから構成されていることは、すでに多くの人が知っているだろう。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」…と具体的なゴールが並べられ、そのためにクリアされるべきより詳細なターゲットが設定されている。そんななか1つだけ、ゴールというよりは手段とも言えるような項目がある。「17 パートナーシップで目標を達成しよう」。何を達成するのかではなく、どのように達成するのかが述べられている。ここでキーワードになっているのが「パートナーシップ」である。

画像出典:外務省国際協力局地球規模課題総括1課「持続可能な開発目標(SDGs)達成に 向けて日本が果たす役割」p.2 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202206.pdf

SDGsのゴールはどれも、ひとつの企業やひとつの国だけが動いただけで達成できるものではない。危機的な状況が地球全体に迫っており、解決のために世界レベルの目標数値が設定されている。政府、民間企業、教育機関、そして個人などあらゆるステークホルダーがパートナーシップを結んで、大小の問題に取り組む必要がある。そう言った意味で、パートナーシップが重視されている。

では、私たち個人が日々の生活のなかで、パートナーシップを活かすことのできる場面にはどんなものがあるのだろうか。

ビジネスにおける「パートナーシップ」

実は働いている人にとって、最も身近かつチャンスが多いのは仕事の中で課題解決のパートナーになることではないだろうか。具体的には以下のような取り組みや、企業にできることの例がある。

明治が取り組む「持続可能なカカオ」

お菓子メーカーとして有名な株式会社明治が人権問題と環境問題に取り組むパートナーになっている例だ。カカオ産地では、労働力をまかなうために貧困層の児童労働が盛んに行われており、労働者となった子どもたちはさらに貧困から抜けだせなくなるという悪循環が生まれている。また、拡大するカカオ需要により、カカオ農場の拡大に伴う森林破壊が進んでいる。これらの問題の解決のために明治は、自然を保護しながら農家の収入を安定させることのできる「アグロフォレストリー」の取り組みをはじめとする、持続可能なチョコレート生産を推進している。カカオの農家や、チョコレート生産者と良好なパートナーシップを結ぼうとしている事例と言えるだろう。

ヴィーガンに優しいレシピ・ECサイトを運営するブイクック

完全菜食主義社=ヴィーガンのライフスタイルは、動物由来の食品を避けることから環境問題やアニマルウェルフェアの問題を解決するのに寄与するとされている。一方で、国内ではヴィーガン対応のレシピやメニューが少ないこと、価格が高いことによってそのライフスタイルを継続したくても継続しづらいことなどが課題としてある。それらの課題解決に真正面から取り組むスタートアップ企業・ブイクック社の事例を紹介している。こちらも、レシピ提供者とのパートナーシップにより、消費者の課題解決に取り組む例と言える。 

「SDGs課題の解決を事業と繋ぐなら?」を考えるBIGLOBEワークショップ

直接的に事業として動かす以外にも、企業の立場からSDGs課題を解決するためのパートナーになることはできる。その1つの手段としてBIGLOBEにて実施されていたのが、「SDGsワークショップ」だ。部門をまたいで社員が集まり、SDGsを基礎から学び、自部門の業務と結びつけてどんな活動ができるのか考えプレゼンする。業務時間を使用して知っているようでよく知らないSDGsについて考えてもらう時間を作ること、SDGsという世界の問題を自分事化し事業と絡めた解決方法を探る機会を提供してもらうことも、企業が従業員と社会とのパートナーシップを結んでいくために重要なプロセスの1つなのかもしれない。 

生活における「パートナーシップ」

もちろん、ビジネスだけではなく日々を共に過ごす人々とのパートナーシップも私たちにとって身近な課題である。単に「仲が良い」関係でいられるかどうかといった問題だけではなく、結婚や育児などの観点からさまざまなパートナーシップ課題が浮かび上がってくる。

良好なパートナーシップの“当たり前”にしたい「性的同意」

性的同意とは、性に関するコミュニケーションの際に同意をとることだ。「恋人なんだから」「結婚しているのだから」と言った考え方はもはや時代遅れである。日本において、同意のない性交の事例は少なくないが、加害者側が「同意がなかった」と認識していない場合もある。明確な性的同意を前提とすることで、不要な傷つきを減らすことができる。性的なパートナーとの関係を安全に保つためにできる取り組みの例である。

2022年11月から東京全域でパートナーシップ宣誓制度スタート

婚姻の平等もパートナーシップというキーワードで語られる重要なテーマの1つだ。2022年11月から東京都全域でパートナーシップ宣誓制度が導入され、戸籍上の性別が同性のカップルのパートナーシップを証明するための制度ができた。結婚制度と完全に同じ制度ではないものの、少しずつ同性カップル間のパートナーシップを支えるための社会的な仕組みが動きつつある。

育休取得率アップも企業が鍵を握る

子育て中のカップルにとっても、パートナーシップは大きな課題となる。特に日本では男性の育児休業取得率が低く、2022年月のデータではたったの13.97%。子育ての負担が女性だけに偏ることは、女性のキャリアの中断に繋がったり、女性役職者が増えずジェンダーバランスが崩れた組織になってしまうことに繋がりかねない。この問題の解決には、企業の仕組み改善はもちろん、男性個人の意志と、それが尊重される環境を整えることが重要である。

SDGsの目標達成のためには、「1人ひとりが意識を変えることが重要だ」とよく言われる。それは間違いないと思う。一方で、社会課題の解決においては、個人の意識だけではどうにもならないことが多い。問題に気付くきっかけをくれる誰か、一緒に問題を考えようと言ってくれる誰か、バカにせずに共に解決のために動こうとしてくれる誰か。そんな風に複数の組織や個人がパートナーシップを結び、個人の意識・制度の改革・社会の感覚のアップデートなど、包括的に前進していくことが最も重要なのかもしれない。

 

文:白鳥菜都
編集:おのれい