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きっかけと知識をくれるのが会社だったら? BIGLOBEのSDGsワークショップ参加者鼎談

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ビッグローブ株式会社(以下、BIGLOBE)では、2021年8月より仕事とSDGsを結びつけるための社内ワークショップ「SDGsワークショップ」の取り組みを行なっている。このワークショップでは、社内の部門ごとに部長・グループリーダークラスの社員が集まり、SDGsを基礎から学び、自部門の業務と結び付けてどんな活動ができるのか考え、プレゼンテーションを行う。(ワークショップレポートはこちら

他の研修とは一味違った、SDGsという切り口でのワークショップに社内での反響も大きいというが、実際にワークショップに参加した人はどのように感じたのだろうか。今回は、2021年8月のワークショップに参加した基盤本部の田口敏宏さん、南雄一さん、そして当日にはコメンテーターを務めた基盤本部本部長の鴨川比呂志さんにワークショップを振り返ってもらった。

忙しい社員を集めてでもSDGsワークショップをやる理由

SDGsが国連で採択されたのは2015年だが、日本国内で大きく取り沙汰されるようになったのはついこの数年のことだ。日々忙しく働く人々にとっては、詳しく勉強する暇もなく急激に広まり始めたSDGsは身近に感じにくいという人も多いのではないだろうか。そんななか、ワークショップに参加した3人はどのような印象を抱いたのだろうか。

田口さん:SDGsという言葉は知っていたのですが、具体的な内容は知らなかったので、ひとつずつ目標を読んで理解できた重要な機会になりました。たとえば「安全な水とトイレを世界中に」という目標のような一見BIGLOBEには関係なさそうなものでも、BIGLOBEの事業と結びつけたらどうなるかなって一生懸命考える時間になりましたね。

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田口さん

南さん:他の人がこんなことを考えているんだって知る機会にもなったので有意義な時間でしたよね。実はワークショップをやっている時期って基盤本部では割と大きなプロジェクトが進んでいてスケジュールも忙しかったので、みんなちゃんと参加できるのかなと不安だったんです。でも、講師の先生をはじめとして熱意がある場だったし、鴨川さん自ら時間を割いて出てくださったことで気が引き締まったようにも思います。
個人的には、僕らの世代ってそんなにSDGsを深く勉強できていない人が多い世代かなと思っています。僕は子どもがいるんですけど、子どもの教材にはSDGsって言葉が出ていたり、当たり前にSDGsという言葉を口にしているんですよね。僕も一緒に勉強したりもしたんですけど、今回のワークショップは理解も深めやすい形式でちょっとは子どもたちのレベルに近づけたかなって感じられました。

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鴨川さん

鴨川さん:私も、幹部としてというよりも私自身が勉強したいというのが真っ先にあって、メンバーの1人として参加させてもらいました。南さんもおっしゃっているように業務が忙しい中で働き盛りの人を集めることになったんですけど、それでもやる意義があったと思います。SDGsって難しくて特別なことではなくて、呼吸をするように普通のこと・当たり前のこととしてやっていかなければいけないと思うんですよね。

田口さん:そうですよね。新しいサービスとか企画を作る時にも、今までは「お客様のために」という意識だけだったんですけど、「社会貢献のために何ができるのか」をワークショップを通じて考えるようになりました。同時に、働く人のモチベーションも変わりそうだなと感じました。

見えなかった個人の思いを知る場所に

田口さんと南さんは発表者として、ワークショップ当日にはプレゼンテーションを行なっている。それぞれの発表にはどんな思いが込められていたのか振り返ってもらった。

南さん:ワークショップと同時期に「南さんはなぜBIGLOBEで働いているんですか?」と同僚に聞かれる機会があって、改めてなんで自分がここで働いているのか考えていました。それで、まず自分はインターネットが大好きで、その利便性を全ての人に享受して欲しいと思ったんです。そういう個人的な気持ちから今回の発表を考えてみました。
そして、それはSDGsの「全ての人を取り残さない」という点にも関わるんじゃないかなと思うんです。現時点ではインターネットって経済的な問題だったり、ネットが怖いとか難しいという心理的な問題、あとは地理的な問題などで一部の人には行き渡っていないんですよね。そこを我々インターネットサービスプロバイダー(以下、ISP)業者は解決できると思います。

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南さん

南さん:具体的には、経済的な問題にフォーカスして、ID単価0倍という目標を出しました。どういうことかというと、本来インターネットは利用量が増えると維持コストも上がるので、利用量が1.4倍なら価格も1.4倍になってしまいます。でも、そこを事業上の目標では、利用量が増えてもお客様への請求額が1.0倍にできるように工夫しています。さらにプラスして個人的な思いとしては、0倍、つまり個人のお客様から料金をいただかなくても提供できるインターネットサービスにできたらいいなと思っています。1.0倍でも難しいので、日々心が折れそうになりながらやっているのですが(笑)。でも「いや、0倍を目指しているんだから1.0倍くらいやらなきゃ」と心のうちで思っているので、いい機会だと思ってプレゼンテーションの場で発表しました。

田口さん:南さんの発表を聞いて、すごく共感できたんですよね。できたら素晴らしいなって僕も素直に思いました。それに、発表後の質疑でも否定的な意見は全く出ず、「そういう個人的な思いを言ってもいいんだ」、「そういう意見を仕事に織り込んで自分のやりたいことを達成していっていいんだ」ということが他のみなさんにも伝わったんじゃないかなと思いました。

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田口さん

田口さん:私の発表も、南さんの発表に重なる部分が多かったと思います。具体的には、賃貸のマンションに一括でインターネットを導入するサービスの提案をしました。古いマンションなどでは、インターネットが完備されていないところも割とあるのですが、個人で導入しようとすると金銭面であったり、手続きの複雑さや時間がかかったりと、大変なことも多いんですよね。そういった格差を埋めるためにも、ISPを提供できたらいいんじゃないかなと思って提案しました。

南さん:私のプレゼンは枠組みが大きな内容で、ふわふわとした話だったと思うのですが、田口さんの発表は地に足がついた話でより納得感があったと思います。でも向かっている方向が同じだと分かったので安心感がありましたね。

鴨川さん:お2人の発表もそうですが、自分たちが普段やっている業務が社会の役に立っているという視点に改めて立てたのも良かったですよね。お金儲けのためだけではなくて、僕らがやっていることは社会インフラだと考えることができた。その切り口から、SDGsについても自然に話ができるようになっていきそうだなと感じられました。
そして、みなさんが普段どんなことを考えているのかだったり、みなさんが自分の業務にプライドを持って取り組まれているんだなってことも分かりました。
このワークショップでの発表を元に、部門の目標を立てることになっていたのですが、みなさんの発表のおかげでスムーズに立てられました。手前味噌ですが、すごくいい目標ができたと思います(笑)。

今やインターネットが生活の中で必需品となっている人も多いだろう。しかし、3人が語るようにインターネットの利用状況には格差があるのも事実である。これによって情報格差が生まれ、さらなる経済格差が広まっていく。その点において、ISP事業者であるBIGLOBEが、SDGsの観点を持って事業に取り組むことで、情報格差や経済格差を少しずつ埋めていくことにつながるのではないだろうか。

「きっかけ」と「知識」でSDGsをもっと広げる

ここまで、SDGsワークショップを振り返ってもらったが、今回の取り組みを机上の空論にしないためには今後どのようにしていくのが良いのだろうか。BIGLOBEの現在地、そしてこれからについて鴨川さんが語ってくれた。

鴨川さん:BIGLOBEは、事業面ではSDGsに関することによく取り組んでいると思います。でも、個人を見るとどうでしょう。まだまだできることがあるんじゃないかなとも思います。例えば、電気をつけたまま部屋を出てしまう人がいるとか、そういう場面を見た時にはまだまだ「当たり前」のことができていないんじゃないかなと思います。その他にも、今までは「便利だな」くらいの気持ちで見ていた自動販売機の見方が変わったのは、このワークショップのおかげでもあります。
SDGsにもっと取り組んでいくには、きっかけあるいは知識が必要ですよね。せっかく部長クラスの人たちがみんな有意義だったと言ってくれているので、このワークショップも社員全員が受けるくらいまで広めていきたいと思っています。知識のレベルが違う状態で見直そうと言ってもなかなか難しいので、会社としても全員の知識を同じレベルまで上げられるようにしていきたいなと思っています。

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鴨川さん

SDGsは、現時点では個々人によって、そして企業によってその向き合い方に大きな格差がある。しかし、SDGsの17目標は一部の人だけが取り組んでも解決しない。できる限り多くの人を巻き込み、さまざまな観点からの知識や技術の組み合わせによって解決されていくものであろう。

最後に鴨川さんが語るように、ソーシャルグッドな視点を持つためには何かしらのきっかけが必要だ。今回のワークショップのように、企業が積極的にその機会を提供していくことで、今後、国内でもよりSDGsの動きが加速していくのかもしれない。

取材・文・写真:白鳥菜都
編集:篠ゆりえ