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女性だって“ハンサム”なライブができる 俳優・清水くるみさんインタビュー 

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「ハンサム」の概念は、男性だけに使われるものだろうか。

いや、決してそんなことはない。2022年、国際女性デーである3月8日に、芸能事務所アミューズは女性キャストだけで構成するライブを開催する。その名も「AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE "HANDSOME" is not just for men.」(※1)。同社はこれまで、男性キャストが歌やダンス、ミュージカル、フィルム等を繰り広げるハンサムライブを長年行ってきたが、今年は初めて女性キャストだけで構成するライブを開催することとなった。

ジェンダーの問題が根強く叫ばれる日本において、女性の活躍の幅は確実に広がってきており、キャリアの面でも様々な活躍が見られる。今回の「AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE "HANDSOME" is not just for men.」に出演し、ご自身も俳優として15年のキャリアを歩む清水くるみさんに、ご自身のキャリアと、ハンサムライブにかける想いについて伺った。

※1「AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE"HANDSOME"is not just for men.」
https://www.amuse.co.jp/topics/2022/01/apshwl2022.html

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お芝居は数学ではなく国語。正解が1つじゃないから面白い

2007年、「アミューズ30周年全国オーディション」でグランプリを獲得し、芸能界に入られました。元々芸能界に関心があったのでしょうか?

 小さい頃からダンスを習っていて、その影響で宝塚歌劇団に入りたいと思っていました。周りの友人が、宝塚を受けるときに履歴書に経歴を書けるようにとミュージカルのオーディションを受けていたので、私もオーディション雑誌を見ていたんです。そしたらその表紙がたまたま、アミューズの全国オーディションだったんですね。最終審査まで行ったら神木隆之介くんに会えると書いてあって。「え、それなら神木くんに会いたい」と思って受けました。とても不純な動機です(笑)

宝塚に関心があったのですね。そもそも、人の前に出る仕事に関心があったということでしょうか?

そうですね、小さい頃から人前に立って何かをするということが好きでした。親が困るくらいおてんばだったので、「このおてんばを、何かいい方向に活かせないか」と親が考えてダンス教室に入れてくれ、ダンスもずっとやっていました。性格も男勝りなので、幼稚園の周りのお母さんたちに「くるみちゃん、宝塚の男役が似合いそう」みたいなことよく言われて、調子に乗って小学校の卒業文集に「宝塚に入りたい」と書いていましたね。

清水さんのパワーの源は前から気になっていましたが、小さい頃からなんですね。俳優業については、そもそもどんな風に捉えていたのですか?

実際のところ、「アミューズ30周年全国オーディション」でグランプリをもらったとき、お芝居をする考えはなかったんです。グランプリをもらったのはいいけれど、そのステージ上で「え、これからどうしよう」って思っちゃって。歌ったり踊ったりすることは好きだけれど、別にお芝居をやりたいわけではないなという気持ちが最初はありました。ですが徐々にお芝居の仕事も始まると、少しずつ面白さが分かってきたんですよね。私、理系なんですけど、お芝居は理系のように正解が1つしかないのではなくて、国語みたいな正解がいくつもある世界だなと気づいて。数学的な脳みそでこの仕事をやってたら、自分も見ている側も楽しくないなと思い、 思考回路を変えたところからすごく楽しくなりました。

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同世代の俳優と切磋琢磨した、『桐島、部活やめるってよ』

清水さんのキャリアにおいては、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)が大きな転換点だった印象があります。改めて、清水さんにとってこの作品はどんなものだったのでしょうか。

経験を積み重ねてきたいまは、演技をするにあたって「こうしたらこう見える」など見せ方をある程度頭で考えるようになってきたのですが、『桐島、部活やめるってよ』のときは良い意味でも悪い意味でも、感情のまま演技をしていたと思います。現場の空気も「みんなこの作品で売れるぞ」みたいな勢いがあって、あとにも先にもない現場の一体感がありましたね。共演者も同世代で熱い方ばかりでしたから、撮影が終わった後もみんなで芝居論を語ったり、現場が終わってみんなでご飯食べてるときにもいきなりエチュード(※2)が始まったり、お芝居にみんなで向き合った印象があります。これほど多くの同世代と共演するのも初めてだったので、「こんなに熱い気持ちでお芝居に取り組んでるんだ。私ももっと熱くならないと!」と刺激を受けましたね。

舞台にもたくさん出演されていますが、初出演は『ロミオとジュリエット』(2013年)になると思います。舞台についてはどんな印象を持っていたんですか?

舞台自体には抵抗はなかったのですが、『ロミオとジュリエット』はミュージカルなので、実は最初はあまりやりたくなかったんです。小さい頃はただ歌うことが好きで、上手い下手を考えずに歌っていたのですが、大人になってからは「私そんなに歌うまくないな」と感じて歌うことが恥ずかしくなっちゃって。そんな時期に、『ロミオとジュリエット』のオーディションの話がきたので、最初は断りました。ですがマネージャーさんからの後押しもあり、オーディションを受けたらまさか、受かってしまって。
その時期、『桐島、部活やめるってよ』などお芝居でしっかりと魅せる作品をやっていた後でもあったので、お芝居をしているときにいきなり歌い出すミュージカルはまた性質が違って、思考回路を変えるのも少し大変でした。でもやってみると、音楽は感情を助けてくれるもので、大切なものだなと改めて感じるようになりました。たとえば、曲頭で感情が入りきらないときは、感情が乗らずにただ歌うだけになってしまいそうですが、それでもメロディーが泣かせてくれるので、逆に感情が音楽に助けられて入っていくこともあります。それが面白いですね。

映像作品でも舞台でも活躍され、進化され続けている印象を受けます。今後やってみたい仕事はありますか?

映像作品をたくさんやりたいですね。とくに韓国ドラマや韓国のコメディみたいな作品に出たいです。ヒロインの親友の、ちょっと面白いキャラクターみたいなのをやりたい(笑)。この人がいなくても話は進むけれど、でもこの人がいるからこそ作品が賑やかになるみたいな、そんな役をやりたいですね。

※2 即興劇。場面設定だけがあり、役者がその場でセリフや芝居を考えながら行う。

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女性たちが本気で魅せる、本格的なミュージカルライブ

3月8日には、「AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE "HANDSOME" is not just for men.」が開催されます。開催を前に、どんなことを感じていますか?

昔から男性が出演するハンサムライブを見ていて、「女性もやりたいのにな」という気持ちはありました。今までなかなか実現してこなかったのですが、やっとこういうライブができる世界になってきたんだなと感じています。社会の流れが変わり、日本でも「女性がメインの作品も見たい」という風潮が出てきたからこういう企画ができたのだと思いますし、それに参加できることをすごく嬉しく思います。

世界レベルで女性のエンパワメントが主流になっている中で、今回のライブはすごく時代に合っていると思います。「ハンサムの概念を覆す女性たちのライブ」という、今回のライブのコンセプトについて、考えていることはありますか?

こういったライブって、技術で魅せるというよりかは、ファンの方への感謝の気持ちを込めて様々なコンテンツをやる“感謝祭”の意味合いが強く出る場合が多いと思います。でも今回のハンサムライブは、それだけでなく本格的なミュージカルライブなんです。だからしっかりと、高度な技術を見せたい気持ちが強いです。ミュージカルの歌って、圧倒的に男女のデュエットが多いんです。そんな背景がある中で、女性がメインの作品や女性同士の恋愛を描くような作品も増えてきています。今回私も『FACTORY GIRLS』という、女性たちが立ち上がり社会に抗っていく話の歌にも出るのですが、そういった作品が増えてきたからこそできるライブなんだなということを実感してます。

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今回のライブは国際女性デーの日に開催されます。ご自身の日頃の生活の中で、ジェンダーの問題を意識することはありますか?

周りの人を見ていて感じることはありますね。現場でも、女性の方が何か違和感や不満などがあっても言わなかったりとか、業界としてまだ男性優位になってしまうような印象を受けることはたまにあります。たとえば、男性がやって許されることも、女性だと許されないとか。

そのほかにも、いま関心のある社会問題などもありますか?

色々とありますが、SNSで誰でも発信がしやすい世の中になった分、注目を集めることに重点が置かれ、過激な発言をする人が出てきている印象はあります。流石にやりすぎじゃないかと思うこともあります。いじめなのではないかと思ってしまいそうな話も聞いたことがあり、いじめはダメなんて小学校でも習っているはずなのに、大人になって繰り返されていることに悲しい気持ちになります。そんな陰湿なやり方で人をいじめるのではなくて、もっとサバサバ生きようぜって思うことがよくありますね。

「サバサバ生きよう」はキーワードかもしれませんね。最後に、今回のライブに寄せて、様々な表現ができる立場として社会に対して発信していきたいと考えていることがあれば、お聞かせください。

今回のライブは女性だけで構成される内容ですが、女性たちが団結することって、まだまだ日本では主流ではないですよね。どうしたら日本の考え方が変わるのか、すぐに答えは出ないですが、とりあえず私たちのライブを観に来てほしい。私たちも本気でやっているので、「女性たちが本気出したらここまでできるんだ」ということを見て欲しいなって思います。

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3月8日開催の「AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE "HANDSOME" is not just for men.」は、オンラインでも生配信される予定。「女性だけのライブ」が成立した時代変化にも思いを馳せてみると、より一層ライブを楽しむことができるかもしれない。
映像作品や舞台を中心に、幅広く俳優として活躍する清水さん。そんな進化し続ける清水さんが、時代の後押しを受け“いま”だからこそ実現する「AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE "HANDSOME" is not just for men.」ではどんなふうに私たちを魅了してくれるのだろうか、楽しみで仕方がない。

清水くるみ
1994年生まれ。2007年、芸能事務所アミューズの30周年全国オーディションで6万5368人の応募者のなかからグランプリに選ばれる。翌2008年から俳優として活動を開始。ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍する。過去の出演作に『桐島、部活やめるってよ』(2012)、『ジンクス!!!』(2013)、ミュージカル『ロミオとジュリエット』など。2022年には映画『わたし達はおとな』の公開を控えている。

<AMUSE PRESENTS SUPER HANDSOME W LIVE "HANDSOME" is not just for men.>
日程:2022年3月8日(火)13:00/18:00 ※開場は開演の1時間前
会場:Bunkamuraオーチャードホール
配信日時:当日18時配信スタート
詳細:https://www.amuse.co.jp/topics/2022/01/apshwl2022.html


取材:中井圭(映画解説者)
文:大沼芙実子
編集:白鳥菜都
写真:服部芽生