よりよい未来の話をしよう

サ活は環境破壊?SDGsの観点からみるサウナ

f:id:tomocha1969:20210902093426j:plain

おじさん文化とは言わせない!いま若者にも人気の「サ活」

最近、周囲の人に「趣味は何?」と聞くと、かなりの頻度で挙がる回答がある。サウナだ。従来サウナといえば、町に1つはある大きい煙突のもと運営されているちょっと古めかしい銭湯に、おじさんたちが集っては黙々と汗を流す場……という印象であった。

だが、今では様子がまったく違う。
2019年にはサウナをテーマにしたドラマ「サ道」(テレビ東京)が放送され人気を博した。Instagramのハッシュタグ「#サウナ」の投稿数は39.3万を突破し、「サウナに行きました」報告で溢れている。巷(ちまた)にはサウナ好きの女性を指す「サウナ女子」という言葉も生まれるなどその勢いはとどまることを知らない。

そもそもサウナは、太陽の恩恵の少ない北欧の風土の中で、フィンランドのフィン族が厳しい寒さと労働の疲れを癒すために生活の知恵として生み出した自然健康法だ。今日では、北欧をはじめ、ヨーロッパやロシアなど寒さの厳しい地域に受け継がれ発展している。日本には1963年頃に上陸し、今や国内のサウナ愛好家は1000万人を越すほどと言われる。

文明の発展により体を動かすことが少なくなった現代人にとって、汗をかく行為は健康維持の観点から重要であり、その中でもサウナは疲労回復、肥満解消、ストレス発散など多数の効用を得られると話題なのだ。

一方で、環境に負荷をかけている側面も?

大人気のサウナだが、いくつもの種類があることを知っているだろうか?
サウナには、大きく分けて乾式サウナと湿式サウナが存在する。日本でいう「サウナ」は、一般的には乾式サウナを指す。乾式サウナは高温低湿が特徴であり、室温は平均80~100℃、湿度は5~10%に設定されている。
乾式サウナの中で1番ポピュラーなのは「ドライサウナ」。高温のため汗をかいてもすぐ蒸発し、不快感が残りにくい。水風呂と併用することで「ととのう」のはこのサウナである。
次点で普及しているのが「遠赤外線サウナ」だ。平均室温は65~70℃と「ドライサウナ」と比較すると下がり、遠赤外線を利用することで身体にかかる負担を抑えられる。
対して湿式サウナの代表格は、蒸気をサウナ室内に充満させた「スチームサウナ」であろう。平均室温40~60℃と低めの設定で、じんわりと温まることができる。

日本のサウナ施設の多くは上記のサウナを導入しているが、これらの共通点は電力・ガスなどを多く使用してサウナの室温を維持しているということだ。サウナ施設は1度に広い空間を温めなければならないため、電力・ガスで稼働するサウナストーブを使用することが効率的だ。

しかし、これらのエネルギーを使用することは、二酸化炭素の多量排出にもつながる。2021年4月に菅総理大臣によって、政府の地球温暖化対策推進本部の会合で、2030年の温室効果ガス排出量目標を2013年度比46%削減とする、と表明されたことは記憶に新しい。従来型のサウナの構造は、近年の「脱・地球温暖化」の流れに逆らうことになる。

加えて、サウナで汗をかいた後には水風呂で「ととのう」のが定石だが、そこでは多くの水が消費される。サウナの楽しみ方が多様化する一方で、環境への負荷についても考えを巡らせる必要があるのではないだろうか。

環境に配慮された新しいサウナの形

f:id:tomocha1969:20210902094322j:plain

地球環境保護やSDGsが叫ばれる中、どうにか折り合いをつけてサウナを楽しむことは出来ないのだろうか?筆者から紹介したい方法がある。

それは、テント式サウナを利用して川や湖のほとりで行うサ活だ。
テント式サウナでは薪ストーブの上にサウナストーンを置いて長時間熱する。「あれ?薪を燃やすってことは結局二酸化炭素を排出しているんじゃないの?」と思った方もいるかと思うが(筆者もそのように思った)、薪は電力・ガスなどとは大きく異なる点がある。薪はその生成過程で二酸化炭素を吸収するのだ。これはカーボンニュートラルという考え方で、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を意味している。

林野庁ホームページにも、木材のエネルギー利用に関して以下のように記述がある。

森林を構成する個々の樹木等は、光合成によって大気中の二酸化炭素の吸収・固定を行っています。森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素を発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されることになります。このように、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有しています。このため、化石燃料の代わりに木材を利用することにより、二酸化炭素の排出の抑制が可能となり、地球温暖化防止に貢献します。(※1)

カーボンニュートラルの考えに基づくと、薪はエコな燃料であり、サウナ施設の利用に比べてテント式サウナでのサ活は環境に配慮できているといえる。

また、自然環境を利用することで、水風呂を使用せずして「ととのう」こともできる。
サウナ発祥の地といわれるフィンランドでは、サウナに入った後、川や湖に飛び込むことで体温を下げる方法は一般的に行われている。幸いにして日本は山脈が国土の大半を占め、川や湖が身近に存在しているため、少し足を伸ばせば適切な環境を探し出すことが可能だ。大自然の中、環境に優しい薪燃料を利用して体を温め、川や湖の冷たい水に入ることで「ととのう」…サウナ施設とはまた違った開放的な気持ちよさを体験できるのではないだろうか。

※1 引用:農林水産省Webサイト
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/con_2.html

体にも、自然にも優しいサウナライフを

ストレス解消・疲労回復など、現代社会にむしばまれた体を癒やすのに大流行中のサウナ。今回は地球にも優しいサウナを、という視点からテント式サウナでのサ活を紹介した。せっかくサ活を楽しむのなら、環境にも配慮してみては?すてきなサウナライフをお過ごしいただければと思う。

 

文:森ゆり
編集:竹内瑞貴