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ほんの小さなことから個性がはじまる。 仲宗根梨乃インタビュー

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”I know, I'm different. ” ---「私はみんなと感覚が違う、それはわかってる。」

そう語るのは、LAを拠点に活躍するダンスエンターテイナー、仲宗根梨乃だ。トップアーティストのバックダンサーや振り付け師、演出家、女優としても活動する彼女は、2021年に国内で放送されたグローバルオーディション番組「Produce101 Japan SEASON2」でダンストレーナーを務めた。練習生たちの頑張りはもとより、彼女が語る言葉、練習生たちと真っ直ぐ向き合う姿勢に感動した視聴者も多かったのではないか。

日本では、突出した個性は扱いにくいと思われがちだ。それが同調圧力となり、誰かにとっての正解を求める若者たちは、知らず知らずのうちに自らを苦しめているのではないだろうか。決められた正解がないアートの世界で生きる仲宗根梨乃さんに、「セルフラブ」をテーマに語ってもらった。見えてきたのは、とてもシンプルな自分の愛し方であった。

「不安よりも『愛』とか『興味』が勝つんすよ。」

マイケル・ジャクソンに強い衝撃を受けたそうですね。それからエンターテイナーを志して19歳で単身渡米されています。その決断がいまの梨乃さんの人生を作るきっかけになっていると思います。当時の自分にかける言葉はありますか?

ない、ない、ない。ないです!むしろ当時の自分のほうが強気だったので、いまの私にアドバイスをもらいたいです(笑)。勢いも体力もあったし、若くて経験がないことが強みになっていました。若いってだけでできることがたくさんあるんですよ。「分からないから怖い」で終わっちゃうのはもったいないですよ。その未知こそが強みになるんだから。

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アートの世界では、自分の恥ずかしい部分も隠さず全てさらけ出せた時に感動が生まれるのでしょうか。

”恥ずかしい部分”は人によって違うので1つに括るのは難しいところですが、自分自身をさらけ出すことは重要だと思います。さらけ出す必要がある人もいますが、全員がそうではないんですよ。意識してなくても自然にできている人もいるし。

私、型にハマるのが苦手なんです。アートの世界は100人いたら、100通りの真実があるから、型じゃなくて柔軟性を大事にしてほしい。ものごとは一瞬で変化するので、その変化に柔軟に対応できるかどうかが大事なんです。だから、「ああしろ、こうしろ」っていう人の言いなりになるのではなくて、ある時期からは「自分が自分のボス」になって自分を信じるスキルをつけることが大事なのだと思います。

梨乃さんは、弱気になっている時、それをどのようにパワーに変えていますか。

信頼できる人に「めっちゃ怖い」「不安」「ドキドキする」って全部言いますね。でも、1人で集中するときもあります。集中して、いま自分が置かれている状況に感謝するんです。「オーディションが受けられていること」「ステージが準備されていること」「いまこの場にいれること」とか、どんなに不安を感じている時でも、絶対に1つ、2つは感謝できることが見つけられるんです。「感謝」に集中することで、不安をパワーに変えています。

不安に思っているものでも披露したらウケる(絶賛される)時があります(笑)。でもそれってやってみないと分からないんですよ。だから、「怖くてもやれ」なんです。

「ダンスが好きです。でも人が私のダンスをどう思うかわからないです」ではなくて、「好きだからやる」。「オーディション受かるかわかんない」じゃなくて「受けたいからオーディションを受ける」。その結果、受かるか落ちるか、それだけですよね。だから私は不安だろうがなんだろうが、やりたいことを選択します。結局、不安よりも「愛」とか「興味」が勝つんすよ。

自分のことを愛して、知ることが大事ですね。自分を愛すること=自分を自由にする、オープンにすることでしょうか。

自由じゃなくても自分は愛せます。だって、自由が嫌いな人だっていますから。セルフラブって深いですよね。簡単そうで簡単じゃない。

自分を知るには、衝撃を与えてくれるような人にたくさん会うことも大事です。私も沖縄で生まれてアメリカに渡りましたが、そこで「あ、こんな人もいる!」「こんなこともしていいんだ!」っていう発見がたくさんありました。それで、いいなと思ったものを自分に取り入れてきたんです。もし渡米していなかったら、今の私のマインドとは違っていたと思う。

あとは個性を受け入れることです。アメリカは人種も違えば宗教も違うからこそ、お互い学べるし、自分も受け入れて、相手にも受け入れてもらう。本当に細かいことですけど、トイレ行くタイミングも一緒じゃなくていいんです(笑)。「あ、じゃあ私トイレ行ってきます、Bye」っていうのも、自分がしたいタイミングで、そうすることが当たり前。だから、他人の目とかに意識もいかなくなるというか。こういうところから個性ははじまっていって、この細かな繰り返しの中で、自分を好きになっていけるんだと思うんですよね。

ご自身の短所とはどう向き合っていますか。

若い頃は短所を直そうとしたり、頑張って練習したりしていましたが40代になった今は短所は短所のままにしています。私は得意不得意とか好き嫌いがはっきりしているので、短所はそれが得意な人に任せてバランスをとってます。私の歳になると、短所に集中する時間がもったいないんですよ(笑)。私って多才じゃないから。大事なことは、やっぱり自分を知ることですね。

世界平和のファーストステップはセルフラブ

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コロナによって、世界中が同じ経験をしていますが、誰かにとっての正解が誰かにとっての不正解になったりする。そういった経験を通して生きるって大変だな、と思うことがあります。

そうですよね。コロナで、私たちって本当にいろんなことを経験してますよね。ワクチンひとつでも、打つ・打たないで揉めたり。でも、人はやっぱり1人では生きていけないんだな、と思いました。人と会わないだけでメンタルがやられそうになる。

国内では、メンタルケア自体に対するネガティブイメージが強くあります。そこを受け入れられない人がものすごくたくさんいて、そのことで苦しんでいる人がいます。

アメリカってカウンセリングが当たり前なんですよ。私もちょっとしたことでもすぐに相談したり、瞑想、催眠療法、カウンセリングなど自分に対してのケアをたくさんやってきました。それが普通。この感覚がもっと広く伝わるといいんだけどな。

梨乃さん自身が考える、自分を大事にする方法ってなんでしょうか。

「やりたくないことはやらない」「好きな人を周りにおく」「会いたくない人には会わない」とか、当たり前のことばかりですね。あとは、自分に優しくしてあげるためにとにかくいろんなセラピーや体のケアを受けました。食事もオーガニック中心に食べるとか。

私はワーカホリックなところがあって、自分を忙しくし過ぎて、気がつかないうちにストレスが溜まってしまった時期がありました。でも、そういったことも経験したからこそ、寝ることも休むことも私にとっては仕事だと思うようになりました。ちゃんとゆっくり時間を取ること、そして自分自身と向き合うことが大切だと思います。

以前「自分を愛し、信頼することが人を愛することに繋がって、人からも愛してもらえるようになる」と仰ってました。

自分がポジティブなリソースをつくって発信することで、自分を愛することは、自然と連鎖していくんですよ。今、世界ではいろんなことが起きています。差し迫る環境問題もあるし、アフガニスタンでは大変な問題も起こっています。でも、1番簡単に変われるのは自分なんですよ。他人じゃなくて、まず自分。

世界平和へのファーストステップは自分を愛することです。

「誰かのために」という自己犠牲精神は日本において美徳とされている印象があります。でもそこで立ち止まって、「苦しんでいる自分はいないか?」「傷ついている自分はいないか?」と考えられるかどうか、が大事ですよね。

飛行機の酸素マスクもそうですよね。まず自分にやって、それから子供にやりなさいって。自分が大丈夫じゃない人に他人を助けることは難しい。いいんすよ、自分の人生なんだから。自分が主人公なんです。そこが大事。

「オレ」と呼ぶようになった理由。トラウマはターニングポイント

トラウマについてお伺いしたいです。私自身、5歳か6歳の頃に大人からかけられた言葉が忘れられず、今もその言葉に苦しんでいます。トラウマとは、どのように向き合うのが良いでしょうか。

その苦しみ、わかります。インナーチャイルドのケアを是非してください。いまは大人の自分がいるけど、その中にはまだ5歳6歳の頃の自分もいる。そのちっちゃい時の自分に、「嫌だね、そんなこと言われて辛かったね」って今の自分から話しかけてあげるんです。そしたら当時の自分がどんどん解放されて、やりたいことも見えてくるはず。

私もちっちゃい時にぶりっ子していたら、男の子に「おまえぶりっ子ー」ってからかわれて。めっちゃ傷ついたんですよ。それで、ぶりっ子だったら傷つくから嫌だわ、と思って自分のこと「オレ」って呼び始めました。当時は記憶飛ばすくらいに傷ついて、自分を正反対にまで変えちゃった。だけど今となっては、そんな自分もありがたいんですよ。女の子を隠そうとした自分がいるからSHINeeの振り付けもできて、少女時代の振り付けも作れるんです。

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写真:小学2年生の頃

トラウマって人生のターニングポイントなんですよね。私は傷つけてくれた男の子がいたおかげで、私には見えなかったはずの世界が見えたんです。それによって変われたことに感謝しているし、いまになってやっと、もともとの自分、可愛いものが好きな自分も愛せるようになりました。1歩1歩っすよ、インナーチャイルドケアしてみてください。

あと、価値観も人それぞれだから、自分の価値観も整理してみてください。ハッピーでいることは忘れずに、1歩ずつ自分と向き合って欲しいですね。

自由に考えることが怖いと思う時があります。もっと自由に考えていいのかな、って。

Of course!!! そもそもそんな許可は必要ないですよ。考えるなんて行動の手前だから、もっと自由でいていいんだと思います。私はクリエイターだから、考え始めたら止まらなくて。それで考えすぎて、想像しすぎて寝れない時があるんですよ。自分の人生だし、自分のマインドだし、そこは自由でしょう。

質問している私が一番凝り固まっていますね。

大切なのはそうやって自分のことに気づいて受け入れてあげること。だって、それも自分だから。そこで自分を責めちゃだめなんですよ。みんなもっと、即興に慣れた方がいいと思うんですよ。今その時に抱いた感覚を信じて、考えすぎないでください。
今からゲームしよう。私が2つ言葉を出すから、そのどっちがいいか、ピーンって直感でいいと思ったものを答えてください。考えないで、1秒以内に答える。

「バター パン」 

「パン!」

「起きる 笑う」

「笑う!」

「生きる 死ぬ」

「生きる!」

「おはな ばなな」

「…」

遅い、考えるな。ぱっと浮かんだら、逆に提示してもらってもいいですよ。

「青 緑」!

緑!

私、普通は青が好きなんですよ。でも緑って言うの。細かいことはどうでもいいんすよ!でもなんか、ぱっと答えるってことの発見が意外で面白くそれでまた自分を知れる。考えすぎないでバーン、バーンってお互い打ち返す感覚を持って欲しいんです。私はこういう、どうでもいいゲームをいろんな人とたくさんして、自分のことも相手のことも知ろうとしています。

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私はもっとアートを学校教育に取り入れて欲しいんです。やっぱりアートって人間に必要だと思う。アートって自由なんだけど、自由な中にちゃんとしたテクニカルなところもあって、人によって捉え方も違って、でもそれは各々正解で。だから私はアートが好きなんだと思う。

でも結局はもうなんでもOKなんです。考えすぎるのもOK。どんな自分もOK。とにかく受け入れること・認め合うこと・助け合うことが大切。まずはこれからだと思います。

それから、You have to know you're not alone. 1人じゃないですよ。私もこういう悩み、経験してきています。もう、それって本当にあったりまえのこと。いずれ通らなきゃいけないことなんです。You're on your way. This is normal. 

「キムチ 参鶏湯」

!!「参鶏湯!」

じゃあもう切るから、バイバーイ!


話を終えた時、予定していた時間はとっくに過ぎていた。セルフラブの大切さを発信したいと思い企画したインタビューであったが、彼女の言葉の中に「自分を愛すること」のヒントがたくさんあったのではないか。人と会わないことも、チョコレートを食べることも、過去の自分を思って泣くことも、全てがセルフラブなのだ。今もし悩みがある人は、ゆっくり悩んでほしい。楽しくて仕方がない人は、思いのままに突き進んでほしい。その選択全てが自分であって、自分にとっての正解なのだから。

「セルフラブ」が大きな輪になり「World Peace」が現実になる日を信じて。わたしたちはまず、自分を精一杯愛そうじゃないか。


仲宗根梨乃
1979年生まれ、沖縄県出身。マイケルジャクソンに憧れ、エンターテイナーになる事を夢みて19歳で渡米。ブリトニー・スピアーズ、グエン・ステファニーのワールドツアーや、ミッシー・エリオット、ジャスティン・ビーバーなどの数々のミュージックビデオにダンサーとして出演。また、振付師としてSHINee、少女時代、BoA、東方神起、NCT127などを担当し、コンサート演出も手掛ける。自身も舞台、TV、CM、映画等にも出演し多方面で活動中。

 

取材・文:おのれい
編集:柴崎真直