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ダボス会議とは?内容やメンバー、世界における重要性を徹底解説

世界経済や国際情勢について語られる際、必ずと言っていいほど話題に上がる「ダボス会議」。毎年1月になると、世界中のメディアがこの国際会議の動向を報じている。本記事では、ダボス会議の基本的な情報から近年の動向まで、その全容を詳細に解説する。

ダボス会議の基本情報と歴史的背景

まず、ダボス会議の概要とその歴史的背景について紹介する。

世界経済フォーラムとは

ダボス会議とは「世界経済フォーラム(World Economic Forum: WEF)」主催の年次総会のことであり、スイスのリゾート地ダボスで毎年開催される国際会議である。

この会議を主催する世界経済フォーラムは、1971年にスイスの経済学者クラウス・シュワブによって設立された独立・非営利団体である。(※1)

設立当初は「ヨーロッパ経営フォーラム」という名称で、主にヨーロッパの企業経営者が集まる場として始まった。理念として「経営者は、顧客や株主だけでなく、従業員及び地域社会などすべての利害関係者に配慮しなくてはならない」と掲げていた。

その後、1971年のドルショックによるブレトンウッズ体制崩壊や、1973年の第4次中東戦争を皮切りに発生した石油危機をきっかけに、その役割は大きく変化する。経済問題だけでなく、政治や社会の課題、環境問題などにも取り組む国際会議へと発展していった。

1987年には現在の「世界経済フォーラム」へと名称を変更、2015年には正式な国際機関として認定されたことで、より包括的な国際会議としての性格を強めていった。

会議が開催されるダボスは、標高1,560メートルのスイスアルプスに位置しており、その静かな環境と高度なセキュリティ体制から、国際会議の開催地として理想的な場所とされている。また、会議運営は世界経済フォーラムの専門スタッフによって行われている。

※1 出典:世界経済フォーラム「世界経済フォーラムについて クラウス・シュワブ教授」https://jp.weforum.org/about/klaus-schwab/

会議の運営方式とプログラム構成

次に、ダボス会議の運営方式や、プログラムの内容について紹介する。

会議の基本構造

例年、ダボス会議は年明けに開催され、全体会議、分科会など、複数の形式で議論が展開される。全体会議では世界的な課題についての基調講演が行われ、各国首脳や著名な経営者が登壇する。

2024年は1月15日に開幕し、閉幕の19日までの計5日間にわたり開催された。

プログラムの特徴

会議のプログラムは、その年の世界情勢や重要課題に応じて柔軟に構成される。2024年のダボス会議では「信頼の再構築」がメインテーマに掲げられた。これは、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化、米中対立の深刻化など、世界の分断が進むなかでの協力関係の重要性を強調するものである。

このメインテーマにあわせ、さらに4つの小テーマが設定された。それが、「分断された世界における安全保障と協力の実現」「新しい時代の成長と仕事の創出」「経済と社会をけん引するAI」「気候、自然、エネルギーの長期戦略」の4つであった。(※2)

※2 参考:世界経済フォーラム「世界経済フォーラム年次総会2024 テーマをより深く知る」
https://jp.weforum.org/meetings/world-economic-forum-annual-meeting-2024/themes/ 

▼2021年のテーマとして制定された「グレートリセット」について詳しく知る 

参加者の構成と特徴

会議には世界中から様ざまな人が参加しているが、どんな分野からどんな人が参加するのだろうか。

参加者の規模と内訳

ダボス会議が初めて開催された1971年、31か国から450人の参加者が集まった。(※3)

それから50年以上が経過し、現在は6倍以上の参加者が集まる大規模な会議となり、2024年の会議には、125か国以上から350人の首脳や閣僚を含む約3000人のリーダーが参加。セッションやワークショップの数は450を超えた。(※4)

※3 出典・参考:世界経済フォーラム「世界経済フォーラム50年の軌跡とこれから:年次総会のハイライト、そしてその先へ」
https://jp.weforum.org/stories/2020/01/fo-ramu50-no-tokorekara-nohairaito-soshitesono-he/ 
※4 出典:Forbes JAPAN「【ダボス現地リポート(4)】日本発ユニコーンが見た「ダボス会議」のリアル」
https://forbesjapan.com/articles/detail/68836

参加者の多様化

近年の特徴として、参加者の多様化が進んでいる。従来は欧米諸国の参加者が中心であったが、アジアやアフリカなどの新興国からの参加も増加傾向にある。女性参加者の比率も上昇しているものの、2024年は28%を記録した(※5)。また、環境活動家や若手起業家など、新しい視点を持つ参加者も増えている。とはいえ、まだまだ十分な割合とは言えず、今後さらに多様な参加者が会議に参加することが望まれる。

▼2013年のダボス会議で注目された「レジリエンス」について詳しく知る

日本からの参加

2020年の会議では、日本からは99名が参加し、参加国中7番目の規模となっている。政府からは経済再生担当大臣やデジタル大臣が参加したほか、経済界からはサントリーホールディングス社長、商船三井社長など、主要企業のトップが名を連ねている。

※5 出典:GLOBE+「ダボスで声を上げた女性たち「131年も待てない」ジェンダー格差の解消求めて連帯」
https://globe.asahi.com/article/15128533

世界への影響力と歴史的な成果

ダボス会議が注目を集めるのはなぜなのだろうか。ダボス会議が世界に与える影響力について見てみよう。

政治的な影響力

ダボス会議は、重要な政治的対話の場としての機能を果たしてきた。例えば、1988年にはギリシャ、トルコ間の戦争回避につながる対談が行われた。世界経済フォーラムのウェブサイトには次のように記されている。

ギリシャ、トルコ間の緊張関係は1988年に戦争寸前まで悪化。しかし、年次総会の個別会談において、トルコのトゥルグト・オザル首相とギリシャのゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ首相は信頼関係を樹立し、対立を回避しました。(※3)

また、1989年には東西ドイツ統一に向けた対話が行われた。この年のダボス会議について、世界経済フォーラムのウェブサイトには次のような記載がある。

1989年10月、東西間を分割し、動かしがたい冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊。1990年10月3日にドイツは統一されました。

年次総会での議論をきっかけに、東西ドイツ議員やビジネスリーダーの非公式グループが一体となり、東ドイツの通貨安定化プログラムの実施を要求しました。この構想は東西ドイツの経済統一を支える柱となりました。

年次総会では「新しいヨーロッパ」と題されたセッションも開かれ、東西ヨーロッパ各国の要人たちが初めて一堂に会しました。(※3)

会議が提供する、対話の場によって、このような歴史的な成果を生み出しているのである。

経済システムへの貢献

政治的な成果のほか、経済的な成果も上げている。例として、1998年のダボス会議では、特にアジア市場に影響を及ぼす金融危機をきっかけとした、世界的な金融システムの改革がテーマとされた。この会議で世界的な金融システムの改革が議論され、G20設立の契機となった。(※3)

社会課題への取り組み

さらに、社会課題への取り組みも、ダボス会議を発端に加速する例がある。2000年に設立されたGAVIワクチンアライアンスは、ダボス会議から生まれた具体的な成果の代表例である。

GAVワクチンアライアンスは、低所得国の予防接種率を向上させ、子どもたちの命と人々の健康を守ることを目的として、設立された官民連携パートナーシップだ。2000年のダボス会議にはビル・ゲイツ氏などのビジネス界の優れたリーダーたちが参加し、GAVIワクチンアライアンスが創設された。GAVIにより、7億人以上の子どもたちに予防接種が実施され、1,000万人以上の命が救われた。(※3)

また、2006年からはジェンダー・ギャップレポートを発行している。このレポートの結果への注目度は高く、各国におけるジェンダー平等への取り組みを加速させる一因ともなっている。

▼政治面の日本のジェンダーギャップについて考える

まとめ

ダボス会議は、世界のリーダーたちが直接対話を行い、グローバルな課題に対する解決策を模索する重要な場となっている。特に、一国では解決できない課題に対して、国際的な協力関係を構築する機能を果たしている。

2024年の会議テーマ「信頼の再構築」が示すように、国際社会の分断が深まるなかで、対話と協力の場としての重要性は高まっている。気候変動やデジタル革新など、人類共通の課題に対して、ダボス会議がどのような貢献を果たしていくのか、今後も注目されるところである。

 

文・編集:あしたメディア編集部

 

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