よりよい未来の話をしよう

生物多様性の問題点は?森林伐採や開発による影響を徹底解説

地球上に存在する膨大な生物種とその複雑な関係性から成り立つ生物多様性は、現在深刻な危機に直面している。森林伐採や都市開発の進行により、毎年多くの種が絶滅の危機にさらされ、それは私たちの生活基盤である生態系サービスの喪失につながっている。

この記事では、生物多様性について、森林伐採や開発がもたらす影響について、現状と対策を含めて詳しく説明する。

生物多様性とは何か

生物多様性は、地球上のすべての生物や生態系の多様性を指す概念である。これは単に種の数が多いということではなく、遺伝子レベルから生態系レベルまでの幅広い多様性を包含している。

具体的には、遺伝的多様性(同じ種内での遺伝子の多様性)、種の多様性(異なる種の豊富さ)、生態系の多様性(森林、湿地、海洋など様々な生態系の存在)の3つの階層で構成されている。

生物多様性が持つ重要な機能

生物多様性は人間社会の基盤として、食料・水・医薬品・気候調整などの生態系サービスを支える重要な役割を担っている。

食料生産では、多様な作物品種や野生の近縁種が、病害虫への抵抗性や気候変動への適応力を提供している。水の供給と浄化では、森林や湿地の生態系が水循環を調整し、汚染物質を除去する機能を果たしている。また、多くの医薬品の原料が植物や微生物から得られており、新薬開発における生物多様性の価値は計り知れない。

生態系サービスの具体例

生態系サービスは、供給サービス(食料、水、木材など)、調整サービス(気候調整、水質浄化、災害緩和など)、文化的サービス(レクリエーション、精神的価値など)、生息・生育地サービス(土壌形成、栄養循環など)の4つに分類される。(※1)

これらのサービスは相互に関連し合い、生物多様性の減少は連鎖的にすべてのサービスの質と安定性を損なう結果をもたらすとされている。

※1 参考:自然の恵みの価値を計る(環境省)「生物多様性と生態系サービス」
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/valuation/service.html

▼関連記事を読む

生物多様性の現状と減少の深刻さ

世界規模で進行する生物多様性の減少について紹介する。

絶滅危惧種の増加状況

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストによると、2025年3月時点で4万7,187種が絶滅の危機にある。これは評価対象種の約28%に相当し、多くの種が絶滅の危機にあることがわかる。(※2)

気候変動との相互作用

気候変動と生物多様性の間には相互作用がある。気候変動が生物多様性の減少を加速し、逆に生物多様性の喪失が気候変動の悪化を招くという悪循環が生じている。温度上昇や降水パターンの変化により、多くの種が生息適地を失い、分布域の移動や生活史の変化を余儀なくされている。同時に、森林や湿地などの炭素吸収機能を持つ生態系の減少は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を促進し、気候変動をさらに悪化させている。(※3)

※2 参考:WWFジャパン「【2025更新】レッドリストとは?」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3559.html
※3 参考:WWFジャパン「地球温暖化による野生生物への影響」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/286.html

森林伐採が生物多様性に与える影響

森林伐採は生物多様性の減少における最も直接的で深刻な要因のひとつであり、その影響は多岐にわたる。

生息地の消失による種の減少

森林伐採により、無数の動植物が生息地を失い、個体数の急激な減少や局所的な絶滅が発生している。

森林は、両生類の80%、鳥類の75%、哺乳類の68%の生息地を支えているとされている。(※4)森林の消失は、これらの種が長い時間をかけて築き上げた複雑な生態系ネットワークを瞬時に破壊し、食物連鎖の断絶や共生関係の崩壊を引き起こしている。

生息地の分断化とその影響

森林伐採は連続した生息地を分断してしまう。これにより、動物の移動が制限され、繁殖機会の減少や遺伝的多様性の低下が発生する。特に大型哺乳類や渡り鳥など、広い行動圏を必要とする種への影響は深刻で、最小存続可能個体数を維持できない個体群が次々と消失している。

土壌生態系への影響

森林伐採は地上部の植生だけでなく、土壌生態系にも重大な影響を与えている。森林の土壌には膨大な数の微生物、菌類、無脊椎動物が生息し、栄養循環や有機物分解の重要な役割を担っているが、伐採による土壌の露出は、これらの土壌生物の生息環境を破壊し、土壌の肥沃度低下や浸食の進行を引き起こしている。結果として、森林の自然再生能力が損なわれ、生態系の回復が困難になっている。

▼関連記事を読む

水循環システムの破綻

森林は水循環の調整において重要な役割を果たしており、森林伐採はこのシステムを大きく変化させている。樹木の蒸散作用により大気中に放出される水分量の減少は、降水パターンの変化を引き起こし、下流域の水環境にも影響を与えている。また、森林の保水機能の低下により、洪水リスクの増大や乾季の水不足が発生し、水生生物の生息環境も悪化している。

※4 参考:Food and Agriculture Organization of the United Nations「The State of the World’s Forests 2020」
https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/dfb12960-44ee-4ddc-95f7-bec93fbb141e/content

都市開発・インフラ整備による生物多様性への影響

都市化の進展とインフラ整備は、森林伐採とは異なる形で生物多様性に深刻な影響を与えている。

都市化による生息地の改変

都市開発は自然環境を人工的な環境に完全に置き換えるため、その場所に生息していた在来種の大部分が消失する。住宅地や商業施設の建設により、草地、湿地、小規模な森林などの多様な生息地が失われ、都市近郊の生物相は大幅に単純化されている。さらに、都市環境は騒音、光害、大気汚染などの環境ストレスを生み出し、都市適応性の低い種の生存をより困難にしている。

道路建設による生態系の分断

道路やその他の線状インフラの建設は、生息地を物理的に分断し、野生動物の移動を阻害している。特に、高速道路や鉄道などの大規模な線状インフラは、動物の季節移動や繁殖のための移動を妨げ、個体群の遺伝的交流を断絶する。この結果、近親交配の増加や個体群の縮小が進行し、長期的な種の存続が脅かされているのだ。

人工光による生態系への影響

都市開発に伴う人工光の増加は、夜行性動物や昆虫の行動パターンに影響を及ぼしている。街灯やビルの照明により、昆虫の方向感覚が混乱し、繁殖行動や採餌行動に支障をきたしている。また、渡り鳥のナビゲーション能力が人工光により妨害され、衝突事故が増加したり、迷走個体が発生したりすることが問題となっている。

外来種の侵入促進

都市開発は外来種の侵入と定着を促進する要因となっている。人や物資の移動が活発な都市部では、意図的・非意図的に外来種が持ち込まれやすく、また撹乱された環境は外来種の定着に有利な条件を提供している。外来種の中には在来種と競合したり、捕食したりすることで、在来の生物群集に深刻な影響を与える種も多く、生態系のバランスに根本的な変化が生じている。

生物多様性の減少が社会に与える影響

生物多様性の減少は、自然環境の問題にとどまらず、人間社会の様々な側面に深刻な影響を与える。

食料安全保障への影響

生物多様性の減少は、食料生産システムの安定性を脅かす。農作物の遺伝的多様性の低下により、病害虫や気候変動に対する抵抗力が弱くなり、食料供給の不安定化が懸念される。

また、受粉を担う昆虫の減少により、多くの作物の生産性が低下していることも指摘される。蜂類の減少は、果樹や野菜の収量に直接的な影響を与え、食料価格の上昇や供給不安定化を引き起こしているのだ。

医薬品開発への影響

現在使用されている医薬品の多くは、天然物質に由来しており、生物多様性の減少は新薬開発の可能性を狭めている。特に、熱帯林や海洋生物には、まだ発見されていない有用な化合物が多数存在すると考えられているが、これらの生物種の絶滅により、医学的価値のある物質が永続的に失われる可能性があるのだ。

災害リスクの増大

森林や湿地などの自然生態系は、洪水や土砂災害を緩和する重要な機能を持っている。これらの生態系の減少により、自然災害の被害が拡大し、社会インフラへの影響も増大している。特に、気候変動により極端気象が頻発する中で、自然の防災機能の重要性はますます高まっている。

生物多様性保全に向けた取り組み

生物多様性の危機に対処するため、世界各地で様々な保全活動と政策的取り組みが展開されている。

国際的な取り組み

生物多様性条約(CBD)(※5)は、生物多様性の保全に関する最も重要な国際的枠組みである。個別の野生生物種や、特定地域の生態系に限らず、地球規模での生物多様性の保全を目指すための国際条約だ。196か国が加盟している。(※6)

2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(※7)では、2030年までに陸域と海域の30%を保護区にする「30by30」目標など、具体的な数値目標が設定されている。

保護区の設定と管理

国立公園や自然保護区の設定は、生物多様性保全の基本的な手法である。しかし、単に保護区を設定するだけでなく、適切な管理と周辺地域との連携が重要である。生態系ネットワークの構築により、分断された生息地をつなぎ、動物の移動や遺伝的交流を促進する取り組みが進められている。質の高い保護区管理と生態系の連結性確保が、効果的な保全の鍵となっている。

持続可能な利用の推進

生物多様性の保全は、完全な保護だけでなく、持続可能な利用を通じても実現できる。森林認証制度、持続可能な漁業、エコツーリズムなどの取り組みにより、経済活動と生物多様性保全の両立が図られている。また、生物多様性に配慮した農業や、都市部でのグリーンインフラの整備も、持続可能な利用の重要な取り組みである。

市民参加と教育の重要性

生物多様性保全の成功には、市民の理解と参加が不可欠である。市民科学プロジェクトや環境教育プログラムを通じて、一般の人々が生物多様性の重要性を理解し、保全活動に参加する機会を提供している。また、若い世代への教育は、長期的な保全意識の醸成に重要な役割を果たしている。

※5 参考:外務省「生物多様性条約(生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD))」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html
※6 参考:WWFジャパン「生物多様性条約(CBD)について」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3516.html
※7 参考:環境省「昆明・モントリオール生物多様性枠組のパンフレット」
https://www.env.go.jp/content/000296180.pdf

個人でできる生物多様性保全の取り組み

生物多様性保全は、個人の日常的な行動の積み重ねによっても大きく前進させることができる。

消費行動の見直し

日常の消費行動を見直すことで、生物多様性保全に大きく貢献できる。持続可能な認証を受けた商品(FSC認証木材、MSC認証水産物など)の購入や、地産地消の推進により、環境負荷の少ない消費活動を実践できる。また、食品ロスの削減や、必要以上の消費を避けることで、生産圧力を軽減し、自然環境への負荷を減らすことができる。

▼関連記事を読む

身近な自然環境の保全

自分の住む地域の自然環境を守ることは、生物多様性保全の基本的な取り組みである。庭やベランダでの在来植物の栽培、外来種の除去、地域の清掃活動への参加などにより、身近な生物の生息環境を改善できる。また、地域の自然観察会や保全活動に参加することで、生物多様性への理解を深めながら実践的な保全活動に貢献できる。

持続可能な移動手段の選択

交通手段の選択も生物多様性保全に影響を与える。公共交通機関の利用や自転車・徒歩での移動により、温室効果ガスの排出量を削減し、気候変動の緩和に貢献できる。また、生態系に配慮した観光(エコツーリズム)を選択することで、自然環境の保全と地域経済の両立を支援できる。

情報発信と教育活動

生物多様性の重要性について学び、その知識を家族や友人と共有することで、保全意識の輪を広げることができる。ソーシャルメディアでの情報発信や、地域での環境教育活動への参加により、より多くの人々に生物多様性保全の重要性を伝えることができる。

政治的参加と政策支援

生物多様性保全政策を支持し、選挙での投票行動や政治家への働きかけを通じて、政策レベルでの変化を促進できる。また、環境保護団体への寄付や会員としての参加により、組織的な保全活動を支援することも重要な貢献である。

まとめ

生物多様性の危機は、森林伐採や都市開発により深刻化し、食料安全保障や災害リスクの増大など、私たちの生活に直接的な影響を与えている。日本でも里地里山の生物多様性が急速に失われており、緊急な対策が必要である。

一方で、国際的な取り組みから個人レベルの行動まで、様々な保全活動が展開されている。持続可能な消費、身近な自然環境の保全、環境教育への参加など、一人ひとりができる取り組みを実践し、生物多様性豊かな地球を次世代に引き継ぐ努力を続けていくことが大切だろう。

 

文・編集:あしたメディア編集部

 

最新記事のお知らせは公式SNS(Instagram)でも配信しています。
こちらもぜひチェックしてください!

掲載されている文章、イラストおよび写真は、BIGLOBE又は第三者が著作権を有しており、権利者の許諾なく利用できません。