
企業のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みが加速するなか、カーボンクレジットが注目されている。本記事では、カーボンクレジットの基本的な仕組みから企業が導入する理由、具体的な導入プロセスまでを詳しく解説する。
- カーボンクレジットの基本的な仕組み
- 企業がカーボンクレジットに取り組む理由
- カーボンクレジット導入の流れ
- カーボンクレジットのメリット・デメリット
- SDGsとの関連性とグローバルな視点
- 今後の展望と課題
- まとめ
カーボンクレジットの基本的な仕組み
カーボンクレジットは、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を証書化し、企業間で売買できる仕組みである。(※1、2)温室効果ガスの削減プロジェクトによって生まれた排出削減量を第三者機関が認証し、クレジットとして発行される。企業は自社の排出量が目標を下回った場合、その差分をクレジットとして販売できる。逆に目標未達の場合は他社のクレジットを購入し、排出量をオフセットできる仕組みとなっている。(※2)
カーボンクレジットの取引制度
カーボンクレジットの取引制度には主に「ベースライン&クレジット制度」と「キャップアンドトレード制度」がある。ベースライン&クレジット制度は仮想的な基準値(ベースライン)と実際の排出量の差分をクレジット化して取引し、プロジェクトベースでの削減活動を評価する制度である。
一方、キャップアンドトレード制度は政府や自治体が企業ごとに排出枠を設定し、余剰・不足分をクレジットとして売買する制度である。排出量の上限設定による確実な削減効果が期待できる。

出典:経済産業省「カーボン・クレジット・レポートの概要」p.14
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_credit/pdf/004_s04_00.pdf
※1 参考:丸紅新電力「カーボンクレジットとは?仕組みや価格、企業のデメリットを紹介」
https://denki.marubeni.co.jp/column/carbon_credits/
※2 参考:Persefoni「【わかりやすく解説】カーボンクレジットとは? 」
https://www.persefoni.com/ja/blog/carbon-credits
企業がカーボンクレジットに取り組む理由
多くの企業がカーボンクレジットの導入を検討している背景には、環境経営と事業戦略の両面でのメリットがある。
カーボンニュートラル達成への活用
企業が設定したネットゼロ目標の達成において、自社努力だけで排出ゼロが困難な場合、クレジット購入で目標達成を補完できる。特に製造業や運輸業など、事業特性上CO2排出量削減に限界がある業界では、カーボンオフセットによる補完戦略が重要となる。
資金調達手段としての活用法
カーボンクレジットは収益機会としても注目されている。クレジット販売で得た資金をさらなる脱炭素投資に活用できるため、再生可能エネルギー導入や省エネ設備への投資資金として循環させることが可能である。
社会的評価とESG対応
環境配慮企業としてのブランド強化や投資家・顧客からの信頼獲得も重要な動機である。ESG投資の拡大により、投資家は企業の環境取り組みを重視する傾向が強まっている。カーボンクレジットの活用は、サステナビリティ経営戦略の一環として機能する。
規制対応と法的義務への対処
一部業界や自治体では排出量報告や削減義務があり、クレジット活用で法規制に対応できる。東京都のキャップアンドトレード制度など、地域レベルでの規制も強化されており、コンプライアンス対応としてクレジットの重要性が高まっている。
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カーボンクレジット導入の流れ
カーボンクレジットの導入には体系的なアプローチが必要である。以下では、導入プロセスを段階的に説明する。
温室効果ガス排出量の算定と現状把握
まず、自社の温室効果ガス排出量を算定する。事業活動全体やサプライチェーンを含めて排出量を把握する必要があるため、直接排出、間接排出、その他間接排出といったように分類し、包括的な排出量の可視化を行う。ここから削減可能な部分を特定していく。
CO2排出量削減プロジェクト例の実施
省エネの取り組みや再生エネルギーの活用など、CO2排出量を削減する活動を企画・実行する。具体的なプロジェクト例として、LED照明への切り替え、太陽光発電設備の導入、植林活動などがある。これらの活動は、削減量を定量的に測定できる仕組みを構築することが重要である。
第三者認証機関による認証申請
削減量の認証を受けるため、第三者機関による審査を受ける必要がある。認証機関は、プロジェクトの追加性(そのプロジェクトがなければ削減されなかった量)や永続性を評価し、クレジットの発行可否を判断する。
クレジットの売買と価格動向
認証されたクレジットは、市場や相対取引を通じて売却・購入される。2023年10月には東京証券取引所に「カーボン・クレジット市場」が開設され、価格の透明性と流動性が向上している。カーボンクレジット価格動向は、需給バランスや政策動向により変動するため、市場情報の収集が重要である。

カーボンクレジットのメリット・デメリット
カーボンクレジットの導入を検討する際は、メリットとデメリットを正確に理解することが重要である。
企業にとってのメリット
前述の通り、企業にとってのカーボンクレジットの主なメリットは、柔軟な排出削減戦略の実現である。自社での削減が困難な部分をクレジット購入で補完できるため、コスト効率的にカーボンニュートラルを達成できる。また、クレジット販売による収益化も可能で、脱炭素投資の資金調達手段として活用できる。ESG評価の向上により、投資家や顧客からの信頼獲得にも寄与する。
注意すべきデメリット
一方で、いくつかのデメリットも存在する。クレジットの種類や認証基準が多様化しており、企業は目的や制度に応じた選択が必要となる。また、グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)との批判を受けるリスクもある。価格変動リスクや、クレジットの永続性に関する不確実性も考慮すべき要素である。
課題と対策
需要面ではどのクレジットを選ぶべきか分かりづらい、供給面では新技術や自然由来クレジットの認証体制が未整備といった課題がある。これらの課題に対しては、専門家のアドバイスを受けながら慎重な検討を行うことが重要である。
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SDGsとの関連性とグローバルな視点
カーボンクレジットは、SDGsの達成やグローバルな気候変動対策と密接に関連している。
SDGs達成への貢献
カーボンクレジットは、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献すると言えるだろう。また、森林吸収プロジェクトは目標15「陸の豊かさも守ろう」、再生可能エネルギープロジェクトは目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成にも寄与する。企業は、複数のSDGs目標に同時に貢献できる仕組みとして活用できる。
国際的な気候変動対策との連携
パリ協定の目標達成に向けて、カーボンクレジットは重要な役割を果たしている。第6条メカニズムでは、国際的なクレジット取引の仕組みが整備されており、各国の削減目標達成に貢献している。日本企業も、JCM(二国間クレジット制度)を通じて途上国での削減プロジェクトに参加し、国際的な気候変動対策に貢献している。
グローバル市場での競争力向上
海外展開を行う企業にとって、カーボンクレジットの活用は競争力向上の要因となる。欧州やアメリカでは、取引先企業に対して環境配慮を求める傾向が強まっており、カーボンニュートラルの達成はビジネス機会の拡大にも影響するのではないだろうか。

今後の展望と課題
カーボンクレジット市場は急速に発展しており、今後の動向を理解することが重要である。
市場拡大とイノベーション
カーボンクレジット市場は、技術革新とともに拡大を続けている。ブロックチェーン技術を活用した取引の透明性向上や、AI・IoTを活用した削減量の精密な測定など、新技術の導入が進んでいる。また、ネイチャーベースドソリューション(自然を活用した解決策)によるクレジット創出も注目されている。
規制強化と標準化
各国で炭素税や排出権取引制度の導入が進み、カーボンクレジットの需要は増加している。同時に、クレジットの品質や信頼性を確保するための標準化も進んでいる。国際的な認証基準の統一化により、より信頼性の高いクレジット市場の構築が期待される。
企業に求められる対応
企業には、長期的な視点でのカーボンクレジット戦略の策定が求められる。まず自社での削減努力を最大化し、その上でクレジットを補完的に活用するアプローチが重要である。また、サプライチェーン全体での取り組みや、ステークホルダーとの協働も不可欠となる。
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まとめ
本記事では、カーボンクレジットの基本的な仕組みから企業が導入する理由、具体的な導入プロセスまでを詳しく解説してきた。
カーボンクレジットは、企業の環境経営とビジネス戦略の両面で重要な役割を果たしている。基本的な仕組みを理解し、自社の状況に応じて適切に活用することで、カーボンニュートラルの達成と事業価値の向上を同時に実現できる。
まずは自社の排出量把握から始め、段階的にクレジット活用を検討することが推奨される。専門家のサポートを受けながら、持続可能な未来に向けた取り組みを推進するのが良いだろう。
文・編集:あしたメディア編集部
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