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アカウンタビリティ(説明責任)とは?企業における重要性を徹底解説

 

企業経営におけるアカウンタビリティの重要性が高まっている。本記事では、アカウンタビリティの意味や必要性、企業経営における重要性、実現プロセスなどについて詳しく解説する。

アカウンタビリティとは

アカウンタビリティとは、企業において自身が担当し権限を持つ事柄の状況や詳細な内容を利害関係者に説明する義務のことを指す。この言葉は、「アカウンティング(会計)」と「レスポンシビリティ(責任)」を組み合わせた造語であり、経営者が株主・投資家に対して財務状況を報告する義務として始まった。

アカウンタビリティの現代的意味

アカウンタビリティはもともとは会計や経営分野で使われていた言葉だ。しかし、現代ではアカウンタビリティは「説明責任」や「答責性」に近い言葉として、より広い文脈で使用されるようになっている。企業のCSR活動や環境問題への取り組みなど、幅広いステークホルダーへの説明責任を含むようになっており、情報開示の責任、方針や考え方に対する理解を得る責任、結果を説明する責任という多義的な概念が含まれている。

アカウンタビリティとレスポンシビリティの違い

ビジネスの場面で、レスポンシビリティと言われるとき、「実行責任」を示すのに対し、アカウンタビリティは「成果責任」を意味する。つまり、アカウンタビリティとは、成果を出したかどうか、さらには成果を出すためにしたことを説明する責任まで含むのである。この2つの責任は明確に区分され、アカウンタビリティはプロジェクトリーダーが、レスポンシビリティはメンバーが持つとされている。

企業経営におけるアカウンタビリティの重要性

現代のビジネス環境において、企業のアカウンタビリティは、単なる情報開示義務を超えて、持続的成長と社会的価値創造のための重要な経営ツールとしての位置付けにある。アカウンタビリティと企業経営の関係性について紹介する。

コーポレートガバナンスとアカウンタビリティ

透明・公正な企業運営のために、アカウンタビリティは重要な要素として位置付けられている。例えば、東京証券取引所が定めるコーポレート・ガバナンスの5つの基本原則(※1)として以下の5つがある。 1.株主の権利・平等性の確保 2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働 3.適切な情報開示と透明性の確保 4.取締役会等の責務 5.株主との対話 このうち、特に「3.適切な情報開示と透明性の確保」および「5.株主との対話」は、アカウンタビリティと深く関連している。これらは単なる情報開示以上の意味を持ち、企業統治の基盤となっている。

ステークホルダーとの信頼関係構築

企業が適切なアカウンタビリティを果たすことは、ステークホルダーとの信頼関係構築に大きく寄与する。財務情報の適切な開示により、投資家の信頼を獲得し、長期的な株式保有を促進することができる。さらに、CSR活動や環境問題への取り組みなど、幅広いステークホルダーへの説明責任を果たすことで、企業の社会的信用度を向上させることができる。

社会的責任の遂行とESG・SDGsへの対応

アカウンタビリティは、財務情報以外にも、企業の社会的責任に関する説明責任にも使われる言葉だ。CSR活動の効果的な発信、SDGsやESGへの取り組みの明示など、積極的な情報提供を通じて、企業の社会的責任への取り組みを社会に正しく認識してもらうことが可能となる。このような取り組みは、企業の社会的信用度の向上につながり、ブランド価値の向上にも寄与する。

従業員へのビジョン浸透とモチベーション向上

アカウンタビリティは、社内的な観点からも重要な意味を持つ。経営者が企業ビジョンや戦略を明確に示し、その達成に向けた行動計画や目標を従業員と共有することで、組織全体のビジョン浸透とモチベーション向上が図れる。また、権限委譲された管理者・従業員が経営者に対して責任を果たすことで、組織内のコミュニケーションと信頼関係が強化される。

優秀な人材の獲得と定着

企業のアカウンタビリティは、優秀な人材の獲得と定着にも影響を与える。社会的責任を果たし、透明性の高い経営を行う企業は、働く人々にとって魅力的な存在となる。特に、社会的意識の高い若年層にとって、自社の活動が社会にどのような影響を与えているかを明確に示すことは、企業選択の重要な基準となっている。アカウンタビリティを適切に果たすことで、優秀な人材の獲得と定着を促進することができるだろう。

※1 出典:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf

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アカウンタビリティを怠ることによるリスク

ここでは、企業がアカウンタビリティを怠ることで被る様々なリスクについて述べる。

法令違反と罰則

アカウンタビリティの不履行は、企業にとって深刻な法的リスクをもたらす可能性がある。特に、金融商品取引法や会社法に基づく情報開示義務に違反した場合、企業や経営者は厳しい罰則に直面することになる。

金融商品取引法では、有価証券報告書等の虚偽記載や重要な事項の不記載に対し、懲役や罰金、またはその両方が課されることがある(※2)。さらに、会社法においても、計算書類の虚偽記載等に対する罰則規定が設けられており、これに違反した取締役は、100万円以下の過料に処されることがある(※3)。このように、法令違反による罰則は経営者個人にも及ぶため、アカウンタビリティの確保は企業のみならず経営者自身の責任でもある。

資金調達の困難化と株価下落

アカウンタビリティの欠如は、企業の資金調達力を大きく損なうリスクがある。投資家は、企業の財務状況や経営方針について十分な情報開示がなされていない場合、投資判断を控える傾向にあるからだ。

特に、株式市場においては、アカウンタビリティの不足が直接的に株価下落につながることが多い。企業の情報開示が不十分であると判断した投資家が株式を売却することで、需給バランスが崩れ、株価が下落するメカニズムが働くのである。

加えて、社債の発行や銀行借入においても、アカウンタビリティの欠如は企業の信用力を低下させ、調達コストの上昇や調達額の減少を招く恐れがある。このように、アカウンタビリティは企業の資金調達力と密接に関連しており、その確保は経営上の重要課題といえる。

不正確な情報拡散とレピュテーションリスク

アカウンタビリティの不履行は、不正確な情報の拡散を招き、企業のレピュテーションリスクを高める恐れがある。特に、ソーシャルメディアの発達により、誤った情報が瞬時に拡散される現代社会においては、その影響は甚大なものとなる。

例えば、企業の財務状況や経営方針について、正確な情報開示がなされていない場合、憶測や誤解に基づく情報が広まりやすくなる。また、不祥事等が発生した際に、事実関係や対応策について適切な説明がなされない場合、デマや風評が拡散され、企業のレピュテーションが大きく毀損されるリスクがある。このように、アカウンタビリティの確保は、正確な情報発信と風評被害の防止において不可欠な要素であり、企業は積極的に取り組む必要がある。

※2 出典:金融商品取引法 第197条
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025#Mp-Ch_8
※3 出典:会社法 第976条
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-Pa_8

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アカウンタビリティの実現プロセス

アカウンタビリティを実現させるのに必要なプロセスはどのようなものだろうか。手順を紹介する。

目的と目標の明確化

まず目的と目標を明確に定義することが不可欠である。この作業は、組織としてアカウンタビリティを果たすべき対象や、達成したい成果を特定するために行われる。

具体的には、ステークホルダーの範囲を明らかにし、それぞれに対してどのような情報を開示し、どのような責任を果たすべきかを検討する必要がある。また、アカウンタビリティの実現が、組織の戦略目標やビジョンとどのように関連しているかを明らかにすることも重要である。

行動計画の策定と必要資源の洗い出し

目的と目標が明確になったら、次はそれを達成するための行動計画を策定する。ここでは、目標達成に必要な具体的な活動や施策を洗い出し、優先順位をつけて実行可能な計画を立てる。

行動計画の策定に際しては、組織内の各部門や担当者の役割分担を明確にし、それぞれが果たすべき責任を明示することが重要である。また、計画の実行に必要な人材、予算、設備、情報などのリソースを特定し、適切に配分することも欠かせない。

この段階では、アカウンタビリティの実現に向けた取り組みが、組織の通常業務とどのように整合性を保ちながら進められるかという点にも注意を払う必要がある。日常的な業務プロセスの中にアカウンタビリティの実践を組み込むことで、より効果的で持続可能な取り組みが可能となる。

リスク対策の検討と実施

アカウンタビリティの実現プロセスにおいては、様々なリスクが存在する可能性がある。例えば、不適切な情報開示による信頼の毀損、説明責任の不履行による法的責任の発生、内部統制の不備による不正行為の発生などが挙げられる。

これらのリスクに対処するためには、リスクの特定と評価を行い、適切な対策を講じる必要がある。具体的には、情報開示の手順と基準の明確化、内部監査の強化、従業員教育の徹底などが有効である。

定期的なモニタリングと改善

アカウンタビリティの実現は、一時的な取り組みではなく、継続的なプロセスとして捉える必要がある。そのため、定期的なモニタリングと改善が欠かせない。

モニタリングでは、設定した目標の達成状況や、行動計画の進捗状況を定期的に確認し、必要な修正を加える。また、ステークホルダーからのフィードバックを収集し、それを改善に活かすことも重要である。

改善には、目標の再設定、行動計画の見直し、リスク対策の強化、組織体制の整備などが含まれる。定期的なモニタリングと改善により、アカウンタビリティの実現プロセスは、より効果的で適応性の高いものとなる。

アカウンタビリティの実践における成功要因

アカウンタビリティを実現するためのステップは紹介したが、ただ順を追って実行するだけでは実現できない場合もある。アカウンタビリティを果たすために重視したいポイントを紹介する。

明確な情報開示方針と仕組みの構築

アカウンタビリティを実現するためには、企業は明確な情報開示方針を策定し、それを実行するための仕組みを構築することが重要である。

例えば、財務情報の開示については、金融商品取引法や会社法などの法令に基づいた適切な開示を行うための内部統制システムを整備し、情報の正確性と信頼性を確保することが求められる。また、CSR活動や環境問題への取り組みについても、定期的な報告書の発行やウェブサイトでの情報公開など、積極的な情報発信の仕組みを構築することが重要である。(※1)

ステークホルダーとの継続的な対話

アカウンタビリティの実践には、ステークホルダーとの継続的な対話が欠かせない。企業は、株主や投資家、顧客、従業員、地域社会など、様々なステークホルダーとの定期的なコミュニケーションを通じて、その期待や要望を把握し、それに応えていく必要がある。

具体的には、株主総会や投資家向け説明会、顧客アンケート、従業員との面談など、多様なチャネルを活用して、ステークホルダーとの双方向の対話を促進することが重要である。そうした対話を通じて得られた意見や評価を、経営の意思決定やCSR活動の改善に反映させることで、アカウンタビリティの実効性を高めることができる。

トップのコミットメントと組織風土の醸成

アカウンタビリティの実践には、経営トップのコミットメントと、それを支える組織風土の醸成が不可欠である。経営者自らが説明責任の重要性を認識し、その実現に向けて強いリーダーシップを発揮することで、全社的な取り組みを推進することができる。

また、アカウンタビリティを重視する組織文化を形成するためには、従業員への教育・啓発活動や、説明責任の遂行を人事評価に反映させるなどの施策が有効である。透明性と誠実さを尊ぶ企業風土を醸成することで、アカウンタビリティに対する従業員の意識を高め、自発的な行動を促すことができる。

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アカウンタビリティの今後の展望

アカウンタビリティは、単なる情報開示義務を超えて、企業の持続的成長と社会的価値創造のための重要な経営ツールとしての位置づけにある。現代のビジネス環境において、アカウンタビリティは企業の競争力と信頼性を高める不可欠な要素となっている。

今後、アカウンタビリティの概念は、より広範な領域に浸透し、企業経営において中核的な役割を果たすようになるだろう。ここでは、アカウンタビリティの今後の展望について、3つの観点から考察する。

説明責任の対象範囲の拡大

従来、アカウンタビリティは主に株主・投資家に対する説明責任として捉えられてきたが、より幅広いステークホルダーへの説明責任が求められるようになってきている。取引先、従業員、消費者、地域社会など、企業活動に影響を受けるすべての関係者に対して、適切な情報開示と対話が必要となる。

特に、環境問題や人権問題など、社会的関心の高いテーマについては、積極的な情報発信と説明責任の遂行が求められる。企業は、自社の活動がステークホルダーに及ぼす影響を認識し、透明性の高い情報開示を行うことで、信頼関係を構築していく必要がある。

デジタル技術を活用した情報開示の高度化

情報技術の発展により、企業の情報開示のあり方も大きく変化しつつある。インターネットやソーシャルメディアを通じて、リアルタイムかつ双方向的なコミュニケーションが可能になっている。また、ビッグデータやAIの活用により、膨大な情報を効率的に処理・分析し、ステークホルダーのニーズに合わせた情報提供が可能になりつつある。

今後は、デジタル技術を活用して、情報開示の質と速度を高めることが求められる。例えば、統合報告書の電子化や、インタラクティブな情報開示プラットフォームの構築など、ステークホルダーとのエンゲージメントを促進する取り組みが重要になるだろう。

アカウンタビリティの浸透に向けた課題

アカウンタビリティの重要性が高まる一方で、その浸透には課題も残されている。特に、中小企業においては、情報開示の体制整備や人材育成が十分でない場合がある。また、グローバル企業においては、各国・地域の法規制や文化的差異に対応した説明責任の遂行が求められる。

これらの課題を解決するためには、企業の自主的な取り組みに加えて、政府や業界団体による支援・啓発活動が不可欠である。アカウンタビリティに関する教育・研修の充実や、ベストプラクティスの共有などを通じて、企業のアカウンタビリティ意識を高めていく必要がある。

まとめ

アカウンタビリティは、企業の持続的成長と社会的価値創造のための重要な経営ツールとしての位置付けにある。現代のビジネス環境において、アカウンタビリティは企業の競争力と信頼性を高める不可欠な要素となっている。

今後、企業価値評価における非財務情報の重要性が高まり、説明責任の対象範囲が拡大するとともに、デジタル技術を活用した情報開示の高度化が進むと予想される。企業は、アカウンタビリティの重要性を認識し、積極的に取り組むことで、ステークホルダーからの信頼を獲得し、長期的な成長を実現することができるだろう。

 

文・編集:あしたメディア編集部

 

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