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ダブルスタンダードな人にはどう対応すればいい?矛盾する態度の背景と対処法

同じ場面でも相手や状況によって態度を変える「ダブルスタンダード」は、日常生活や組織内でしばしば混乱を引き起こす要因となる。自分へは厳しい基準を適用するが、他者には極端に甘い評価を下すケースなど、思わず首をかしげたくなる矛盾を見かけることは少なくない。

本記事では、ダブルスタンダードな人の行動背景をひも解き、具体的な対応策を示す。矛盾した態度を上手に扱い、健全なコミュニケーションを保つためのヒントを紹介する。

ダブルスタンダードとは

ダブルスタンダードは、ある事柄に対して、状況や対象者によって異なる基準を適用する行為を指す。

たとえば上司が部下に「時間厳守」を強調しながら、上司自身は遅刻を繰り返すなど、言動が矛盾すると周囲は理不尽さを感じる。こうした態度がたびたび見られる環境では、コミュニケーションが歪み、相互不信やモチベーションの低下を招きやすい。

ダブルスタンダードの起源

ダブルスタンダードという言葉は英語では「double standard」と表記される。18世紀に女性差別を論じる文脈で使われ始めたのが起源だとされている 。さらに1930年代のアメリカ社会でも、特定グループへの不当な扱いが問題視される過程で普及したと言われる。(※1)

学術的には、アメリカの社会学者、ロバート・K・マートンが「内集団の美徳と外集団の悪徳」を指摘し、ドイツの社会学者、マックス・ウェーバーは「対内道徳と対外道徳の二元論」を説明したとされる。(※2)

いずれも、自分たちとそれ以外を区別する心理や制度が、二重の基準を生む要因であると示唆している。社会全体の構造を理解することで、ダブルスタンダードな人個人の問題にとどまらず、背景にある仕組みや文化を把握しやすくなるだろう。

※1出典:The Phrase Finder「Double standard」
https://www.phrases.org.uk/meanings/double-standard.html
※2出典:野村一夫「ダブルスタンダードの理論のために」
https://core.ac.uk/download/pdf/223191661.pdf

▼より詳しい歴史や定義について知る 

ダブルスタンダードな人の特徴と背景

ダブルスタンダードな人の行動パターンや心理的側面を理解することは、適切な対応を考えるうえで欠かせない。ここでは、具体的な特徴や背景要因を掘り下げる。

特徴の一例として、自分にだけ甘く他人に厳しい態度が挙げられる。逆に自分には極端に厳しく、周囲には優しすぎる場合もある。いずれも、同じ基準が一貫して適用されていない点が共通している。これらは本人の価値観や過去の失敗、育ってきた環境など複合的要素によって形成されると考えられる。

ダブルスタンダードになる人の背景

矛盾する態度の背景には、個人の内面に潜む不安やコンプレックスが影響するケースも多い。過去の苦い経験から自己評価を低く設定し、他者へは高い基準を押しつけてしまうことがある。また逆に、自己正当化を図るために一貫性をあえて保たない人もいる。こうした心理を丁寧に見極めることで、相手に振り回されることなく冷静な対応が可能となる。

家庭環境や職場の文化も見逃せない要素である。たとえば、世代間ギャップの大きい家庭では「昔はこうだった」という価値観を押しつける親がダブルスタンダードになりがちだと指摘される。職場においては、上司や先輩が「新人を厳しく鍛えるべき」と信じる一方、自分自身はそのルールに従わないなど、古い慣習が原因で矛盾が生まれる場合がある。

このように、ダブルスタンダードな人は必ずしも悪意をもって行動しているわけではない。矛盾の裏にはさまざまな心理的葛藤や社会的圧力が存在する。背景を理解することが、相手との衝突を和らげるだけでなく、長期的に良好な関係を築くためにも大切なステップとなる。

矛盾する態度を生む社会構造

ダブルスタンダードは個人の性格の問題だけでなく、社会や組織の構造によっても促進される。ここでは、いくつかの具体例を挙げて社会レベルでの要因を検討する。

企業においては、正社員と非正規雇用の待遇差が典型的事例といえる。同じ職場で類似の業務をこなすにもかかわらず、正社員は賞与や福利厚生で優遇され、非正規社員には厳しい環境を課すことが少なくない。(※3)こうした状況が続くと、不公平感だけでなく、“公には平等を掲げているが実態は違う”というダブルスタンダードが生まれやすい。

ジェンダーの問題も深刻である。スポーツ界で男性と女性の待遇が異なり、女性選手にだけ厳しい規制やコスチュームルールが課せられる場合などが挙げられる。名目上は「平等な競技機会」を掲げながら実際には別の基準を適用することで、メディアや市民が矛盾を指摘する事態になる(※4)。

政治の領域でも、永住外国人の納税を求めながら参政権を十分に保障しないといった構図が見られるとの議論がある。法制度と社会的認識のずれが、ダブルスタンダードを温存する原因になり得る。つまり、個人の態度だけでなく、社会全体が矛盾を誘発する土壌を持っていると言える。

こうした組織や社会構造を改善するには、ルールや法律を見直すだけでなく、集団全体で矛盾を共有し合う姿勢が不可欠である。下からの声を吸い上げる仕組みづくりや情報公開の徹底など、透明性と公正性を確保しようとする取り組みがダブルスタンダードの抑止につながるだろう。

※3 参考:朝日新聞デジタル「スト実施のバス会社、非正社員にも夏賞与」
https://www.asahi.com/articles/ASR8264W4R82IIPE003.html
※4 参考:日本オリンピック委員会「ジェンダーの『ダブルスタンダード』『ダブルバインド』」
https://www.joc.or.jp/about/women-leader/words/03.html

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ダブルスタンダードな人への対応策

ダブルスタンダードな人への具体的な対応策を知ることで、トラブルやストレスを最小限に抑え、良好な関係を維持できる可能性が高まる。ここでは、日常的に実践しやすい方法を中心に解説する。

感情的対立を回避しつつ問題提起する

正面から「矛盾している」と指摘すると、相手の防衛反応を呼び起こす恐れがある。まずは相手の言動が自分に与えている影響を冷静に伝え、「一貫性のある基準で取り組むと助かる」といった表現で改善の余地を示唆する。必要があれば、状況を客観的にまとめたメモや具体的な事例を提示し、相手が「それなら仕方ない」と納得できる材料を用意する。

共通ルールを設定する

職場や家庭など、継続的に同じ空間で関わる相手に対しては、共通のルールやスケジュールを明確化することが効果的である。例として、門限や会議の開始時間などを紙や電子掲示板に明示し、守らなければならない理由を共有する。こうした合意形成によって「特定の人だけ例外」が発生しにくい環境を作り、ダブルスタンダードを減少させる。

距離を取る柔軟性を持つ

接触頻度が高いからこそ衝突が生まれる場合もある。物理的あるいは心理的な距離を一時的に取ることは、目の前の感情的応酬をクールダウンさせるうえで有効である。たとえば、職場であれば席を離す、仕事のやり取りをメールやチャットに限定するなど、コミュニケーション手段を調整して負担を軽減する。

相手を責めすぎない

ダブルスタンダードな人の背後には、先述のように様々な心理的・社会的要因が存在する。相手を責め立てるだけでは反発を招くだけでなく、問題解決が先延ばしになる恐れもある。矛盾を感じた時は、まず自身の主張や行動を客観的に振り返り、相手に過度な負担を与えていないかを点検する姿勢が信頼関係の維持に役立つ。

必要に応じて専門家や第三者を交える

社内トラブルや家族間の問題が深刻化している場合、カウンセラーや上司など第三者の視点を加えることで公平な議論が進みやすくなる。相手も「自分ばかり責められている」という感覚をやわらげ、冷静に意見を聞く下地が作れる。特に組織においては、管理職や専門部署のサポート体制を活用すると互いの負担を減らしつつ事態を整理できる。

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組織や社会ができる取り組み

ダブルスタンダードは個人の問題にとどまらず、組織や社会全体の風土によっても助長される。ここでは、より大きな枠組みでの取り組みを紹介する。

制度上の取り組み

法制度の整備や企業の人事制度改革は、ダブルスタンダードを抑止するうえで欠かせない。具体的には、雇用形態による待遇格差を是正する法律やガイドラインの策定、啓発キャンペーンの強化などが挙げられる。また、ジェンダー平等を促進するためにスポーツ団体や教育機関が運営指針を見直すなど、公的な取り組みも増えてきている。

組織づくりでの取り組み

組織内では情報共有の仕組みが重要となる。トップダウンで決まった規則や方針が末端まで十分に伝わらないと、「自分の部署だけが違うルールを課されている」という誤解が生じやすい。さらに、部下の意見を吸い上げる仕組みが整っていないと、透明性を欠く判断が横行し、ダブルスタンダードの温床となる。定期的なミーティングやアンケートの活用など、下からのフィードバックを受け付ける体制が望ましい。

意識改革

教育現場でも、道徳教育や社会科の授業を通じて「二重基準」の問題を意識させる試みが進んでいる。差別や偏見、いじめ等にもダブルスタンダードが関わる例は少なくないため、小・中・高といった段階で矛盾を生む心理や社会構造を学ばせることは大きな予防策となる。

組織や社会全体でダブルスタンダードに目を向け、問題点を共有する空気が醸成されれば、個人における態度の矛盾も自然と減っていく。そうした場づくりと制度づくりを同時に進めることが、ダブルスタンダードの本質的な解決につながるだろう。

まとめ

ダブルスタンダードな人をめぐる問題は、個人の性格や心理状態のみならず、社会や組織の構造とも深く結びついている。一貫性のない基準に翻弄されることを防ぐためには、相手の背後にある要因を理解し、共通ルールの整備や第三者の活用などを柔軟に組み合わせることが重要である。

さらに、企業や行政、教育機関が制度改革や情報共有を推進することで、矛盾の原因そのものを軽減できる可能性が高まる。まずは周囲の矛盾に気づき、小さな行動から改善を始めることが、健全な人間関係と公正な社会への第一歩となる。

 

文・編集:あしたメディア編集部

 

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