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【編集部体験記No.3】「コーチング」って本当に意味がある?編集部員がコーチングセッションを受けてみた|コーチングと瞑想(前編)

近年、コーチングやマインドフルネス、瞑想など、自分の内面に向き合うことへの関心が高まっていると感じる。コロナ禍を経て働き方やキャリアについて考える機会が増えたからか、周りにも実践している人が多い。一方で、コーチングや瞑想の実態が分からず「うさんくさい」「本当に効果があるの?」と感じている人も多いのではないだろうか。筆者も、興味はあるが懐疑的に感じていた1人であった。

そこで、筆者と同じように感じていたあしたメディア編集部員が実際にコーチングと瞑想を体験し、どういった変化や効果があったかを検証した。さらに、コーチングと瞑想を担当いただいたプロコーチの時田真奈さんにもお話を伺った。

前編ではコーチングに関する内容を、後編では瞑想に関する内容をご紹介する。

コーチングはどんなことをするのか

そもそもコーチングとはどういったものだろうか。過去にあしたメディアで「コーチング」について紹介した記事によると、「コーチは一方的にアドバイスをしたり、教えたり、指示を出したりするわけではない。対話を重ね、クライアントの考えを引き出し、クライアント自身が目標達成のための道筋を見つけられるように支援する。」と記載されている。

▼あしたメディアで「コーチング」について紹介した記事はこちら

コーチングは、新しい学びを得る教育・研修とは違い、コーチとの対話を通じて自身の考えと向き合い、仕事や人生の目標達成を目指すものだ。そのため、コーチングのセッションは、コーチと1対1で定期的に行うケースが多い。そこで、筆者たちは、60分の個人セッションを2週間おきに3回受講した。

どうしてコーチングが注目されているのか

コーチングはマネジメントスキルの一つとして、ビジネスパーソンやアスリートを起点に注目が広がってきた。世界のコーチング市場は2024年には26億2,000万米ドル(4,055億円)に達し、年間7%で成長すると予測されている大きなマーケットだ。(※1)

日本でコーチングを受けたことがある人は実際にどのくらいいるのだろうか。『ZaPASS JAPAN』が日本のビジネスパーソン200人に実施した調査によると、過去にコーチングを受けたことがある方は全体の約2割ほどであった。(※2)

これらの結果から、コーチングの実態と世間の関心度は分かったが、実際に効果があるのかを検証するために、プロが提供するコーチングセッションを受けてみた。

※1 参照:株式会社グローバルインフォメーション『ビジネスコーチング市場:コーチングタイプ、タイプ、エンドユーザー別- 世界予測2024-2030年』
https://www.gii.co.jp/report/ires1492264-business-coaching-market-by-coaching-type-career.html
※2 参照:ZaPaSS JAPAN 株式会社『コーチングは怪しい?ネガティブなイメージを持つ人がいる一方で、 コーチング利用経験者の約7割が仕事でのパフォーマンス向上に効果を感じたと回答』
https://zapass.co/news/240703

コーチング体験者の座談会

コーチング受講後に、コーチングを体験した4名のあしたメディア編集部員で、実際に体験してみてどうだったかを話した。

以下は、コーチングを受講した4名のプロフィールである。

コーチングを受ける前の印象

A:以前に受講したときはキャリア形成という明確なテーマがあり、ある程度役に立ったと感じました。ですが、私が悩んでいた「漠然とした不安がある」という抽象度の高い相談に対しても効果があるのかは疑問を持っていました。

B:コーチングは、自己分析のようなことをするものだと認識していたので、「お金を払ってまでお願いする必要性があるのかな?」と疑問に思っていました。

C:コーチングを受けたことのある同僚は、「キャリアについて相談していた」と話していたので、キャリアに関する悩みをざっくばらんに相談する場だと思っていました。そして、その悩みに対して、コーチは一緒に伴走してくれるのかなと思っていました。

D:コーチングは自己啓発ブームのなかで話題になっている印象で、“うさんくささ”を感じていました。相談事に対して、コーチの方に「こうした方がいいよ」や「こうするべきだよ」と一方的に言われるようなイメージを持っていました。

コーチングを受けてみた感想

A:よかったです。コーチングを受ける前は、不安を解消する方法が知りたいと思っていましたが、コーチと対話するなかで解決方法よりも「なぜ不安になるのか」を理解するほうが大事だということに気付くことができました。私は不安に駆られて頑張りすぎてしまう性格なのですが、ありのままの自分も悪いわけじゃないという捉え方ができるようになりました。

B:コーチングは、自己分析を効率的に行える選択肢の1つだなと感じました。例えば、自分1人で自己分析した際には3時間ぐらいかかることを、コーチの方と一緒に行うと1時間ぐらいでできるイメージです。また、他の人からの視点をもらえることと、自分の年齢では時田さんの方が社会人経験も人生経験も長いので、経験に基づいた視点で話ができることは魅力だなと感じました。

C:楽しく、とても充実した時間でした。私は言語化が苦手なので、仕事において嫌だなと感じる部分をどうやったら解消できるかなどをコーチと一緒に丁寧に言語化できて良かったです。

D:「一方的にいろいろ言われそう」という想定したイメージと違って驚きました。コーチの方は“言葉が出るまでは待つ”というスタンスでいてくださり、フラットな目線で自分自身と向き合うことができました。

コーチングを受けた際に印象的だったこと

A:「サブパーソナリティ」(※3)という考え方を教えてもらったことです。サブパーソナリティは、映画の『インサイドヘッド』みたいに、私たちの頭の中にもさまざまなキャラクターが共存しているという考え方です。自分の不安や怒りなどの感情に名前をつけて、俯瞰して分析したのがとても面白かったです。

C:私のコーチングのセッションのなかでもサブパーソナリティの話を聞きました。相反する自分の感情を上手く捉えるために良い考え方だなと思いました。

D:私は対人関係の話を相談したときに、MBTIを用いて解決方法を一緒に考えたりしていました。

B:コーチングでは心理学に基づいて話を聞いたり、進めてくださるところもありましたね。

初対面の方と話すことについて

B:コーチングでは初対面の方と話すので、最初の方は抵抗感を抱いていたのですが、みなさんはいかがでしたか。

A:私は過去にコーチングを受けたことがあったので、ガードを固くしすぎると、あまり良い時間にならないかもと思っており、ガードを解くことを意識していました。

D:コーチはしっかりとお話を聞いてくれる方だったので、とてもお話しやすかったです。初回のコーチングで「私は応援する立場です」と言ってくださったので、心理的安全性を感じて話すことができました。

B:コーチが、同僚や上司などの会社内の関係性でもなく、友人や家族でもない関係だと、さまざまなことを相談しやすい相手だったりはしますよね。

またコーチングを受けたいかどうか

A:相談したかった悩みについては今回のコーチングで集中的に話すことができて、問題の捉え方を知れました。これからは半年ごとなど、少し間を空けて継続してみたいなと思っています。

D:今回のコーチングでは、いまある自分の感情を観察する「内省」の​​方法も教えてもらいました。内省で自分を振り返りながら、プロコーチの方と一緒に振り返る時間を長期的に持てればいいかなと思っています。

B:私も内省でいまは十分かなと思っています。もし、他の人の視点による意見を聞きたいときや自分で振り返る余裕がないときは、またプロのコーチングを受けても良いかなと思っています。

C:受けるとしたら毎月実施したいなと思っています。自分から漠然とした悩みを話すことがないので、誰かに聞いてもらう場が定期的にあるといいなと思ったからです。また、仕事などの状況の変化により、新たな不安も出てくると思うので、その悩みも話してみたいです。

※3 用語:1人の人間の中には様々な人格が存在しているという考え方。

プロコーチに聞いた、コーチングの魅力とは?

今回セッションを担当いただいた、プロコーチの時田真奈さんにお話を聞いた。

▼プロコーチの時田真奈さんについて

プロコーチの時田真奈さん

今回はコーチングを受けさせていただきありがとうございました。コーチングではどんな悩みを聞くことが多いですか。

キャリアに関する悩みが多いですかね。「このままでいいのかな」や「不満はないけど漠然とした不安があります」といった抽象度の高い悩みも多いです。あとは、やりたいことがいっぱいあるけど、何から手つけていいのかわからなくて、整理したいという方もいらっしゃいますね。

そうなんですね。コーチングを受ける前に、どういった悩みを相談するのが良いか迷っていたので、気になりました。

本当にどんなテーマでも大丈夫です。コーチは答えを持っていないという前提に立って進めていて、何かを教えるというアプローチをしないので。

初めてコーチングを受けてみて、コーチングとカウンセリングは、受講者の内面に向き合う点で似ていると感じました。両者の違いを教えてください。

コーチによって捉え方が分かれるところだとは思いますが、一般的に「カウンセリング」は過去のトラウマや思考の癖を扱って、マイナスな状態を、ゼロに持っていくようなイメージです。一方で、「コーチング」は理想の状態や言語化されてない潜在意識を使って、前向きな変化に向けてアクションを繋げていくイメージです。コーチングではカウンセリングや精神領域の診断には関与できないので、その際には主治医の方にご相談いただくようにしています。

▼「カウンセリング」や「ティーチング」などと「コーチング」の違いを紹介した記事はこちら

自分ひとりで行う「ジャーナリング」や「セルフコーチング」などの手法もありますが、コーチがつくとどんなメリットがありますか。

コーチがいると、自分1人で問いに向き合っていても絶対に出てこない観点でのフィードバックを受けることができます。例えば、自分ではポジティブなことを言っているつもりでも、気づかないうちに顔が強張っていることもあります。コーチがいることで、自分では気付かない矛盾や葛藤にも客観的に向き合うことができます。

確かに客観的に自分のことを知れますね。また、今回受けてみてコーチとの相性も重要かと思いました。

そうですね。コーチングに何を求めているかは人それぞれだと思うので、何人かのコーチを試してみることをおすすめしています。ジムも入会する前に、いろいろなジムへ体験に行くことと同じような感覚です。私自身もコーチングを受けているのですが、いままで5人のコーチにお世話になり、いまの自分に一番合った方にコーチをお願いしています。

最近はSNSの影響で、なりたい自分像のハードルが高くなっていたり、他者と比較して自己肯定感が下がりやすくなっているのではないかと感じます。コーチングでも、そういった不安を抱える方は多いですか。

現状に対する不安を抱えている方が増えている実感はあります。おっしゃるとおり、「自分は何か欠けているんじゃないか」と、他の人と比べてしまいやすいとは思いますね。 

明確な正解がない時代になったということも、不安の理由になっていると思います。いままでは、大企業に入れば一生安泰で、人生の正解を選べたような感覚もあったと思います。ですが、この十数年は、大企業であっても倒産の危機があり、災害やパンデミックで社会が揺らいだりと、何が起こるか分からない世の中になっていますよね。

不確実な現代だからこそ、自分の内面に関心が高まっているのですかね。

そうですね。「社会に絶対の正解は無い」という意識が広がったことで、自分の中の揺るぎない正解を持つために、コーチングが話題になってきているのかなと感じています。

最後に、時田さんはコーチングをどのような方におすすめしたいですか。

忙しく働く方にこそ、おすすめだなと思います。仕事をしていると、どうしても課題解決思考になっていきますし、会社の研修でもそういった能力を鍛えることが多いと思うんですけど、そればかりでいると、感情が置き去りになるんですよね。

すごく忙しく働いていて、課題解決思考を使っている人ほど、コーチングで「いまどんな気持ちですか?」と聞いても答えられない方が多いです。でも、感情を無視したまま過ごすといつかガタが来るはずですし、感じたことをきっかけに人生が動くことも多いと思います。その点で、自分の心や感覚に向き合う時間がとれていない方にはとくにおすすめしたいですね。

おわりに

コーチング体験や時田さんのお話を通して、コーチングは自分自身の内面を深く理解していく営みであることを知り、懐疑的な印象を解消することができた。

たくさんのコンテンツが世に溢れ、SNSの利用が増えた現代においては、「自分が周囲からどう見えるか」「他人と比較して自分はどうか」に意識を向けることを日々求められているようにも感じる。そして、そんな状況に息苦しさを感じている人も多い。

幸せは、他者の中に答えがあるわけではなく、自分の中にしかないのではないだろうか。コーチングはあくまでも一例だが、自分自身と深く向き合う機会を意識的に作っていくことが、これからの人生において重要になるだろう。

※本記事に記載された見解は各ライター・体験者の見解であり、BIGLOBEまたはその関連会社、「あしたメディア」の見解ではありません。

 

取材・文:前田昌輝
編集:中山明子

 

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