
映画や連続テレビ小説出演など、俳優として多方面で活躍中の板垣李光人さん。アートにも深い興味関心を持っており、過去には自身の個展を開催したり、美術館展のアンバサダーとして活動していたりという経験も。俳優のみならず、アーティストとしても躍進中だ。
そんなマルチな才能を持つ板垣李光人さんに「絵本作家」という新しい肩書が加わった。
2025年11月6日にGakkenより書籍販売を開始した絵本『ボクのいろ』は、色とりどりの世界で、自分にだけ色がないことに悩む主人公「ヌル」が自分らしさを探す、優しくて心温まる物語。自分自身の在り方に迷い、悩む人にぜひ手に取ってほしい1冊である。
あしたメディアは、板垣李光人さんの絵本作家としてのこだわりや「自分らしさ」を愛し肯定する生き方についてなど幅広く紹介する。板垣さんの魅力や作品に対する想いに迫りたい。

ボクのいろ
俳優として活躍中の板垣李光人さんが作・絵を手掛ける初の絵本。
真っ白なからだを持つ、不思議な生き物のヌル。
色とりどりの世界で暮らしながら、「どうして ボクだけ 色がないの?」と悩み、さまざまな出会いを経て自分の色を探す物語。子どもから大人まで幅広い世代に読んでほしい、ありのままの自分を大切にしたくなる1冊。
2025年4月に絵本投稿サイト「よみきかせキャンバス」にてデジタルで発表された作品を加筆修正し、描き下ろしを加えて書籍化した。バンダイ初の絵本投稿サイトである「よみきかせキャンパス」サービス公開のニュースから、オフィシャルクリエイターを務める板垣李光人さんが手がけたデジタル絵本の存在を知り、Gakkenから「ぜひ書籍化を!」とオファーしたことが始まり。
優しいイラストと読む人を前向きな気持ちにさせてくれるストーリーは、子どもから大人まで幅広い年齢層の心をつかんでおり、早速重版が決定している。
(絵本の詳細は「学研出版サイト」へ)
絵本作家としてのこだわりや、作品への想い

絵本作家デビューが決まった、いまの率直な気持ちをお聞かせください。
まさか自分が絵本を出版するとは思っていませんでした。他の役者がなかなか持っていない肩書をいただけたことが嬉しいですし、自分の作品がいろいろな方の手元に届くと思うと喜びでいっぱいです。SNSで実際に絵本を読んでいる子どもたちの写真や動画を見て嬉しく感じています。
『ボクのいろ』は小さい子どもから大人まで、年齢を問わずに楽しめる絵本だと思いました。
ターゲットが狭くならないようにしたいなと考えていたので、子どもやその親御さんはもちろん、大人が手に取っても楽しめる絵本を目指して執筆しました。
絵本を製作する過程で苦労したこと、楽しかったことを教えてください。
連続する絵の中でどのようにバリエーションを持たせるか、模索することに苦労しました。
たとえばアングルを考えるときも、寄ったり引いたり、ヌルを鏡越しや真上から描いたり…試行錯誤したと思います。

大変な工程でしたが自分の新しい引き出しを探す作業はとても楽しかったです。絵を描いて、文章を考えて少しずつ形を整える過程で、テトリスのようにぴったり収まる瞬間を見るのは「モノを作っている!」という実感を得ることができ、とても達成感がありました。
作中で、1番好きなページとその理由を教えてください。
赤い妖精が主人公のヌルに花をプレゼントするページです。紙媒体の場合、ページを1枚1枚めくる高揚感やワクワクを味わうのが醍醐味だと思うので…。開いたときに華々しさを感じられるデザインにしたいと思い、とてもこだわった部分なのでお気に入りです。
企画の段階で、花をモチーフにした妖精を3体登場させることは決めており、赤い妖精は1番最初にできたページなので思い入れもあります。

絵本が形になるまでの流れと、完成までに要した期間について詳しく教えてください。
まずはざっくりとした構成と「花を擬人化したキャラクターを出したい」というイメージを考えました。次に、花の妖精が登場するストーリーにするにはどのような前段階と結末にしたら良いか流れを決め、絵を描いてストーリーも考えて…と並行しながら進めていきました。
プロットを作るのに1ヶ月、ブラッシュアップするのに3ヶ月くらいはかかりましたね。
主人公のヌルと自分自身に重なる部分はありますか?
ヌルのような感覚を自分も持っているからこそ、この話が書けたのではないかと思っています。
ヌルは花に水をあげることが好きで、水やりを地道に続けることで花が開花し、誰からも奪えない「貴重な経験」という名の財産を手に入れます。
それはいまの自分が置かれている状況、たとえば芝居を続けてきてさまざまな作品にご縁をいただいたり…と重なる部分なのではないかと考えます。
色探しは人生。夢中になれる自分の「好き」を見つけるということ

自分らしさや自分の「好き」を愛するという絵本のテーマ。板垣さん自身、人生が豊かになったと感じる瞬間はありますか?
基本的に「好きなことを仕事にしている」とてもありがたい状況に身を置いていると思っています。
僕自身、芝居はもちろんアート・絵などで「表現」することがとても好きなので「自分らしい表現」が仕事につながることで自信になります。
自信を持ったことで、いままで以上に自分を愛することができるという良いループが生まれていると感じています。
ありのままの自分を愛することは難しいですか?それとも簡単でしょうか。板垣さんのお考えを教えてください。
難しいと思います。
作中でも描かれていますが、社会で生きるためには誰もが必ず集団に属します。集団の中にいると、どうしても自分と自分以外の誰かを比較してしまいますし、自分が持っていないものは一層輝いて見えます。
その執着から脱することは、僕自身も一生不可能だと思います。完全に切り離すのは難しいですが、「うまく付き合う」という考えに変えてみると、少しはありのままを愛することができるのではないでしょうか。
板垣さんは、自分の色を何色だとお考えですか?
役者に対して、いろいろな役に染まることができて何色にも変化できる「白」のイメージを持つ方も多いかもしれませんが、僕自身の色は「黒」だと思っています。
黒色は、光の当たり方や生地など、そのときの状況によって色の見え方が違うという特徴があります。自分の色を変えるよりも「さまざまな見せ方で異なる表情を見せながらも、あくまで“黒”の根底は同じ」というのが僕のタイプかなと思っています。
ちなみに好きな色は3か月ごとに変わるのですが(笑)、いま1番好きなのはグレーです。私服もグレーが多いです。
自分らしさや自分の居場所に悩んでいる方に向けて、ぜひメッセージをお願いします。
小学校・中学校・高校・大学、そして社会に出て会社に就職したり仕事をするうえで、集団に属することは安心感につながります。ですが集団から自分が少しでもはみ出ていると感じた瞬間に安心感は劣等感に変わってしまいます。
そのなかでも、ヌルのように何か夢中になれることがあって、好きになれることがあって得た経験や出会いは何にも代えがたい財産になりますし、それを持っていることが自分を愛することにつながります。
いろいろな経験を積んできた大人の方であれば、絵本が伝えたいメッセージを感じていただけると思いますし、子どもたちもいずれそんな悩みに直面する瞬間がやって来るでしょう。
『ボクのいろ』を転ばぬ先の杖として持っていただけたら嬉しいなと思います。
学びが多かった2025年と、これからの目標

2025年を振り返ると、どのような1年でしたか?
年の瀬に毎回必ず思うのは「まだやっていなかった新しいことがあるのか!」という驚きです。
今年は報道の番組でパートナーを務め、海外を含むさまざまな場所へ取材に行きました。役者としてはもちろん、人間としての力を付けていただいた1年だったなと思います。
絵本の発売もそうですし、今年もたくさん新しい経験をさせていただいたなと。
2025年もあとわずか。年内に「これはやっておきたいな」と思うことはありますか?
やりたいことはあるのですが、何をしたら良いのか悩んでいます(笑)。今年はクリスマスマーケットに行ってみたいですね。実はあんまり行ったことがないので、空いてそうな隙を狙ってクリスマス気分を味わいたいなと思います。
絵本作家として、ゆくゆくは2作目以降もお考えなのでしょうか。
描いて良いのであればトライしてみたいです。次は大人向けの怖い絵本を作るのも面白そうだなと、漠然と思っています。

板垣さんの絵本に対するまっすぐで真摯な思いは多くの読者のもとに届いている。巻末のあとがきに救われ、背中を押される方も多いのではないだろうか。
読み聞かせイベントでは、「保育園ならわかるのですが、大人たちに読み聞かせるのは後にも先にもない経験だなと思い、かみしめておりました。同じ本を子どもたちに向けて読んだらどのような反応になるのか気になります。」と素敵な笑顔を見せていた。
読了後に優しい気持ちになれる絵本はクリスマスギフトにもぴったり。心温まるストーリーに癒やされてみてはいかがだろうか。

板垣 李光人(いたがき・りひと)
俳優。2002年生まれ。2012年に俳優デビュー。映画『八犬伝』『はたらく細胞』『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。25年放送『秘密~ THE TOP SECRET ~』でゴールデン帯連続ドラマ初主演。他出演作に『仮面ライダージオウ』、大河ドラマ『青天を衝け』『どうする家康』『silent』などが挙げられる。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』では、雨清水三之丞役で出演中。
俳優業のほか、2024年に初の個展を開催、2025年11月6日には絵本『ボクのいろ』書籍発売が始まるなど、幅広いジャンルで活躍中。
取材・文:田宮 有莉
編集:conomi matsuura
写真提供:徳永 徹
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