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『じゃあ、あんたが作ってみろよ』杉田彩佳Pに聞く「反省と脱依存の再生ロマンスコメディに込めた想い」

今期一番の話題作といっても過言ではない、TBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(以後、文中では『あんたが』と表記)。原作は、谷口菜津子さんの同名漫画。カップルの鮎美(夏帆)と勝男(竹内涼真)が、プロポーズ直後の別れから、自分が“当たり前”だと感じていた価値観を見つめ直し、自分を変えていこうとするために奮闘する物語だ。

私たちはめまぐるしく変わる時代に生きているが、生まれ育った価値観を変えることはそう簡単じゃない。そんなとき、自分はどうしたらいいのだろうか。『あんたが』には、笑いあり涙ありの物語の中に、勝男や鮎美をはじめとする登場人物たちのさまざまな変化が丁寧に描かれており、立ちすくみそうになる人たちや変わりたいと願う人たちに寄り添ってくれる。

今回は、『あんたが』のプロデューサーを務める杉田彩佳さんにインタビューを実施。ドラマを通して伝えたいメッセージやドラマ化にあたり大切にしたことなどについて伺った。

©TBSスパークル/TBS

勝男はずっと一途であってほしい

原作を読まれたときの感想を教えてください。

当時の上司に薦められて読んで、率直に「面白い!ドラマ化させてもらえないかな」と思いました。個人的に、作品のストーリーにはキャラクターに宿る「〇〇なのに××」という逆説がすごく大事だと思っています。たとえば『あんたが』だと、勝男はハイスペックなのに時代遅れで一言多い、鮎美は献身的なのに実は安定のために頑張り続けているとか。ほかのキャラクターもですが、それぞれ「〇〇なのに××」という矛盾や揺らぎを抱えているんです。

同じことは現実にもよくあることだなと思っていて、だからどの登場人物にも共感しやすいし、彼らが思ってることが直で伝わる。ここは特に原作の魅力的な部分だと思います。

今回のドラマ化で意識したことはありますか。

『あんたが』をドラマにするならどんなテーマで、どんなストーリーで、どんな方向性だと面白いんだろう、と考えたときに「まずは二人がくっつくか、くっつかないのかをハラハラしてもらえるドラマにしたい」と思いました。それで本作を、「別れから始まるロマンスコメディ」と銘打って、企画書にしました。

それと、「勝男は鮎美にずっと一途であってほしい」というところも意識しました。これはきっと原作者の谷口先生も大事にしてきたことですし、私たちもずっと守ってきたことです。一途であるがゆえの泥臭さや真面目さは共感してもらいたいと思ったので、恋愛はしていませんが、愛情や好きという感情は大切にしました。

あとは、二人をどのように会わせるかというところですね。ストーリーは別れから始まっているので、鮎美と勝男がなかなか一緒にいる場面が少ないんですけど、脚本の安藤さんがドラマオリジナル要素として二人のシーンを考えてくれました。そのおかげで、物語の切なさやあたたかみがより伝わるようになったと思います。

©TBSスパークル/TBS

後悔・反省・成長・再生を伝えたい

ドラマのメッセージとして伝えたいことがあれば教えてください。

原作を読んだときに「時代や価値観がどんどんアップデートされるなかで、自分の当たり前”がこのまま置いてきぼりになったらどうなるんだろう」という感覚がありました。

鮎美と勝男もずっと二人だけの閉じた世界で生きてきた。その二人が扉を開けて新しい世界に踏み出して、時代の変化に追いついていけるのか、時代にどう順応していくか、その過程において“自分”を見つけられるかを一番大事にしました。原作同様にドラマでも、後悔・反省・成長・再生、この四本柱は絶対見せたかったんです。

ドラマ化が発表された時のプロデューサーコメントで「変わっていく時代に、自分はどこまで追いついていけるだろうか」とおっしゃっていたことも印象に残っています。そのような不安はどのようなときに感じますか。

常日頃感じますが、一番は人との関わり方が変わってきてることでしょうか。

ドラマの中でも「上を目指すためのアドバイスだから」というセリフが出てきます。一見ポジティブにも聞こえる言葉なんですが、一歩間違えると、いわゆるパワハラに捉えられかねない表現だと思うんです。

私自身にも後輩が増えてきたこともあり、自分の発言に対して「あれ、今の言葉は使って大丈夫なんだっけ?」「これ、言ったらどうなっちゃうんだろう」とか、毎日のように考えます。言葉の使い方もだし、人との接し方もだし、あとはマナーのことも。時代が変わっていくなかで、自分では「常識」だと思っていた言葉や行動が相手にとっては当たり前”じゃないということが、増えてきたと思うんです。

自分のなかでは「当たり前だと思って使う言葉」が、相手にとっては鋭く届いてしまう場合ってありますよね。一見すると理解することが難しい言動を繰り返す勝男とも、この点では少し通ずる部分もあるなと思ってます。

©TBSスパークル/TBS

やってしまった後の反省を大事に描く

勝男は、亭主関白思考で、決めつけも激しい。けれども、勝男を否定したり、説教をするような描き方にはなっていません。勝男を描く上で意識したことがあれば教えてください。

口に出した言葉に悪気があってもなくても、相手の受け止め方次第でいい言葉にも悪い言葉にもなりえます。悪い言葉になってしまった後、ただ単に「すみません」と言って反省するだけではなく、言った側がどのように反省するのかを大事に描きました。

みんなが成長するドラマではありますが、成長した姿”より、それぞれが“どのように成長していくかの過程”を細かく描きたかったんです。以前、脚本の安藤さんがインタビューで答えていた通りなんですが「小さな変化は大事」で、その積み重ねが、キャラクターの成長過程に繋がっているのだろうなと。

勝男もたくさん反省していますね。

勝男でいうと、やってしまったことをちゃんと自分で反省して、鮎美と復縁するために変わりたいっていう目的は一貫してぶらさないようにしています。それを竹内さんが泥臭く演じてくれていることもあり、チャーミングに見えているのではないでしょうか。

たしかに勝男の言動は、いまの時代の価値観ではアウトだと思うところもありながら、応援したくなるという視聴者の声もたくさんありますよね。

一番は勝男と鮎美に「頑張れ!」と思ってもらうことが大事なんですけど、勝男を叱咤する声もいただいてまして。ケツを叩くじゃないですけど、「何言ってんだよ、勝男。バカヤロウ」みたいな。そこは「叱ってくれてありがとうございます」という風に受け止めています(笑)。

©TBSスパークル/TBS

鮎美は依存とどう向き合っていくのか

一方の鮎美も新しい出会いがありながらも、これまでの自分の軸との間でかなり葛藤しているように見えます。(インタビュー時点で第三話放送済み)

鮎美は髪色を変えたり、新しい友達ができたりします。でも、どんな出会いがあっても「人はそんなに簡単には変われない」という現実もあると思うんです。鮎美の姿を通して、そのときに生まれる孤独やつまずきを描きたかったんです。

第二話では、勝男の家で鮎美と勝男が出会うドラマオリジナルの場面が描かれましたが、この場面は、鮎美の「孤独感やつまずき」を見せたかったということでしょうか?

おっしゃる通りです。勝男はご飯を作るようになっていて、後輩とも仲良くおしゃべりをしている。自分よりも一歩先に進んでいる勝男の姿を見て、鮎美は「自分は変われていない」と取り残されているように感じてしまうんですね。これまで勝男に強く依存してきた鮎美だからこそ、彼が変わっていく姿を目の当たりにすることで、孤独やつまずきを感じるのではないかなと。

それらのつまずきや、新しい出会いを経て、鮎美は「女の子らしさ」の呪縛から徐々に解き放たれていきます。その過程を描く上で大切にしていることはありますか。

より“リアルに”描けているかどうかを大切にしています。

鮎美は好きな人に「好き」と伝える、その単純なことができない人なんです。

彼女は、ハイスペックな相手かどうか、将来が安定するかどうか、そういった“条件”を軸にして生きてきた人でもあります。だからこそ、新しい彼氏のミナトくんと出会ってすぐに同棲するという選択は、「結婚できる相手なのか」を自分の基準で確かめたい、という気持ちの表れなんです。

これは鮎美にとっての“大事な軸”である一方で、“依存”でもある。だからこそ、「その依存とどう向き合い、どう戦っていくのか」という過程が、鮎美を描く上でとても重要だと感じています。

それを夏帆さんがすごく大事に演じてくれていて。セリフの一言一言も、いろんなやり方を試してくれたり、ずっと台本読んで「こうした方がいいんですかね」「ああした方がいいんですかね」ってたくさん相談してくれました。勝男の成長とあわせて、鮎美の依存との向き合い方、戦い方を楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

©TBSスパークル/TBS

最後に、ドラマを楽しみにしているみなさまへメッセージをお願いします!

いつもご覧いただきましてありがとうございます!そして、応援も声も本当にありがとうございます。本作のテーマは、高円寺という舞台で起きる男女二人の大きな揺らぎと成長です。今後もいろいろなことが起こったりして、なかなか一筋縄にはいかない二人の成長物語ですが、最終話まで応援よろしくお願いします!

火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
TBS系にて毎週火曜よる10時放送中
さらに、第1話~第3話はTVerで無料見逃し配信中
U-NEXTでは全話配信中
Tver:https://tver.jp/series/srp2094kb1
U-NEXT:https://video-share.unext.jp/video/title/SID0238460?utm_source=copy&utm_medium=social&utm_campaign=nonad-sns&rid=PM022818794

 

取材・文:佐野楓
編集:吉岡葵

 

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