
インターネットやSNSを通じて情報が溢れた社会で、いま、若者は政治にどう関わり、政治をどう見ているのだろうかーー。
そんな疑問から実施した連載「若者が見る“政治のいま”」では、選挙権を持つ若者がどのように政治を捉え、関わっているのか、様々な角度から深掘りしてきました。
2024年は7月に東京都知事選挙、10月に衆議院議員選挙という大きな選挙が実施され、政治や選挙について会話をする機会が多い年だったのではないでしょうか。なかでも、若者の政治への関心や、SNSなどインターネットから取得する情報と投票行動などの関係性が頻繁にトピックとして引き合いに出された年でもあったように思います。
2024年10月から2025年1月にかけて、全6回で構成したこの連載。私たちの抱いた問いに対して、「若者と政治」の関係性として見えてきたことを、振り返ってみたいと思います。
2024年、衆院選で若者が着目した争点
連載の第1回では、2024年10月27日の衆院選前に、「若者が注目する争点(※1)」をピックアップして、各政党の政策をまとめた記事を発信しました。
「ジェンダー平等」「子育て支援」「経済・景気対策」、そして長年議論がなされている「憲法改正」に対象を絞り、現政権の方針と野党の政策、世論調査から見る国民の意見を紹介しています。
選挙に行く際のハードルの1つに、「どの政党に投票したら良いか分からない」という理由があると思います。選挙の際に各政党から提示される公約は幅広く、何を、どんな観点で選んだら良いのか、迷う人は多いでしょう。
そんなとき、まずは自分たち若者がいま直面している課題、ないし近い将来向き合うであろうライフイベント等に特化して政策を比較してみるだけでも、「自分はどんな社会求めているのだろうか?」を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
昨年の衆院選の振り返りがてら、改めて各政党の提示した政策を見てみる、そしていま政治で動いていることと比較してみる、というのも、政治への理解を深める1つになるかもしれません。
※1 注釈:本記事では、「若者が注目する争点」として、以下を参考に選定を行った。
・日本財団「18歳意識調査結果 第65回『総裁選/政治関心』」(2024年10月4日)にて「注力して欲しいテーマ(P11)」上位に挙がった3テーマ、「少子化・子育て支援」「経済・景気対策」「教育」をピックアップ
・日本経済新聞「選択的夫婦別姓、賛成69% 自民支持層も6割弱」(2024年7月29日)の記事から、選択的夫婦別姓に若年層が高い関心が見られたため、選択的夫婦別姓を含む「ジェンダー平等」をピックアップ
「若者は政治に関心がない」と言われる理由を因数分解してみると?
連載2回目では、若年層の政治意識や投票行動について研究する大阪経済大学 秦 正樹准教授に、研究から見える若者と政治の関係性を伺いました。
「若者は選挙に関心がない」という言葉はよく聞きますが、果たして本当にそうなのか。そしてなぜなのか。秦先生のお話から、それは「個々人の意識」に収斂されるものではなく、そうなってしまう背景や構造もあることが分かりました。
たとえば、就学、就職、結婚、子育て等、ライフステージの変化が激しい若者世代は、政治に求める「利益」の重点が次々に変化するため、政治に求めるものが分散しやすいこと。また、自分が政治家によって示される「利益」の当事者かどうかが分からず、投票に行くメリットを感じづらいこと。
それらの背景から、「自分にとって、投票に行くコストをかけてまで、得られる利益があるか?」を天秤にかけて考えたときに、利益が下回る場合には、投票に行かないケースがある、というお話がありました。確かに、そう考えると「利益がないから、行かない」という判断も、十分理解できるのではないでしょうか。
そのような背景の中で、若者はどうやって候補者を選んでいるのか? 候補者選定へのSNSの影響はあるのか? 「被選挙権の引き下げ」は、若者の政治参加の後押しになるか?等、幅広くお話を伺いました。
記事の最後では、秦先生の研究から見えた、「一票の価値」を理解した若者が選択する“ある行動”についても教えていただきました。現代の若者特有のメンタリティも、若者と政治を考える上で、重要な観点になると感じる取材になりました。

20代で政治家になるのって、実際どうですか?
連載3回目の記事では、20代で政治家になった若者当事者の女性2人に、政治家として政治に関わるリアルを聞きました。
お話を伺ったのは、渋谷区議会議員の橋本ゆきさんと、桶川市議会議員の榊萌美さん。
日本は20代、30代の議員が少なく、政治家というとどうしても、高齢男性がイメージされると思います。そのような中でも、どんな思い・きっかけで政治家を志したのか、実際に活動する中で若者としてどんなことを感じているか、じっくりお聞かせいただきました。


取材前は、「若者」かつ「女性」の議員となると、政界ではマイノリティであり、それゆえの苦労もあるのではないかと想像していました。しかしお2人のお話からは、隔たりなく周りの方と連携されている姿や、若者だからこそできる具体的な取り組みをたくさん伺うことができました。
最近では、お2人に続きたいという政治家志望の方から、連絡を受けることもあるそう。近い年代のロールモデルがいることで、政治を自分ごと化する一助になるというお話も印象的でした。もしかしたら、私たちは若者が政治家になるということに、高いハードルを感じすぎていたのかもしれないとすら感じる、前向きな取材となりました。
一方で、政治分野のジェンダーギャップは依然として高い状況にあります。ジェンダーの枠組みだけでなく、より多様な方が参画・活躍できる状況を作っていくことは、引き続きの課題と言えるでしょう。
▼女性議員が少ない理由について解説した記事はこちら
学生が捉える、「自分たちの世代と政治の距離」
続く4回目の連載でも、若者当事者にお話を伺いました。
取材したのは東京、札幌、神戸の各地で開催される、民主主義ユースフェスティバルの実行委員を務める学生3名。大学生と高校生の立場から、同世代の政治参加や社会課題解決に取り組む彼女たちの視点から、「若者と政治」について感じていることを聞きました。
若者当事者として、積極的に政治や社会課題に向き合う機会を設けている彼女たちが共通して求めていたのは、「政治家とフラットに、より身近な距離で話せる場」。SNSでなんでも調べられる現代社会でも、やはり直接話す場があるかどうかで、政治や社会との距離感とその印象は変わってくると話してくれました。
また、そんな彼女たちでも、周りの友人と政治について会話をすることはあまりないと言います。その背景として、自分の生活の中で政治の影響を受けると感じる機会がなかなかないことや、日頃の困りごとが「自分の困りごと」で止まってしまい、「社会の課題」に結びつかないことなどを話してくれました。連載2回目で、政治学者の秦先生に伺った内容とも結びつく部分があると感じる取材になりました。
選挙権の引き下げをちょうど体験した世代でもある彼女たち。若者当事者だから感じている、率直な「社会に対する不安」と「希望」についても、垣間見ることができました。
私たちは、カオスなインターネット時代に社会と向き合っている
連載の最後は、評論家の荻上チキさんとモデルの藤井サチさんの対談を、前後編に分けて掲載しました。
前編では主に、身近な人と政治の話をすることの重要さや、現代社会における自己責任論などについて伺いました。
私たちは日頃、政治の話を日常会話の中ですることはあまりないのではないでしょうか。その現状も、より深く紐解いてみると、歴史や教育の観点から、背景となる要因があると荻上さんは語ります。藤井さんご自身も、ご自身の経験を振り返りながら「いきなり大人になってから、『政治に興味を持って』と言われても難しい」と語り、その上で私たちはどうしていくと良いか、お2人の考えをお聞かせいただきました。
その他にも、現代社会で自己責任論が吹聴される背景と「性格」の関係、少しずつでも勉強をして「知っていくこと」の価値などについて、話していただきました。
後編では、現代社会と切り離せなくなったインターネットやSNSとの向き合い方について、さらに一段掘り下げてお話を伺いました。
SNSで発信することも多いお2人は、それぞれ情報を発信する際、気をつけているポイントがあると言います。また、最近のSNSのあり方によって、私たちは無意識に感情を刺激されているといった、カオスなインターネット社会における懸念も語ってくれました。そのような情報が氾濫した社会で、どのように情報を取得し、政治と向き合っていくべきか。お2人の話からは、情報に向き合うヒントがたくさんありました。
昨今、政治参加の手段として「まず投票に行こう!」という呼びかけをよく聞きます。それはもちろん、大事な政治参加の一歩ではあるでしょう。しかし、果たしてそれだけで良いのだろうか?そんな私たちの問いに対しても、その先に何が起こるのか、興味深い見解を聞かせていただきました。

間違ったっていい。まずは「自分の困りごと」を「社会」とつなげてみては?
全6回にわたって実施した、連載「若者が見る“政治のいま”」。様々な方の目線でのお話を通じて、歴史や教育、社会構造など、様々な範囲から「若者と政治」の関わりに生まれうる距離感を認識することができました。
立場もさまざまな方への取材を通じて、何回か出てきたキーワードがあります。それは、「自分の困りごと」が「社会」とつながっていないのでは?ということ。私たちは日々生活をするなかで、当たり前に社会と、政治と関わっています。しかし自分の身近な困りごとが、実は社会全体の課題であったり、政治によって変えられることであったりすることに気づかず、「私は政治と関係ない」と感じてしまっていることがあるかもしれません。
政治は決して難しいことではなく、自分の日常のなかで出会うお困りごとと、つながっているかもしれない。そんな目線を持つことも、若者と政治の距離を近づける1歩になるのではないでしょうか。
今回の連載を通じて、読者のみなさんの心のなかには、どのような視点や気づきが残っているでしょうか?私たちの暮らしに密接にかかわる政治について、どのような会話や関わり方から始めるのがフィットするか。「自分にあった政治との関わり方」を見つける手掛かりになっていたら嬉しく思います。
▼あしたメディアでは、過去に連載「『わたしと選挙』を考える」も実施しました。
ぜひ併せてご覧ください。
文:大沼芙実子
