よりよい未来の話をしよう

1,000人に聞いた若年層の意識調査 第2弾「男女格差とマイノリティ、キャンセルカルチャーに対する考え方」

「あしたメディア by BIGLOBE」では、主に若年層を対象とした意識調査を実施した。アンケート結果から見えてきた若年層の意識や傾向について、分析した内容を2本の記事に分けてご紹介していきたい。今回は第2弾として、男女格差とマイノリティ、キャンセルカルチャーに対する考え方」に関連する項目を取り上げる。(第1弾「恋愛・結婚や社会・政治に対する考え方」に関する記事はこちらから)

アンケートの実施方法と基本情報

本調査は、全国の18歳〜69歳までの男女1,000人を対象にアンケート形式で実施した。回答者は20代が500人、10代(18歳・19歳)、30代〜60代が100人ずつ、各世代の男女は半々である。調査日は2022年9月8日~9月9日、調査方法はインターネット調査で実施した。

ここからは、項目ごとに若年層の意識や世代別、男女別の意識の違いなどについてご紹介していく。

格差に対する考え方

2018年に厚生労働省が実施した調査では、日本の「相対的貧困率」(※1)は15.7%とされており、6人に1人が貧困ライン(世帯年収が127万円未満)以下での生活をしていることが報告されている。(※2)日本の貧困は見えづらいと言われることが多いが、このような状況に対する実感や懸念はどの程度あるのだろうか。まずは、格差に対する捉え方から見ていく。

全世代の70%以上が格差を懸念

グラフ1:「経済面などで格差が拡大することをどのように感じるか」という設問に対し、
「とても懸念している」「やや懸念している」と回答した男女別・世代別割合

「あなたは、経済面などで格差が拡大することをどのように感じるか」という質問に対して、「とても懸念している」「やや懸念している」と答えた人は、男女や世代によってわずかな差はあるものの、回答者全体で見ると平均値が70%を超えた。また、全体として女性の方が格差に対して懸念を示す傾向にあった。

※1 用語:その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態である世帯の割合。
※2 参考:厚生労働省「平成30年 国民生活基礎調査 Ⅱ各種世帯の所得等の状況(p14)」(2022年11月2日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf

男女平等に対する考え方

日本は男女格差が大きいとされており、国連からも度々警告を受けている。2022年の日本のジェンダー・ギャップ指数は146か国中116位で、先進国の中で最下位だった。(※3)これらの問題はどのように捉えられているのだろうか。

※3 参考:男女共同参画局「共同参画」2022年8月号『世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2022」を公表』 (2022年10月27日閲覧)
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2022/202208/202208_07.html

男女平等についての認識には男女差が大きい

グラフ2:「社会は既に男女平等だと思う」「男女は性差があるので平等にするのは難しいと思う」
「女性が社会で力を持つことに抵抗がある」という設問に対する男女別・世代別の認識差

グラフは男女平等に関連する設問の回答をグラフ化したものである。縦軸の「性差指数」は100に近づくほど「男性がより強く感じている」、-100に近づくほど「女性がより強く感じている」、0に近いと「男女差がない」ことを表す。グラフではとくに10代~20代、50代~60代で「性差指数」が100に近い数字となっているので、男性の方が女性よりも「男女平等は難しい」「女性が社会で力を持つことに抵抗がある」などと感じている場合が多いことが分かる。このことは、女性が日常生活で男女の不平等さに対して違和感を抱いている場合にも、男性はそれに気づいていないケースが多いということを示すとも見て取れる。

女性の60%以上が「男性が優遇されている」と感じている

グラフ3:「社会の中で男性が優遇されていると思う」という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と 回答した男女別・世代別割合

「社会の中で男性が優遇されていると思うか」という質問に対し、「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた人の割合は全体で50%を超えた。一方、回答には男女差があった。女性が全ての世代で男性が優遇されている事実を実感しているのに対し、男性ではそのように回答した割合が全ての世代で女性を下回っており、とくに20代〜30代の男性は「男性が優遇されているとは思わない」と答えた人の割合が半数以上だった。

全体の約75%が、「社会は男女平等だ」と思っていない

グラフ4:「社会は既に男女平等だと思うか」という設問に対する男女別回答割合

続いて「社会は既に男女平等だと思うか」という質問に対しては、「そう思わない」と回答した人の割合は女性が78%、男性が71%となり、全体でみると約75%が否定的な回答をした。

以上の3つのグラフでは共通して、社会における男女の不平等さを認識している人が半数以上いることが分かった。また、全体として女性の方がより不平等を意識しやすく、男女不平等の認識にも男女差が大きいことが分かった。

続いて、男女平等を実現するための手段として、クオータ制(※4)についてはどのように考えられているのだろうか。

クオータ制の導入には全体の60%弱が反対だが、女性は50%弱が賛成

グラフ5:「男女平等のため職場や政治などでクオータ制を導入した方が良い」 という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答をした男女別・世代別割合

これまで示したグラフから、社会における男女の不平等さについては一定の割合の人が認識していることが分かった。しかしながら、男女平等の実現に向けた1つの手段とされるクオータ制の導入については、全回答者の約55%が反対を示した。この設問に関しても、全体として女性の方が賛成をする傾向が見られた。

※4 用語:格差是正のためのポジティブ・アクションの手法の1つであり、一般的に人種・民族・宗教・性別などを基準に一定の比率又は人数を割り当てること。たとえば政治分野では男女間格差を是正するために 性別を基準に一定の人数や比率を女性に割り当てることがある。会社などの組織における女性比率向上のための手段としても用いられる。

ハラスメントを受けた経験は女性の方が多いものの、性被害以外の男女差は小さい

グラフ6:各ハラスメントを受けた経験がある人の男女別割合

ハラスメントの経験を散布図にした。男女差がほぼみられなかった項目として、パワハラは約30%、モラハラは約25%の人が経験があると回答した。一方で全体的に女性の方がハラスメントを受けた経験が多く、とくに痴漢やセクハラ、意思に反した性行為は女性の方が「経験したことがある」と答えた割合が大きかった。パワハラやモラハラ、DVは男女差が小さく、男性もDVやモラハラなどを受けている割合が一定程度いることは、意外な結果となった。

セクシュアルマイノリティに対する考え方

次に、セクシュアルマイノリティに対してはどのような認識かを見ていく。現在日本では同性婚が認められておらず、セクシュアルマイノリティに対する制度面や社会的認識にはまだ温度差があるように感じる。アンケートの回答者は、どのように捉えているのだろうか。

全世代の約60%が「セクシュアルマイノリティに対する差別があると感じる」と回答

グラフ7:「セクシュアルマイノリティに対する差別が根強くあると感じる」 という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した男女別・世代別割合

「セクシュアルマイノリティに対する差別が根強くあると感じるか」という質問に対しては、全体の60%弱が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した。回答には男女差が見られ、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した割合は男性は全体平均が約50%であるのに対し女性は約60%と、女性が男性を上回った。また男性には回答に世代差があり、30代を除いて基本的には年齢が上がるにつれ、差別を認識している割合が増加する傾向が見られた。

同性婚には全世代の約60%が賛成するが、男女差がある

グラフ8:「同性婚は認められるべきだ」という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した男女別・世代別割合

「同性婚は認められるべきか」という質問に対し、「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた人は全体の60%程度だった。この回答には明確な男女差があり、女性は賛成が約70%であるのに対し男性は約50%強と、女性の方が同性婚に賛成する人の割合が高かった。また、男性には世代差も認められ、年齢が上がるにつれ同性婚に反対を示す人が多い傾向にあった。

この結果から、男女間での差異や不平等だけでなく、セクシュアルマイノリティに対する差異や不平等に対しても、男性よりも女性の方が強く認識する傾向にあることが分かった。

排除・キャンセルカルチャーに対する考え方

キャンセルカルチャーとは、不祥事を起こした者・企業や、社会的に不適切と思われる言動をした者を排除しようとする動きのことである。キャンセルカルチャーに対する考え方には、世代や性別による違いはあるのだろうか。

男女ともに、半数程度が「問題を起こした者は排除されるべき」という考え

グラフ9:「問題行動をした人や企業を排除する社会を求める」という設問に
「近い」「やや近い」と回答した男女別・世代別割合

「問題行動をした人や企業を排除する社会を求めるか」という質問に対しては、約50%が求めると回答した。また、全体的に女性は若年層の方が問題行動をした人や企業を排除する社会を求める傾向にあり、一方で男性は世代によってばらつきのある結果であった。

性加害やハラスメントの加害者に対しては、女性の方が厳しい対応を求める

グラフ10:「性加害やハラスメントをした人は排除(キャンセル)されるべきだ」という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した男女別・世代別割合

「性加害やハラスメントをした人は排除(キャンセル)されるべきか」という質問に対し、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人は全体の約70%だった。また、全世代の男性平均値が約65%であったのに対し、女性の平均値は約75%と、女性の方が厳しい対応を求める傾向にあった。

年齢が上がるほど、また意に反した性行為の経験があるほど「加害者はキャンセルされるべき」と考える傾向

グラフ11:「自身の意思に反した性行為をされたことがあるか」という設問、
「性加害やハラスメントの加害者はキャンセルされるべきか」という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の 男女別・世代別割合

ハラスメントの経験の有無と、キャンセルに対する考え方の関連を検証した。そのなかでも、とくに事件性が強いと考えられる「意思に反した性行為の経験」の有無とキャンセルに対する考え方を、男女別・世代別にプロットした。女性は20代~40代でとくに「意思に反した性行為を受けた経験を持つ」ことと、「性加害やハラスメントの加害者はキャンセルされるべき」と考える傾向に相関があることが分かった。また、男女ともに50代~60代を見ると、年齢が上がるほど強くキャンセルを求める傾向が見られた。

全体の約30%が「社会は加害者に厳しすぎる」と回答

グラフ12:「(加害者を見る視点として)社会は加害者に対して厳しすぎると感じる」という設問に対し、
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した男女別・世代別割合

キャンセルカルチャーに関するこれまでの回答結果から、世代・男女を問わず全体として「加害者への厳しい対応」を求める傾向があることが分かった。一方で、「社会は加害者に厳しすぎるか」という質問では、女性の方が男性よりもわずかに「厳しすぎる」という回答が多かった。また世代差もあり、全体として若い世代の方が「加害者への対応が厳しすぎる」と答える傾向にあった。40代以上の世代では、男性の方が女性より加害者に厳しい傾向があった。

全世代の約65%が「キャンセルカルチャーは必要」と回答

グラフ13:「キャンセルカルチャーは必要だ」という設問に対して
「あてはまる」「ややあてはまる」と 回答した男女別・世代別割合

最後に「キャンセルカルチャーは必要だと思うか」という質問に対し、全体の約65%が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した。この回答には男女差があり、キャンセルカルチャーが必要だと思う人の割合は男性が約60%であるのに対し、女性は約70%と男性を上回った。また、男性は年齢が上がるにつれてキャンセルカルチャーが必要だと考える人の割合が増える傾向にあった。

「目指す社会の方向性」に関する考え方

目指す社会の方向性には世代差や男女差が見られるだろうか。子育てや高齢者ケア、環境問題などの政策課題から、マイノリティが生きやすくなる社会など様々な項目についてアンケートを取った。

子育て支援と環境問題への取り組みを求める世代は類似、高齢者ケアは世代差あり

グラフ14:「老後不安をなくすために高齢者ケアを十分に行う社会」「子育て支援にリソースを投入する社会」、
「地球規模の環境問題への取り組みを重視した社会」があなたが求める社会の方向性に近いという各質問に対し、
「近い」「やや近い」と回答した人の割合

「老後不安をなくすために高齢者ケアを十分に行う社会を求めるか」「子育て支援にリソースを投入する社会を求めるか」「地球規模の環境問題への取り組みを重視した社会を求めるか」という質問をした。全体を通じて、子育て支援、環境問題への対応、高齢者ケアの順で求める回答者が多かったが、どの項目も差は少なく、約60%が今回提示した3つの社会の姿を求めていることが分かった。世代差に着目すると、子育てと環境問題への対応を求める世代は類似していた。一方で、高齢者ケアを求める世代は40代で多く、30代、50代では少なく世代差が見られた。

マイノリティが生きやすい社会を求める人は6割弱、10代~20代が強く求める傾向

グラフ15:「女性やLGBTQの方、障がい者などマイノリティが生きやすくなる社会を求めるか」という設問に対し、
「近い」「やや近い」と回答した人の割合

全体の約55%がマイノリティが生きやすくなる社会を求める回答を示した。また、世代差も見られた。30代以上の賛否が半々に分かれたのに対し、10代は70%弱、20代は60%弱が「近い」「やや近い」と回答した。

まとめ

本稿では、「あしたメディア by BIGLOBE」が全国の18歳〜69歳までの男女1,000人に対して実施した意識調査の結果をご紹介した。今回は第2弾として、男女差別やマイノリティに対する認識、そしてキャンセルカルチャーなど社会の分断について取り上げた。全体を通じて、「女性の方が性差やマイノリティであることによる格差をなくしていく社会を求める」ことが顕著な傾向にあることが分かった。一方で、求める社会の方向性は男女・世代で大きな違いが見られなかったことも、特筆すべき点だと言えるだろう。

「あしたメディア」では、今後も、変わりゆく社会の状況や人々の意識を追っていきたい。

 

文:Natsuki Arii
編集:大沼芙実子