「あしたメディア by BIGLOBE」では、主に若年層を対象とした意識調査を実施した。アンケート結果から見えてきた若年層の意識や傾向について、分析した内容を2本の記事に分けてご紹介していきたい。今回は第1弾として、「恋愛・結婚や社会・政治に対する考え方」に関連する項目を取り上げる。
アンケートの実施方法と基本情報
本調査は、全国の18歳〜69歳までの男女1,000人を対象にアンケート形式で実施した。回答者は20代が500人、10代(18歳・19歳)、30代〜60代が100人ずつ、各世代の男女は半々である。調査日は2022年9月8日~9月9日、調査方法はインターネット調査で実施した。
ここからは、項目ごとに若年層の意識や世代別、男女別の意識の違いなどについてご紹介していく。
貯蓄に関する考え方
まず生活の基盤となる「カネ」に関する傾向を見てみたい。貯蓄に関する考え方は、世代ごとに比較的異なる傾向がみられた。
平均貯蓄額に関わらず、年齢が上がるほど貯蓄状況に不安
まず、貯蓄に関する回答結果から、年齢が上がるにつれ基本的に貯蓄額は増加していることが分かった。一方で貯蓄の額に関わらず、年齢が上がるにつれ貯蓄額に対して不安に思っている人の割合は上昇する傾向にある結果となった。(※1)
※1 平均貯蓄額は、総資産額を問う設問選択肢のレンジの中央値を代表点として推計した。
20代までは「好きなものを購入するため」、30代以上は「老後のため」に貯蓄
次に貯蓄の目的について聞いた。回答者には、「老後に向けて貯蓄したい」「好きなものを購入するために貯蓄したい」「不動産を購入するためにお金を貯めたい」のそれぞれの項目について、どの程度当てはまるかを4段階の選択肢から選ぶよう質問した。
その結果、10代〜20代にかけては「好きなものを購入するため」に貯蓄している割合が高いことが分かった。一方で30代以上の世代は、「好きなものを購入するため」や「不動産を購入するため」に貯蓄をする割合が減少し、「老後への貯蓄」への関心が増加する傾向にあった。また世代を問わず全体として、「不動産を購入するため」に貯蓄している人の割合は50%を下回った。
恋愛・結婚に対する考え方
次に、恋愛や結婚に関する内容を見てみたい。こちらも世代間で価値観の違いがあるほか、男女間でも考え方に違いが見られた。
「恋愛より大切なものがある」という考えには男女差・世代差がある
「恋愛よりも大切なものがあるか」という設問に対する回答では、女性は20代を除いて「あてはまる」「ややあてはまる」という回答が75%を上回った。一方で男性の回答を見てみると、年齢が高くなるにつれ「あてはまる」「ややあてはまる」という回答が減少する傾向にあった。
「離婚しても良いと思う」という女性は50%以上
続いて「離婚をしても良いと思うか」という設問に対しては、男女ともに10代、20代で「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の割合が50%を超えていた。30代以上では、女性は肯定的な回答の割合が50%を上回っている一方で、男性は年齢が上がるにつれて離婚をしても良いと思っている人の割合が減少する傾向にあった。
離婚に対して不安に思う項目は女性の方が多く、金銭面や手続き、キャリアに不安
「離婚に対して不安に思うこと」を複数回答可能として回答してもらった。そこから分かったこととして、「財産分与」や「親族の反応」「世間の目」「周囲の人間関係」を気にしている割合については、男女差があまりないということである。一方で、男女差が大きい項目は「離婚後の生活費」「名字を戻すなどの手続き」「キャリアの再構築」などである。これらの項目についてはとくに女性が不安を感じており、男性で不安に思っている人の割合は低い結果となった。
男女問わず、過半数が結婚前提の社会に対して疑問を感じている
「結婚することが前提にある社会の空気に疑問があるか」という設問の回答で分かったことは、男女問わず全体の57%が結婚を前提とする社会に対して疑問を感じているということである。また全世代において女性の方が、男性よりも疑問を感じている人の割合が多かった。男性は、10代〜30代と40代〜60代で回答の傾向に大きな差があり、40代以降は「結婚を前提とした社会に対して疑問を感じている」と回答した人の数が大きく減少する傾向にあった。
選択的夫婦別姓制度の導入には、男女とも全世代の半数以上が賛成
「選択的夫婦別姓」への考えを問う設問では、全世代、男女ともに「賛成」「やや賛成」の割合が50%を上回った。一方で回答の傾向には男女差があり、女性の方が男性よりも制度の導入に対し前向きな意見が多い結果となった。また男性は40代以上の世代で、制度に賛成する人が減少し、男女差が拡大した。
人生の中で大切にしているものに関する考え方
次に「人生の中で大切にしているもの」について聞いた結果を見ていきたい。こちらについても、世代によっていくつかの差が見られた。
「人生の中で大切にしているもの」には世代差がある
「人生の中で大切にしているもの」を、複数回答可能として回答してもらった。その中で、「お金」「時間」「知識」「仕事」などの回答に対する結果は世代差が小さかったのに対し、「健康」「家族」「恋愛」「地位・名誉」といった回答についてはとくに世代差が見られた。40代以上の世代が30代以下の世代と比較して「健康」や「家族」を大切にしているのに対し、10代〜30代までの若年層は「趣味」「友達」や「恋愛」「地位・名誉」を大切にしている人の割合が、40代以上の世代と比較して多かった。
社会生活における価値観
続いて、社会生活の中で各世代が抱いている価値観についてもいくつか質問をした。その結果について見ていきたい。
10代~20代の若年層と女性が「政治や社会の話が煩(わずら)わしい」と感じている
まず、「政治や社会の話を煩わしいと感じたことがあるか」という設問について見ていきたい。全体として、女性の方が男性よりも「政治や社会の話を煩わしい」と感じている傾向にあった。とくに30代と50代の女性は、大きく男性の割合を上回っている。
男女ともに50%以上が「自分や家族、友人が幸せならそれでいい」と感じている
続いて「自分や家族、友人が幸せなら、それで良いと考えたことがあるか」という設問について見ていく。世代や男女問わず、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の割合が50%を上回る結果となった。10代、40代〜50代の女性がとくにそう感じる傾向にあるようだ。
政治についての考え方
政治の分野については、本アンケートの中でも幅広く、多くの設問を設定した。他の設問よりも多くその結果をご紹介したい。
投票する人の割合は年齢が上がるにつれて増加する
「選挙では必ず投票するか」という設問に対して「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の平均的な割合は60%弱程度であった。その中で、20代は「あてはまる」「ややあてはまる」の割合が53%程度と全世代のうち最も低く、その後は年齢を重ねるごとに「必ず投票する」人の割合が増加する。2016年から選挙権が18歳に引き下げられたが、10代のうち「投票をする」と回答した人の割合は60%程度であった。若者の選挙離れが叫ばれるなかでも、今後も関心を持ち続け、投票に参加し続けることを期待したい数値であるとみて取れた。
選挙時、政党や立候補者の政策を調べる人は全世代で50%を下回る
「選挙時、政党や立候補者の政策を調べている」という設問についての回答では、まず世代を問わず全体の50%強が政策を調べずに投票していることが分かった。そのなかでも40代以上の世代は、下調べをせずに投票している人の割合が、30代以下の世代よりも多い結果となった。別途設定した「支持する政党があるか」という設問に対する回答では、世代によりそこまで大きな回答差はなく、30〜40%程度が「支持する政党がある」という回答になった。その結果も踏まえると、世代を問わず大半の人が選挙前に政策を下調べせずに投票をする傾向にあると捉えられる。
全体の50%弱が政治の話をしたくないと回答
続いて「政治の話をしたくないか」という設問に対しては、10代〜30代は「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人が50%近くと多いのに対し、40代以上の世代は比較的減少傾向にあった。
投票したくない理由には世代差がある
「投票をしたくない理由」についてはどうだろうか。複数回答可として質問をした。30代以下と40代以上で世代差が大きいのは「政治への興味」と「時間のなさ」、「政治への諦め」である。30代以下の世代は、政治に興味がなく、また時間がないという理由で投票したくない人が多い。40代以上の世代は若い世代と比較して政治に対する諦めが見られ、「何をやっても政治は変わらない」「投票したい人がいない」という理由が30代以下の世代と比較して多く見られた。
オンライン投票には全体の70%弱が賛成、もっとも賛成が多いのが60代
「オンライン投票を導入するべきだ」という設問については、世代ごとにわずかな差は見られるものの、全体の約65%が「賛成」という回答となった。特筆すべきは、もっとも年代の高い60代の70%以上がオンライン投票の導入に賛成していることだ。従来の選挙スタイルにもっとも馴染みのある世代であるが、オンライン投票にも前向きな結果が見られた。
年代を問わず、全体の約70%が「政治に対する不信感がある」と回答
続いて「政治に対する不信感があるか」という設問については、男女ともに年齢が上がるほど、政治に対する不信感がある人の割合が上がる結果となった。10代では「政治に対する不信感がある」と回答した人の割合は女性と比べて男性の方が多いが、それ以外の世代では男女差はほぼ見られなかった。
「女性政治家が増えてほしい」と考える人の割合は、男女とも全世代で50%を上回る
「女性政治家が増えてほしいか」という設問に対しては、男女・世代問わず全体として「増えてほしい」と考える人の割合が50%を上回った。一方で、男性は「増えてほしい」という回答が全世代で50〜60%で推移しているのに対して、女性は55%〜76%の間で推移しており、その様に考える人は女性の方が多いことも明らかになった。
「政治に求めること」には世代差がある
最後に「政治に求めること」について、複数回答可として設問を設けた結果を紹介したい。10代〜30代と40代以上で、世代差がある結果となった。30代までの世代は、40代以上よりも「働き方改革」や「マイノリティ支援」を求めている傾向が見られた。また、「求めることはない」と回答した人の割合は20%強であり、40代以上の10%を上回った。一方で40代以上の世代は「経済対策」や「公正で透明性の高い政治運営」「税制改革」などを求める人の割合がそれ以下の世代と比較して大きかった。
まとめ
本稿では、「あしたメディア by BIGLOBE」が全国の18歳〜69歳までの男女1,000人に対して実施した意識調査の結果をご紹介した。第1弾として、恋愛・結婚や社会・政治に対する考え方を取り上げた。離婚や選択的夫婦別姓の導入に対する姿勢には男女差があり、「人生の中で大切にしているもの」や「政治に求めること」などの価値観には世代や男女差が見られる項目もあった。一方で、政治に対する不信感など、世代や性別を超えて共通する傾向も見られた。
続く第2弾では「男女格差とマイノリティ、キャンセルカルチャーに対する考え方」の視点からアンケートの結果を分析していきたい。
文:Natsuki Arii
編集:大沼芙実子
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