よりよい未来の話をしよう

ピアサポートとは?その意味やメリット、種類を解説!

ピアサポートとは

ピアサポートとは、英語で「仲間」や「(年齢・地位・能力など)同等」の立場を意味する「Peer」と支援を意味する「Support」を組み合わせた言葉である。由来通り、共通項を持つ人々同士が支え合うことを意味する。関連語にピアカウンセリング、ピアサポーター、ピアスタッフなどがある。

ピアサポートの定義

ピアサポートの特徴は、同じ悩みを共有するもの同士が支援し合うという点にある。例えば、同じ学校の生徒同士、あるいは他の学校でも同じ学年の生徒、職場の同期、共通の文化的背景を有するもの、類似する病気や障害を有するものなど、共通点や相手との対等な感覚を見い出せる関係性は、広い意味で「ピア」ということができる。(※1)

※1 参考:社会福祉法人豊芯会「ピアサポートの活用を促進するための事業者向けガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000654213.pdf

ピアサポートの歴史

世界各国で取り組みがなされているピアサポートは、1935年にアメリカで始まった「AA(アルコホリークス・アノニマス)」の取り組みがその源流だと言われている。AAはアルコール依存症を抱えた当事者たちが当事者同士で問題を解決しようとした自助グループであった。(※2)

自助グループは、セルフヘルプ(self-help)グループとも言われ、その活動は、「自助」と「相互援助」の両面を備えている。セルフヘルプ活動は「専門職による支援だけに頼るのではなく、『当事者』としての自身の力や仲間同士のつながりの中で生まれる力に光を当てている点は、ピアサポートにつながる大きな要素の一つ」である。(※3)

▼悲観を抱える人に対して寄り添う「グリーフケア」については以下をチェック

※2 参考:川崎市「知ることからはじめる精神障がいピアサポート」
https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000118/118786/sirukotokarahajimerupeersupport.pdf
※3 出典:社会福祉法人豊芯会「ピアサポートの活用を促進するための事業者向けガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000521819.pdf

ピアサポートは何のため

一般に、サポートという行為は、サポート“されるもの”と“するもの”の上下関係を生み出しがちである。あるいは、サポートする側とされる側が明確に決まっている場合も多い。一方、共通項を持っている仲間同士が支え合うピアサポートは、お互いにサポートする側でもあり、サポートされる側でもあって、そこに明確な上下関係は存在しない。

ピアサポートの特徴に、近しい人や専門家には話しづらいことでも、同じ立場の人たちだからこそ共有しやすいことが挙げられる。そのため、ピアサポートは、さまざま分野で展開されている。分野や組織によってその目的は少しずつ異なるものの、例えば東京大学ピアサポートルームでは以下6点の活動理念を掲げて活動を行っている。

1.心身の健康

2.居場所づくり

3.人とのつながり

4.役に立つ情報の交換

5.自己理解の深化

6.多様なものの見方の獲得

(※4)

上記の理念からもわかるように、ピアサポートは仲間同士の支え合いの他に、自己理解の促進や仲間との交流を通して多様な視点を獲得することも目標とされている。

※4 引用:東京大学ピアサポートルーム「ピアサポート活動とは」
https://ut-psr.net/introduction/philosophy/

ピアサポートのメリット

同様の経験をした仲間と支え合うピアサポートには、どのようなメリットが期待されるのだろうか。

オープンで対等な関係性

ピアサポートが上下関係を持たない仲間同士の対等な関係で行われることは本文内で見てきた通りである。つまり、それらの関係においてよりオープンで建設的な対話がなされることが期待できる。

また、共通点を有する人々との対話・支え合いという点において、専門家や立場が違う人との対話と比較するとより深い共感と理解が得られるというメリットもある。

経験に基づいたアドバイスが可能

共通・類似した背景や経験、立場を抱える人々が支え合うピアサポートにおいては、問題に対する抽象的かつ理論的なアプローチではなく、現場での経験に基づいた対話やアドバイスが可能である点もメリットといえるだろう。

実際に、みずほ情報総研株式会社が実施したピアサポート活動状況の調査結果から、ピアサポートが利用者にプラスの影響を与えることがわかっている。ピアサポート活動事業者を対象に行われたこの調査においては、ピアサポートが持つ「当事者の経験に即した具体的な支援を行う」という一面を明確にしている。

具体的には「経験者ならではの、気持ちにより添った言葉を掛けることができる」「経験者ならではの、生活の知恵を伝えられる」経験者ならではの、インフォーマル資源の活用方法を伝えられるといった観点においてピアサポートを実施する事業者の60%以上が実際に効果を得ていることがわかっている。(※5)

※5 参考:みずほ情報総研株式会社「障害福祉サービス事業所等におけるピアサポート活動状況調査」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000130380.pdf

▼星野概念さんと考えるメンタルヘルスについては以下をチェック

ピアサポートの取り組み

ピアサポートは教育機関や福祉分野において積極的に取り組まれている。仲間(ピア)を支えるものはピアサポーター、ピアサポートワーカーと呼ばれ、ピアサポート実施の中心的な役割を担っている。

福祉分野

厚生労働省が発表しているピアサポートに関する資料の中で、「ピアサポートとは、一般に同じ課題や環境を体験する人がその体験から来る感情を共有することで専門職による支援では得がたい安心感や自己肯定感を得られることを言い身体障害者自立生活運動で始まり、知的障害や精神障害の分野でも定着し始めている」(※6)と述べられている。このようにピアサポートは福祉分野においてスタートした概念である。

そのため、現在行われているピアサポートの事例に関しても、障害者支援・自立に関連する取り組みが目立つ。具体的には、 精神障害、身体障害、知的障害、難病、高次脳機能障害といった領域においてピアサポートの取り組みがなされている。(※3)

福祉分野でのピアサポート実施のためには、ピアサポーターの存在が重要となってくる。例えば精神科医療機関におけるピアサポートに関して、ピアサポートワーカーの現状と重要性、課題についての調査がなされている。ピアサポートワーカーとは「当事者が自身の経験をもとに、業務や活動の一環として意図的に他の当事者を支援する、支援者としてのピアサポーター」のことである。

60%以上の精神科医療機関がピアサポートワーカーの活用を「望ましい」と考えていることやピアサポートワーカーが患者のロールモデルになること、専門職側にも患者理解の増進につながることがわかっていることからも、ピアサポートワーカーの重要性が読み取れる。一方で、雇用側がピアサポートワーカーの体調や病状の変化に対する不安を懸念したり、ピアサポートワーカー側も当事者でもあり支援者でもあることに伴う「立場の二重性による葛藤」が生じたりするといった課題も挙げられる。(※7)

※6 出典:厚生労働省「ピアサポートの専門性の評価について(横断的事項)≪論点等≫」下線は筆者加筆 
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000689218.pdf
※7 参考:厚生労働省「精神科医療機関におけるピアサポートの現状と活用に関する調査 調査結果報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000963578.pdf

教育機関

また、教育機関、特に大学においてピアサポートの取り組みが積極的になされている。記事内で紹介した東京大学での取り組みもその一例である。

立命館大学では、大学独自のピアサポートシステムを構築している。約40団体・約4000名の学生がサポータとして支援活動しており、新入生支援を行う「オリター・エンター活動」など多様なピアサポート制度を導入している。(※8)

※8 参考:立命館大学「ピア・サポート」
https://www.ritsumei.ac.jp/future/chapter2/model11.html/

▼ヤングケアラーのための取り組みについては以下をチェック

まとめ

ピアサポートの定義や取り組み事例について紹介してきた。ピアサポートの認知度はまだそれほど高くはなく、発展途上にあると言えるだろう。ピアサポートを発展させていくためにも、ピアサポートの意義を理解した上でのピアサポーターの積極採用が重要になってくるだろう。

また、類似・同様の共通項を持っていても、それらの経験やそこで生じた感情は一人一人異なっていることを認識した上で、仲間同士で支え合える居心地の良いピアサポートの場を作り上げていくことが必要となってくるのではないだろうか。

 

文:小野里 涼
編集:吉岡 葵