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「17.13%」男性の育休取得率が低い日本。背景と今後の課題とは

先日、Twitterであるツイートを目にした。
ある男性が1年間の育児休業を取得しようとした際に、「1年も育休とって何をするの?」と社内で何度も聞かれたというものだ。また、この質問に日本の子育てに関する価値観、男性の育休の取りづらさなどの問題が凝縮されているのではないかという投稿者の見解が、ツイートには付記されている。

このツイートには本稿執筆時点で13.5万ものいいが集まっている。つまり、日本には投稿者と同じように、育児休業を取得したいが職場の環境がそれを良しとせず、歯がゆさを感じている人が大勢いるということではないだろうか。

なぜ日本では、男性が育児休業を取得することに対していまだに抵抗感があるのだろうか。日本の育児休業事情や現状のルールなどを理解した上で、その背景を考えたい。

男性の育児休業取得率17.13%。日本の育休制度の現状

2023年に厚生労働省が発表した最新のデータ(※1)によると、女性の育児休業取得率は80.2%だ。それに対し、男性の育児休業取得率は17.13%。前年の13.97%からは若干上昇しているが、依然として男女の育児休業取得率に大きな差があることが分かる。

「男性が育児休業を取得しづらい制度になっているのではないか」と考える人がいるかもしれないが、そうではない。諸外国の制度と比較しても、日本の育休制度は優れた点も見受けられるのだ。それよりも、育児休業制度の仕組み自体を知らない人が多いということが、1つの課題点として挙げられるではないだろうか。ここではまず日本の育児休業制度について触れていく。

まず期間だが、育児休業制度によると、原則として子どもが1歳になるまで育児休業を取得することが可能だ(※2)。また共働きの場合、ある条件を満たせば「パパ・ママ育休プラス」という制度で、子どもが1歳2ヶ月を迎えるまで期間を延長することも可能となる。

次に収入だが、たとえば会社員の場合上限は存在するものの、育児休業を取得してから180日目までは、給与の67%が育児休業給付金として支給される。また申請することで、育児休業期間中は健康保険や厚生年金といった社会保険料が免除されるため、育児休業給付金と合わせると、実質的には育児休業前の手取り給料の約8割が支給されることになる。
181日目からも減額はしてしまうものの、給与の50%が育児休業給付金として支給される。つまり基本的には、育児休業期間中に無給になってしまうことはないのだ。

日本の育休制度に関する基本的な内容は上記の通りだ。では育児休業を取得することで、どのようなメリットがあるのだろうか。

※1 参考:厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/10.pdf

※2 解説:子が1歳になる時点で保育所などに入所できない等、雇用の継続のために特に必要と認められる場合に限り、1歳6ヶ月まで(再延長で2歳まで)育児休業を延長することができる。

女性だけの問題ではない「産後うつ」を防ぐ

男性が育児休業を取得するメリットの1つに、女性の産後うつの防止になることがあげられる。産後うつとは、産後から数ヶ月以内にあらわれるうつ状態を指し、日本ではおよそ10人に1人が産後うつになる可能性があるとされている。(※3)マタニティーブルーズとも言われる産後うつとは、産後に起こるホルモンバランスの乱れといった原因から、気分の落ち込みが続き、不眠、疲れやすい、やる気が起きないなどという状態に陥ることだ。基本的には数日から1週間で回復することが多いが、この状態が2週間経っても回復しないと産後うつの可能性がある。

産後うつになると、極端に悲しくなる、泣き叫ぶなど大きな気分の変動がみられることや、日常活動ができなくなったり、子どもへの関心を失ったりすることもある。また、最悪のケースとして自殺に繋がることもあり、2015年から2016年には92人もの女性が産後1年以内に自殺している。(※4)これらの自殺全てが、産後うつによるものとは限らないが、無関係であるとも言い切れないのではないか。

産後うつの要因の1つに、睡眠不足などからくる身体的負担があげられる。育児中の身体的負担とはどのようなものなのか。育児に関する具体的な数値を例に考えてみよう。

まず、1日におむつを替える回数だが、新生児では10〜13回、生後3ヶ月では8〜10回ほどで、生後6ヶ月でも8回の頻度で発生する。ミルクをあげる回数も、新生児では1日に6〜8回ほど、生後3ヶ月では5〜6回、生後6ヶ月でも4〜5回の頻度で発生する。もちろんこれらは決まった時間に行えることではなく、昼夜問わず対応することになる。さらに1人で家事をしている場合には、料理や掃除なども育児に加えて行う必要があるのだ。つまり、1人で育児・家事をすることになると、まとまった休息時間を確保することが難しくなってしまう。

一方で、育児休業を取得して夫婦で育児・家事をする、もしくは周りにサポートをしてもらうとどうだろうか。曜日や時間ごとに担当を交代したり、役割を決めたりと、1人で対応するよりも、まとまった休息時間が確保しやすくなるだろう。これにより、夫婦の一方に負担が偏ることはなくなり、身体的・精神的負担の軽減につながる。

ここで注意しておきたいのは、産後うつは女性だけの問題ではないということだ。近年では、男性が産後うつになることも課題としてあげられている。(※5)男性は育児休業中、妻を支えなければならないという責任を感じるかもしれないが、育児の負担は男性自身も感じるはずだ。制度などをうまく利用して、夫婦同士はもちろんのこと、その両親、または地域コミュニティなどと互いに協力しあって育児をしていくことも、1つの重要な視点ではないだろうか。

男性の育児休暇取得は、産後うつの防止以外にも「正規雇用の女性増加」や「少子高齢化の解決」にもつながると考えられる。家事・育児が夫婦双方でより分担しやすくなり、女性のキャリア継続にもプラスになると考えられるからだ。しかし、先述したとおり、日本での男性育休取得率は低いのが現状だ。では、諸外国の育児休業取得率や、政策はどのようなものなのだろうか。

※3 参考:厚生労働省「第7回成育医療等協議会の資料について 資料1 成育医療等基本方針に基づく施策の実施状況に関する評価指標等の状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000939388.pdf

※4 参考:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状」
https://www.ncchd.go.jp/press/2018/maternal-deaths.html

※5 参考:厚生労働省「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000735844.pdf

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日本の育休制度は世界一?

諸外国の男性の育児休業取得率を見たときに、とくにその率が高いのが北欧諸国である。ノルウェーの育休取得率は2012年の時点で90%、またスウェーデンは2013年の時点で88.3%と、大きく日本を上回っている。(※6)およそ10年前から既に国民男性の9割が育休を取得した2カ国の育休政策とはどのようなものなのか。

まず、スウェーデンの育休制度を見てみよう。スウェーデンでは夫婦で480日分(16ヶ月)の育休取得が可能で、そのうち384日は子どもが4歳に達するまで、残りの96日は子どもが12歳に達するまでの期間で、一定の割合に基づき好きなタイミングで取得可能だ。また、そのうち90日間は必ず父親が取得するように決まっている。つまり、父親が育休を取得しないと夫婦で取得可能な育休取得日数が減ってしまい、損する仕組みになっているのだ。このような父親に育休取得を割り当てる制度は、「パパ・クオータ制」と呼ばれている。

「パパ・クオータ制」は、1993年にノルウェーが初めて導入した制度である。パパ・クオータ制が導入された当時のノルウェーの育休取得率は4%であったので、そこから現在まで大きく向上していることが分かる。

また、育児休業取得率が高いこれらの2カ国では、夫が家事・育児を協力的に行っていることが分かっている。内閣府が発表した、1日あたりに占める6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間の統計資料を見てみよう。(※7)日本が1.23時間であるのに対しスウェーデンでは3.21時間、ノルウェーでは3.12時間であることが分かる。北欧圏では、もともと家族との時間を大切にする文化があると言われており、そのような背景も影響しているかもしれないが、このように育児参画を後押しする仕組みが整備されていることが、その後の育児・家事への協力度合いにも一層良い影響を及ぼしているのではないだろうか。

内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書平成29年版 第3章 第2節 仕事と子育て・介護の両立の状況 第8図「6歳未満の子どもをもつ夫の家事・育児関連時間(1日当たり)-国際比較-」より筆者作成

これら2カ国の育児休業の制度は、上記の統計から見ても日本より優れた制度に思えるかもしれない。しかし、一概に日本の制度が劣っているとも言えない。

まず、父親が取得できる育児休暇の期間だ。スウェーデンの場合は、夫婦合計で480日の取得が上限となっており、夫婦揃って育休を取得できる期間は30日までとされている。一方日本はというと、夫婦それぞれ、子どもが1歳になるまでであれば取得する権利があり、夫婦揃って育休を取得する期間の制限もない。また育休の申請期限も、スウェーデンでは2ヶ月前までの申請が必要になる一方で、日本では1ヶ月前の申請で取得可能だ。2021年にユニセフが発表した各国の保育政策や育児休業政策を評価した順位の中では、日本の制度は父親に認められている育児休業の期間が最も長いことが示されており、その点では世界的に見ても恵まれたものと捉えられるかもしれない。

上記を踏まえると、日本の制度自体は決して劣っているわけではないだろう。では、それでも男性の育児休業取得率がいまだこんなに低いのはなぜなのだろうか。

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※6 参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 資料シリーズNo.186「ヨーロッパの育児・介護休業制度」
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2017/186.html
※7 参考:内閣府男女共同参画局 「男女共同参画白書平成29年版 第3章 第2節 仕事と子育て・介護の両立の状況」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/honpen/b1_s03_02.html

パタハラが生み出す負のスパイラル

男性の育児休暇取得率が低い理由を考察するため、内閣府が行なった調査の結果を見てみよう。(※8)この調査では、「1か月以上の育児休暇を取得しない理由」が報告されており、理由の第1位は「職場に迷惑をかけたくないため」で第3位は「職場が、男性の育休取得を認めない雰囲気であるため」であった。

内閣府「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」より筆者作成

また別の厚生労働省が実施した調査(※ 9)では、「過去5年間に勤務先で、育児休業等に関するハラスメントまたは不利益取扱いを受けたことがあるか」という質問項目がある。結果として回答した男性労働者500名のうち26.2%、およそ4人に1人が受けたことがあると回答した。また受けたハラスメントの内容では、「上司による、制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」「昇進、昇格の人事考課における不利益な評価」「上司による、解雇その他不利益な取扱いの示唆」などの上司からのハラスメントが上位を占めた。
このように男性社員に対して、育児休業を取得しようとする場合に評価を不当に低くしたり、育児休業を取得しないように圧力をかけることを「パタ二ティハラスメント(パタハラ)」という。

これらの調査結果から考察するに、男性が育児休業を取得しづらい職場の雰囲気や、男性の育児休業取得の意義が社会全体でまだまだ認知されていないことが、男性の育児休業取得率が低い原因ではないだろうか。厚生労働省が発表したある調査によると、「育児休業制度を希望していたのに取得できなかった人」が約4割、またその逆の「取得しようと思わなかった人」が約3割いることが分かる。(※10)取得できなかった4割の人の原因にパタハラが関係していることは想像できるが、取得しようと思わなかった人が3割いることの要因にも、パタハラが関係している可能性があるのではないだろうか。たとえば、職場でパタハラを目の当たりにした場合、果たして育休を取得したいと思うだろうか。不利益を被りたくないので会社の雰囲気に合わせておこう、と考える社員が増える。そうなると、パタハラが会社の負の雰囲気を生み出し、その雰囲気が更なるパタハラを助長する負のスパイラルが生み出されているのではないか。

※8 参考:内閣府「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result3_covid.pdf

※9 参考:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「令和2年度厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」p.27
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000783140.pdf

※10 参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成30年度厚生労働省委託事業 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000534370.pdf

2022年改正の新たな育児休業制度とは

2022年4月から、2023年4月までの間に育児・介護休業法の改正法が順次施行された。改正の意図には、男性の育児休業取得率向上のための「育児休業制度を利用しやすい環境整備」のほかに、「女性が出産後も仕事を続けていくこと」なども挙げられる。ある調査によると、2015年時点で出産後も仕事を続ける女性の割合は38.3%であった。(※11)また別の調査から、仕事を辞めた理由の約30%が「仕事と育児の両立に難しさを感じた」ことであると分かっている。(※12)男性の育児休業取得率が向上すれば、育児における女性の負担が軽減され、出産後も仕事を続ける女性が増加するのではないか。これらを実現するため改正された制度はどのようなものなのか。

2022年4月の改正では、2つのことが事業主に対して義務化された。1つ目は本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、育児休業制度等に関する内容の周知と休業取得の意向確認を行うこと。もう1つは育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(育児休業制度の研修の実施や、相談窓口の設置など)を行うことである。これらの義務化により、社員から事業主に対して育児休業の申請が円滑に行われることや、社員全体の育児休業の理解が高まり、育児休業が取得しやすい環境整備の実現が期待される。

次に2022年10月の改正では、大きく2つのことが実施された。1つ目は、育児休業を2回に分割して取得可能になることだ。これにより、妻の仕事復帰のタイミングに合わせて育児休業を取得したり、自分の仕事の繁忙期を避けて育児休業を取得したりと、より柔軟に育児休業を取得できるようになる。2つ目は、「産後パパ休暇(出生時育児休業)」の新設だ。この制度は、子の出生後8週間以内であれば通算4週間分まで育児休業を取得できるという制度だ。2回に分割して取得可能なため、取得のタイミングによっては育児休業と合わせて計4回のタイミングで、育児休業が取得可能になる。

最後の2023年4月の改正では、従業員数1,000人超の企業に育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられるようになった。公表により社員や会社にどのような変化があったのか、2023年7月に厚生労働省が発表した調査結果を見てみたい。(※12)

厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)調査結果 ④公表による企業へのメリット」より筆者作成

「公表による企業のメリット」の質問で多かった順に回答を見ると、「社内の男性育休取得率の増加」が37.1%、「男性の育休取得に対する職場内の雰囲気のポジティブな変化」が31.5%と、育児休業に対するポジティブな影響があった人が全体の3割近くいることがわかる。

厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)調査結果 ⑤育休取得率向上に向けた取組による効果」より筆者作成

また同調査の「育休取得率向上に向けた取組による効果」という質問では「職場の風土改善」と答えた人が最も多く、全体の56.0%であった。この結果から厚生労働省は「男性の育休取得率向上に向けた取組が、育休の取得を希望している当事者だけではなく、他の従業員のワークエンゲージメントや人材確保といった企業全体へも好影響を及ぼしている可能性がある」との見解を示している。

※11 参考:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000138824.pdf
※12 参考:厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001128241.pdf

※13 参考:株式会社 日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 令和2年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000791048.pdf

2024年以降に検討されている制度とは?

子どもを育てやすい社会にしていくために政府はどのような制度を検討しているのだろうか。2023年6月実施の「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」の報告書から2つの検討案を抜粋する。(※14)

残業免除の延長

子どもが3歳になるまで請求できる「残業免除」という制度がある。この制度を子どもが「小学校就学前」まで延長することを検討している。

背景にあるのは、フルタイム勤務における時間外労働の常態化だ。本来はフルタイム勤務=8時間までの労働が可能とされているが、フルタイム勤務をしている人の多くが残業を強いられ、育児に時間が取れない現状がある。そのため、育児中の人がフルタイム勤務に戻ることができず、短時間勤務からなかなか抜け出せないという状況が生まれているのだ。

厚生労働省の委託事業による調査結果では、時短勤務制度を利用する理由について、男性正社員の26.3%が「自分の勤めている会社の残業が多かったため」、女性正社員の 32.0%が「配偶者・パートナーが長時間労働であるため」と回答したそうだ。(※15)

今後、労働力が欠乏する可能性がある日本。社会を支えていくためには育児と仕事の両立が不可欠だ。女性のキャリア形成への配慮の観点からも、男性労働者の残業のない働き方に対するニーズに応える観点からも、残業免除の延長がもたらす効果は大きいのではないだろうか。

看護休暇制度の見直し

2つ目が、看護休暇制度の見直しだ。現在の看護休暇制度の概要は以下の通りだ。(※16)

負傷・疾病にかかった子どもの世話または疾病の予防を図るために必要な世話をする労働者が取得可能
1年間に5日間取得可能。ただし、子どもが「小学校就学前」までという制限がある

しかし時代は変化している。たとえばコロナ禍に相次いだ小学校等の一斉休校などでは、多くの保護者が有給休暇を取得せざるを得ない状況が発生した。今後も休暇を取得せざるを得ない事態が発生した際にも利用できるように、現行制度の見直しが必要というわけだ。

検討の中で挙がった具体的な意見は以下の通りだ。

取得可能な子の年齢を、小学校3年生の修了までに引き上げる
年次有給休暇の付与要件である出勤率の算定において、看護休暇の取得が不利とならないようにするべき

また上記以外にも、感染症に伴う学級閉鎖等への拡充だけでなく子の行事(入園式、卒園式など)参加にも活用できるような制度を検討していく必要性が述べられており、その中で「看護休暇」という名称自体も検討するべきとの声も上がっている。

日本には育児をサポートするための制度がいくつか存在するが、制定された頃から子育て環境や価値観などさまざまなことが変化している。少しでも子どもを育てやすい社会にするためには、時代の変化に合わせて制度のアップデートが必要不可欠だろう。

※14 参考:厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/001108929.pdf
※15 参考:株式会社 日本能率協会総合研究所「労働者調査 結果の概要 4.両立支援制度の利用状況・現在の働き方・将来の働き方について(9)育児のための短時間勤務制度を利用する理由」https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001086990.pdf
※16 参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし 10 子の看護休暇制度」https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355367.pdf

育児を自分ごと化する男性が増えれば社会は変わる

政府は2025年までに、男性の育休取得率30%を目標に掲げている。この目標を達成するには、育児は男性もするということを当たり前の社会にしなければならない。
育児をする男性のことを賞賛するような言葉として、「イクメン」という言葉がある。この言葉は、男性の育児を推進していく上で、重要な役割を果たしている単語かもしれない。しかし、この言葉が褒め言葉として使われている間は、育児を行う男性が少数であることを意味している。「イクレディ」という言葉がないように、「イクメン」もいずれは死語にならないといけないのだ。

育児休業制度の改正によって、会社の雰囲気だけでなく社会全体の認識も育児休業取得に前向きに変化するのではないかと期待している。その変化が訪れた際に、対象者が育児休業を取得することで、育児休業を取得しやすい機運がさらに高まるのではないかと思う。育児休業の取得や制度の周知など、少しずつの積み重ねになるかもしれないが、続けていけば育児を自分ごと化する男性が増えていくはずだ。そうすることで「育児=女性がするもの」というアンコンシャスバイアスもいつかは払拭され、男性も女性もワークライフバランスを自由に選択できる社会へとつながるのではないだろうか。

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文:吉岡葵
編集:大沼芙実子