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「バケツ稲」がわたしにとっての食育だった

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昨日、何を食べただろう。朝に菓子パン、昼にカップラーメン、夜にスーパーのお弁当。こういった食事に身に覚えのある方も多いのではないだろうか。コロナ禍で外食の機会が減り、自宅で食事をすることが増えた昨今。自宅で食事をする上で、手軽に食べられるものを選択するシーンも少なくないはずだ。

便利な食品が増えるなかで、現代の食生活によって引き起こされる「新型栄養失調」が問題視されている。「新型栄養失調」とは

摂取カロリーは足りているのに特定の栄養が不足しカラダの不調につながること

である。
出典:ABCクッキングスタジオ( https://www.abc-cooking.co.jp/plus/feature/202001-labo/

若い世代の女性は食事制限によるダイエットや不規則な食事が原因でタンパク質やビタミン、ミネラルが不足。30-50代の男性では外食や炭水化物中心の食事によってカロリー過多、ミネラルやビタミン不足に。シニア世代では食事量の減少や薄味を好むことからタンパク質が不足するなど、各世代の生活スタイルごとに不足している栄養素は異なる。
参照: ABCクッキングスタジオ 気になる!新型栄養失調とは?
https://www.abc-cooking.co.jp/plus/feature/202001-labo/

しかし、コロナ禍において免疫を高める意味でも食から健康を見直したいという意識は高まっている。
食生活を見直すために、まずは日々食べているものに気を配る必要がある。初めて自分が食べているものを意識した経験は何だったろうか。私の頭に浮かんできたのは「バケツ稲」だった。

バケツ稲から始まった食育

「バケツ稲」とは名前の通り、バケツの中で育てる稲のことだ。小学生の時に生活の授業でクラス全員で種をまくところから始めて、育ちの良い苗の移し替え、稲刈りまでを行った。

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出典:JA全中HP WEBサイトより ( https://life.ja-group.jp/education/bucket/ )
主催:(一社)全国農業協同組合中央会・バケツ稲事務局

バケツ稲に限らず、学校で野菜などの食物を1から育てる経験をした人は多いのではないだろうか。
文部科学省の小学校学習指導要領にも

動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して,それらの育つ場所,変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ,それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに,生き物への親しみをもち,大切にしようとする。

 と記載があり、食育は小学校の授業に積極的に取り入れられようとしている。
出典:文部科学省 小学校 学習指導要領 p.95(平成29年告示)(http://www.shinkyousha.com/files/libs/177/201807191004142537.pdf

米という漢字は「米作りには八十八の手間をかける」ところから来ている、という話もあるように、「バケツ稲」の授業を通して農作物を育てる大変さを実感した。食べ物を粗末にしてはいけない、と言われる理由を体感できる経験だ。

食育という観点では、他にも栄養素について学んだり、日本の食文化について学んだりもする。SDGsの観点で取り沙汰されているフードロスに関しても、食育の一環として1つの項目になっているようだ。

「今」の食育

さまざまな環境変化に伴い、学校で学ぶ「食育」の内容についても変化が見られる。平成28年からの5年間で重点的に取り組む課題として以下の5つが設定されている。

若い世代を中心とした食育の推進
多様な暮らしに対応した食育の推進
健康寿命の延伸につながる食育の推進
食の循環や環境を意識した食育の推進
食文化の継承に向けた食育の推進

 出典:文部科学省 学校における食育の推進の必要性 p.4(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/19/1293002_4_1.pdf

「食の循環や環境を意識した食育の推進」の項目からは、先ほど触れたフードロスに関して、教育の現場においても重要視されていることが伺える。加えて孤食が増えていることや地域コミュニティの変容に伴った「多様な暮らしに対応した食育の推進」や、日本の食文化や地域の特産品の伝承を目指す「食文化の継承に向けた食育の推進」が設定されるなど時代に沿って内容は変化している。

特に最近では、地域資源を活用して高校生が商品開発を行う取り組みも多々ある。

例えば、茨城県にある大成女子高校では特産品の「ほしいも」からグラノーラを開発。その背景には株式会社ブランド総合研究所が2006年から毎年実施する調査によって発表される「魅力度ランキング」において茨城県が最下位であるという結果から、県のイメージアップを図りたいという意図があった。

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ほしいもグラノーラ
出典:To!Say BLOG( https://www.taisei.ac.jp/blogtghs/?p=11009

大成女子高等学校 考案 ( https://www.taisei.ac.jp/
一般社団法人 i.club プロデュース ( http://innovationclub.jp/
ホテルクリスタルパレス 開発協力・製造販売 ( https://www.hotel-crystal.co.jp/

活動を通じて地元への愛着が増したとともに、それを発信することで地域経済への貢献も達成できる。食育はさらに実践的な方向へ向かっているようだ。
参照:ready for 茨城の高校生が考案「ほしいもグラノーラ」を全国へ (https://readyfor.jp/projects/iclub_hoshiimo

今からできる、大人のための食育

それでは、大人になった我々が今から取り入れられる「食育」には何があるだろうか。自分が何を食べているか知るために、自分で野菜を育てたり、それを使って料理をすることは、自分の健康に意識を向けることにも、食品を必要な分だけ買うことにもつながる。

ビルの屋上やベランダなど、都会の小さなスペースを利用して野菜や穀物を育てる、アーバンファーミング、都市農業というものがある。
サステナブルな生活スタイルとして世界で注目されている取り組みだが、東京でもそれが体験できるようになってきた。

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例えば株式会社アグリメディアが運営する「シェア畑」。このサービスを使用すると、都会に住みながらも畑を借りて野菜作りを楽しむことができる。
農業従事者の高齢化などにより、維持管理できなくなった農地を「シェア畑」として再生し、農地を守り、都市に住む人たちの農業への理解・関心を醸成する。日本農業の発展に貢献し、都市と農業を繋ぐことを目指して作られたサービスだ。

野菜の種や苗、必要な農具は完備されており、週に1回程度畑を訪れるだけ。これなら働きながらでも、継続的に農業を体験できそうだ。
参照:シェア畑 (https://www.sharebatake.com/

また、渋谷区を中心に作物を育てる活動を行う特定非営利活動法人アーバンファーマーズクラブも存在する。クラブに参加すると渋谷エリアにある畑や田んぼでの農作業体験を始めとし、オフ会やイベント、オンラインサロンでの情報交換などが可能になる。
こちらは他の参加者と共同で畑を耕していくため、農作物についての知識が増えたり、新たなコミュニティとの出会いもあるかもしれない。
参照:特定非営利活動法人アーバンファーマーズクラブ (https://urbanfarmers.club/

これら以外にも農園の貸し出しサービスなどは増えており、こういった場所を利用することで自身の「食」について意識を向上するきっかけになるだろう。

わたしにとっては「バケツ稲」が食育の始まりだった。大人になってからはつい遠ざかってしまう農作物を自分で作ってみるという体験。外出やこれまでのようなアクティビティができない今、「食」への意識を高めて、食べるものを育てたり作ったりと、「体験」として食を捉えることは、日常を充実させることにもつながる。日々食べているものに目を向けることで、健康や環境について改めて考える良い機会になるのではないだろうか。

 

文:藤木美沙
編集:白鳥菜都