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入社してからモヤモヤしたくない! ワーク・エンゲージメントを高められる組織えらびのヒント

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わたしは、企業で新卒採用の担当をしている。就活中の学生や、入社を決めてくれた内定者と話すことが増え、「就活期、わたしもこんなことを考えていたなあ」と自分のことを振り返ることが多くなった。きっとわたしのときよりも、就職先も多様化しているし、あるいは就職しない選択肢ももっと身近になったかもしれない。

「もし就活生に戻れるとして、今の自分だったら、どうやって会社を選ぶだろう?」

ふとそんなことを考えたとき、「ワーク・エンゲージメント」というキーワードが浮かんだ。従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係、を意味する言葉だ。仕事に対する喜びを持った状態で、企業と個人が互いに高め合い成長をしていけたらーー。

今回は「あしたメディア」を読んでいる方のうち、少なからずいるであろう就活生のみなさんに、その観点からひとつ提案をしてみたい。

学生の就職観は、「楽しく働きたい」がいちばん

自分は学生のとき、どんな観点で就職する組織を選んでいただろう? 「どんな仕事に関わりたいか」「どんなことに関わっているときがワクワクするか」、それが大きかったように感じる。株式会社マイナビが2021年3月大学卒業予定者を対象に行った調査によると、学生の職業観では10年以上連続で「楽しく働きたい」がトップで、学生全体の4割弱を占める。基本的な選択軸は変わっていないようだ。

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引用:「2021年卒マイナビ大学生就職意識調査」(株式会社マイナビ) 
https://saponet.mynavi.jp/release/student/ishiki/survey2021-1/

「ワーク・エンゲージメント」 組織と従業員の関係性が問われる時代に

一方で、わたしが就活をした頃と、組織と従業員の関係性は変わってきている。

転職でスキルアップをしていくことが当たり前の現代は、個人が自身でキャリアをつかむ時代。これまでのマジョリティであった、「終身雇用が前提で、従業員は企業にキャリアを委ねる」という考えが薄れ、「企業は個人に選ばれるもの。対等な立場で互いに貢献しあう」という関係性に変わってきている。そうでないと企業は優秀な人材を確保できないからだ。

そこで注目されているのが、「ワーク・エンゲージメント」という考え方である。この言葉は、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の研究で有名なユトレヒト大学シャウフェリ教授により、「仕事に関するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる」とされている。また、エンゲージメントとは特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全体的な感情と認知であると定義づけられている。

ワーク・エンゲージメントが高まることで、従業員も心理的なストレスがなく仕事に意欲的に取り組むことができ、パフォーマンスの向上や、優秀な従業員の離職防止などの効果が期待されている。組織によっては定期的にエンゲージメントサーベイ(調査)を実施し、従業員の状態把握に活用しているそうだ。

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引用:「令和元年度版労働経済の分析」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3_01.pdf(2020年2月28日に利用)

入社してから感じたモヤモヤ……就活中のわたしに伝えたいヒント

自分なりによく考えて選んだ、納得のいく就職先。ただ数年仕事を続ける中では、少なからずモヤモヤポイントが顔を出し、「せっかく長い時間を会社での仕事に費やしているのだから、もう少し満足度が高い状態で仕事がしたい」と考えることが多くなった。どうしたらもっとモチベーションを高く持って仕事をしていけるだろう?

そんなときふと思ったのが、「就活のタイミングで、『エンゲージメント』という組織と個人との関わりの状態をもう少しイメージしていたら違っただろうか」ということ。自分が、活力を持ち、熱意にあふれ、没頭した状態で仕事に臨める環境を、もう一歩踏み込んでイメージできていたら、もう少し選択肢が変わっていたかもしれない。

「ワーク・エンゲージメント」の考え方は、企業が従業員と対等なパートナーとして関係を築いていくための、どちらかというと「企業側が工夫するべき」取り組みに見受けられる。しかし同様に、1メンバーとしてその組織に属する従業員も、自分の充足された状態を知って、よりマッチングの確度が高いパートナー(組織)を選ぶ視点があると良いのではないだろうか。

たとえば自己分析の中で、ひとつ提案をしてみたい。

「たのしい」って、なに? 自分の充足された状態を1歩深くイメージしてみよう

多くの就活生が取り組む、いわゆる「自己分析」。自分を知って、自分の働きたい、前向きに働ける仕事選びを進めるために、時間をかけて自分と向き合う。そこで見えてきた自分の特性は、面接などのアピールに活用できることもあるだろう。
その自己分析の中で、「自分が充足した状態」を知り「充足した状態がその組織で保ち続けられるか」、という指標で、組織とのマッチングを考えてみてはどうだろうか。

たとえば、冒頭紹介した株式会社マイナビの調査で明らかになった、「楽しく働きたい」という職業観。この「たのしい」をとっても、一人ひとり「たのしい」の定義は異なる。「やりたい仕事に就いている」という状態が「たのしい」だと思っていても、その仕事を個人でやるのか、チームでやるのか。ゆっくりじっくりとスキルを習得していきたいのか、すぐに裁量を与えられて失敗を繰り返しながらもタフに成長したいのか。環境や、長期スパンでの自分のキャリアなど、求めるものをかけ算で考えていくと、長いお付き合いの相手としての就職先に問いたいことが多々出てくると思う。

自分の充足された状態をイメージした上で、説明会やOB訪問などを通じ、恒常的にエンゲージメントの高い状態を維持して働けそうな組織であるか、測ってみてはどうだろう。

完全なパートナーはいない。だけど少しでも合う相手を選びたい

自分なりの自己分析を経た就活の結果、わたしはインフラ業界を選んだ。「公共性の高い業種に関わることで、恒常的にモチベーションが保てる」と考え選択したのは、ここまで転職せず仕事を続けてこられた、会社へのエンゲージメントを高めていられた指標であったと思う。
一方で、業界がら「安全」や「変わらない価値」の提供が大前提となることから、「型」を踏襲することを求められることが多く、個人の発想力の重要度は低い。そこは正直、働き始めてからのモヤモヤポイントで、あまり自分の充足感を高められていない部分である。
就活の時、このモヤモヤポイントに関する視点はなかった。もう一歩踏み込んで自分を知り、その視点で会社を見られたら、キャリアの選択肢は違っていたかなと思う。

就職活動はマッチング。内定が決まれば終わりではなくて、そこから「お付き合い」が始まる。転職という選択肢も身近ではあるが、少なくとも一定期間は、自分がその組織のなかで時間とエネルギーを注ぐ事になるのだから、働く上での満足度は高くありたい。
ぜひ就活生の皆さんには、多角的に自分と組織をマッチングさせていってほしい。

 

文:まあすけ
編集:中山明子