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クエスチョニングとは?その意味やXジェンダー、SOGI、クィアとの関連性を解説

クエスチョニングとは?その意味やXジェンダー、SOGI、クィアとの関連性を解説

クエスチョニングとは

クエスチョニング(Questioning)とは、性自認(自分の性を何と認識するか)や性的指向(どんな性を好きになるか)が「定まっていない」もしくは「意図的に定めていない」セクシュアリティのことを示す。

クエスチョニングの定義

クエスチョニングのなかには「自分を女性だと思って生きてきたけど、違和感があるかもしれない」「自分は男性を好きになると思っていたけれど、女性のことも好きになるかもしれない」など、自身のセクシュアリティが揺れ動いていたり、心地よいと感じられるセクシュアリティを模索したりしている人がいる。また、「自分は特定の性別に当てはめない方が生きやすい」など意図的に特定のセクシュアリティを決めていない人もいる。

クエスチョニングについて考えるとき、セクシュアリティが生まれつき「固定されたもの」ではなく「流動的なもの」であるという考え方を理解する必要がある。

歴史的背景

セクシュアルマイノリティのことを頭文字をとって「LGBTQ+」のように表記するとき、クエスチョニングはクィアとともにQに分類されることが多い。このとき、「LGBT」と「LGBTQ+」はそれぞれどのような意味合いを持つのだろうか。

「LGBT」という言葉は、2006年の国際連合『モントリオール宣言』の中で初めて公的文書に記された。その後、L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシュアル)T(トランスジェンダー)以外にも、偏見や差別に苦しむセクシュアルマイノリティを包括するという意味合いで、2010年代以降にはQ(クエスチョニング・クィア)を含む「LGBTQ」が使用されるようになった。また、それ以外のセクシュアリティも包括的に表現する「LGBTQ+」や「LGBTQIA」などの表現が用いられる場合もある。(※1)

※1 参考:こここ 「LGBTQ+とは? 職場で起こっているかもしれない『SOGIハラ』を考える」
https://co-coco.jp/news/lgbtq/

クエスチョニングとは

性的指向とクエスチョニング

「性的指向」とは「人の恋愛・性愛の対象がどういう方向に向かうのかを示す概念である。例えば異性愛、同性愛、両性愛などが性的指向に当てはまる。また、ここには人を恋愛・性愛的な観点からは好きにならないことも含まれる。

性的指向に関してクエスチョニングである人は、「自分は男性を好きになると思っていたけれど、女性のことも好きになるかもしれない」「どちらを好きになるか決めないほうが心地が良い」など、どんな性を好きになるかが定まっていない、もしくはあえて定めていないといった状況にある。

ジェンダーアイデンティティとクエスチョニング

ジェンダーアイデンティティとは「自分自身の性別を自分でどのように認識しているかということ」を指す。これまでは生まれてきたときの性別(男性・女性)と、自分は「男性である」「女性である」という認識が一致していることが普通とされてきた。このように生まれてきたときに割り当てられた性別と、性自認が一致している人をシスジェンダーという。しかし、なかには身体の性と自分が考えている性別が違ったり、自分はどの性別に当てはまるのか確信できない、といった人たちもいる。

ジェンダーアイデンティティに関してクエスチョニングである人は、「自分を女性だと思って生きてきたけど、違和感があるかもしれない」「どの性別もピンと来ないのであえて決めていない」など自分の性がわからない、もしくはあえて決めていないという状況にある。

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ジェンダーアイデンティティとクエスチョニング

Xジェンダーやクィアとの関係性

クエスチョニングと関連する言葉として、Xジェンダーやクィアといった言葉があるが、それぞれどのような意味を持つのだろうか。

Xジェンダーとは

Xジェンダーは、性自認(自分の性を何と認識するか)が、男性にも女性にもはっきりと当てはまらないと感じている人のことを指す。Xジェンダーには中性、両性、無性、不定性という4種類がある。

  • 中性:男性と女性という2つの性の中間地点にあると自認している
  • 両性:女性でもあり、男性でもあると自認している
  • 無性:女性でも、男性でもないと自認している。どちらもしっくりこない
  • 不定性:その時々によって性自認が変わるなど、流動的。さまざまな性の間で揺れ動いている

(※2)

性自認や性的指向が揺れ動いている、模索している状態のクエスチョニングとは異なり、Xジェンダーは「性自認が男性と女性の間で揺れ動いていること」を自覚しているのが特徴である。

Xジェンダーのように名前の付いた性に当てはめることで生きやすくなる人もいれば、クエスチョニングのようにあえて当てはめない方が心地よいと感じる人もいるためそれぞれ使い分けることができる。

※2引用:IDEAS FOR GOOD「Xジェンダーとは・意味」
https://ideasforgood.jp/glossary/x-gender/

クィアとは

クィア(Queer)は、セクシュアルマイノリティを包括的に考える言葉である。LGBTQ+のように表現されるとき、クエスチョニングはクィアと共にQに区分されることが多い。

クィアとクエスチョニングの異なる点として、「自分はゲイだ」「私はレズビアンだ」と自認している場合にもクィアと表すことができる一方で、クエスチョニングは、「自分の性自認や性的指向がわからない」「決まっていない」「探している最中」など定まっていない状態を指すという点がある。

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クエスチョニングの経験

クエスチョニングが性自認や性的指向が定まっていない、もしくは意図的に定めていないセクシュアリティであることを述べてきた。ここからは、クエスチョニングの理解もまだまだ低い現代社会を生きるなかで、当事者がどのような悩みや課題感を抱えているのか紹介していく。

個人の体験談とその多様性

ここでは、クエスチョニングの当事者が発信しているメッセージを紹介する。

クエスチョニングであることを公言しながら、LGBTQ概念の普及と理解を促すためアプリケーション上での配信を行うクリエイター 帝ラスカル豹さんはインタビューで下記のように述べている。

履歴書の性別記入欄やスカートかパンツかを選べない制服など、2性別だけを対象とした世の中の仕組みや価値観って、実はたくさんあります。
そしてそれは普段使っている何気ない言葉の中にも存在しているんですよね。「男なの?女なの?」「かわいいんだから、もっと女の子らしくしなよ」「女の子が俺って言うのは変だよ」など……言っている本人には悪気がないのかもしれませんが、そういう物言いをされて傷つく人がいるというのは事実です。

性交渉の可能性がある恋人やパートナーなら相手の性別についてきちんと知る必要があるかもしれないけれど、そのような関係にない人間が「相手の性別はLGBTQのうちどれなのか」をはっきりさせる必要はないはず。カテゴライズというのは人を傷つけうる行為だと知ってほしいです。

(※3)

他者のセクシュアリティを見た目や言動から特定のものに結びつけることは大なり小なり暴力的な側面をもっている。誰でもクエスチョニングの可能性があるというスタンスでいることが重要ではないだろうか。

※3 引用:IDEAS FOR GOOD「性別の『らしさ』に縛られない。LGBT“Q”について発信する帝ラスカル豹が想う『自分らしく生きること』とは?」
https://ideasforgood.jp/2019/04/06/lgbtq_mikadorasukaruhyo/

社会的な受容とその影響

クエスチョニングを取り巻く社会の変化として、女子サッカーに関する話題を紹介したい。近年、女子サッカー界では「性の多様性」を発信する動きが加速しているという。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、性的マイノリティであることを公表した選手は過去最多の220人余り、そのうち女子サッカー選手で40人を超えた。(※4)

サッカー女子 元日本代表 齊藤夕眞さんは、自身をクエスチョニングとは定義していないものの、セクシュアリティに関するこれまでの葛藤について次のように語っている。ここで紹介するメッセージに触れて、「定まらない/あえて定めない」という性のあり方について理解を深める機会になれば幸いだ。

いま『自認する性』は男性ではないです。最近はLGBTに加えてQ(クイア、クエスチョニング)などいろいろなことばが出ていますが、ことばの概念にとらわれない、男でも女でもない齊藤夕眞が今の自分だと思います。自分自身の気持ちにウソをつきたくない、自分が納得する生き方をしたい。自分がサッカーを通じて『LGBTQって何?』という感じではなく、自分を表現しながら生きている、恥ずかしいことじゃない、そんなふうに捉えてもらえる発信ができたらいいなと思います

(※4)

※4 参考・引用:NHK「“自分メンズなんだよね” 女子サッカーと「性の多様性」」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220214/k10013480321000.html

クエスチョニングの経験

クエスチョニングのサポート

クエスチョニングに限らず、LGBTQ+の当事者は社会の偏見が怖く、自身の悩みを相談しにくいという現状がある。中でも自身の性自認や性的指向が常に揺れ動いていたり、当てはめようとしてもどこか違和感を覚えるクエスチョニングは、同じ悩みを抱えるコミュニティが見つかりづらく、相談しにくい。

LGBTQ+の当事者が相談しやすい環境へと社会を前進させる方法の1つに、周囲の一人ひとりが「アライ」(※5)であることを示し、安心して話をすることができると伝えることが重要だ。相手にアライであると伝える方法は、例えば相手に直接「自分はアライです」と伝えるほかにも、アライのバッチやステッカーなどをつくって持ち物につけるなどのアクションができる。

また、相談を受ける側がセクシュアリティはLGBTという特定のカテゴリだけではなく、「あえて決めていない」「流動的である」という考え方を知っておくことで、クエスチョニングの当事者にとっても「カテゴライズしなければならない」というプレッシャーを押し付けてしまうリスクが減る。

※5 用語 :アライ(Ally)とは、LGBTQ +当事者たちに共感し、寄り添いたいと考え、支援する人のこと。「味方」や「仲間」、「同盟」を意味する英単語「ally」が由来で、正式にはストレートアライ(Straight Ally)という。

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クエスチョニングとメンタルヘルス

LGBTQ+の人々は、自殺のハイリスク層であることが国内外のさまざまな調査で報告されている。例えば近年の国内の調査によると、LGBTQ+の若者の自傷行為経験率は、首都圏の男子中高生の2~7倍以上と圧倒的に高いことが報告されている。(※6)

なかには周囲の理解やサポートを得ることで、自分の性的指向や性自認を決めることができる方もいる。一方、クエスチョニングの若者はLGBの若者よりも自殺を考えたり、自暴自棄になることが多いという調査結果もある。(※7)

このような状況において、クエスチョニングの人々をサポートするために、明日からの自分にできることとして、こんなことがあるのではないだろうか。

  •  LGBTQ+関連のテーマについて肯定的に話したり、学んでいることを伝えたりする。
  • LGBTQ+やさまざまな人権課題について、差別的な発言をしている人がいたら注意をする。
  • ハラスメントやアウティング(第三者へセクシュアリティを勝手に暴露してしまうこと)を絶対にしない。
  • 問題解決をするのではなく、まずは傾聴する。
  •  LGBTQ+に理解があることを示す国際的なシンボルである、6色(赤・橙・黄・緑・青・紫)のレインボーを身につけたり、身近に置いたりする。

※6 参考:プライドハウス東京「性的マイノリティ(LGBTQ+)の自殺対策を自治体で進めていくために ~「自殺総合対策大綱」に基づいて~」
https://pridehouse.jp/legacy/wp-content/uploads/2022/03/3760aae90403e41b2238b941b23badb5.pdf

※7 参考:PRIDE JAPAN「LGBTQ用語解説 クエスチョニング
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/glossary/ka/12.html

まとめ

世の中ではセクシュアリティは、生まれたときに決まっていて変化しないものである、変化するとしても最終的に1つのカテゴリーに固定されるという考え方がいまだに根強い。しかし、クエスチョニングの体現する「セクシュアリティとは流動的なものである」「1つに決めない生き方も当然ある」ということを1人でも多くの人が知っておくだけで、周りの人だけでなく自分自身の生きやすさにもつながるのではないだろうか。

 

文:さとうもね
編集:武田 大貴