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ルッキズムをやめたいなら?社会全体で取り組むべき課題と対策

ルッキズムとは、人の価値を外見で判断する考え方を指す。SNSの普及や美容関連広告の増加により加速し、学校や職場での差別、自尊心低下、摂食障害など深刻な問題を引き起こしている。ここでは、「ルッキズムをやめたい」と考えた時に個人レベルでできること、また社会的に必要な取り組みなどを紹介する。

ルッキズムとは何か?

まず、ルッキズムの定義や歴史について紹介する。

ルッキズムの定義と語源

ルッキズムとは、外見至上主義、すなわち人間の価値を外見で判断する考え方を指す言葉である。この言葉は、「Looks」(見た目)と「ism」(主義)を組み合わせた造語であり、人の見た目を過度に重視する社会的風潮を表現している。

ルッキズムの歴史と広がり

ルッキズムという概念は、1970年頃にアメリカで始まった「ファット・アクセプタンス運動」から発生したとされている。この運動は、肥満者に対する差別に反対し、体型の多様性を尊重することを訴えたものである。その後、2000年頃から学術研究やメディアにおいてルッキズムという言葉が広く使用されるようになり、社会問題として認識されるようになった。

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ルッキズムが社会に与える影響

ルッキズムが蔓延することで、社会の様々な場面で差別や格差が助長され、個人の尊厳が損なわれるリスクが高まっている。

SNSにおけるルッキズムと誹謗中傷問題

SNSの普及に伴い、容姿に関する誹謗中傷が増加している。匿名性を悪用した心ない書き込みにより、多くの人々が傷つけられている。

SNS上でのルッキズムを防ぐためには、利用者一人ひとりが相手の尊厳を尊重し、偏見に基づく発言を慎むことが求められる。また、プラットフォーム運営者には、ルッキズムを助長するような投稿を適切に規制することが期待される。

職場・学校でのルッキズムと差別

職場や学校においても、ルッキズムに基づく差別が存在する。「顔採用」と呼ばれる容姿基準での採用や、校則による外見規制などがその例だ。

例えば、2019年に、株式会社マンダムが様々な企業の新卒採用担当者を対象に実施した調査(※1)では、「学生の履歴書の証明写真から受ける印象は選考にどの程度影響しますか?」という質問に対し、約7割が証明写真から受ける印象が選考に影響すると感じていることが明らかになった。

出典:株式会社マンダムの調査を元に作成
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000430.000006496.html

もちろん、職種によって清潔感やファッションセンスなども含めた容姿が重要になる場合もあるかもしれない。しかし、仕事内容や学問とは関係のない部分でルッキズムによる判断がされているのであれば、組織文化やルールを見直すことが求められる。

ルッキズムが引き起こす健康問題と摂食障害

ルッキズムは、人々の身体やメンタルヘルスにも悪影響を及ぼす。ルッキズムによる痩せ願望や美容へのプレッシャーから、摂食障害のリスクが高まる可能性がある。

ルッキズムによるストレスを軽減するためには、自身の容姿を受け入れ、セルフケアに取り組むことが大切だ。同時に、社会全体でメンタルヘルスケアの重要性を認識し、支援体制を整備することが求められる。

ルッキズムとSDGsの目標10の関連性

ルッキズムは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標10「人や国の不平等をなくそう」にも関連する。ルッキズムによる差別や格差は、社会の持続可能性を脅かす要因となる。

ルッキズムをやめるためには、個々人が自分の価値観を見直し、多様性を尊重する意識を持つことが大切だ。同時に、政府や企業、市民社会が連携し、ルッキズムのない公正な社会の実現に向けて取り組むことが求められる。

※1 出典:株式会社マンダム「「履歴書の証明写真は選考に影響」約7割!証明写真から感じとるのは「清潔感」!約8割の採用担当者が、写真とリアルの姿にギャップを経験」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000430.000006496.html

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ルッキズムに関する統計データ

ルッキズムによって引き起こされている様々な問題について、データをもとに見ていこう。

若者の容姿に対する意識調査

ルッキズムに関する統計データを見ていく上で、まず注目すべきは若者の容姿に対する意識調査の結果である。

内閣府子ども家庭庁が2023年に発表した「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」(※2)によると、日本の若者(13〜29歳)の54%が「心配」あるいは「どちらかといえば心配」と回答していることが明らかになった。また、他国でも50%を超える若者が容姿を心配していることが分かる。この数値は、ルッキズムが若者の意識に深く根付いている現状を如実に表している

※出典:子ども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)」p.35を元に作成
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d0d674d3-bf0a-4552-847c-e9af2c596d4e/3b48b9f7/20240620_policies_kodomo-research_02.pdf

SNSの普及により、他者の外見を容易に比較できるようになったことが、若者の容姿への過剰な意識を助長していると考えられる。

コロナ禍における摂食障害患者の増加

次に、コロナ禍における摂食障害患者の増加について見ていきたい。

国立成育医療研究センターが2021年に実施した「コロナ禍の子どもの心の実態調査」(※3)では、摂食障害の「神経性やせ症」患者が2020年以降、高止まり状態にあることが報告されている。同調査では、この結果について、外出自粛によるストレスや生活の変化による影響が大きいことが推測されている。あわせて、コロナ太り対策のダイエット特集の報道やSNSでの情報や、運動を推奨する教員や保護者などからのアドバイスからの過度な影響についても指摘されている。

拡大する美容医療市場の現状

最後に、拡大する美容医療市場の現状について触れておきたい。

株式会社矢野経済研究所が発表した調査(※4)によれば、2020年以降、日本の美容医療市場は右肩上がりに拡大している。自身の容姿を改善するために美容医療を利用する人が増えているのだろう。

出典:株式会社矢野経済研究所「美容医療市場に関する調査」を元に作成
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3570

ルッキズムが浸透した社会において、容姿を変えることが自己実現の手段として捉えられるようになってきた。近年では女性向けの施術だけではなく、ヒゲ脱毛などの男性向け美容医療メニューも充実してきている。しかし、美容医療に頼ることが本当の問題解決につながるのか、慎重に考える必要がある。

以上の統計データから、ルッキズムが若者を中心に社会に広がっており、心身の健康や社会問題に大きな影響を及ぼしていることが分かる。ルッキズムは社会全体で取り組むべき喫緊の課題であると言えるだろう

※2 出典:内閣府 子ども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d0d674d3-bf0a-4552-847c-e9af2c596d4e/3b48b9f7/20240620_policies_kodomo-research_02.pdf
※3 出典:国立成育医療研究センター「2021年度コロナ禍の子どもの心の実態調査 摂食障害の「神経性やせ症」がコロナ禍で増加したまま高止まり 」
https://www.ncchd.go.jp/press/2022/1117.html
※4 出典:株式会社矢野経済研究所「2021年の美容医療市場規模」調査 」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3570

ルッキズム問題への対策

ルッキズムの拡大を防ぐためには、多方面からのアプローチが非常に重要である。

メディアの役割:偏見を再生産しない報道と多様な美の価値観の尊重

ルッキズムの拡大を防ぐために、メディアの果たすべき役割は大きい。メディアは、外見に関する偏見を再生産しないよう報道姿勢を見直すとともに、多様な美の価値観を尊重する必要がある。

具体的には、外見に関する誹謗中傷や差別的な発言を無批判に取り上げることを避け、容姿の多様性を肯定的に伝える報道を心がける必要があるだろう。また、美容や健康に関する情報を提供する際は、科学的根拠に基づいた情報を伝えるよう努め、一律の美の基準を押し付けることのないよう留意すべきである。

さらに、広告においても、年齢、性別、体型など多様な人々を起用し、画一的な美の基準に縛られない表現を用いることが求められる。このように、メディアが率先して多様な美の価値観を尊重することで、社会全体のルッキズムに対する意識改革につながることが期待される。

近年、欧米を中心に、「ボディ・ポジティブ」の考え方が広がりを見せており、広告業界でも多様な体型のモデルを起用する動きが活発化している。日本でも、徐々にではあるが、プラスサイズモデルの起用や、年齢や性別によらない多様なモデルの活用が進んでいる。

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教育現場での取り組み:多様性を尊重する教育

ルッキズムをやめたいなら、教育現場での取り組みも欠かせない。学校教育において、外見の多様性を尊重し、ルッキズムの問題について考える機会を設けることが重要だ。

例えば、道徳や総合的な学習の時間などを活用し、ルッキズムが引き起こす差別や人権侵害の問題について議論したり、多様な価値観を尊重することの大切さを学んだりするプログラムを実施するのも一案だ。また、学校行事や日常の教育活動の中で、外見の違いを超えて互いを認め合う姿勢を育むことも重要である。

加えて、教員自身がルッキズムに関する正しい知識を持ち、外見による差別を容認しない姿勢を示すことも必要不可欠だ。このように、教育現場から多様性を尊重する価値観を発信していくことで、次世代を担う子どもたちの意識改革につなげていくことが期待される。

個人レベルでの対策:セルフケアとメンタルヘルスケア

ルッキズムをやめたいなら、個人レベルでの対策も重要だ。自分自身の外見に対する受け止め方を見直し、セルフケアとメンタルヘルスケアに取り組むことが求められる。

具体的には、自分の外見を肯定的に捉え、自己肯定感を高めることが大切だ。自分の個性や長所に目を向け、外見だけで自分の価値を決めつけないよう心がける必要がある。また、SNSなどで外見に関する誹謗中傷を受けた場合は、適切に対処し、必要に応じて周囲の支援を求めることも重要である。

さらに、ストレスマネジメントやリラクゼーションなどのメンタルヘルスケアにも取り組むことが望ましい。外見に関する悩みを抱え込まず、信頼できる人に相談したり、専門家のカウンセリングを受けたりするのも効果的だ。このように、自分自身の心身の健康に気をつけながら、外見の多様性を尊重する意識を持つことが、ルッキズム問題の解決につながると考えられる。

社会全体での取り組み:ルッキズムを肯定しない環境づくり

その他にも、ルッキズムをやめるために社会全体で取り組めることもある。ルッキズムを肯定せず、外見の多様性を尊重する社会環境を整備していくことが求められる。

職場や学校、地域社会など、あらゆる場面において、外見による差別を許さない姿勢を明確に打ち出すことが必要だ。ルッキズムに関する相談窓口を設置したり、差別を防止するためのガイドラインを策定したりするなど、具体的な取り組みを進めることが求められる。このように、社会のあらゆる場面でルッキズムを肯定しない環境をつくることで、誰もが自分らしく生きられる社会の実現につなげていくことが期待される。

まとめ

ルッキズムの蔓延は、自尊心の低下や摂食障害など深刻な問題を引き起こしている。若者の半数以上が容姿に悩み、コロナ禍で摂食障害患者が増加するなど、心身の健康を脅かしている現状がある。

ルッキズムを乗り越えるためには、メディアや教育、社会全体で多様性を尊重していく必要がある。偏見のない報道姿勢、多様性を認める教育など、各方面からの取り組みが不可欠だ。ルッキズムは一朝一夕には解決できないだろうが、地道な活動を積み重ね、一歩ずつ前進していくことが大切だ。

 

文・編集:あしたメディア編集部

 

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