2001年生まれのインフルエンサー・川端美由さん。クールな見た目とギャップのあるハキハキとした関西弁のユニークな喋り。YouTubeやTikTokなどで見たことがあるという人も多いのではないだろうか。
そんな美由さんは和歌山県出身で、現在も和歌山県を拠点に活動を続けている。他にはない特徴的なメイクの誕生秘話や、SNSの活動を通して感じていること、和歌山県への愛など、美由さんのこれまでを深掘りするインタビューを実施した。
パンクなおばあちゃんに影響されてファッションが好きに
まずは幼少期のことから教えてください。美由さんはどんな子どもでしたか?
小学校5〜6年生ぐらいまでは人見知りでした。元気な子やったとは思うけど、今ほど「私を見て!」という感じではない。中学生くらいの頃も目立つことはなく、みんなと一緒でいいというタイプやったと思います。
将来の夢も特になくて、「これがやりたい」ということがなかったんです。
メイクやファッションに興味を持ったのはいつ頃なのでしょうか?
ファッションは小学生くらいから興味がありました。小学生のときはパンクな雰囲気のかっこいいファッション、中学生のときはストリート系のファッションが好きやったな。
美由のばあちゃんが結構おしゃれやから、それにも影響されてたかな。白髪に紫のメッシュ、パンク系のファッションで、美由よりもおしゃべりが大好き。パワフルなおばあちゃんなんです。
メイクを始めたのにはどんなきっかけがあったのでしょうか?
メイクは高校の頃からです。みんなメイクし始める年頃じゃないですか。美由も、みんながメイクし始めるのを見て、真似してみようかなくらいの気持ちで始めました。当時は、人並みに自分の顔にコンプレックスもあって、他人を見ては「こういう人になりたいな」「かわいいな」と思っていた気がします。
だから、高校1年生の頃は全然今みたいなメイクじゃなくて、いわゆるナチュラルメイクでした。高校2年生くらいから、夏休みとかに東京に遊びに行くようになって、色々なメイクやファッションを見ているうちに「こんなのもアリなんや」とか「アイライン太くしても全然変じゃない」とか発見がたくさんあって。実験を繰り返してたので、高校生の時は毎日1時間半くらいメイクしていたと思います。
気がついたら眉毛がなくなっていた(笑)
今のメイクに辿り着くまでにも紆余曲折あったと思うのですが、どのようにたどり着いたのでしょうか?
新しいメイクに挑戦するのは、イベントごとのときが多いんですよ。東京に遊びに行くとき、学校の文化祭のときとか、何かイベントがあるときに、いつもよりちょっと挑戦的なメイクをし続けていて。アイラインをちょっと長めにしたり、眉毛の形を変えてみたり、そういうのを積み重ねていったら、いつの間にか眉毛剃ってました(笑)。
いわゆる“盛れる”メイクとか”モテる”メイクと言われるメイクとは違ったスタイルだと思うのですが、どんなところからインスピレーションを得ているのでしょうか?
思いつきでやっていることが多いので、あまり参考にしているものはないんです。アイラインの端に描いている赤丸も何気なくやってみたらかわいいやんと思った。足し算したり、引き算したりしながらいろいろ試して自分に合うものを探しています。
強いて言えば、最初はYouTubeのメイク動画を参考にしようとしていました。ただ、YouTubeで調べて出てくるメイクって一重を活かすメイクが少ないんです。どうにか二重にしようとしたり、目を大きく見せようとしたりするメイクが多くて、もちろんそれが好きな人もいると思うけれど、美由がやりたいものではなかった。もっと一重をそのまま活かせるようなメイクがしたいと思って、今のスタイルに辿り着きました。
でも、正直に言うと最近の自分はすっぴんが1番好きです(笑)。あれだけメイクしてたのに、今はメイクしなくてもかわいいと思える。昔の方が、可愛くなりたいとかかっこよくなりたいという気持ちが強かったかもしれません。
なぜ、すっぴんの方がよいと思うようになったのですか?
メイクやファッションのおかげで、自分に自信がついたんだと思います。自信がついたおかげで、前よりも人と喋れるようになって、それによってさらに自分自身を好きになれた。
それに、なんでかわからないけれど、自信がつくと顔が変わるんですよね。友達にも、「なんかすっぴんかっこよくなった!」って言われて。100%振り切ったメイクやファッションをしてみたから自信がついて、素の自分のことも好きになれたんやと思います。
「コンプレックスがあるからメイクしている」とか「自信がないからメイクが派手」と言われることもあるんですけど、今はもうコンプレックスはないんです。すっぴんも大好きやけど、メイクをすると気持ちがシャンとするからしているという感覚です。
画面の向こう側よりも身近な人を大切にしたい
2020年頃からSNSでの活動も始められていますが、その経緯は?
具体的な将来の夢がなかったので、やりたい職業も行きたい進学先も特になかったんですよね。でも、ざっくりと「ビッグになる!」という目標だけあって。ファッションも好きやったから、とりあえずアパレルで働けたらいいかなと思っていたのですが、当時コロナ禍ということもあり雇ってくれるところが見つからず…。
それで、自粛期間中にやることがなくなんとなくノリでYouTubeを始めようと思って。思い立った次の日には機材を買いに行って、でも最初は三脚を買うという発想がなくて、ティッシュ箱を積み上げてそこにスマートフォンを乗せて撮影していました(笑)。
撮影や編集は誰かと協力してされているのですか?
いや、全部1人なんですよ。動画の撮影も、今日みたいな取材の現場に行くのも全部1人でやっていて。いままで誰にも騙されていないのは本当に運が良いなと(笑)。
会社勤めとか経験せず、いきなりフリーランスになったから分からないこともたくさんあるんですけど、地元の人が助けてくれるんですよね。契約書とか書類周りで悩んだら近所のお姉ちゃんが助けてくれたり、パソコン周りで悩んだら友達の彼氏がパソコンが得意で手伝ってくれたり。できるだけ1人でやろうとはしているけれど、周りに助けてくれる人がいるのもラッキーです。
SNSでの活動を始められてから、色々なコメントが来ているかと思いますが、印象的な反応はありましたか?
美由を見て「元気が出ました」「生きようと思えました」なんてコメントをくれる人がいて、美由そんなすごいことできたんか!とよく驚きます。
あとは、意外と美由のチャンネルは子育て世代の視聴者さんが多いんです。「自分の子どもにもこんなふうに育ってほしい」と言ってくれる方もいます。人にはそれぞれの素敵さが絶対にあるから、みんな美由みたいになるのも違うとは思うんですけど、そんな風に思ってもらえるのは嬉しいですね。
一方で、ネガティブなコメントも来ることはありますか?
「キモい」とか「変」とか書かれることもありますね。やっぱり言われると多少嫌な気持ちにはなるし、美由の何を知っていてそんなコメントをしてくるんやろうと思います。
そういったネガティブなコメントに対してはどのように対応していますか?
1つは、そういうのもエンターテインメントにしてしまおうと思って、動画にしちゃうこと。自分としてもさらっと「いや、キモくないやんか」と言い返せるし、アンチコメントに対する美由の返しまで含めて好きとか面白いと言ってくれる人もいるので、そういう人が楽しんでくれたらいいなと。
それに、そこまで気にしていない自分もいます。昔から美由と知り合いで100%信頼しているような人に否定的なことばかり言われたらそりゃあ傷つきますよ。でも画面越しで見えているのなんて一部でしかないから。1人ひとり「キモい」の感覚も「変」の感覚も違うから、「ああ、あなたとは合わないんだね。了解」でいいのかなって。
親戚のなかにさえ、美由のアンチがいますからね。「こんな顔で外歩くな」とか言われたこともあるし。親戚でさえみんな仲良く、理解し合うとか無理なんやから、みんなとわかり合うなんて完璧にはできないと思っています。もちろん、より多くの人と仲良くなれたら嬉しいですけどね。
和歌山から世界へ。地元を離れずに活動を続ける理由
YouTube以外にもモデルの活動など活躍の幅を広げられていますが、和歌山からの活動にこだわるのにはどんな理由があるのでしょうか?
シンプルに東京が合わないんです。なんか都会にくると気持ちがしんどくなっちゃって、和歌山の穏やかな空気が自分には合っているんだと思います。電車は1時間に1本、周りは田んぼだらけの田舎やけど、ここがいいんです。
あとは、一緒に暮らしているじいちゃん、ばあちゃんとか家族といると素の状態でいられるからというのもあります。
となると、メイクやファッションのアイテムはネットショッピングが多いのでしょうか?
いや、実はネットショッピングはほとんどしないんです。例えば今日着ているのは、じいちゃんの弟がスーパーで買ってきた甚兵衛。なんか可愛かったのでもらってきました。他にも地元の呉服屋さんで着物を買ったりしています。
ネットショッピングは便利な面もあるけど、美由はお店に行って人と話して買う方が好き。同じものを見ていても接客が良かったら買っちゃうし、逆に接客が微妙やったら他のお店に行って買っちゃうと思う。そういうリアルな繋がりが面白いなと思います。
一方で、インターネットやSNSがあったからこそ活動が広がったという面もありますか?
そうですね。和歌山にいるのに、ファッション業界の方や芸能界で活躍されている方が美由のことを見つけてくれることも結構あります。どこにいても、活動できるのはSNSで世界と繋がっているおかげ。
最初の頃は東京に出てきた方がいいよとよく言われていたんですけど、今は逆に和歌山にいるのが魅力と言われることもあります。
今の時代ならではの活動の広げ方ですね。美由さんの活動の仕方には勇気づけられる人が多そうです。
場所ってもはや言い訳になっちゃうのかもしれませんね。「田舎だから派手なメイクはできない」とか「田舎だから好きな服を着れない」って、意外とそうでもないんじゃないかなって思うんですよ。だって東京に来てみても、派手なメイク・ファッションをしている人ってそんなに多くない。田舎でできないと思っている人って、もしかしたら東京でもできないんちゃうかなって。
人ってそこまで他人に興味はないと思うから、もし人の目を気にして躊躇していることがあるなら1回やってみたらいいと思います。好きなものがあるってそれだけで素敵なことやし。みんな、着たい服着ていきましょう、ファッションしていきましょう。
美由も、これからも自分の「好き」を使って、海外での仕事もしてみたいなと思っています。
川端美由(かわばた・みゆ)
2001年生まれ、和歌山出身・在住。高校卒業後、YouTubeを中心にSNSで活動を開始。独自のファッションやメイク、ユニークなトークで人気を集める。モデルとして着物カタログやCM等にも出演。
Instagram:@mi1016yu
YouTube:@kawabatamiyu
TikTok:@mi1016yu
取材・文:白鳥菜都
編集:conomi matsuura
写真:服部芽生