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10ギガってどうすごいの? BIGLOBEが目指す「社会インフラとしてのインターネット」

現代社会において、インターネットは多くの人が毎日欠かさず利用するツールである。もはや、IT・情報分野における“社会インフラ”として認識されていると言えるだろう。

「あしたメディア」を運営するビッグローブ株式会社(以下、BIGLOBE)は、インターネットプロバイダ事業を主力としており、これまでブロードバンドサービス「ビッグローブ光」を主軸にその事業を展開してきた。2023年12月にこのサービスはさらなる進化を遂げ、より速く、大容量で快適に利用できる「ビッグローブ光 10ギガ」がリリースされたばかりだ。

今後も一層生活に欠かせない存在となるであろうインターネットについて、BIGLOBEはどのような考えで事業を展開しているのだろうか。10ギガが発表されたこのタイミングで、改めて同社のインターネットプロバイダ事業の特徴や、社会インフラとしてのインターネットが持つ使命について聞いた。

プロダクト技術本部 ネットワーク技術部 南 雄一部長
1998年NECに入社。BIGLOBEの前身となる部署へ配属となり、以後BIGLOBEが分社化してからも一貫してネットワークの分野に関わる。

「安心・安全」と「スピーディーな対応」がBIGLOBEの強み

BIGLOBEは、NECから分社化した後(※1)、インターネットプロバイダ事業の老舗として事業を展開してきました。具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

BIGLOBEが提供するサービス「ビッグローブ光」は、NTTと連携し光回線を借り受けることで、通常分かれている「回線」と「プロバイダ」をまとめて提供できるサービスです。お客さまが快適に通信をご利用いただけるようさまざまな工夫をしています。

たとえば、LINEやNetflixを快適にご利用いただくには、それらの事業者とBIGLOBEのネットワークを直接繋ぐ必要があります。その際になるべく速く、短い経路でお客さまがコンテンツ事業者と繋がれるよう、「相互接続」(※2)にはかなり力を入れています。相互接続は「事業者とネットワークをどこで繋ぐか」という物理的な場所も影響してくるので、海外も含めてなるべく色々な場所にネットワークの拠点を持ち、少しでも快適性が損なわれないように工夫しています。担当者は世界中を飛び回って、必要な交渉を日々行っています。

また、ネットワークはどうしても障害が発生することがあるのですが、それによってお客さまの生活に支障が出ないよう、冗長性をしっかり確保するなど通信品質にも気をつかっています。ゲームなどがイメージしやすいのですが、オンライン上で対戦していると通信速度が遅いことで負けてしまったり、急に違うポーズに体勢が変わってしまったりと支障が出ることがあります。そういったことを避けられるよう、工夫を日々重ねています。

事業を展開するなかで、BIGLOBEのサービスの「強み」や「特徴」は、どのようなところにあると考えていますか?

大きくいうと、「安心・安全」と「スピーディーな対応」ですね。

「安心・安全」と聞いても「当たり前だろう」と思うかもしれませんが、BIGLOBEはインターネットがまだいまほど広く利用されていなかった頃から、このキーワードを常に掲げて事業を進めてきました。障害を起こさないことはもちろん、セキュリティ面でも一切妥協していません。

たとえば多少コストカットして良さそうな場合でも、必ず安全かつ正しい対応を選択するよう心がけています。そうでないと、万一何かあったときに対応できません。そこを遵守していることから、信頼性の高さに自信を持てています。これはもう「BIGLOBEのDNA」として、昔からずっと刻み込まれていると思いますね。

また、スピード感を持った対応ができていることも強みです。たとえば、世の中には色々な種類のゲームがあり、もちろん私たちが把握していないものもあります。そういったものでも快適性を損なうことがあればすぐ対応できるよう、お客さまからの声はもちろん、SNSの書き込みなどもこまめにチェックして、「通信が遅い」という声を見つけたらなるべくすぐに対応するようにしています。

それが実現できるのは、品質を守りつつ少人数のチームで対応できる体制が整っているからです。承認プロセスも最小限なので、やる・やらないのジャッジも素早くできますし、お客さまの声を見つけてから半日〜1日程度で対応することもよくあります。そこは他社と比較しても、強みだと思いますね。

通信インフラと聞くと、大きな仕組みの整備を1度やってしまえばある程度カバーできる印象でしたが、常に細かいメンテナンスやアップデートを続けているんですね。

ネットワークは、日々成長しています。新しいサービスもどんどんできますし、会社の合併等の影響でその傾向が変わるものもあり、変化も激しいです。

私は20年以上ネットワークの世界で仕事をしていますが、相互接続の分野でやっている仕事はほとんど変わりません(笑)。ただし、新しい方と繋いだり、すでに繋いでいる方でも通信量がどんどん増えていったりするので、アップデートは続けなければならない。その仕事は無くなりませんね。

※1 補足:BIGLOBEは1986年に日本電気株式会社(NEC)のいち部門として事業をスタートし、その後、NECから分社。2017年にKDDI株式会社(以下、KDDI)グループ傘下となった。
※2 用語:異なるシステムやプラットフォーム間でのデータ共有や機能連携が、スムーズに行われること。

▼BIGLOBEが行う「仕事とSDGs」を結びつける取り組みについては、以下の記事で紹介

コストを抑える工夫の積み重ねにより、お客さまに10ギガを低コストで提供

今回、どのような背景から10ギガへのサービス拡大が決まったのでしょうか?

社会的なインターネットの利用拡大が大きな理由です。各ご家庭でも昔はパソコン1台だけインターネットにつなげていたのが、複数台のパソコンを使ったり、スマホを使ったり、テレビもネットに繋がっているのが普通になりました。コンテンツも大容量化しているし、見る時間もどんどん長くなっているため、利用量はどんどん増加しています。

そうすると、家庭で利用する回線の太さが通信速度や通信量に対するボトルネックになる可能性があるので、より快適にご利用いただけるよう、現時点で私たちが出せる最高の規格である10ギガを始めることにしました。時代の流れに対して必然的な動きだったのではないかと思います。

10ギガの構想は、いつ頃からあったのでしょうか?

2、3年前くらいからですかね。通信量は年間大体1.4倍に増え続けているんです。私たちは常に数年後を見ながら設備計画を立てているので、加入者や通信量の予測をしていくなかで必然的に10ギガも見据えることになりました。通信環境を支えるバックボーンネットワーク(※3)は、急に大きくすることはできません。常に余裕を持った設計を続けてきたことから、いまのタイミングで10ギガをやろうという経営判断になってもすぐに対応することができました。

実際に10ギガを導入すると、利用者にはどのようなメリットがあるのでしょう?

回線が太くなるので、まずスピードが断然速くなります。いま1ギガのサービスを使っている人は、単純に10倍速くなると思ってもらうと分かりやすいかもしれません。

また、複数の機器を同時に利用するときの快適性は、とくに体感しやすいと思います。お子さんが大容量のオンラインゲームをダウンロードをしていて、お母さんが居間でNetflixを見ていたとして、これまでならNetflixが止まっていたかもしれませんが、それが快適に同時利用できるようになる、といったイメージです。

ただ当然、10ギガを契約すればそれだけでOKというわけではなく、お客さま側でも自宅環境などを整えてもらう必要があります。10ギガに対応したWi-Fiに変えたり、マンションであれば管理会社側で対応が必要になったりということもあります。せっかく回線を10ギガにしても、関係する機器の性能が悪いとメリットが享受できないので、そのあたりはセットでご案内するなど工夫をしています。

利用者の負担という点では、「ビッグローブ光10ギガ」は価格面でもメリットがあるように思いました。

他の事業者と比べて、BIGLOBEの利用料は安い方ではないでしょうか。

BIGLOBEは、経営指標の中に「お客さま1人当たりにかけるネットワークコスト」の数値目標を盛り込んでいます。たとえば通信量が年に1.4倍に増えた場合、設備もそれに合わせると、コストも通常は1.4倍かそれ以上に増加します。

しかしBIGLOBEはそこが増えないように工夫をしていて、利用できる通信量が増えたとしても、お客さま1人あたりにかけるコストは一定に抑えられているんです。そのような背景から、コストをお客さまに転嫁することなく、低めの価格設定でサービス提供ができています。

やはり経済的理由でインターネットの利便性を享受できないというのは、事業者としては望ましくありません。企業なので利益をちゃんといただきつつも、お客さまの負担をなるべく減らすことが、私たちの努めだと思っています。

※3 用語:事業者間や拠点間、国家間などを結ぶ高速・大容量のネットワーク回線のこと

▼BIGLOBEがAWS(アマゾンウェブサービス)を用いて年間利用料金を一定に保つ取り組みについては、以下の記事で紹介

社会インフラとして、インターネットを誰もが利用できる社会に

南さんは、入社から25年間ネットワーク分野に関わっていると伺いました。インターネットという技術自体の進化についてはどのように感じていますか?

入社した当初はいまのように家庭にインターネットが広がっていませんでしたが、いわゆる通信事業者が触るようなネットワークでさえ、10ギガに達していませんでした。BIGLOBEも、2000年代半ば頃にようやく10ギガを入れたぐらいです。それがいまやご家庭に届くというのは、すごいスピードで進化しているなと思います。

いまやネットで動画を見るのは当たり前ですが、昔は「ネットで動画なんて勘弁してよ!」と社内でよく話していました。いまでも覚えていますが、その頃あるアーティストがオンラインでライブ配信をすると言ったんです。ネットワーク事業者一同、騒然としたんですよね、「そんなことできるのか?!」と。みんなで体制を作り連絡を取り合って当日を迎えたのを覚えています。結局、ネットワークは問題なかったのですが、サーバーが落ちてしまうというオチもありました(笑)。

いまの社会の利便性は、私の想像よりももっと早くやってきた感覚があります。最近だと、衛星のインターネットはもうちょっと先かと思っていましたが、すでに実用化されていますしね。早いですよ。

仕事として長く関わってこられたなかで、「インターネットの面白さ」はどのようなところにあると感じますか?

まず1つは純粋に「便利」ということですね。インターネットに置き換わって、さらに生活が便利になったものってたくさんあると思います。

テレビを例に取ると、インターネットでテレビを見られなかった時代は、テレビ局の決めた時間にテレビの前にいなきゃいけないし、見逃したときにはお金を払って録画装置を買わないといけない。そうじゃなくて、好きなときに好きな場所で見たいじゃないですか。インターネットでの動画配信サービスが一般的になったからこそ、いまではそれが実現できます。

また、仕事という意味でも面白いと思います。インターネットってテクノロジーの塊に見えるんですが、実際仕事となると結構人間臭いんです。関係者との折衝が多かったり、いろんな人とコラボレーションしながら進める面が多かったり。ネットワークの分野は技術半分、政治半分だと思っていますが、これはテクノロジー領域の中でも独特だと思います。

そういった関わりから「新しいことをやってみよう」と意気投合したり、「業界としてこうやるべきなんじゃないか」といった議論が生まれたり、実際それに向けて他社の人も一緒に活動することもあるので、私は仕事としても非常に気に入っています。

インターネットは、もはや現代社会における「社会インフラ」になりました。

そうですね。私がインターネットの仕事に関わり始めた1990年代末頃は、まだネットワークを止めてメンテナンス作業ができていました。お客さまに「この時間は使えません」と言えたんですよね。それがいまでは、インターネットが止まったら大問題ですよね。

2011年の東日本大震災のときにも「やっぱりこれがないと駄目だよな」と感じた記憶があるので、社会インフラとしてのインターネットの存在を強く実感したのはそのタイミングかもしれません。

そんな社会インフラとなったインターネットを提供する側として、どんな未来を目指していきたいと考えますか?

BIGLOBEとしては、一層通信ビジネスを育ていきたいと考えていますし、やはりなるべく多くの方にこの利便性を届けていきたいと思いますね。

利用にあたっての障壁はだいぶ減ってきていると思いますが、「いかにコストを安くお届けできるか」といった課題は残っています。私の思いとしては、無料にしたいぐらいなんですよ。もちろん会社としては代わりに何か収益源を得ないといけないですが、インターネットはもはや社会インフラなので、生活者の全員が使える状況になるのが理想だと考えています。

また、「インターネットの使い方自体が難しい」という方もいまだに多いと思います。インターネットを自宅で使うとなると、申し込むだけではなく自分でルーターを手配したり、家庭によっては工事が必要だったりするので、新しくインターネットを導入しようと思う人にはハードルが高いかもしれません。元々インターネット環境に馴染みがないご年配の方などは、「何をやったらいいかわからない」というケースも往々にしてあると思います。

加えて、インターネットに対して怖いイメージがある方も多いかもしれません。実際、インターネットってオープンで便利な反面、どうしてもセキュリティの問題は付きまといます。私たち事業者も安全性を担保しないといけないし、サポートしていくためのサービスも重要だなと思います。

そこは私たち事業者の努力もまだ足りていませんし、社会的に見てもご本人の努力に依存する部分が大きいと思うので、お客さまにわかりやすい案内を工夫するなど、インターネット事業者として少しずつ改善を続けています。

あと、インターネット事業者だけでなく行政側も含めて社会全体で環境を変えていければ、まだまだ様々なものがインターネットでデジタル化できると思うんです。いわゆるDXがどんどん進んで、生活をもっと便利にしていくことができます。そのためにもまず、分かりやすく伝える工夫をして、なるべくすべての人がインターネットを利用できる環境を整える。その上でDXをちゃんと進めていくことが必要かなと思っています。

日々当たり前のように利用しているインターネット。しかしこの日常もここ数十年で急激に加速した風景であり、裏側で細かな調整やアップデートを続けている事業者がいてこそ成り立っていることを改めて実感した。

社会インフラとしての重要性が急速に高まってはいるが、確かにまだ「全生活者に開かれたインフラ」とは言えないのがいまのインターネットの状況ではないだろうか。今後も一層、生活を豊かに、そして安心なものにしていく存在へと進化していってほしい。

 

取材・文:大沼芙実子
編集:吉岡葵