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1,000人に聞いた若年層の意識調査第3弾「選択的夫婦別姓、AI、性加害等に関する考え方」

「あしたメディア by BIGLOBE」では、主に20代の若年層を対象とした意識調査を実施した。2022年11月に続き、2回目のアンケート集計だ。今回は、「関心がある社会課題、AI、性加害」等の項目を取り上げる。アンケート結果から見えてきた若年層の意識や傾向について、分析した内容を紹介する。

第1回目アンケート結果の記事はこちらをチェック

アンケートの実施方法と基本情報

本調査は、全国の18歳〜69歳までの男女1,000人を対象にアンケート形式で実施した。回答者は20代が500人、10代(18歳・19歳)、30代〜60代が100人ずつ、各世代の男女は半々である。調査日は2022年9月8日~9月9日、調査方法はインターネット調査で実施した。

社会問題への関心

まず、社会問題への関心について、特に20代における関心が高かった「ジェンダーギャップ」「選択的夫婦別姓」の結果を取り上げる。

ジェンダーギャップ:全ての年代を通じて、女性の方が関心あり

ジェンダーギャップへの関心については、特に男女の差分に着目する。「関心がある/やや関心がある」と答えた人の割合は、全ての年代を通じて、女性が男性を上回る結果になった。女性のうち、ジェンダーギャップへの関心が最も高かったのは18・19歳であり、70%が「関心がある/やや関心がある」と回答した。18・19歳は進学や就職などで社会との接点が増える年代でもある。特に、女性に関しては、自身と社会との関わり方を模索するなかで関心を抱くケースもあるのかもしれない。

選択的夫婦別姓:50代以下では、女性の方が関心が高い

次に、選択的夫婦別姓について触れる。ジェンダーギャップへの関心に関する設問同様、「関心がある/やや関心がある」と答えた人の割合は、ほぼ全ての年代において女性が男性を上回る結果になった。このうち20代以下の結果に着目すると、男女間で「関心がある/やや関心がある」と回答した割合には、最大で20ポイントの差がある。また、最も差が縮まる25歳から29歳においてもなお6.4ポイントの差があることがわかる。なお、次の章では選択的夫婦別姓についても詳しく掘り下げる。

結婚観・子どもについて:夫婦別姓・子どもに対する選好

この章では、主に結婚・子どもに関する調査結果を取り上げる。

20代の6割が「一生独身でも構わない」と回答

20代は婚姻に対してどのように考えているのだろうか。

まず、「一生独身でも気にならないか」という問いに対して、20代以下の6割以上が「あてはまる/ややあてはまる」と回答している。

18-24歳は婚姻形態へのこだわりが薄い

次のグラフは、法律婚を選好するか否かの結果を示している。この結果を踏まえると、18-24歳は他世代と比較して法律婚にこだわらない傾向にあることが分かる。

さらに、「法律婚にはこだわらないがパートナーと暮らしたい・結婚しているが法律婚でなくてもよい」と回答した人の男女別内訳を見てみると、20代以下においては男性が女性の結果を上回る傾向にあることが分かる。

25-29歳の半数は、将来的に子どもをもつことに前向き

最後に、子どもに関する調査結果を取り上げる。まず、「子どもを作りたい・(既に子どもがいる場合)もっとほしいか」という問いについて、「あてはまる/ややあてはまる」と答えた18-24歳は5割に満たなかった。一方で、25-29歳は52.4%と半数以上の回答者が子どもをもうけることに前向きな回答をしていることが分かる。

「養子縁組に抵抗がない・しているか」という問いに関する結果を見ると、24歳以下の半数以上が、養子縁組という形式に抵抗がない旨の回答をしていることが分かる。このことからは、若年層の方が子どもを持つことを望む際、形式を問わない傾向にあるとも言えるかもしれない。

若年層が日本社会について感じること

少子高齢化や貧困問題等、社会課題が報じられる今日この頃。若年層は、現在の日本社会をどのように捉えているのだろうか。

20代以下の6割が「日本社会は良くなっていない」「日本社会の未来に希望を感じない」と回答

若年層は、現在の日本についてどのように捉えているのだろうか。「現在、日本の社会は良くなっていると感じるか」という問いについては、20代以下の方が「日本社会はよくなっていると感じる/やや感じる」と回答する傾向にあった。

また、「日本社会の未来に希望を感じるか」という問いに対しては、「未来に希望を感じない」との回答が70~80ポイントに集中し、世代間で顕著な差は見られなかった。

20代以下がそのように考える理由について、上位3回答はいずれも「政治に期待が持てないから」「少子高齢化が進んでいるから」「自分の資産が安全ではないから」であった。

一方で、他の年代と比較して、20代以下の方が「日本社会の未来に希望を感じる/やや感じる」と回答する傾向にあった。その理由について、最も多い回答は18・19歳では「SDGsの認識が社会全体で向上しているから(50.0%)」、20-24歳では「格差社会だとは感じていないから(25.4%)」、25-29歳では「社会の人権意識が高まっているから/自分の家族が幸せそうだから(共に26.8%)」というものだった。

20代は、地球や社会に良いことについて学校教育で学び、考えることがスタンダードになってきた世代とも言えるだろう。彼らには、他の世代にない視点が見えているのかもしれない。

仕事観について

次は、仕事観について見ていく。コロナ禍によって身近になったリモートワークや、終身雇用制度が薄れつつある現在の「働き方」について、若年層はどのように考えているだろうのか。

20代以下は6割強が「リモートで働きたい」と回答

まず、「リモートで働きたいか」という質問に対して、「あてはまる/ややあてはまる」と答えた20代以下は6割を超えていることが分かる。

さらに、「会社選びにリモートワーク可能であることは必要か」という問いへの回答からは、年代が低いほどリモートワークを必要な要件として捉える傾向があることが分かる。前述の「リモートで働きたいか」という設問を踏まえても、他世代と比較して20代はリモートワークに対する選好が高いのかもしれない。

コロナ禍の3年間で日本の働き方は大きく変わった。20代の方の中には選考から入社式、その後の就業も全てリモートであった、という人もいるはずだ。

20代は、他世代よりも転職・副業に抵抗がない

次に、「転職」「副業」に関する調査結果を示す。「転職することに抵抗はないか」という質問に対して、20代以下の約6割は「抵抗がない/ややない」と回答している。

また、近年は副業を解禁する企業も増えてきた。「副業がしたいか」という問いに対して、年代が若いほど「したい/ややしたい」と回答していることが分かる。

しかし、上のグラフを参照すると、20代以下は他の世代と比較して、会社への帰属意識が低いわけではないことが分かる。転職および副業への関心は、会社への帰属意識とは別の要因によって生じているのかもしれない。

AIの利用

2023年に入ってから、一般における利用が加速している生成系AI。仕事でも活用する人が増えているだろう。20代以下のAI利用実態はどのようになっているのだろうか。

20代以下の半数近くがAIの使用経験あり。会話型ツールや翻訳ツールが人気

まず、「AI(ChatGPTなど)を仕事や学業で使用したことがあるか」という問いに対して、「まったく使用したことがない」と回答した人の割合は18・19歳で44.0%、20-24歳で52.4%、25-29歳で54.0%だった。

逆に、20代の半数近くが何かしらの形でAIの使用経験があるということが読み取れる。その用途をみると、18-24歳は学業で、25-29歳は仕事・プライベートで活用しているようだ。

「どのようなAIツールを使用したことがあるか」という問いに対して、20代以下の各区分における主な使用ツールを見ていく。いずれの年代も会話型ツールの使用率が最も高く、うち18・19歳は会話型ツールと並んで翻訳ツールの使用率が最も高いという結果になった。

性被害・性加害について

同意がない状態で行われる性に関する加害行為全般を、性加害と呼ぶ。このような加害は、「魂の殺人」とも表現されるように、犯罪行為の一種である。特に現代においては、被害者の性別に関わらず、その尊厳を蹂躙するという点が一般に認識されつつある。この章では、性被害・性加害に関する調査結果を取り上げる。

20代男女の3割が「周囲の人間から、性被害の経験を聞いたことがある」と回答

まず、「自身の周囲で性加害や性被害の具体的な事例について話を聞いたことがあるか」という問いに対して、20代の3割以上が「聞いたことがある/やや聞いたことがある」と回答しており、男女間で顕著な差が見られるわけではないことが分かる。

次に「性被害を受けることを恐れた瞬間があるか」との問いに「あてはまる/ややあてはまる」と回答した人の割合は、20代女性の3-4割、20代男性の3割を占めている。特に、20-24歳においてはほぼ男女間の差が見られない結果となった。

一方で、「無意識のうちに、性加害をしてしまう可能性を恐れているか」という問いに対しては男女間で差が見られた。18・19歳では6.0ポイント、20-24歳では7.5ポイント、25-29歳においては10.4ポイントの差が生じていることが分かる。

また、世代間の違いに目を向けると、18・19歳男性では34.0ポイントを記録しているのに対し、60代男性は10.0ポイントに留まっている。

まとめ

今回は、選択的夫婦別姓、AI、性加害等のトピックを中心に、「あしたメディア by BIGLOBE」が全国の18歳〜69歳までの男女1,000人に対して実施した意識調査の結果を紹介した。ジェンダーギャップや選択的夫婦別姓の調査結果には世代・性別による差が見られたものの、日本社会の展望への不安感など、世代や性別を超えて共通する傾向も見られた。

 

文:Mizuki Takeuchi
編集:おのれい