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コロナが進めた「働き方改革」で浮彫に?若者が会社を選ぶ基準とは

2020年突如大流行した新型コロナウイルス。2023年5月に5類感染症へと分類が変わったものの、この3年間で生活様式は大きく変化し、娯楽や学業、働き方に影響を与えた。

コロナが与えた影響は負の要素が多い一方で、テレワークの推進や業務のデジタル化など世界に比べて遅れていた日本の働き方改革が強引に進んだ部分もあった。

さらにここで考えたいのは、働き方改革が進んだことは、若者の企業選びにも影響を及ぼしたのではないか、ということだ。本稿では、コロナが働き方に与えた変化から、今、若者が働きたいと考える会社はどのような会社なのかを考える。

理想の働き方は出社とテレワークの「ハイブリッド」

オフィスや通勤中の「密」を避けることができる「テレワーク」の普及は、コロナ禍がもたらした働き方の1つだ。東京都の調査によると、コロナ禍前の2020年3月、東京都23区におけるテレワーク実施率は24.0%だったが、コロナが流行し初めての緊急事態宣言を迎えた2020年4月には62.7%まで上昇した。(※1)

出典:東京都 報道発表/令和5年(2023年)テレワーク実施率調査結果 4月
「東京都2020年3月〜2023年4月の都内企業のテレワーク実施率の推移」

「密」を回避できること以外にも、移動時間の削減により、個人が自由に使える時間が増えたこともテレワーク普及のメリットの1つだ。公益財団法人日本生産性本部が行った調査によると、84.9%の人がコロナ収束後もテレワークを行いたいと回答している。(※2)

メリットが多いテレワークだが、東京都の調査結果のグラフからもわかるように、5類移行に近づくにつれて実施率は減少傾向にある。実際に、5類移行後、会社から出社を求められる人も増えているのではないか。

テレワーク減少の理由として挙げられるのは、直接コミュニケーションを取りたいという意見だ。確かに直接話した方が効率的な仕事もあるし、誰かと会って話すことでリフレッシュすることもあるだろう。

ただし、「フル出社」が若者が求める勤務形態ではないことも確かだ。2023年6月に株式会社学情(以下、学情)は、20代の社会人を対象に「勤務形態」に関する調査を実施した。その中の「勤務形態を選択可能な場合、どの勤務形態を希望するか」の質問に対して、65.8%がテレワークと出社の組み合わせと回答しているのだ。(※3)

介護や育児などそれぞれに家庭の事情は異なるのが当たり前である。テレワークが可能な職種であれば、出社やテレワークを自由に組み合わせたハイブリッドな働き方にシフトすることが求められるのではないか。

※1 参照:東京都 報道発表/令和5年(2023年)「テレワーク実施率調査結果 4月」https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/05/15/10.html
※2 参照:公益財団法人 日本生産性本部「第 12 回 働く人の意識に関する調査  図43 コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/12th_workers_report.pdf

※3 参照:株式会社学情「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(勤務形態)2023年7月版  勤務形態を選択可能な場合、どの勤務形態を希望しますか?」
https://ferret-one.akamaized.net/files/64a4fc2c63c49b079bb1cc1b/230706-rekatsuenq.pdf?utime=1688534060

コロナ禍を経て変容する「飲みニケーション」

新型コロナウイルス流行により対面での飲み会が減少し、代わりに増えたオンライン飲み会。会社でのルールが緩和され始めた新型コロナウイルスの5類移行後飲み会はどうなるのだろう。

内閣府が、20歳〜60歳以上の男女を対象に行った、5類移行後における行動変容の調査では、全体の56.4%がオンライン飲み会について「減らしたい、控えたい」と答えた。(※4)また、株式会社LASSICが行った調査では、4割以上の人が5類移行後は対面での飲み会を希望しているとの結果が出ている。(※5)数字だけで見れば、対面での飲み会を徐々に戻していきたいという機運が見られる。

ただし、飲み会に参加したくない人がいることも念頭においておきたい。忘年会をテーマに、BIGLOBEが20代〜50代の社会人の男女に行った調査では、59.1%の人が「職場・仕事関係の忘年会に参加したくない」と回答した。(※6)

では、就職したタイミングでコロナ禍に直面し、対面での飲み会の頻度が少ないZ世代は、会社の飲み会をどのように感じているのか。
BIGLOBEが行った調査で、「上司との飲み会はできるだけ行きたい」と答えたZ世代は4割で、全年代で最多の回答数だった。(※7)入社式もリモートで行った人がいる世代には、上司との対面でのコミュニケーションの機会が欲しいと思う人が多いのかもしれない。

出典:株式会社ビッグローブ「Z世代「日常的にお酒を飲みたくない」8割強
あしたメディア by BIGLOBEが若年層の飲酒に関する意識調査を発表
~「上司との飲み会はできるだけ行きたい」Z世代の4割、全年代で最多~」

今後、飲み会が対面に戻ったとしても、コロナ前と全く同じ状況ではないだろう。例えば、コロナ禍であれば感染対策を理由に、飲み会を断ることができた人もいるはずだ。BIGLOBEが行った調査によると、44.4%の人がコロナ禍を理由に飲み会や社内イベントを断った経験があるという。(※8)

コロナ禍は、飲み会に「断る」という選択肢をもたらした。コロナ禍以前の飲み会に戻ったとしても、「断ってもよい」という個人の判断に参加を任せるスタンスは継続されるべきではないか。「飲みニケーション」も令和の時代に合わせて変容する時がきたのかもしれない。

※4 参照:内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査 4.その他 5類移行後における行動変容の継続希望」
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result6_covid.pdf
※5 参照:テレワーク・リモートワーク総合研究所 テレリモ総研「アフターコロナの飲み会事情は?」
https://teleremo.net/?p=475
※6 参照:ビッグローブ株式会社「職場・仕事関係の忘年会に「参加したくない」8割 BIGLOBE が「2022年の忘年会に関する意識調査」を発表 ~今の時代に忘年会というイベントは「必要だと思わない」7割~」https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2022/11/221122-1
※7 参照:ビッグローブ株式会社「Z世代「日常的にお酒を飲みたくない」8割強 あしたメディア by BIGLOBEが若年層の飲酒に関する意識調査を発表 ~「上司との飲み会はできるだけ行きたい」Z世代の4割、全年代で最多~」
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2023/05/230517-1

※8 参照:ビッグローブ株式会社「コロナを理由に飲み会などを断ったことのある人の約8割が今後も誘いを断る傾向 BIGLOBEが「コロナが収束した後の行動に関する意識調査」第3弾を発表 ~仕事についての意識の変化は「ワークライフバランスを重視」が約9割で最多~」
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2022/07/220727-1

自分のやりたいことを副業で実現したい人が増えている?

コロナ禍以降の働き方の変化として、副業を始める人が増えたことも挙げられる。収入が減少して仕方がなく副業をしている人もいれば、飲み会の減少やテレワークの実施により時間ができた人など、始めた理由はさまざまだ。株式会社ライボが副業を行っている人を対象に実施した調査結果を見ると、副業を行う人はコロナ禍前の2019年から2022年にかけて37%増えている。(※9)

他にも、副業者が増えただけでなく、副業への価値観にも変化が起きた。

株式会社Daiが、25歳〜59歳の男女を対象に実施した、「副業検討の際に重要視したこと」をコロナ禍前後で比較した調査の結果を見てみよう。コロナ禍前は「稼げる」(15.1%)、「スキマ時間でできる」(17.0%)と、お金を効率よく稼げることに重きが置かれていた。それに対して、コロナ禍後は「興味のある分野」(17.3%)、「興味はないけど勉強になる」(6.5%)「自分の得意分野」(18.0%)と、自分に知識を蓄えたり、自分がやりたいことに重きが置かれているように見える。(※10)

ここで併せて見たいのが、株式会社マイナビ(以下、マイナビ)が毎年実施している「大学生就職意識調査」だ。卒業する大学生が対象の本調査には、「企業を選択する場合にどのような企業がよいか」という調査項目がある。結果を見ると、コロナ禍に入ってから「安定している会社」、「給料の多い会社」と答える人が増加している一方で、「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」と答える人が減少傾向にある。(※11)

コロナ禍の影響で、安定した収入を求める人が増えた事実もあるだろうが、この2つの調査結果から、自分のやりたいことを本業ではなく副業で実現したい人が増えているとも、考えられないだろうか。

また、若者でも副業制度を利用したい人が増えていく可能性がある。学校法人産業能率大学が新卒社会人を対象に、毎年実施している「会社生活調査」に、「副業制度があればどうする」という調査項目がある。2018年時点で、56.6%だった「副業したい」と考える人が、2022年には82.8%に増加した。(※12)

経団連が全会員企業を対象に行った「副業に関する調査」では、回答があった275社の内、53.1%の企業が副業を認めている。一方、業種や会社の従業員規模によって認可率にばらつきが生じており、規模が少ない企業は認可率も低い傾向がある。(※13)

この先、働き方がますます多様になっていくことを考えると、副業が認められ、個人の自由なキャリア形成や多様な働き方が、業種や規模に関わらず多くの企業で認められるようになるべきではないだろうか。

※9 参照:Job総研「2022年 副業・兼業に関する実態調査 副業・兼業をしている期間を教えてください」
https://job-q.me/articles/13831
※10 参照:FRANCHISE フランチャイズWebリポート「【コロナ禍の副業意識調査】約6割が副業に興味あり、コロナ禍で副業を始めてよかったが9割超」
https://fc.dai.co.jp/articles/1021
※11 参照:マイナビキャリアリサーチLab「2024年卒大学生就職意識調査 企業選択のポイント」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230425_49065/#:~:text=SUMMARY-,
※12 参照:学校法人産業能率大学 総合研究所「2022年度(第33回)新入社員の 会社生活調査 副業制度があれば?」
https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/research-report/files/2022_Company-life-survey.pdf?_gl=1*1ohbl57*_gcl_au*MTQwMzQxNTMyOC4xNjg2ODM5MTkw
※13 参照:一般社団法人 日本経済団体連合会「副業・兼業に関するアンケ―ト 調査結果」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/090.pdf

「どのような会社なのか」ではなく、「どのように働けるか」

ここまでに触れた働き方の変化から、どのような会社で若者は働きたいと思うのかを考えてみる。

テレワークや飲み会、副業に対する価値観の変化に共通していることに、より自由な選択肢があり、会社に委ねるのではなく自分で決定したい人の割合が増加傾向にあると言える。このことから働きたい会社の1つの要素として、「自由が最大化されていること」があるのではないか。

コロナ禍によって、会社ごとの働き方の自由度の差が露呈したように思う。テレワークと出社のハイブリッド、やりたい仕事は副業で実現するなど、理想の働き方と勤務先の働き方にギャップを感じて、転職する人が多くなるかもしれない。

より自由に働きたいという機運の高まりが関係しているのか、「転勤」に対する考え方にも変化が生じている。

先ほど参考にしたマイナビが実施した調査に、「行きたくない会社」という調査項目がある。2018年は「転勤の多い会社」が5番目に多い理由であったが、2023年には2番目に多い回答になっていた。テレワークの増加により、会社都合による転勤に対して疑問を感じる人が増えているのかもしれない。(※14)

また、企業選びの際の大手企業、中小企業志向にも変化が生じている。マイナビの調査を見ると、大手企業がよい人が48.9%、中小企業がよい人が47.1%とコロナ前と比べても、差はほとんど無くなっている。(※15)

働き方がより自由になったことで、「どのような会社なのか」ではなく、「どのように働けるか」を重視する若者が増えているのではないだろうか。

※14 参照:マイナビキャリアリサーチLab「2024年卒大学生就職意識調査 企業選択のポイント 行きたくない会社」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230425_49065/#:~:text=SUMMARY-,
※15 参照:マイナビキャリアリサーチLab「2024年卒大学生就職意識調査 企業志向(大手企業がよいか中堅・中小企業がよいか)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230425_49065/#:~:text=SUMMARY-,

若手社員が働きたい理想の会社とは?

若者が働きたい企業を選ぶ時、自由が最大化されていること以外に、どのような要素が重視されるか。

先述のマイナビの調査では、企業選択において「安定している会社」、「給料の多い会社」を重視する学生が増加傾向にある。社会への関心が高いZ世代だからこそ、コロナ禍による収入減少や困窮する生活の現実が、企業選びに反映されている可能性もある。

この調査から「自分が抱える不安や不満を緩和できる」ことも、働きたい会社の1つ要素にあるのではないかと思う。

若者が働きたいと考える会社の1つに「自由な選択肢のおかげで、自分が抱える不安・不満を緩和できる会社」があるのではないだろうか。

テレワークに切り替えることで、通勤の時間を家事や育児の時間にあてることができたり、自分のライフバランスに合わせて飲み会に参加できたりする会社はその1つだろう。

コロナ禍により大きく変化した働き方。ある種の強制力を伴った「働き方改革」は、日本に自由な働き方を認める土壌を作った。

ウィズコロナの時代に突入した今、とりあえずコロナ禍前の働き方に戻すという方針ではなく、社員にとって理想の働き方を考えた上で、働き方の方針を決めていくべきではないだろうか。働き方は会社の未来にもつながることなのだから。

 

取材・文:吉岡葵
編集:柴崎真直