よりよい未来の話をしよう

住民と観光客どちらからも愛される観光地に。「サステナブル・ツーリズム」が必要とされるわけ

73%”。

これは世界最大級の宿泊予約サイト「ブッキング・ドットコム」が2022年に行ったアンケートで、「サステナブルな旅は自身にとって重要である」と回答した日本の旅行者の割合である。(※1)かなり高い数字のように感じるが、この背景には近年の環境問題への関心の高まりや、インバウンドの観光客増加が深く絡んでいるようだ。

そんなサステナブルな旅の手段の1つとして、近年「サステナブル・ツーリズム」が注目を浴びている。では、一体どんなものなのだろうか。

※1 参考:Booking.com「ブッキング・ドットコム、2022年の「サステナブル・トラベル」に関する調査結果を発表」
https://news.booking.com/ja/sustainable-travel-report-2022/

サステナブル・ツーリズムの定義

サステナブル・ツーリズムとは、以下のような「環境」「社会」「経済」の観点で「持続可能な観光」を指す。

①主要な生態学的過程を維持し、自然遺産や生物多様性の保全を図りつつ、観光開発において鍵となる環境資源を最適な形で活用する

②訪問客を受け入れるコミュニティーの社会文化面での真正性を尊重し、コミュニティーの建築文化遺産や生きた文化遺産、さらには伝統的な価値観を守り、異文化理解や異文化に対する寛容性に資する

③訪問客を受け入れるコミュニティーが安定した雇用、収入獲得の機会、社会サービスを享受できるようにする等、全てのステークホルダーに公平な形で社会経済的な利益を分配し、貧困緩和に貢献しつつ、実行可能かつ長期的な経済運用を実施する

(※2)

日本政府観光局(JNTO)はさらにこれを噛み砕いて、サステナブル・ツーリズムに対する考え方を以下の3つに分けている。

地域の「環境」を守る・育む
自然や生物などの環境資源を観光に活用すると同時に、観光客が訪れることで自然や生物多様性を保全することを指す

地域の「文化」を守る・育む
地域の伝統や文化資産を発信し、外国人観光客に体験していただくこと等を通じて、伝統や文化の保存や継承に観光が貢献することを指す

地域の「経済」を守る・育む
観光をきっかけに人を誘致し、滞在してもらうことで経済効果を生み出すことを指す。人の移動や滞在だけでなく、その土地の特産物の購入などもこの意味合いに含む
(※3)

つまり、地域の資源である「自然」や「文化」「伝統」、「そこに暮らす人びと」を活かして、ほか地域からの旅行者を受け入れ、地域経済を発展させることであり、これを、いまある「自然環境」や「文化・伝統」を守りながら行なわれているのがサステナブル・ツーリズムである。

※2 参考:UNWTO「持続可能な観光の定義」
https://unwto-ap.org/why/tourism-definition/
※3 参考:日本政府観光局(JINTO)「SDGs への貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に向けて 取組方針を策定しました!」p.2
https://www.jnto.go.jp/news/20210622.pdf

サステナブル・ツーリズムが注目される背景

サステナブル・ツーリズムが注目される背景の1つに、「マスツーリズム(=観光の大衆化)」とそれを原因とする「オーバーツーリズム」がある。

かつて旅行は、交通網が限られ高額な旅費がかかることから、富裕層だけが楽しめる娯楽であった。しかし近年では、交通網の発展やLCC(格安航空会社)の誕生などにより、国内だけなく海外にも気軽に行けるようになった。また、インターネットの普及により、旅先の情報などを簡単に得ることもできるため、観光の大衆化が進み、旅行は世代を問わず身近なものになってきた。これはここ50〜60年の間で起こった変化である。

マスツーリズムは、旅行を楽しめる人が増えるだけでなく、観光地においては雇用機会の創出や拡大、経済の活発化など、さまざまな恩恵をもたらした。一方で、国内外からの旅行者によるゴミ問題や騒音問題、環境汚染や環境破壊など、新たな問題を引き起こした。

国内の例を挙げると、かつて築地にあった魚の卸市場「築地市場」において、外国人観光客が魚に触れたり、場内で煙草を吸ったり、免許を必要とする電動カートに勝手に乗り記念撮影をしたり、という迷惑行為が多発したのが記憶に新しい。これを受け、築地市場は外国人観光客の市場見学を禁止にせざるを得ない状況にまでいたった。(※4)

このような、観光地の許容以上の旅行者により、地域の人々や資源にネガティブな影響を与えることを「オーバーツーリズム」という。マスツーリズムを原因とするオーバーツーリズムによって引き起こされるさまざまな悪影響は、日本に限らず海外でも問題視されており、例えばイタリアのベネツィアでは地元住民による観光客への抗議デモが相次いでいるという。(※5)

※4 参考:JCASTニュース「「築地市場」年末年始「競り」見学中止 観光客マナー悪い」
https://www.j-cast.com/2008/12/04031476.html?p=all

※5 参考:BBC NEWS JAPAN「ベネチアを観光客から取り戻せ 地元住民の戦い」
https://youtu.be/KtxS7XvS4Z0

オーバーツーリズム問題

オーバーツーリズムは今に始まったことではない。

「オーバーツーリズム」という言葉は、2016年半ばにイギリスの旅行業界メディアSkiftが提唱し、その後日本でも2018年にNHKニュースで特集されたのをきっかけに、Twitterでトレンド入りするなど、コロナ前から注目を浴びていた。しかし、対策は道半ばにコロナ禍へと突入した。

2年以上に渡るコロナの大流行も一時期よりも収まり、経済活動が復活しつつある今、オーバーツーリズムにおいては、コロナ以前のものだけではなく、新たな問題も生まれているようだ。

オーバーツーリズムが問題視されるのは、どのような側面なのだろうか。日本の事例として、以下のような点が挙げられる。

地域の住民生活への悪影響

まず、交通渋滞や混雑、立ち入り禁止区域への無断侵入、違法民泊などが挙げられる。これらが続くことで、地域住民の生活や地域の自然環境に悪影響を与える可能性もある。

例として、鎌倉と藤沢駅を繋ぐ江ノ島電鉄の混雑の問題を挙げると、国内外に限らず多くの観光客が訪れ、日常的に利用している沿線住民が江ノ電に乗れないという事象が発生していた。

これを受けて藤沢市は、事前に市から発行された証明書を持つ沿線住民を優先的に入場させるなどの実験を開始している。(※6)

※6 参考:鎌倉市HP「江ノ電鎌倉駅西口改札における沿線住民等優先入場の社会実験について(令和5年度)」
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/koutsu/enodensocialexperiment.html

観光資源への悪影響

自然破壊や景観の悪化、文化財が損なわれる問題も起きている。

日本一の高さを誇る富士山の登山客によるゴミの不法投棄問題が挙げられる。富士山が位置する静岡県は、登山者に向けたマナーブックを作成するなど啓発グッズで不法投棄対策をとっている。(※7)

観光資源への悪影響としては、上記以外にも農漁業生産の現場に観光客が立ち入り、土・水質汚染感染症などが生じること、などの問題も指摘されている。

※7 参考:shizuoka ebooks「マナーガイド「富士山へ登る人のために」【日本語・英語版】」https://www.shizuoka-ebooks.jp/?bookinfo=%E3%83%9E%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%80%8C%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E5%B1%B1%E3%81%B8%E7%99%BB%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E3%80%8D%E3%80%90%E6%97%A5%E6%9C%AC

経済的影響

経済的な側面においては、観光が主要産業となる代わりに他の産業が勢いを失ったり、観光客向けに割高な価格が設定された(観光地価格の)商品が増えたり、 家賃・地代を含む物価が高騰したり、とあらゆる影響が出てしまう。

その他にも、地元客から観光客にターゲットを変更した商店街が、日常生活用品に力を入れなくなる、あるいはウィンドーショッピングの観光客で混雑する商店街を地元客が敬遠し、結果的に商店経営が立ち行かなくなるなどが挙げられる。

また、観光依存度が高まることで地域経済の脆弱性が増す場合もあるといわれている。

例として、京都の錦市場は観光客が殺到することにより、地元住民が伝統食材など目当ての商品を入手できない状況に陥ってしまった。これを受け、錦市場は食べ歩きを禁止するなどの対策をとっている。(※8)

※8 参考:錦市場商店街HP「錦市場へお越しのみなさまへ お願いとご案内」
https://www.kyoto-nishiki.or.jp/manner/

日本のオーバーツーリズムの現状・問題

日本のオーバーツーリズムの現状について、もう少し具体例を交えながら掘り下げたい。

京都

日本を代表する観光地として名高く、1994年には「古都京都の文化財の構成遺産」として、世界遺産にも指定されている。インバウンド需要も高く、2020年にはアメリカの旅行雑誌『コンデ・ナスト・トラベラー』の“世界で最も魅力的な都市ランキング”で第1位に選出された。一方で、錦市場などの一部の人気スポットではオーバーツーリズム現象が生じており、市は様々な対応策を検討しているようだ。

例えば、伏見稲荷大社や嵐山などの人気スポットは昼間の時間帯に観光客が集中し、移動すら困難な状況が生じている。紅葉や桜の時期には、名高いビュースポットを中心に一時的に身動きのとれない状況が発生する。実際、花見時のイベント「祇園白川さくらライトアップ」は、増加する観光客が交通車両と接触する恐れが高まるなどの安全面の問題が生じ、2017年・2018年は中止された。(※9)

これに対して京都市は、「とっておきの京都プロジェクト」と銘打ち、伏見、大原、高雄、山科、西京、京北の市内6エリアを対象に、ガイドブックには載っていないような知る人ぞ知る隠れた魅力や新たな観光情報や地域のイベントなどの情報発信を行ったり、「朝観光と夜観光」をし観光客の分散化を狙うなど、様々な対策を講じている。

※9 参考:産経新聞社「「無法地帯だな」 中国人も欧米人もこぞって古都花見狂騒曲…恒例の夜桜ライトアップが中止に」
https://www.sankei.com/article/20170422-3A2DB3L4XZLU7FX6Z7YIGMP7FA/?outputType=amp

沖縄

広大な海域に39もの有人離島が点在する日本有数の離島県である沖縄県。亜熱帯海洋性気候の下、魅力的な観光資源を数多く有していることから、観光・リゾート地として高く評価され、毎年多くの観光客が訪れている。

2018年の観光客数は過去最高の984万2,000人を記録した。(※10)なかでも恩納村は、ダイビング・シュノーケリングのスポットとして県内屈指の人気を誇り、国内外から観光客が訪れる。しかしここ数年、真栄田岬への観光客の集中など様々なオーバーツーリズム問題を抱えている。これに対して、県内初となるマリーンレジャーなどの利用制限を行うなどの対策を講じている。(※11)

ここまでで、オーバーツーリズムには様々な問題があることがわかった。その解決には観光業だけではなく、その地域を訪れる私たちも「持続可能な観光」について意識すべきだ。

では、ひと口に「持続可能な観光」といっても、具体的にはどのような方法や対策があるのだろうか。

※10 参考: 観光経済新聞「【データ】2018年沖縄県入域観光客、過去最高984万2400人」
https://www.kankokeizai.com/
11 参考:沖縄県恩納村 広報おんな「オーバーツーリズム問題に取り組むべく、恩納村では様々な取り組みを行っています!」
http://www.vill.onna.okinawa.jp/userfiles/files/202108_P09.pdf

サステナブル・ツーリズムの様々な手段

ガストロノミーツーリズム-新潟県新潟市

サステナブル・ツーリズムにおいては、 自然や経済への影響に加え、その土地の文化、食、生活慣習への影響といった点も重要視される。 

ガストロノミーツーリズムとは、「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」である。

UNWTOによると、ガストロノミーツーリズムには「単なる食」ではなく、「文化・歴史・伝統慣習」 といったものが反映されており、文化の違いを感じる近道であるとしており、従来から観光において重視されている 「食」 を通じた取組が重要であることが示唆されている。また、ガストロノミーツーリズムについてはその土地の自然、歴史、文化を背景とするものであり、 いわゆるインフラ等が必要となっていない。そのため、インフラ設備の整った先進国だけでなく、あらゆる地域で実施が可能なツーリズムとされている。

有名ブランド米「コシヒカリ」を生産し、清酒の製造も盛んな新潟県新潟市は、2017年より「食文化創造都市にいがた推進計画」を策定。(※12)水田面積が日本一である地理的背景を活かした、「食で選ばれる街」をコンセプトとした観光計画である。具体的にはガストロノミーツーリズムを支えるための人材育成や、全国的にも珍しい"レストランバス"を運行し、運営者と観光客のどちらをも引き込むかたちをとっている。

※12 参考:新潟市HP「食文化創造都市にいがた推進計画についてhttps://www.city.niigata.lg.jp/shisei/seisaku/seisaku/keikaku/norinsuisan/shokubunka/shokubunka-keikaku.html

コンテンツ・ツーリズム-広島県尾道市

映画やアニメやドラマ、音楽や小説など「地域に『コンテンツを通じて醸成された地域固有のイメージ』としての『物語性』や『テーマ性』を付加し、その物語性を観光資源にする」ことを指す。(※13)

アニメの聖地巡礼が代表例として挙げられ、訪れたファンを喜ばせるために、自治体などがさまざまな観光施策を打ち、さらに盛り上がりを見せ経済効果が出るなど、地域振興と結びついている点も重要である。

広島市と岡山市のほぼ中間に位置する尾道市は、古くから瀬戸内海を東西に結ぶ水運と、山陰と四国を南北に結ぶ交易路が交わる場所として栄えた場所。『時をかける少女』をはじめとする大林宣彦の『尾道3部作』のロケ地としても有名であり、瀬戸内が誇る観光の街・尾道。近年も観光客数は2009年から9年連続で過去最高を記録し、インバウンド観光客も増加の一途をたどっている。また、2017年には「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」が文化庁の「日本遺産」に認定された。麓へと下る坂道や路地は、古民家を利用したカフェや、猫モチーフのオブジェや店が並ぶ「猫の細道」も人気を集めるほか、尾道駅へと続く昭和レトロな商店街や、「尾道ラーメン」をはじめとするグルメなども、多くの観光客を惹き付けている。

13 参考:厚生労働省 ニュー・ツーリズム研究「コンテンツツーリズム」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000815843.pdf

レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)-パラオ

観光客に対して、一定の責任を求めるレスポンシブル・ツーリズム。自然環境や住民の生活を守り、持続可能な観光業を実現することは、観光客自身にとってもプラスに働くだろう。

1999年にUNWTOが「世界観光倫理憲章」を策定すると、推奨される活動のリストアップなど、 レスポンシブル・ツーリズムを具体化する試みが盛んになった。さらに、国連による「持続可能な開発目標(SDGs)」 の採択を受け、UNWTOは前述の倫理憲章を要約した冊子「責任ある旅行者になるためのヒント」を取りまとめた。(※14)

主な内容としては、「旅先に住む人々に敬意を払い、私たちの共有遺産を大切にしよう、私たちの地球を守ろう、地域経済をサポートしよう、旅先の情報に通じた旅人になろう、尊敬される旅人になろう」である。観光客に責任ある行動を求める動きは、まず現場の取り組みが先行し、国際機関がそれらを取り上げて規範化したと言える。

観光客に対し能動的に動く国のなかには、自国に訪れる観光客に対して、レスポンシブル・ツーリズムへの署名を義務付ける国がある。西太平洋に浮かぶ500以上の島からなるパラオだ。

近年オーバーツーリズムに悩まされていた同国は、2017年12月に、パラオ・プレッジ (Palau Pledge) を導入している。(※15)プレッジとは、日本語で"誓約"を指す。パラオ行きの飛行機のなかで、観光客は環境保護のための動画を鑑賞したうえで、パスポートにおされた誓約文に署名しなければ、観光客は同国に入国できないというものだ。 誓約を破った場合、罰金刑を課されることもあるという。駐日パラオ共和国大使館のホームページには、この誓約の日本語訳が載っている。

“パラオの皆さん、私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。

足運びは慎重に、行動には思いやりを、探検には配慮を忘れません。

与えられたもの以外は取りません。

私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません”

(※15)

加えて、パラオでは従来の出国税 (20ドル)と環境税 (30ドル)に代えて2018年1月より100ドルを徴収するプリスティン・パラダイス環境税 (PPEF) も導入している。100ドルの内訳は、30ドルが環境税、10ドルが漁業保護基金、2.5ドルが州へ、残り4.5ドルが国庫に入るのだという。

14 参考:UNWTO HP「責任ある旅行者になるためのヒント」
https://unwto-ap.org/tips/

※15 参考:駐日パラオ大使館「パラオ・プレッジ(誓約)導入について|START OF PALAU PLEDGE UPON ARRIVAL」
http://palauembassy.or.jp/blog/2017/12/palau-pledge/

私たちが持続可能な観光に寄与するために

冒頭で紹介したブッキングドットコムのアンケートでは、34%の旅行者が「実際に地域社会に良い影響を与え、還元をするための活動やツアーをどこでどのように探せばよいのかわからない」と回答した。サステナブル・ツーリズムの存在は知っていても、どうやって参加すれば良いのかわからない人が多いかと思う。

この章では、サステナブル・ツーリズムに取り組む観光地を見つける方法を紹介したい。

GSTC認証を受けている

世界持続可能観光協議会(GSTC)により制定されたマーク。ここで策定された国際基準は、最低限達成すべき基準として作られており、各国での独自の文化や法律など、地域の状況に適応できるよう、追加基準で補完を可能としている。

GSTC認証マーク

100項目の基準のうちいくつを満たしているかでプラチナ・ゴールド・シルバー・ブロンズの格付表彰制度を設けており、ブロンズは100項目中の60%クリアで取得。その後、それぞれ10%ずつ上乗せされ、90%クリアのプラチナの先にようやくGSTC認証にたどり着く。日本では、未だGSTC認証を受けている自治体は無いが、釜石市などがブロンズ賞を受賞している。(※16)

※16 参考:UNWTO「持続可能な観光地域経営に向けた取り組み -釜石市事例発表-」10p 持続可能な観光地域経営に向けた調査 事例3
https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2021/03/4d2898cc519c4468d541cbcfe0072ef6.pdf

Booking.comの「サステナブル・トラベル」プログラム制度による認証を受けている

ブッキング・ドットコムの日本法人であるブッキング・ドットコム・ジャパン株式会社は、「サステナブル・トラベル」プログラムを2021年に運用開始した。(※17)

各旅行プランのサステナブル・トラベルのレベルの認証を3段階で行い、旅行者にとっても各宿泊施設のサステナビリティへの道のりにおいて、いまどの段階におり、またどんな取り組みを実施しているのかが明確にわかり、理解を深められるようになっている。

17 参考:Booking.com「『サステナブル・トラベル』プログラムのご紹介」
https://partner.booking.com/ja/travel-sustainable

観光庁の「サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりモデル事業」に採択されている

観光庁は、2022年度から「サステナブルな観光コンテンツ強化モデル事業」を開始した。(※18)

この事業は各地域の自然環境、歴史文化、伝統産業などの観光資源を活用しながら、持続可能性や価値を高める仕組みを実装し、来訪者もその取組に参加できるようなコンテンツの造成や環境整備を支援するものだ。

「サステナブルな観光コンテンツ強化モデル事業」では、外部有識者のコーチングのもと、優良なモデル事例を試行検証。そこから得られたノウハウや課題などを整理したうえで、観光資源の持続的な保全と活用の両立により、地域の経済・社会・観光の好循環を加速化させる仕組みづくりを目指し、展開を図っている。

地方自治体や民間事業者など、現在30件がモデル事業としてサステナブルな観光コンテンツ強化に取り組んでいる。

※18 参考:観光庁「サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりモデル事業(調査事業)がスタートします!」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page05_000256.html

持続可能な観光のために

2023年、アフターコロナの時代に突入した。人流はコロナ以前に戻りはじめ、観光需要・インバウンド需要が再び増加する今、観光とサステナブルはもはや切り離せない関係にあるのではないか。

サステナブル・ツーリズムの実現に向けた各自治体の様々な取り組みがあることは理解できたが、制度があるだけではサステナブル・ツーリズムは実現しない。何より重要なのは、それを選び取る私たち消費者の姿勢だ。

旅行者や観光業、地域住民などの「観光」に携わるすべての人々にとって、"持続可能"なかたちを目指す。そのために日々地域に向き合い、自分にできることを見つけていきたい。

 

文:たむらみゆ
編集:おのれい