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ゆっきゅんさんが「隕石でごめんなさい」で伝えたかった、誰もが自分らしく輝くこと

「人生のど真ん中 落下してく 衝撃的隕石でごめんなさい!」

ゆっきゅんさんの歌詞には、インパクトがある。2023年5月10日にリリースされたシングル「隕石でごめんなさい」では、その歌詞を大きく載せたMVをスクショし「#隕石でスクショなさい」というハッシュタグでファンがお気に入りの歌詞を拡散した。

ゆっきゅんさんは2017年のミスiDオーディションで、初の男性ファイナリストとして彗星の如く現れた。その後「電影と少年CQ」というユニット活動を始め、2021年には「DIVA」(イタリア語で、歌姫)という言葉を用いた『DIVA Project』というソロプロジェクトを始動する。新曲「隕石でごめんなさい」の"隕石"という言葉は、彼自身のメタファーでもある。だが同時にゆっきゅんさんは言う。

「自分自身が隕石だということに気づいてほしい」

それには、みんなが輝いてほしい、というメッセージが込められていた。ぜひ、「隕石でごめんなさい」を聴いて読んでほしい。

偶然の驚きから生まれた感動を大事に。

まずは新曲のリリースおめでとうございます。早速SNSでも盛り上がっていますね

ありがとうございます。今回の楽曲制作では松井寛さんに作曲と編曲をしていただきました。松井さんの音楽が元々大好きで、東京女子流さんの楽曲やモーニング娘。さんの「笑顔YESヌード」、山田優さんの「REAL YOU」などずっと愛聴してきたので、今回は念願が叶って一緒に曲を作ることができました。MVも信頼できるスタッフと一緒に楽しんで作ったので、みなさんが曲を聴いてスクショしまくってくれて嬉しいです。

もともとデビュー時もセルフプロデュースという名目で始められたようですが、自分でイチからアサインをされているのは、すごいです!

特に誰にも頼まれていないのに始めたことだし、制作費を出すのも歌うのも自分だし、そこで妥協するのは意味不明だよな、と思っています。自分が出来ることは本当に限られたことしかないので、その道の尊敬している人たちに直接お願いしています。専門職の方々の力にいつも助けられています。

信頼のおける皆さんと作る撮影現場では、新鮮な驚きや感動が生まれていきました。これは尊敬する映画監督がインタビューで語っていたのを聞いてから「本当にそうだよな」と思っていることなのですが、撮影では、その場で感動が生まれていないと、見る人にも絶対伝わってしまうものなんです。

撮影以外でもきっと同じで、制作では、いろいろな積み重ねの上に出てくる偶然を大事にしています。感動や驚きが生まれていないと、ライブでも新鮮な気持ちで歌えないし、聞いてくれる人にも伝わらない。今思い返すと、あのとき何が起きたんだろう?何で書けたんだろう?って後から分析できない表現もあったりします。いままでで一番気に入っています。

歌詞は作りながら決めることが多いのですか?

コンセプトははじめから決めていても、作りながら変えられるような、偶然性を呼び込める余地はいつも持っています。やりたいことは明確にありますが、予め「これについて書こう」、「これを落とし込もう」みたいに用意していた歌詞だけだと喜びが足りないんです。それを飛び越えてくる何かを受け入れています。

「…てことはつまり!?」と3回繰り返す歌詞はメロディを聴いていたらふと浮かんできたフレーズです。1曲の中で様々な感情や情景を描いてもいいと今は思っていて、作詞では、聞く人によってここが好き!というポイントが違うといいなと思っています。

「パワーワード」「キラーフレーズ」などと言われますが、「隕石でごめんなさい」については言葉が強いんじゃなくて、気持ちが強いだけじゃないかなと思いますね。それぞれ好きな部分を見つけてくれたら嬉しいです。

「隕石でごめんなさい」というタイトルも衝撃的ですよね

もともとは、「隕石になりたい」「隕石になりそう」というタイトルが候補だったんですけど、その段階じゃないな、私はもう隕石だな!と思って、メロディにハマったこともあり「隕石でごめんなさい」というタイトルになりました。

自信を持って輝いていると見られることが多いので、うまく伝わりづらいかもしれないですが、私にはいつもどこか謝罪の気持ちがあります。「ごめん」と入った歌詞を既に3曲くらい書いてますね。「私はこれだから素晴らしい」という評価も真実として自分の中にありますが、「こうでしかいられなくてすみません」というのもまた本気で思っていて、いつも並行して存在している感じですね。

謝る気なくて最高!みたいな受け止められ方をしているのを見たのですが、隕石でごめんなさいっていうのは、本当にそのままの意味なんです。

それは、自分はどうしても自分なんですという肯定でもありますよね
ゆっきゅんさんは、2021年に「DIVA Project」としてソロデビューして3年目になりますが、今回の曲はどのような位置づけになるのですか?

『DIVA Project』は、自分自身がこれまで活躍していたDIVA(歌姫)が好きで、勇気づけられてきたのでその名前をつけました。デビューのタイミングでとりあえずどうしても自分のことを知ってもらわないといけないと思っていました。去年(2022年)にリリースされた「YETA」というEPまでの1年半は、これまでに自分のなかで歌っておきたい、表現したいと思っていたことのリストを潰していくような季節だったかもしれません。

何かに縛られていた感覚は一切なかったですが、一旦その「言っておかないといけないこと」をやって、自分の中で解放された感覚がありますね。今年からは、今歌いたいことが歌えるという感じがします。今回とても自由に制作ができました。

ソロとして、自信がついてきたということなのでしょうか?

うーん。そもそも、自信がついたから物事を始められるという感覚はないですね。もちろん、特に学生の時は、なんでこんなに何もできないんだろうと悩む時期もありました。現実と理想のギャップに苦しんでいたんです。今でもただそれだけの時間をよく過ごします。でも考えている暇があったら動きたいと思って、ありのままの気持ちで、「アー ミラーボールもない天井だ ずっと見てるだけ」という歌い出しの歌詞でソロデビューしたら、多くの人に普遍性を持って届いて、ああ、これでいいんだ、と思えたのは大きいです。

自信がないからできない…というより、いろいろなことをやってみてできるようになる。その積み重ねで結果的に自信がついてくるものかもしれないです。あと、小室哲哉さんも言ってて安心したんですが、褒められることは大事!自分の機嫌は自分で取る、とか言いますけど、私は他人に褒められるのが好き!(笑)。歌詞ができたら特定の友人にすぐ送って、感想を聞いています。褒められそうな作詞はむしろ避けますが。

なぜか、自分のファンの方は転職率が高い

ゆっきゅんさんの歌詞は「これは自分のことだ!」と励まされるようなフレーズが多いと感じます

もちろん聴いてくれる人の人生のことを考えて作っているし、もっとみんなには気が大きくなってほしいと思ってます。もっとみんな不遜たれ!と(笑)。それが「隕石でごめんなさい」に表れているのかもしれないです。

初めに出した「DIVA ME」では、私がゆっきゅんとして私を表現しているように皆それぞれに自分のやりたいことをやればいいんだよ、というメッセージを込めていて、それが『DIVA Project』で伝えたいことでもありました。今回はDIVAという言葉こそ使っていないですが、その気持ちは通底しています。

ゆっきゅんさん自身が自分で輝く場所を作っているように、聴いている皆もそうであってほしいということでしょうか?

そうですね。私のファンの人って何故かよく転職するんですよ!話を聞いていたりツイッターを見ているだけでも、本当に高い転職率です。友達でも、何かを辞めたり断りたいときに私に相談して来ます。でも、実はもうそのときには答えが決まっている。曲を聴いたから決めるというより、曲を聴いて最後に背中を押してもらえることってあると思うんです。私の曲を聴いている間は無敵になれる、と思えるような存在になれたら嬉しいです。

何も言ってないみたいに聞こえるかもしれないですが、転職したい人には転職を促したいし、転職したくない人には転職しないでほしいと心から思いますね。芸術として、自分の人生は自分のものであるという確信を掴む一助になれたら、それ以上はないかな。

ファンの方って憧れる対象に服装や言葉使いを似せたりすると思うんですが、私のファンのみなさんは、それぞれに自分のスタイルを持っている/持ちたいと思っている方が多い気がしています。もしかしたらそれは私が自分らしく生きていこうと伝えていることと繋がっているのかもしれません。

曲を通して皆の背中を押してくれているゆっきゅんさんですが、一対一で友達と話すときに大切にしていることはありますか?

何か決まったポリシーはないですね。経験から学ぶことは多くあっても、人はそれぞれ別の人間だから、ケーススタディは通用しないし、目の前の相手に真剣に向き合うしかない。だからこそ、嘘偽りなく向き合うことを大事にしているのかもしれません。そんなに友達が多い訳では無いですが、心を許した人にはすぐ自分のことを全部話してしまいます。とにかく会話が大好きです。

心にある歌詞をかたちにしていきたい

ゆっきゅんさんのように何かをしたいけど力不足で出来ないという悩みがあるときはどうすればいいでしょうか?

私も正直、まだまだです。駆け出しですよ。歌詞を書くこともそうですが、場数をもっと踏んでいくしかないのかな、と感じます。もうこれだけやっても駄目ならしかたない、というくらいまでやってみる。今使える力や思いついたことは勿体ぶらずに今出し切る。その集積だけが自分を先に進めて高めてくれるものなんじゃないかと思います。

最後に、最近では他のアーティストに歌詞を提供されていると聞きました。これから挑戦していきたいことなどはありますか?

やっぱり今はもっともっと歌詞を書いていきたいです。いろいろな人に歌詞の提供をしてみたい。これまでも文章は書いてきましたが、「DIVA ME」を作ったときに、作詞が好きだということに気づきました。私の心は歌詞のかたちをしていたんだ、と分かったんです。

今の目標は、作詞で一番良いものを出すことです。作詞は、能動的に書いているようでもあり、曲に対する正解を血眼で探すような作業でもあります。歌詞で、本当の言葉を書いていきたいし、それを多くの人が聞いてくれたら嬉しいな、と思います。そして、心が伝わる渾身のライブをやれるようにがんばります。

インタビューが終わる時間が迫ってきた頃、ゆっきゅんさんは「なんでも聞いてください!早口で答えますよ!」と話してくれた。目の前のことに誠実に向き合うゆっきゅんさんの姿勢を短時間でも感じることができた。これまで、セルフプロデュースとして歌って踊りながら自身を表現してきたゆっきゅんさん。今度は、自身だけでなく、直接的に誰かを輝かせるような作詞活動をしていきたいという。ゆっきゅんさんしか出来ないかたちで魅せてくれることだろう。

ゆっきゅんさんの楽曲「DIVA ME」に、このような歌詞がある。

「私が私を愛してる 君だって君だって解き放つ」

ゆっきゅんさんは歌詞を通して、ありのままの自分を体現し、また聴く人もそうであってほしいと勇気付けている。これからも輝き続けるゆっきゅんさんに期待するとともに、私たちもそんなゆっきゅんさんの新しい活躍を見る頃、自分らしくあれていると胸を張っていたい。

 

取材・文:conomi matsuura
編集:Mizuki Takeuchi
写真:服部芽生