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BIGLOBE 毎日の仕事とSDGsを結びつける「SDGsワークショップ」を開催

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2015年9月に国連サミットで採択された国際目標、SDGs。テレビ、雑誌、SNS、電車の中の広告など、今や毎日どこかしらで見かけるようになった言葉だろう。

「誰ひとり取り残さない」持続可能な社会を実現するため、環境問題や貧困問題、ジェンダーギャップに関する問題など、17のゴールの達成に向けて作られた。SDGsについて語られる時、多くの場合、私たちにできるアクションとして提示されるものは「消費者として、日々の生活の中でできることをしよう」といった主旨のものが多い。

しかし、ふと立ち止まって考えてみるとSDGsに取り組むのは消費者だけではない。フルタイムで働く社会人であれば、平日は約3分の1が仕事の時間だ。多くの企業がSDGsを謳いさまざまな活動に取り組み始めている。とはいえ、自分の仕事がSDGsとどう関係があるのか聞かれたら、答えられる人はどのくらいいるのだろうか。業界や職種によって、自分の仕事とSDGsの結びつきを考えるのが難しいと感じている人も多いだろう。

そんななか、2021年にビッグローブ株式会社(以下、BIGLOBE)では仕事とSDGsを結びつけるための社内ワークショップ「SDGsワークショップ」の取り組みを始めた。同ワークショップはBIGLOBE社内の部門ごとに、複数回実施されているが、今回は12月に実施された営業統括本部でのワークショップの様子を紹介する。

ボトムアップで会社のSDGsについて考える

今回のSDGsワークショップは3部構成から成り、2日間に渡って実施された。このワークショップを通して立てられた目標や企画が、のちにBIGLOBEの全社目標へと繋がっていくという。ワークショップの企画担当者である門司慶子さんは同ワークショップの目的について、次のように語っている。

門司さん:与えられた会社目標だとSDGsと仕事をつなげて考えるのがなかなか難しいと思います。そこで、SDGsについて考える時間を意識的に作り、現場の社員が仕事をSDGs的に捉えて、目標を立てることで理解が深まると考え、今回のワークショップを実施しました。ボトムアップ形式の会社目標設定は、時間はかかりますが、共感度は高いはずです。ボトムアップ形式の目標設定はBIGLOBEの企業文化にもフィットしていると思いました。

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門司慶子さん

ワークショップは以下のような流れで行われた。

▼SDGsワークショップの構成
1.SDGsを「知る」(DAY1)
2.SDGsを事業と「つなげる」(DAY1)
3.SDGs実現に向けて「取り組む」(DAY2)

10数名の参加者が3つのグループに分かれて話し合いながらワークショップが進んでいく。DAY2の最後には、参加者1人1人に発表の時間が与えられ、自部門の仕事の中で取り組むSDGsに関連するアイデアが共有されていく。講師を務めたのは、株式会社スタイリッシュ・アイデア代表の新井宏征さんだ。新井さんは、未来に起こり得る様々なシナリオを考える「シナリオプランニング」の観点から、長期的なビジネス発展に必要な企業のイノベーションをサポートされている。

ビジネス機会におけるSDGs事例を知る

1日目は、SDGsを知り、自社の事業をSDGsの観点から振り返るワークショップが行われた。まず初めに、SDGsを「知る」のパートでは、講師の新井さんより企業がSDGsに取り組む必要性について講演が行われた。

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株式会社スタイリッシュ・アイデア 新井宏征さん

新井さん:SDGsは地球環境のため、あるいは株主のためだと言われることもありますが、それだけではありません。自社事業のお客さまや従業員にも良い影響があり、さらにこれから就職を決める人たちにとっても会社選びのポイントとなるため採用活動にも影響を与えます。なんとなく環境問題のためだけだと思われがちですが、より幅広く考えることで事業とも結びつけて考えやすくなります。そして、17のゴールはそれぞれが関係し合っていて、様々なステークホルダーが自分たちがどこの分野に貢献できるのか考えながら取り組んでいくことが重要です。

このパートでは、参加者がSDGsの17のゴールのうちひとつのゴールをそれぞれ担当し、各ゴールについて改めて理解を深め、共有し合う演習が行われた。より具体的にSDGsとビジネスとの結びつきを考えるため、他社の事例を挙げてディスカッションをしていく。

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たとえば、冷凍・冷蔵食品の流通を担う企業のビジネスは、品質を保ったまま長持ちする食品を届けることでSDGs目標2「飢餓をゼロに」に貢献するのかもしれない。あるいは、Eラーニングの事業は、住む場所や環境にとらわれずに教育の機会を提供できることからSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に関わるのではないか。そんな風に参加者たちは他社の取り組みをSDGsの観点から見た時にどのゴールに当てはまるのか、誰の問題を解決しているのかなどのポイントを付箋に書き、話し合った。

「貧困」や「環境」と聞くと、大きな問題に感じられなかなか身近な問題として捉えられない人も多いかもしれない。しかし、このように様々な企業の取り組みを調べてみると、どんな企業でもSDGsのステークホルダーになることが分かる。

続く、SDGsを事業と「つなげる」のパートでは、自社の取り組みをSDGsと関連づけて考えるワークショップが行われた。BIGLOBEでは、ドネーション一体型のモバイルサービス「donedone」や、温泉地でのワーケーションを促進する「ONSEN WORK」などのSDGsに関連する取り組みが行われている。これらの取り組みはもちろん、今回のワークショップでは通信事業や普段のお客さま対応の中からもSDGsと自社事業を結びつけて考えられていた。

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それぞれの参加者が、自部門の仕事がSDGsの観点から見た時に誰に価値を提供するのか、また、どんな価値を提供するのか、そしてどのSDGs目標と関連するのかを書き出していく。ビジネス的観点だけではなくSDGsの観点から、顧客やサービス提供の相手への価値を考えることは、ワークショップ参加者たちにとっても新鮮な機会だったようだ。

普段の業務とSDGsの結びつき

ワークショップ2日目は、1日目にグループで行った演習を元に、参加者が毎日の業務をSDGs的に捉えた時にできることをテーマに発表が行われた。参加者全員の発表をそれぞれ聞き合うことで他部門の業務への理解が深まるとともに、新たな視点からSDGsを捉えることができるようになる。

たとえば、コンシューママーケティング部長の結城良哉さんは、新規の取り組みとして高齢者などITリテラシーの低い人向けの行政サービスの提供を提案した。各自治体と連携し、テレビに繋いでリモコンで操作できるようなオンライン行政サービスだ。スマートフォンやパソコンを使用できない人や、市役所などに行くのが大変だという人も行政サービスを気軽に利用でき、IT格差の是正につながる。コロナ禍におけるネットでのワクチン予約に困ったという高齢者の声を耳にし、このアイデアを思いついたという。

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結城良哉さん

また、オムニチャネル推進室長の土生香奈子さんは、他社のチャットボット導入サポート事業を提案した。土生さんの所属するオムニチャネル推進室では、AIを使用した無人チャットや有人のチャットなどを活用した顧客サポートを担っている。チャットボットはリモートワークとも相性が良いため、企業にとっては人手不足の解消、また、出社が難しい人への雇用機会提供にもつながる。コロナ禍以降、チャットボットは格段にニーズが増えている。2018年頃から蓄積した分析・改善のノウハウを活かすことでSDGsへの貢献にもつながるのではないかと語った。

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土生香奈子さん

ワークショップ企画担当者の門司さんによると、2日間を通して、この発表のパートは特に参加者から好評だという。これまで知ることのなかった他の部署の業務を知ることができ、自社事業へのエンゲージメントも高まるのだ。発表されたアイデアは実際に今後の事業に生かされていく可能性も大いにある。また、ワークショップ実施部署の本部長からそれぞれの発表へフィードバックがあり、いつもと異なった視点から普段の業務を振り返る貴重なタイミングにもなるという。

本ワークショップは、すでに3回実施され、残り5回の実施が予定されている。様々な場面でSDGsの重要性が叫ばれる昨今。企業イメージのためだけではなく、実際に業務に当たっている社員1人1人が毎日の仕事に置き換えて考えることで、SDGsへの取り組み方は、さらに意味のあるものへと近づいていく。消費者の視点だけではなく、ビジネスパーソンとしてSDGsへの向き合い方を変えれば、より大きな貢献ができるのではないだろうか。


取材・文・画像:白鳥菜都
編集:篠ゆりえ