よりよい未来の話をしよう

グリーンウォッシュの事例とは?企業がとるべき対策や規制を徹底解説

グリーンウォッシュとは、実際は効果がない、もしくは取り組んでいないのにも関わらず環境面で改善効果があると称することを指す。近年、企業によるグリーンウォッシュの事例が増加しており、消費者の誤解を招くだけでなく、真の環境問題解決の妨げとなっている。

本記事では、コカ・コーラ、ライアンエアー、Oatlyなどの具体的なグリーンウォッシュ事例を紹介しながら、その特徴と問題点を分析する。さらに、グリーンウォッシュを見抜くためのポイントや、日本における規制の現状についても解説する。

グリーンウォッシュの定義と背景

グリーンウォッシュという言葉は、「環境配慮」を意味するグリーンと、「上部だけ」や「ごまかし」が由来のウォッシングを組み合わせた造語である。前述の通り、環境改善効果がない、あるいは環境事業への適正な資金充当がなされていないにもかかわらず、環境面での改善効果を主張することを指す。

グリーンウォッシュの歴史

グリーンウォッシュという言葉は、1980年代に西部の環境活動家を中心に使用され始めた。すでに当時から、企業が実際の取り組み以上に環境配慮をアピールする傾向が見られ、問題視されており、その後、地球環境問題への関心の高まりとともに、グリーンウォッシュの事例も増加の一途をたどっている。

グリーンウォッシュの現状と統計

欧州委員会の調査によると、企業による環境配慮の主張の53%が放棄または根拠不足であることが明らかになっている。さらに、企業が環境に配慮したグリーン経営を謳っている場合でも、半数以上の検証が弱いもしくは全く検証がされていない現状だ。(※1)これらの数値に現れているように、グリーンウォッシュは消費者の誤解を招くとともに、真の環境問題解決を遅らせる大きな問題となっている。

企業は環境活動家やNGOと緩やかな関係を築きつつ、実質的な環境改善に向けた取り組みを加速させることが求められている。

※1 出典:European Commission「Green claims」筆者訳
https://environment.ec.europa.eu/topics/circular-economy/green-claims_en

▼グリーンウォッシュについてさらに詳しく知る

グリーンウォッシュの事例

ここでは、グリーンウォッシュの具体的な事例について見ていく。

広告キャンペーンにおけるグリーンウォッシュ

企業の広告キャンペーンにおいても、グリーンウォッシュは頻繁に見られる。例えば、アイルランドの航空会社・ライアンエアーは、根拠不足にも関わらず、飛行機燃料に拠る環境負荷が低いことを主張した。その結果、2020年2月に広告禁止処分を受けることになった。 また、スウェーデンのオールミルクブランド・Oatlyは二酸化炭素排出量の判断を考える広告で批判を浴びている。一般的なミルクと自社のミルクを比較し、製造時に排出される二酸化炭素量が自社製品において少ないことを広告上で示した。しかし、その広告が二酸化炭素排出量に関しては特定の商品だけに対して有効なものにも関わらず、「あたかもすべてのOatly商品にも該当するような誤解を消費者に与えるのではないか」という指摘を受けた。その後、Oatlyは広告を取り下げるとともに指摘を認めた。 日本でも、国内最大の石炭火力発電事業者・JERAによるアンモニア混焼石炭火力発電の「CO2の出ない火」という広告表現や、関西電力・J-Powerによる2050年ゼロカーボン発電等の広告表現が問題視されている。

企業の環境政策における矛盾

企業の環境政策そのものにも、グリーンウォッシュの問題が潜んでいる。コカ・コーラは、世界有数のの廃棄プラスチック排出企業でありながら、気候会議のスポンサーに就任するという矛盾した行動をとっている。このように、企業の環境政策と実情が乖離していることも、グリーンウォッシュの特徴の1つと言えるだろう。

グリーンウォッシュの問題点と影響

これまでグリーンウォッシュの事例をみてきたが、どのような問題点があるのだろうか。

真の環境問題解決の妨げ

企業の環境配慮への取り組みを過大に宣伝するグリーンウォッシュは、環境問題の解決を妨げている場合がある。国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構「IPCC」の報告によると、1880年から2012年にかけて世界平均気温が約0.85℃上昇しており、地球温暖化対策は喫緊の課題である。

しかしながら、根拠不足の環境負荷軽減主張や、二酸化炭素排出量について誤解を招きかねない広告表現など、グリーンウォッシュの事例は後を絶たない。このような企業の行動は、正しい環境問題の認識や、真の環境問題解決を妨げ、持続可能な社会の実現を遅らせる要因となりかねないのだ。

企業と環境活動家・NGOとの関係性

グリーンウォッシュは、企業と環境活動家やNGOとの関係性にも影響を及ぼす。コカ・コーラがCOP27のスポンサーに就任したことは、世界最大の廃棄プラスチック排出企業でありながら気候会議に関与するという矛盾を浮き彫りにした。

このような企業の行動は、環境活動家やNGOからの批判を招き、建設的な対話や協働を困難にする。グリーンウォッシュは、企業と環境活動家・NGOとの緊張関係を生み出し、持続可能な社会の実現に向けた協力体制の構築を阻害する要因となる。

グリーンウォッシュを見抜くポイント

グリーンウォッシュを見抜くには、いくつかの重要なポイントがある。以下では、グリーンウォッシュの特徴や見抜き方について詳しく説明していく。

グリーンウォッシュの「7つの罪」

グリーンウォッシュを見抜く上で、カナダのグリーンマーケティングエージェンシー、Terrachoiceが提唱する「7つの罪」という概念が参考になる。内容については以下に示すが、これらの特徴を持つ環境主張は注意が必要だ。

・隠れたトレードオフ
・証拠不足
・あいまいさ
・偽のラベル
・無関係
・より大きな悪との比較
・不正確

例えば、ある製品が環境に優しいと主張しながら、製造過程で大量の汚染物質を排出していたり、環境主張の裏付けとなるデータや証拠が不足していたりする場合は、グリーンウォッシュの可能性が高い。また、偽のエコラベルを使用したり、他の環境破壊的な製品と比較して相対的に環境負荷が低いと訴求したりするケースもある。

 

エコラベルとサードパーティー認証の確認

グリーンウォッシュを見抜くためには、製品に付与されているエコラベルやサードパーティー認証を確認することが重要だ。信頼できる認証機関によって発行された正式なラベルであれば、一定の環境配慮がなされていると判断できる。

しかし、企業が独自に作成した根拠の乏しいエコラベルや、認証機関の審査が不十分なラベルも存在するため、ラベルの信頼性をよく見極める必要がある。エコラベルの種類や認証基準について理解を深めておくことが、グリーンウォッシュの見抜きに役立つだろう。

企業の持続可能性レポートの精査

企業が発行する持続可能性レポートや環境報告書は、その企業の環境への取り組み姿勢を知る手掛かりになる。レポートには、環境目標の設定と達成状況、具体的な環境改善活動の内容と効果などが記載されているはずだ。

ただし、レポートの内容が実態と乖離していたり、定量的なデータに乏しかったりする場合は注意が必要である。グリーンウォッシュを行う企業のレポートは、美辞麗句が並ぶ一方で、具体性や透明性に欠ける傾向がある。環境パフォーマンスの時系列変化や、業界水準との比較なども参考にして、精査することが重要だ。

消費者レビューや報道による検証

グリーンウォッシュの疑いがある企業や製品については、消費者レビューや報道を確認することで、その実態が明らかになることがある。環境問題に関心の高い消費者の間では、グリーンウォッシュに関する情報交換が活発に行われている。

また、調査報道によってグリーンウォッシュの実態が暴かれるケースもある。『グリーンウォッシュ 事例』で検索すれば、過去の代表的な事例について知ることができる。企業の主張と実態の乖離について、多角的な情報収集を心掛けることが肝要だ。

日本におけるグリーンウォッシュ規制

グリーンウォッシュ問題が顕在化してきている現在だが、日本国内でも規制の強化が進められている。

景品表示法の概要と適用範囲

景品表示法は、商品・サービスの内容について、実際よりも著しく優良と示す表示を禁止している。この法律は、グリーンウォッシュ事例に対しても適用される。

例えば、商品のパッケージに「環境にやさしい」などの表示を行いながら、実際には環境負荷の高い原材料を使用している場合、景品表示法違反に該当する可能性がある。さらに、広告キャンペーンにおいて根拠不足の環境負荷軽減を主張することも、同法の規制対象となり得る。

環境省の環境表示ガイドライン

環境省は、2019年に「環境表示ガイドライン」を策定し、環境配慮型製品等の表示に関する指針を示した。本ガイドラインでは、事業者が環境表示を行う際の留意点が具体的に記載されている。

例えば、「植林に役立ちます」などの漠然とした表現は避け、「この商品の売上の○%を△△地域の植林に寄付します」のように具体的に示すことが求められる。加えて、第三者機関による認証や、客観的なデータに基づく裏付けを併記することが推奨されている。

ISO/JIS Q14021の概要と活用

ISO/JIS Q14021は、事業者の自己宣言による環境主張に関する国際規格であり、日本でもJIS規格として採用されている。グリーンウォッシュ防止の観点から、本規格を活用することが有効だ。

同規格では、「比較可能な機能を有する製品と比べて環境影響が小さい」といった主観的・抽象的表現を行う場合、具体的な根拠の提示を義務付けている。また、ライフサイクル全体を通じた環境影響を考慮すべきとされており、部分的な環境配慮をもって「エコ」などと表示することは認められない。企業は本規格を参考に、グリーンウォッシュのリスクを未然に防ぐ必要があるだろう。

▼グリーンボンドについてより詳しく知る

企業のグリーンウォッシュ対策と今後の展望

問題の多いグリーンウォッシュだが、それを防止するための対策と展望についてはどのように考えられているのだろうか。ここでは具体的な対策例とそれにより得られるであろう効果について述べていく。

透明性のある情報開示の重要性

グリーンウォッシュを防ぐには、企業は透明性のある情報開示を行うことが重要である。環境配慮の取り組みについて、具体的な数値や事実に基づいた情報を公開し、消費者や社会からの信頼を得る必要がある。

情報開示には、サステナビリティレポートの発行や、ウェブサイトでの情報公開など、さまざまな手段がある。開示する情報は、環境負荷の低減実績、再生可能エネルギーの利用率、リサイクル率など、できるだけ定量的なデータを示すことが求められる。また、第三者機関による検証を受けることで、情報の信頼性を高めることもできる。

具体的な環境目標設定と達成状況の報告

企業は、具体的な環境目標を設定し、その達成状況を定期的に報告することが重要である。目標は、温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーの導入、廃棄物の削減など、明確かつ測定可能なものでなければならない。

目標の設定にあたっては、パリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)など、国際的な枠組みとの整合性を図ることが求められる。また、目標の達成状況については、定期的な報告を行い、必要に応じて目標の見直しを行うことが重要である。

実質的な環境改善への取り組み

グリーンウォッシュを防ぐには、企業は実質的な環境改善に取り組む必要がある。単なる宣伝やイメージ戦略ではなく、事業活動全体を通じた環境負荷の低減が求められる。

具体的には、再生可能エネルギーの導入、省エネルギーの推進、廃棄物の削減、グリーン調達の実施など、さまざまな取り組みが考えられる。これらの取り組みを通じて、企業は環境負荷を低減するとともに、コスト削減や競争力の強化にもつなげることができる。

まとめ

グリーンウォッシュとは、企業が実際には環境改善効果がないにもかかわらず、環境面での改善をアピールすることを指す。近年、グリーンウォッシュの事例が増加しており、消費者の誤解を招くだけでなく、真の環境問題解決の妨げになっている。

グリーンウォッシュを見抜くには、エコラベルやサードパーティー認証の確認、企業の持続可能性レポートの精査、消費者レビューや報道による検証などが有効だ。日本では景品表示法や環境省のガイドラインなどの規制が存在するが、今後はより厳格な対応が求められるだろう。

企業は、透明性のある情報開示や具体的な環境目標の設定、実質的な環境改善への取り組みを通じて、グリーンウォッシュのリスクを未然に防ぐ必要がある。国内外の規制動向を注視し、適切な対応を取ることが重要である。グリーンウォッシュの問題を認識し、是正を求めていくことが、持続可能な社会の実現につながるのである。

▼「マテリアリティ」について詳しく知る 

 

文・編集:あしたメディア編集部

 

最新記事のお知らせは公式SNS(Instagram)でも配信しています。
こちらもぜひチェックしてください!