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異国で初めてのインフルエンザ【連載・佐藤玲のロンドン滞在記】

中学生の頃から芝居の世界に入り、現在映画やドラマ、舞台まで幅広い場で演技を続ける佐藤玲。2023年からは俳優としてだけでなくプロデュース業として作品づくりに関わったり、ワークショップを企画したりと、さらに演劇の輪を繋ぐ活動を広げている。『あしたメディア』では、現在ロンドンに短期留学中の彼女からレポートを寄せてもらうことにした。

この連載では、彼女の真っ直ぐな目線を通して見えてきたロンドンの現状をもとに、その背景を紐解き、社会との繋がりや、日本との違いについても考えていく。この旅が人生のターニングポイントと語る彼女の等身大な姿も、同時にレポートする。

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ロンドンで初めての体調不良

2023年12月15日。

この日から2週間クリスマス休暇のはずでしたが、体調を崩してしまいました。慣れないほぼ初めての海外での生活でお休みだと思った途端に気が緩んで体調を崩す、よくあるパターンですね。まだこの時は様子を見てしっかり休めば数日で回復するかなと思っていました。しかし2、3日休んでも回復せず、近くのドラッグストア(こちらではファーマシーと言います)で市販薬とサプリを買いに行きました。

ファーマシーでは主にLFMSIPという市販薬がほとんどのスペースを占めていました。シェアNO.1といった感じです。

風邪やインフルエンザなどに効くというこちらの市販薬。お湯に溶かして飲むタイプや、錠剤タイプもあり、種類も豊富です。予防薬としても使われているようで、こちらではかなり浸透している市販薬のようです。語学学校の教材にも記載があったくらいです。私は錠剤とお湯に溶かすタイプの両方を2つずつ購入。

また薬とは別に、イギリス在住の方にサプリメントもすすめられて飲んでいました。体調を崩している時期でなくても、いつでも飲むことができます。

一つはベロッカ。マルチビタミン剤ともいえるようなタブレット型のサプリメントで、お水に溶かして飲みます。微発泡のしゃばしゃばのオレンジジュースのような味。こちらは日本でもAmazonなどで手に入ります。

もう一つは、ORS。水に溶かすと経口補水液となるタブレット。調べてみるとこちらも日本でも手に入るそう。私が飲んでいたのはBlackcurant味、つまりカシス味ですね。日本でも体調を崩した時には脱水しないようにコンビニやスーパー、ドラッグストアなどで手に入るスポーツ飲料水や経口補水液などを飲んだりしますよね。ちなみにロンドンでは二日酔い対策のために飲む人もいるそう。

インフルエンザと発覚するまで

12月20日深夜。

体調不良を感じはじめて5日目。咳・喉の痛み・鼻水・くしゃみ・関節の痛・頭痛・だるさなどのほぼ全ての症状が出たところで、ついに自分は非常に具合が悪いことを認めるに至ります。日本だったらきっと次の日には病院に行っていたと思うのですが、海外で病院にかかることへの苦手意識というのか不安というのか…行かなくてすむならその方が良いという希望は打ち砕かれ、ついに翌日病院へ行くことを決意します。非常に遅い。なぜ粘ったのでしょうか…。

21日早朝。

回らない頭にイライラする余力もなく、日本人の医師の方がいる病院へ連絡。海外旅行保険に入っていたのでそちらも医療費が出るかどうかを連絡し、夕方の予約時間に病院へ向かったのでした。ウーバータクシーを呼び、夕方のラッシュに捕まりかけながら1時間半近くかけて病院へ。ロンドン市内に日本人医師のいる病院は数少なく、遠方の病院へ行くことに。

病院ではなんとか書類に記入し、待合席で座っていることができず横になっていると、診察室のベッドに通してもらいそこでそのまま診察となりました。

結果は、インフルエンザ。

そうでしたか…今までのインフルエンザ経験とは明らかにしんどさが違うのでコロナかと思いましたが、とりあえず病名が分かったことでなにがしかの安心感を手に入れることができました。今までのインフルエンザはラッキーなことに1日しっかり寝れば回復していたので、多くの人はこんなにしんどかったのか…と改めて学ぶ機会となりました。また、医師からはインフルエンザなら早めに病院にかかると使える薬があるが今の状態では効果があると言えないとのことでした。結局症状が酷かったので該当の薬ももらいましたが、早めに診察を受ける重要性を感じました。

ロンドンのタクシーは安い!

ここで少し話は逸れるのですがタクシー情報。普段は電車やバスを利用していても、こういった急病の場合はタクシーに乗らざるを得ませんよね。タクシーは日本よりも安い印象です。全くの同条件ではありませんが、ざっくりとした比較をしてみます。

ロンドンで家から病院までのタクシー片道約21kmでかかった料金はチップ込みで約5000円。ちなみに日本で約21kmの距離を移動した時の予想金額は約8500円でした。(※1)

チップを含んだ上でも、ロンドンのタクシー乗車料金の方が安価なことが分かりました。チップを含めなければ日本での予想乗車料金で往復することができそうなほどです。そういえば語学学校で日本旅行へ行ったという各国の人達が、日本のタクシーは異常に高いと言っていたことを思い出しました。

ちなみに、救急車は日本同様、24時間無料で手配することができます。番号は999番。呼ぶべきか悩んだ場合は、111にかけるとこちらも無料で相談に乗ってくれるそうです。

※1 2023年12月21日時点で 1£=約180.40円とのことなので、180円で計算しました。また、日本のタクシー料金はGoogleマップで距離感を割り出し、NAVITIMEのタクシー料金計算などを元に金額を算出してみました。混雑状況などは無視した机上の計算であることをご了承ください。

ロンドンは医療費が安い?高い?

薬は、病院の中にある薬剤師さんのいるブースで受け取りました。支払いは保険会社が代行してくれるとのことで、そのまま帰宅したので正確な金額は分かりませんでした。頭が回っておらず金額を聞きそびれてしまいました。そういえば、イギリスでは医療費はかからないという話を聞いたことを思い出しましたので、イギリスの医療費について調べてみました。

なんと外務省のサイトによると、イギリス国民や居住している外国人で、国民健康サービスに加入していると原則無料で医療を受けられるそうです。(※2)もちろんさまざまな例外もありますので、詳細はサイト等をご覧ください。

私が行ったのは日本人の運営するプライベート医療サービスだったため、短期旅行者の支払いは全額自己負担というのが通常のようです。料金表を見ると、初診料 £215〜という記載が。かつ、処方箋・検査料金などが加算されますという但し書きもあります。薬は5種類ほどいただいたので、恐らく£300を超えているのではないかと思います。

仮に£300とすると、£300×180円= 約54,000円 。(※1)

びっくり!かなりの高額です。仮に、初診料の最安値である£215で計算したとしても、約38,700円という計算です。

日本医師会が載せているインフルエンザの検査の項目が入った明細は、医療費は7,310円となっています。保険が適応され、3割負担の場合は2,190円とのこと。(※3)

日本とイギリスでは、自己負担が基本となるプライベート医療サービスに関しては、比較対象としては少しズレがあるものの、医療費としては約7倍とかなりの差異があることが分かります。ロンドンに居を構える場合には、ロンドンにおける日本の国民健康保険のような制度を利用するのがベターかもしれません。

※2 参考:外務省 世界の医療事情 英国(2024年1月21日参照)https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/europe/uk.html
※3 参考:日本医師会 なるほど!診療報酬(2024年1月21日参照)
https://www.med.or.jp/people/what/sh/

薬について

私自身が強い薬や麻酔に弱い体質であることから海外での処方箋は少し日本よりも強いのではないかと心配していたので、それについてほんの少しだけ個人的な感想をお伝えします。なお、薬や医療自体については専門的な知識を私は持ち合わせていないので、あくまでも感想であると思っていただきたいです。

今回処方していただいたいくつかの薬において、今までの日本でもらっていた薬よりも用法・分量が多いような気がしましたので、医師と薬剤師の方に相談したところ一緒に飲み方について考えて下さいました。この点において、病院の中に薬剤師がいることは、医師と薬剤師との連携も取れ、患者にとって良いではないかと思いました。

一度に済む、という点においても便利ですよね。日本では、多くの場合は病院へ行った後に、薬局へ行くのが通常のシステムかと思います。日本でも病院と薬局の間において丁寧なやりとりがあることは理解していますし、薬剤師さんが丁寧に薬の説明をしてくれるので今までは不安を感じたことはありませんでしたが、今回はとても便利だなと感じました。医師と薬剤師が別であることで、異なる意見を聞き、セカンドオピニオンにも繋がるという利点もありますが、同じ施設で直接話せるということも今回のようなケースでは安心感につながるように感じました。

また、患者の私達にとっても、医師にできるだけ正確に症状を伝えたり、医師や薬剤師に薬の相談などもしたりするほどに、自身の体をよく観察し大切にすることが必要だなと改めて思います。突然襲いくる病もあり、キャッチし切れるものではないので恐ろしいのですが、できる限り日頃の異変をスルーせずに対処して自分の体を自分自身がよく理解していられるように日々気を付けることが大切だなと再認識しました。

回復し、喜んでパスタを巻く私

年が明けて2024年1月7日の夜、皆様とYouTubeの生配信でお会いしたようにまだ声は治りきらず、「新春生配信」をご覧いただくと、声がいい感じにハスキーなのが分かります。ハスキーボイスって魅力的だなぁと思っているので、このまま定着するのも良いかもと淡い憧れを抱いていましたが定着せず。

この文章を書いている1月29日、ついに完治した模様。普段の会話にも、少々歌うにも問題なくなりました。とっても長い期間安静に過ごしたので体力が落ちてしまっているような気がします。ここから少しずつ運動をして、体力を戻していきたいと思います!

改めて、体調に気をつけて残りの2ヶ月弱のロンドンでの滞在を大事に過ごしたいと感じます。

どうぞ皆様も体調にお気をつけてお過ごしくださいね!

それではまた!

 

佐藤 玲
俳優・プロデューサー
1992年7月10日東京都生まれ。15歳より劇団で演劇を始める。日本大学芸術学部演劇学科在学時に故・蜷川幸雄氏の「さいたまネクスト・シアター」に入団し、演劇『日の浦姫物語』でデビュー。演劇『彼らもまた、わが息子』(桐山知也)などに出演。また出演ドラマとして『エール』(NHK)『架空OL日記』(読売テレビ)、出演映画に『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也)『死刑にいたる病』(白石和彌)『チェリまほTHE MOVIE』(風間太樹)などがある。2023年3月 株式会社R Plays Companyを設立。初プロデュース作品『スターライドオーダー』(北野貴章)を上演。現在、出演ドラマ『30までにとうるさくて』(ABEMA)がNetflixで配信中。

 

文:佐藤玲
編集:conomi matsuura