よりよい未来の話をしよう

食品ロス対策から始めるSDGs【連載・佐藤玲のロンドン滞在記】

中学生の頃から芝居の世界に入り、現在映画やドラマ、舞台まで幅広い場で演技を続ける佐藤玲。2023年からは俳優としてだけでなくプロデュース業として作品づくりに関わったり、ワークショップを企画したりと、さらに演劇の輪を繋ぐ活動を広げている。『あしたメディア』では、現在ロンドンに短期留学中の彼女からレポートを寄せてもらうことにした。

この連載では、彼女の真っ直ぐな目線を通して見えてきたロンドンの現状をもとに、その背景を紐解き、社会との繋がりや、日本との違いについても考えていく。この旅が人生のターニングポイントと語る彼女の等身大な姿も、同時にレポートする。

ロンドンで見つけた、SDGsなアプリ

年が明けてこのコラムも第4回目となりました。2024年もどうぞよろしくお願いいたします!

さて今回は、ロンドンのSDGsな取り組みについて考えていきたいと思います。イギリスを含めヨーロッパなど各国で利用されているこんなアプリをご存知ですか?

「Too Good To Go」と呼ばれるこのアプリは、食品ロスを減らそうというサスティナブルな取り組みとして非常に人気です。レストランやスーパーなど多岐にわたるお店の売れ残りや賞味期限間近の食品などを安価に購入できるこのアプリ。各店舗ごとに内容は異なりますが、指定された時間にお店へ行くと、その日の廃棄予定の商品の詰め合わせを受け取ることができます。

百聞は一見に如かずということで、まずは私自身も試しに利用してみることに!

商品を注文する方法

まずアプリを開いて、「Browse」からお店を検索

現在地から地図をチェックしお店を表示することもできますし、横にあるlistページに切り替えるとお店の一覧から検索することもできます。今回はレスタースクエアにピンを置いてみました。

ではさっそく、近所にあるPAULというベーカリー(日本にもあり、お気に入りのベーカリーのひとつ)で、To Good To Goを試してみることに!

商品を注文する

PAULを選択するとこんな画面に(住所や注文IDなどは隠してあります)。下部にある「Reserve」ボタンを押すと、支払い画面へ進みます。£15(約2,715円)分の商品を、£5(約905円)で購入できるとのこと。(※1)ただ、基本的には何が入っているかはお楽しみです。また、受け取りに行く時間も指定されています。今回は16:30〜17:30の間です。それにしてもお得ですね!これは今後も利用していきたい…!

※1 2024年1月3日現在   £1 = 181.43円 でしたので、£1=181円換算をしています

注文完了!

支払いが終わると登録しているメールアドレスに予約完了メールが届きます。あとは指定された時間を待つのみ!明日が楽しみです!

実際に受け取った商品の中身は?

さて、受け取り日です。

店員さんにToo Good To Goのアプリでオーダーをしましたと告げると、アプリの表示をクリックして下さいと言われてバッグを受け取りました。簡単すぎる…!取引の終了画面がこちら。

バッグを持って帰宅。

その日は雨が降っておりました。中身はこんな感じです…!

右上から左回りに、お惣菜パン的なソーセージ2倍の長さのホットドッグ、お塩コーティングのプレッツェル、カスタードクリームを挟んだアーモンドクロワッサン、シュークリームの生地の部分のような食感の甘めのペイストリー。これで905円は日本でもかなりリーズナブルですよね。大変お得なお買い物でした!

アプリ「To Good To Go」から考えること

近年世界中で取り組まれているSDGsのなかから、楽しく・有益なものとして続けることができるサスティナブルな観点と、食品ロスを改善するという点において非常に有効な手段であると思いました。

食品ロスの要因

食品ロス問題には様々な要因があります。日本でよく見られる問題としては、野菜や果物が不揃いである場合に店頭に並ばないことや、外食産業におけるいわゆる“食べ残し”です。もったいないというだけではなく、それらをゴミとして廃棄した場合は二酸化炭素などの有害物質が地球温暖化の要因となり、エネルギー問題にも結びつきます。

食卓に届くまでの過程においてもエサや肥料・飼育や世話・流通など、それぞれにエネルギーを必要とします。それらを残し、さらに捨てるためのエネルギーも使おうとするということにおいて、削減できないかという議論はあちこちで行われています。JETRO日本貿易振興機構による2020年のレポート「英国における食品廃棄削減の取り組み」にてより細かな情報が掲載されておりますので、ぜひご覧ください。

エネルギー源から見直す

また、エネルギー源そのものを見直すことも課題のひとつです。

イギリスでは、2035年までにガソリンやディーゼルを動力源とする内燃機関(ICE)車の新車販売を禁止する(※2)としています。(今回はそれにまつわる課題については触れませんが、急速なエネルギー源の移行や自動車会社における経済効果、雇用問題などが挙げられているもので、これを強く推奨する意図ではないことを留め置いていただけるとありがたいです)

※2 参照:BUSIINESS INSIDER「欧州EVシフトは後退か? 英国のガソリン・ディーゼル車「“新車販売禁止”を2035年まで延期」発表の激震」
https://www.businessinsider.jp/post-275643

ゴミ出しも重要なSDGs

ゴミの分別について、イギリスに移ってきた際にこちらの不動産会社が掲載している記事を参考にしました。リサイクル率が日本の倍以上とされているイギリスでは、日本よりも分別が細分化されている地域もあります。しかし、今回の渡航で知り合ったある人のお話を聞く分にはその方は分別をしている気配が全くなく…。生ゴミから燃えないごみ、ビンやカンの区別もなく全て同じ袋に一まとめにしているようでした。地域差もありながら、個人のリテラシーにも委ねられてしまう部分もあり難しさも感じます。

日本でも考えたい食品ロス対策

こちらはロンドンの市場、バラ・マーケットで購入したケバブ

今回は食品ロス対策の1つ、飲食店の余り物を注文できるアプリ「Too Good To Go」のレビューを中心にロンドンのSDGsな取り組みについて触れてみました。Too Good To Goは、イギリス全体でさまざまな観点から環境問題に取り組んでいることが分かるひとつの形です。ちなみにこのアプリに限らず、近しいアプリや個人的に取り組みをしている店舗もあります。

最近では日本でも、スターバックスが閉店に近づくと食品ロス対策のために値引きをしたり、積極的にお客様への呼びかけを行ったりしていますよね。それでもまだまだ食品ロスに関しては日本で改善できることがあるように感じました。

そしてそれらは、環境問題の改善という目的だけでなく、経済が困窮し始めている日本において生活の助けともなる活動のひとつであるように思います。個々の注意はもちろんのことですが、さらに大きな括りで指針が定められると日本においてもより良い対策から成果が得られるのではないかと感じます。

日本にもToo Good To Goのようなサービスがあるといいなと思い調べてみると、こんな記事を発見。

  • 食品ロス削減のおすすめアプリ5選-アプリ活用のメリットから特徴を徹底比較(SDGs CONNECTより)

https://sdgs-connect.com/archives/50336

  • 「もったいない」の一歩先へ! フードロスの削減に貢献できる便利なアプリ【注目のサステナTips】(VOGUE JAPANより)

https://www.vogue.co.jp/article/this-weeks-sustainable-tips-food-loss-app

Too Good To Goと似たようなアプリもありますし、産地直送に着眼した取り組みもありますね。環境問題の一助になりつつ、お財布にも優しいとなると一石二鳥です!日本でも更なる広がりを期待したいですね。ぜひ皆さんも様々な場面でフードロスについて考える機会を設けてみていただけると嬉しいです。

それではまた!

 

佐藤 玲
俳優・プロデューサー
1992年7月10日東京都生まれ。15歳より劇団で演劇を始める。日本大学芸術学部演劇学科在学時に故・蜷川幸雄氏の「さいたまネクスト・シアター」に入団し、演劇『日の浦姫物語』でデビュー。演劇『彼らもまた、わが息子』(桐山知也)などに出演。また出演ドラマとして『エール』(NHK)『架空OL日記』(読売テレビ)、出演映画に『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也)『死刑にいたる病』(白石和彌)『チェリまほTHE MOVIE』(風間太樹)などがある。2023年3月 株式会社R Plays Companyを設立。初プロデュース作品『スターライドオーダー』(北野貴章)を上演。現在、出演ドラマ『30までにとうるさくて』(ABEMA)がNetflixで配信中。

 

文:佐藤玲
編集:conomi matsuura