
- マイクロマネジメントとは
- マイクロマネジメントの実態
- マイクロマネジメントの問題点
- マイクロマネジメントに陥りやすい上司の特徴
- マイクロマネジメントから脱出するための方法
- マイクロマネジメントが解消できない場合の対処法
- マイクロマネジメントを避けるために上司ができる3つの対策
- まとめ
マイクロマネジメントとは
「マイクロマネジメント(micromanagement)」とは、部下をマネジメントする立場である上司が、部下の業務に過度に干渉したり、事細かに管理をしたりするマネジメント方法を指す。「micro」は英語で「非常に小さな」という意味で、自主性を重んじて部下に大きな裁量を置く「マクロマネジメント(macromanagement)」と対比されることもある。
マイクロマネジメントの定義
マイクロマネジメントは、上司が部下に頻繁に業務の進捗を報告させたり、業務内容に過度に干渉したりするマネジメント方法であり、一般的に否定的な意味として使われる。マイクロマネジメントを受けることによって、部下の業務パフォーマンスや精神状態に悪影響を与えることもある。
マイクロマネジメントの具体例
基本的にマイクロマネジメントは部下の業務への過度な介入であるが、具体的には以下のようなものが挙げられる。
・部下がどこにいるか常に把握し、監視と言っても過言ではないほど部下の業務を常時チェックする
・取引先や社内でのメールを常に確認したり、CCに入れることを強制したりする
・発表資料やメールの内容を細部までチェックし些細な点を指摘したり、変更させたりする
・業務のやり方を強制させる(部下がやりたいようにやらせない)
・テレワーク中の頻繁な報告の要求
・業務全般において細かい修正や改善点を逐一指摘する
・部下のスケジュールに関与し、自主的に動けない状況を作る
教育とマイクロマネジメントの線引きは曖昧なところがあるものの、過度な監視や管理は業務の効率やモチベーションを低下させ、部下の成長を妨げる可能性がある。
マイクロマネジメントが注目される背景
近年、マイクロマネジメントが注目される背景には、テレワーク・リモートワークの普及や従業員の多様化といった要因が挙げられる。部下がどのように働いているのか分からないことや、従来のやり方で部下のマネジメントが必ずしもできるわけではなくなった、という事態は上司を少なからず不安にする。彼らの不安が増大していくなかで、マイクロマネジメントが多発し、注目度が増してきたとも考えられる。
テレワークやリモートワークといった非対面での労働様式は、部下がいつ、何を、どのようにして働いているのかを見えなくした。これまでは対面で声かけをしたり、直接悩みを聞いたりしていた環境が変化するなかで、上司と部下の信頼関係を築くことも簡単ではない。結果として、上司から部下への過度な進捗管理や成果確認に繋がりうる。
また、中途採用やグローバル人材といったように企業の担い手の多様化していくことによって、上司と部下のコミュニケーションは一筋縄でいくものではなくなっている。異なる価値観や働き方の従業員が増えるほど、意見のすれ違いも発生しやすくなる。細かい指示を出せば、管理はしやすくなる。それらの細かい指示が結果としてマイクロマネジメントにつながっていく。
マイクロマネジメントの実態
マイクロマネジメントが理由で、仕事に対するやる気が低下したり、深刻な場合には離職や休職を余儀なくされたりする事例が発生している。ITコンサルティング会社Trinity Solutionsがアメリカのある会社の職員に対して実施した調査によると、職員の79%がマイクロマネジメントを経験したことがあると回答し、そのうちの69%はマイクロマネジメントを原因に転職を考えたことがあることも明らかになっている。(※1)

それでは、マイクロマネジメントが行われる理由や背景、具体的なマイクロマネジメントの事例にはどんなものがあるのか。
※1参照:Harry・E・Chambers「My Way Or the Highway: The Micromanagement Survival Guide」p.22
https://www.bkconnection.com/static/My_Way_or_the_Highway_EXCERPT.pdf
マイクロマネジメントが行われる理由や背景
マイクロマネジメントが行われる背景には、さまざまな要因が複雑に存在している。ただ、大抵の場合マイクロマネジメントは、上司のリーダーシップとメンバーへの信頼感の欠如、そして上司が既存の役割や権力を失うことを恐れている場合に生じることが多い。(※2)
より良いリーダーシップやマネジメント方法に関するコンテンツを配信するManagement3.0では、マイクロマネジメントを行う人物(マイクロマネージャー)の特徴について以下の5つをあげている。
1.マイクロマネージャーは、部下よりも同じ時間でより良い仕事をできると考えている
2.マイクロマネージャーは、部下よりも同じ時間でより多くのことができると考えている
3.マイクロマネージャーは、部下のミスを正すことを好む
4.マイクロマネージャーは、いつも誰がその業務をやっていて、具体的には何をして、どこにいるのかを知ることを望む
5.マイクロマネージャーは、部下が自分ほど多くのことを知らないと考えている
(筆者訳)(※3)
※2 参考:Management 3.0「top Micromanagement: It Destroys your Team」https://management30.com/blog/micromanagement/#causes
※3 引用(筆者訳):Management 3.0「top Micromanagement: It Destroys your Team」 https://management30.com/blog/micromanagement/#causes
マイクロマネジメントが生じる具体的な場面や事例
メールを出す際、会議をする際、新しい業務を実施する際……などマイクロマネジメントはさまざまなシチュエーションで発生する。
例えば、上司が今までやったことのない方法で資料を作ろうとした際、「このやり方をした方が良い。自分がやってきた方法でやれば効率よく、かつ適切に資料を作ることができる」と言われる。また、「今日行った業務に関して分単位で報告する」「社内外に出す全てのメールのccに上司のメールアドレスを入れる」などがあげられる。
もちろん経験者の意見を聞くことや、リスクを減らすために業務報告を頻繁にすること、連絡内容を共有することは重要だ。しかし、上司の意見を聞くことを毎回のように要求してきたり、業務を行うよりも連絡や共有に時間と労力を割かなければいけなくなってくると、メンバーのストレスにつながる。
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マイクロマネジメントの問題点
SNSなどで、マイクロマネジメントは止むを得ないという意見も散見されるが、マイクロマネジメントを行うことでどんな問題が生じるのかを知っておくことも重要だといえるだろう。
チームのモチベーションを下げる
まず、マイクロマネジメントはチームのモチベーションを下げる大きな要因の1つだ。自主性や意見、アイディアが無視され過度に管理されることによって、メンバーは意見や主張をすることを好まなくなる。上司への不満も蓄積していき、信頼関係の構築が難しくなる。結果として1人のモチベーションの低下が複数人に波及し、結果的にチーム全体のモチベーションが下がっていく場合も多い。
創造性や自主性を奪う
上司は部下よりも経験豊富な場合が多く、経験に基づいたマイクロマネジメントをすることで、無難な意思決定を促すことができるかもしれない。しかし、長期的に考えると、自分でアイディアを生み出す創造性や、自ら先に動く自主性を奪ってしまっていることになりかねない。もし、その上司がいなくなったとき、そのメンバーはチームを率いることができるか、その点を視野にマネジメントすることが重要になってくる。
メンタルヘルスの悪化
マイクロマネジメントは、チームの能力の低下や不満の増加といった問題だけではなく、部下のメンタルヘルスの問題にもつながる。上司から過度な管理や介入を受けた部下はストレスが蓄積し、自己効力感の低下や燃え尽き症候群が発生する可能性がある。あるいは、上司が指摘してくるということは自分のやり方や判断が正しくないからだ、といったように自らが否定されると感じ、自己肯定感の低下にもつながる。
離職意向の増加: 長期的なマイクロマネジメントは、仕事への満足度を低下させ、退職やキャリア変更を考える要因となる。
マイクロマネジメントに陥りやすい上司の特徴
部下に暴言を吐いたり、大勢の前で叱ったり、などという行為はパワハラに当たり、マイクロマネジメントに含まれない。そのような経験をしたら、即時組織や会社の担当部署に報告をしてほしい。
では、マイクロマネジメントに陥りやすい上司にはどのような特徴があるのだろうか。大前提として、マイクロマネジメントを行っている人は善意が空回りしてしまっている場合が多い。

上司の不安や自信の欠如
マイクロマネジメントを行う上司は不安を抱えている場合や自信が欠如している場合が多い。事細かに部下を管理することでなるべく失敗が起きないようにしたり、自分の指導方法に自信がないために1番無難である自分と同じ方法を取らせる、という手段を選ぶ場合も少なくない。
過剰なコントロール欲求
上司自身の成功体験がある程度確立されているために、部下にも自分と同じように行動させたいという過剰なコントロール欲求を抱えている場合もある。また、コントロールすること自体に、上司としてのやりがいを感じているケースもある。
経験不足や能力不足
ひとえに、上司の経験や能力が不足している場合がある。部下をマネジメントしたことがなかったり、成功体験がなかったりすると、もっとも簡単に部下を管理しやすいマイクロマネジメントの方法をとる場合がある。
ここであげた例は一部にすぎない。Trinity Solutionsの調査によると、マネジメントをする役職にある職員の71%がマイクロマネジメントを経験したことがあることがわかった。つまり、自身もマイクロマネジメントを受けてきたために、そのやり方が正解だと思い込み、部下にも同じようなマネジメントをしている場合があるということだ。(※1)上司がマイクロマネジメントをする背景や理由を理解することも、マイクロマネジメントから脱出する重要な方法だといえるだろう。
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マイクロマネジメントから脱出するための方法
解決が難しく思えるマイクロマネジメントだが、解決あるいは脱出する方法も存在している。具体的にマイクロマネジメントから脱出するためにどのような方法を取る必要があるのか。
上司とのコミュニケーション改善
前述したように、上司は無意識のうちにマイクロマネジメントを行ったり、自身もマイクロマネジメントを受けていたために、そのほかのマネジメント方法を知らなかったり、という場合が多くある。
まずは上司に自身が感じていることを共有し、コミュニケーションの改善を図ってみることが重要だ。もし、上司が状況を理解できる人物だと判断したら、「マイクロマネジメント」という言葉を紹介してみるのも方法の1つだろう。
目標設定の共有や進捗報告の頻度調整
マイクロマネジメントにおいては、過度な共有や報告が求められる場合が多いが、その頻度を調整してみることも、マイクロマネジメントから脱出する方法の1つだ。徐々に頻度を減らしていくことで、上司もその状態に慣れ、マイクロマネジメントを受けている本人は業務と精神面の負担を減らすことができるかもしれない。
自己アピールの強化や自己効力感の向上
また、自分自身を少し変化させてみる方法もある。マイクロマネジメントを受け続けると自信がなくなってきたり、自分の強みがわからなくなったりすることがあるが、そんな状況を避けたり、脱出したりするために、自己アピールの強化や自己効力感の向上が効果的だ。
自己効力感とは、自身が自分の目標達成能力や可能性を認知していることを指す。自己アピールをして上司からの認識を向上させたり、自己効力感を向上させて自分のやり方に自信を持ったりすることで、マイクロマネジメントから脱出できる可能性も高まるだろう。
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マイクロマネジメントが解消できない場合の対処法
上記の方法を実施しても、マイクロマネジメントが解消できないことは十分に考えられるだろう。マイクロマネジメントが解消できないとき、どのような方法を取ることができるだろうか。
ほかの上司や組織にアプローチする方法
マイクロマネジメントを行っている上司に改善の傾向が見られないならば、ほかの上司や組織にアプローチしてみることも1つの手段だ。第三者に相談することで、今まで見えていなかった解決方法が得られる場合もある。
部署異動や転職などの選択肢について考える
どうしても解決策が見られないのならば、部署異動や転職などの選択肢を検討してみることも最終手段としては考えられるだろう。人は簡単に変わるものではないため、もちろん期待を持ちながら接しつつ、なかなか望み通りにいかなかったときのために、次に働きたい場所や異動したい部署について考えておくことで心に余裕ができるはずだ。

マイクロマネジメントを避けるために上司ができる3つの対策
上司がまだ仕事っぷりが分からない部下の業務状況を心配するのは不思議なことではない。途中で予想もしない方向に進んで取り返しがつかなくなるかもしれないと不安に思うことも当然あり得るだろう。しかし、上述のように過度なマイクロマネジメントは部下自身にとっても、ひいてはチーム全体にとってもネガティブな影響を与える可能性が高い。それでは、マネジメントがマイクロマネジメントに陥ることを回避するために上司はどのような対策を取ることができるだろうか。
適切な進捗確認と報告のタイミング設定
まず、進捗確認の頻度を上司が思いついた時ではなく適度に設定することが必要である。部下が無理なく情報共有ができる定例会議などを設け、報告の頻度や方法を統一することも効果的であろう。
また、部下の自主性を尊重した目標管理も重要である。部下自身に目標設定と管理を決定してもらって、それに沿って上司がアドバイスをしていく形であれば部下の負担は減少する。個人のペースや業務内容に応じて柔軟に目標を調整しながら、上司が良いアドバイザーとしての役割を果たすことが理想であろう。
上司としての役割再認識と業務の適切な委任
あるいは、手段ではなく成果を重視する視点で部下を支援し、細かい方法に拘らずにサポートする勇気も必要だ。プロセスに過度に注目することはサポートではなく監視に近い。 部下の能力を信頼し、自律的に業務を遂行させるための環境作りを心がけながら、適切な業務量をこなしてもらうことが必要になるだろう。
思い込みを排した効果的なコミュニケーション
そして、部下の考えを聞く姿勢を持ち、思い込みによる決めつけを避けなければならない。部下は「これくらいはできる」「これはできない」ということを上司が一方的に判断するのではなく、部下自身に聞いた上で初めて理解ができるはずだ。
相互的なコミュニケーションによって業務を進めることを前提にしながら、部下の業務に対して適切なフィードバックや時には感謝を表現することで、部下にその職場で働く安心感を与えられる。「管理」されているのではなく、「期待」されているのだという意識を持ってもらえるように上司の側も努力する必要があるだろう。
まとめ
ここまで、マイクロマネジメントの定義や対策法などについて紹介してきた。本記事内で言及しているように、マイクロマネジメントを行う上司はその行為を自覚しておらず、かつ善意で事細かに部下を管理してしまっている場合が多い。そのため、マイクロマネジメントを自覚してもらうために、過度な管理で悩んでいることを上司に相談したり、マイクロマネジメントに気が付いたほかの社員が組織に報告したりすることで問題が解決できる場合も多い。
現在、マイクロマネジメントに悩んでいる方もいるだろう。仕事にやりがいを見いだせなくなったり、自分に自信がなくなったりしている方もいるかもしれない。しかし、それはマネジメント側の問題であって、あなたの能力とは関係のないことである。マイクロマネジメントが解消されれば、仕事にまたやりがいを見いだせたり、自信を取り戻せたりする可能性は存在する。自分を責めずに、マネジメントに問題がないか1度考えてみるのも有効だろう。
文:小野里 涼
編集:白鳥菜都
