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三原勇希が女性だけのランニングコミュニティ GO GIRL を運営するわけ|よりよい未来の仕掛け人

未来を担う次世代のリーダーたちに、新しいアイデアや仕事のヒントを提供するウェブメディア「FINDERS」と、あしたメディアがコラボレーション。「よりよい未来」を作るための企画を考える「仕掛け人」たちと、その企画を取材します。

今回は、3月21日にマラソン大会を開催する女性のためのランニングコミュニティ「GO GIRL」と主宰の三原勇希さんに取材。あしたメディアでは三原さんのインタビューをお届けします。大会当日の様子は、FINDERSの記事よりチェック!

スポーツブランドからマタニティ用のウェアが販売されたり、女子サッカーのプロリーグが始動したりと、徐々に熱を帯びてきた印象を受ける女性スポーツ。その一方で、まだまだスポーツを身近なものとして楽しめている女性が少ないのも現実だろう

このような状況に対し、女性の活動を応援するコミュニティは存在する。その中の1つに「GO GIRL」というコミュニティがある。GO GIRLは、2019年に三原勇希さんと浅野美奈弥さんが立ち上げた女性限定の会員制ランニングコミュニティ。月3回の練習をベースとし、楽しみながら走ることを習慣化することに取り組んでおり、コミュニティの参加者全員でマラソン大会に出ることを目標にしている。

今回はGO GIRLの代表を務める三原さんに話を伺った。三原さんのスポーツとの向き合い方や、GO GIRLはどのようなコミュニティなのか。

走ることが自分の軸になり自信につながる

まず最初に三原さんがランニングを始めようと思ったきっかけを教えてください。

そもそもは20代前半の頃、ダイエット目的で始めました。でも全然痩せなかったんです。今思えばその時、すでにすごく痩せてたんですよね(笑)。

ダイエットという当初の目的は達成できなかったのに、なぜ今でもランニングが続いてるのでしょうか。

やっぱり楽しいからですね。走っていると単純に気持ちいいですし、うまくいかないこととか、人間関係で辛いことがあったとしても、一旦リフレッシュできるんです。それに続けているとやはり身体もしまって筋肉もついて、良い感じの自分でいられることが嬉しいです。

ランニングが生活の一部になってから、三原さん自身にどんな変化がありましたか。

ランニングを続けることで自信がついて、メンタルが安定するようになったのは大きな変化でした。特にタレント業って目に見える成果がなかなか出づらい仕事なのですが、マラソンだったら自分の立てた目標タイムが出れば自分を褒めてあげられます。そこからさらに、何かを続けていって自分の軸ができるとやっぱり自信になるじゃないですか。それが私にとってはたまたまランニングでした。

あとは、ランニングの繋がりで友達や仕事も増えましたね。SNSでランニングしてるって発信すると、「一緒に走ろう」とか「ランニングの仕事をお願いしたい」とかお声がかかって、どんどん繋がっていきました。それに「一緒にご飯行こう」って言うよりも「一緒に走ろう」という方が気楽だと思います。私の場合は、ですけど(笑)。いきなり一緒にご飯に行くことって結構ハードル高くて、なに話せばいいかなと考えることもあると思うんです。でも、「朝、ちょっと一緒に走ろう」とか「夜、仕事終わりに一緒に走ろう」って声をかける方が、実はすぐに実現するんですよね。

三原さんは走る時のマイルールはあるのでしょうか。

ないです。むしろ、マイルールを設けないことがルールかもしれないです。ルールを決めちゃうと、できなかったときに「自分ダメだな」とマイナスになっちゃうと思うんです。今は週に2、3日走っていますが、それができないときも全然あるし、走る距離も決めていません。走りたいときに自由に走ればいいと思いますね。

マイルールを設けずに走ることを楽しんでいるからこそ、長く続けられているんですね。

やっぱり楽しまないと何事も続かないですよね。続けるなかで一番難しいことって、モチベーションを維持することだと思うんです。じゃあどうやってモチベーションを維持するのかというと、正しい知識と仲間が必要だと思います。仲間がいることでお互いに刺激し合うことができます。一緒に走る約束をするだけで、朝起きることもできますし、1人で走ってる時でも、SNS上で誰かが走ってるのを見かけるとやる気が出る。ランニングしながらおしゃべりするのも楽しい。家を出るまでが一番大変で、走り出しちゃえば絶対に「走ってよかった!」って思えるのはわかってるんですけどね。

正しい知識というのは走り方のフォームなどでしょうか。

それもありますが、怪我に対する知識なんかも含まれます。私は今のところ経験がないですが、怪我をしたり膝が痛くなったりしてランニングを続けられなくなる人って初心者にも多いんですね。だからそれを防ぐために、それが起きてもまた走れるように、正しい知識をつけるっていうことです。

走ることは「しんどいこと」じゃない

三原さんが、ランニングを楽しむために工夫されていることがあれば教えてください。

ランニングと何かの「お楽しみ」を掛け合わせることかな。例えば、行きたいけどちょっと遠いカフェがあるとするじゃないですか。そこまで走って行けば、距離もかせげるし一石二鳥! 旅先にシューズを持っていって朝ランすれば、海で朝日が見られたり、前日に飲み過ぎたむくみも取れます。地域のゴミ拾いとランニングを掛け合わせた「プロギング」をすることもあります。

他にはミーティングランもやってます。名前の通りなんですけど走りながらのミーティングです。

初めて聞きましたが、名前からしてしんどそうです(笑)。ミーティングランは普通のミーティングと違った効果があるのでしょうか。

ポジティブな意見が普通のミーティングに比べて出やすいと思います。それに、走るのって実は全然しんどくないんですよ!走るのがしんどい時、それはしんどいペースで走ってるとか、走る距離が長すぎるからなんです。しんどかったら話せるぐらい、歩きに近いくらいのペースで最初は走ればよくて、続けるうちにそこから段々走れる距離やペースが伸びていくんです。走ることはしんどくないってことを皆さんに知ってもらいたいですね。

いざ走るとなると「自分の限界に挑戦する」「1秒でも早く走る」みたいなことを意識していました。ストイックに取り組みすぎるとランニングが長続きしないのかもしれないですね。

それはすごい!(笑)確かに、私の経験上の話でしかないですが、そういう意識は特に男性に多いような気がします。男性にも「ランニング教えて」と言われて、最初にレクチャーしつつ一緒に走ることがありますが、やはりペースが上がりやすい傾向があります。あと、男性はまず最初に正しいフォームなどの「走り方」を聞いてくれますね。女性は最初はそこよりも、楽しければいいっていう人が多いなと。もちろんジェンダーではくくれないけれど、最初は構えすぎずに楽しめるといいなと思います。

ライフステージや仕事のことも共有できる仲間

ここからはGO GIRLについて伺えればと思います。GO GIRLは20代から30代の女性を対象にしたコミュニティですが、なぜ対象者を限定しているのでしょうか。

ランニングを続けるためにはただのランニング仲間じゃなくて、ライフステージや仕事のことも共感できて、月に何度も会いに行きたくなる友達を作りたいと思ったんです。ランニング自体は誰とでも楽しめますが、ジェンダーや年代が近いと指導もしやすいし、自分がランニングをどうやって楽しんでるかとかプログラムの提案もしやすいんです。あとは単純に、そういうコミュニティを探しても見つからなかったし、他のコミュニティやランニングクラブに参加してみても同年代のランナーになかなか出会えなかったからですね。

ライフステージの話や仕事の話などを安心して共有できるコミュニティにするために、三原さんが意識していることがあれば教えてください。

色々ありますが、全員に話しかけることは意識しています。メンバーには色々な個性を持った人がいますが、全員が心理的に居心地のいい空間にしたくて。それで人数もギリギリ目の届く範囲で、1つの期で50人ぐらいの規模感にしています。メンバーに運営も手伝ってもらって密にコミュニケーションをとったり、メンバーそれぞれの知識や得意なことを生かせる機会を作ったり。あとは知識をシェアすることも心がけていますね。

知識というのは先ほどお話しいただいた、怪我に関する知識などでしょうか。

それもありますが、栄養のこととか、生理のこととか、産婦人科のこととかもですね。恋愛の話も結構します。女性だけのコミュニティだからこそ、みんなもそういう話がしやすいのかなと思います。あとは企画を作ったり意思決定をしたりするのも全て女性なので、特別に意識しなくても、知らず知らずのうちに安心できる空間を作れているのかもしれません。

GO GIRLに参加された方々についてもお聞きしたいです。活動を始める前と1年間活動をしてからで参加者の方々にはどういう変化が起こるのでしょうか。

みんな明らかにアクティブになりますね。GO GIRLには同じような趣味を持った人たちが集まることが多くて、例えば音楽好きな人たち同士で一緒にライブ行くようになるとか、ランニング以外の面でも相乗効果があります。あとはみんなかわいくなっていきますね。自信がつくからなのか、刺激し合ってるからなのかはわかりませんが、本当に変わっていきます。

似たような趣味を持っていることに加えて、心理的安全性が担保されているコミュニティだからということも影響しているのかなと思いました。三原さん自身がGO GIRLを主催して学びになったことはありますか。

こういうコミュニティがこんなに需要あるんだということは学びになりました。メディアから取材していただいたり、「一緒に何かやりませんか」って企業から声をかけてもらえたりすることもあって。「何かを発信すると賛同してくれる人がいる」っていうことや、小さなコミュニティにもできることが多くあるっていうのはやってみて気づきましたね。

妊娠を機に運動を辞める人が多いことも発見でした。もちろん母親と赤ちゃんの安全が第一だし何が起きるかなんてわかりませんが、正直、好きなのに妊娠で運動をしばらくやめなきゃいけないのは私だったら残念だと思うんです。でも、妊娠中のランニングに対しても、海外の記事と日本の記事で書いてることが全然違って、海外では妊娠中でも軽い運動は推奨されていたりします。そういうことを考えると、メンバーのみんなには妊娠しても続けられる形でプログラムを提供して行きたいと思うので、妊娠した人も「運動をやめる」以外の選択肢をつくれるような仕組みは模索していきたいですね。

「大人になってからの運動は楽しい」と伝えるパーティーみたいなマラソン大会

2023年3月21日には、GO GIRLが主催で女性だけのマラソン大会を開催するとお聞きしました。どのような思いから今回の大会を開催することになったのでしょうか。

GO GIRLでは毎年、1年間の締めくくりにフルマラソンに挑戦するのですが、スケジュールや体力的な問題からフルマラソンに挑戦できない人もいるんです。なので、その人たちにとって締めくくりになるようなイベントができればと思ったのが最初のきっかけですね。

それから、せっかくだったらちゃんと大会にして、GO GIRLの現役コミュニティメンバー以外の人にも参加して欲しいなと考えました。国内で開催されている他のマラソン大会に参加すると、女性が圧倒的に少ないんですよね。なので、女性限定にすることで走っている女性を可視化したいという思いも背景にあります。世の中には素敵な女性ランナーがたくさんいるんだっていうことを知ってもらって、参加者同士が楽しみつつモチベーションにしてもらえたらいいですね。

今大会では走る以外の部分でも企画が用意されていますよね。そこに込めた三原さんの思いがあれば伺えますか。

本当はヘナタトゥーやタロットみたいなお楽しみコンテンツのブースや、飲食店もいっぱい出して、大会というよりパーティーにしたかったのですが、個人で公園を借りると難しいところもあって実現できませんでした。でも、出場特典としてGO GIRLを一緒に運営してる浅野美奈弥ちゃんがやっている「美菜屋」のお弁当を全員に食べてもらえるようにしました。

普通のマラソン大会は朝が早いのですが、今回は午後からにして、朝早く起きなくても参加しやすいようにしています(笑)。場所も私の好きな豊洲ぐるり公園という、海に囲まれていてすごく気持ちいい場所で開催できることもよかったです。そういうランニング以外の部分でも、魅力を感じてもらえる大会にしたいなと思いますね。

今回の大会も含めて、GO GIRLを通じて社会に伝えたい思いがあれば伺いたいです。

「大人になってからの運動って楽しいんだよ」ってことを伝えたいですね。特にランニングは辛いというイメージが強いと思うんですが、辛くないように自分のペースで自由なスタイルでできればいいし、おしゃれも楽しめる。必ずしも「頑張ってやること」がスポーツではないんだよと伝えたいですね。GO GIRLを通してスポーツをすることで人生を充実させている人の姿をより多くの人に知ってもらえればと思います。

マラソンやランニングって初心者からするとハードルが高そうですが、GO GIRLのおかげで1歩目が踏み出しやすくなりそうです。三原さんの活動は、ランニング以外にも、スポーツや音楽、映画などあらゆることへの1歩目のハードルを下げてくれるように感じていて、今後どんなことをされていくのか楽しみです。

ありがとうございます。私自身が好奇心旺盛だし結構何でもやってみたいタイプなのが大きいかもしれません。誰でも最初は初心者で、なにも知らなくてもできなくてそれが普通。ちょっとできただけで楽しい。初心者って最強です(笑)。あと、何かやりたいとか知りたいって言うと、実は周りには喜んで教えてくれる人がいっぱいいるじゃないですか。誰でもそうだと思うのですが、自分の好きなことに興味を持ってくれたら嬉しいですよね。なので言葉にすれば、好きなことをもっと知ったり、同じようなものが好きな人と繋がる機会に恵まれると思うんです。ランニングも含めて、何かにチャレンジするきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。

 

▼GO GIRLマラソン 詳しくはこちら
https://moshicom.com/80970/

マラソン大会当日の予定は、ウェブメディア「FINDERS」にて掲載中。

 

三原勇希(みはら ゆうき)
1990年、大阪府生まれ。10代の時に雑誌『ニコラ』のモデルとしてデビュー。映画や音楽、スポーツなどの多様な趣味を持ち、ラジオやテレビ、コラム執筆など、幅広い分野で活躍している。女性のためのランニングコミュニティー「GO GIRL」のファウンダーの1人。

 

取材・文:吉岡葵
編集:白鳥菜都
写真:服部芽生