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ガラスの天井とは?その意味と事例、性別や人種などによる格差と障壁を解説

ガラスの天井とは?その意味と事例、性別や人種などによる格差と障壁を解説

ガラスの天井とは?

ガラスの天井とは、企業や組織、業界において十分な素質を持つ人物が、性別や人種などを理由に不当に昇進を阻まれてしまう現象のことだ。主に働く女性が置かれている状況に対して用いられることが多い用語である。本来であれば実現できるはずのキャリアパスが存在するにも関わらず、目に見えない透明なバリアがあるかのように感じられる様子を比喩して、ガラスの天井(Glass ceiling)と呼ばれている。

歴史的な背景

ガラスの天井という言葉が生まれたのは、1978年のこととされている。アメリカ人の作家で企業コンサルタントのマリリン・ローデンが、当時参加したパネルディスカッションの中で最初にこの言葉を用いたのである。(※1)その後、1984年の書籍『The Working Woman Report』(Gay Bryant)や、1986 年のウォール・ストリートジャーナルの記事などが火付け役となり、1980年代には「ガラスの天井」の概念はアメリカ社会で広く知られることとなった。(※2)

ガラスの天井とは?

さらに、アメリカで1991年から1996年の間には労働省内で「ガラスの天井調査委員会」(Glass Ceiling Commission)が設置された。公的にもガラスの天井という言葉を用い、職場における女性などの昇進の実態調査と、ガラスの天井の克服に向けた提言を行おうとした。(※3)

近年では、2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプに敗れたヒラリー・クリントンが“I know we have still not shattered that highest and hardest glass ceiling”と発言したのも記憶に新しい。(※4)

※1 参照:BBC「100 Women: 'Why I invented the glass ceiling phrase'」
https://www.bbc.com/news/world-42026266
※2 参照:builtin「The Glass Ceiling: Its Definition and How to Break Through It」https://builtin.com/diversity-inclusion/glass-ceiling
※3 参照:内閣府男女共同参画局「平成27年度諸外国における女性の活躍推進に向けた取組に関する調査研究」p.133 (2022年11月4日閲覧)
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/ii_america/05.pdf
※4 参照:NHK NEWS WEB「アメリカ大統領選2016 クリントン氏敗北認める(演説の英語全文)」https://www3.nhk.or.jp/news/special/2016-presidential-election/concessionspeech.html

ガラスの天井の具体例

では、ガラスの天井が生まれる場面としては、どのようなものがあるだろうか。具体例を上げてみよう。

ビジネス領域におけるガラスの天井

おそらく1番多くの人にとって身近なのが、ビジネスの世界におけるガラスの天井だ。職場でのジェンダー平等は世界的に推し進められているが、まだまだ解消されていない。実績や実力があったとしても、女性の昇進には天井があり、役員クラスまで女性が登り詰めるのは難しいと言える。2021年時点で、日本を含むいくつかの国の企業役員に占める女性割合を見てみると以下のようになる。

内閣府男女共同参画局「諸外国における企業役員の女性登用について」

画像出典:内閣府男女共同参画局「諸外国における企業役員の女性登用について」p.11
https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka15-2.pdf

上記の表では、最も割合の多いフランスでも女性役員は45.3%となっており、その他の国においても女性役員割合は40%以下に留まっている。また、アジア圏ではとくに女性役員の割合が低く、中国・日本・韓国の3か国は15%以下という結果になった。詳しくは後述するが、ヨーロッパの方が女性役員割合が高くなっている背景には、クオータ制などの制度的な取り組みが比較的盛んであることも挙げられるだろう。いずれにせよ、世界各国のビジネスの領域において、いまだに女性の活躍を阻むガラスの天井が存在していると考えられる。

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政治分野におけるガラスの天井

もう1つ顕著なのが、政治の分野だ。たとえば、2022年3月時点で世界各国の女性議員が占める割合はたった26.1%だ。(※5)驚くべきことに、これでも過去最高の数値だという。ジュネーブに本部を置く国際的な議員交流団体「列国議会同盟(IPU)」は2020年の報告書(※6)で、議員数が男女同数になるまでに50年以上かかると警鐘を鳴らしている。

さらに、首相や大統領といった国の政治的トップに女性が立つケースはかなり少ない。たとえば、ご存知の通り日本ではまだ女性の総理大臣が生まれたことがない。比較的男女平等が進んでいるといわれる北欧の国々でも、まだ女性首相の事例は多くない。世界で最もジェンダー平等が進んだ国といわれるアイスランドにおいても、政治的リーダーである首相(※7)に初めて女性が就任したのは2009年のことだ。アイスランドでは現職の首相も合わせて、2人しか女性の首相は誕生していない。

その他、以下のようなケースもガラスの天井が存在していると言えるのではないだろうか。

  • スポーツ業界において、女性はコーチや監督に抜擢されにくい
  • 学術分野で、大学教授に女性が少ない
  • 飲食業界で、シェフや焙煎士などの上流部分に女性が少ない

目を凝らしてみると、身近な部分でも数々のガラスの天井があることに気づく。

※5 参照:NHK NEWS WEB「世界各国 女性議員占める割合26.1%と過去最多に 日本は9.7%」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220305/k10013515181000.html
※6 参照:Inter-Parliamentary Union「Proportion of women MPs inches up but gender parity still far off」
https://www.ipu.org/news/women-in-parliament-2020
※7 アイスランドには大統領と首相の両方が存在する。議院内閣制を採用しているため、政治的な実権は首相にある。

データから分かる国内の格差の現状

ここまで世界的なデータと具体例を提示してきたが、日本はそのなかでもとくにガラスの天井が厚い国であることをご存知だろうか。ここで、データにもとづく日本国内の格差の現状を紹介したい。

ジェンダーギャップ指数

まずわかりやすいのが、世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数だ。2022年の結果では、日本は146か国中116位とされている。(※8)

ジェンダーギャップ指数

画像出典:内閣府男女共同参画局「共同参画」2022年8月号
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2022/202208/202208_07.html

その内訳を見てみると、とくに政治分野における数値が低いことが分かる。前述の通り、政治分野にはガラスの天井が発生しやすいと言えるが、それが日本ではとくに顕著であるということだ。2022年、国会議員の女性割合は14.3%、地方議会の女性割合は14.5%だ。(※9)さらに、2022年11月時点で内閣閣僚のうち女性は2人のみである。国民の生活を左右する政治的リーダーに女性が不足しており、政治界には大きな偏りがあると言える。

また、経済分野においても女性管理職の少なさが指摘されている。2021年時点で、日本の常用労働者100人以上を雇用する企業の労働者のうち女性の役職者は、係長級20.7%、課長級 12.4%、部長級7.7%となった。さらに、上場企業の役員に占める女性の人数は、2021年7月時点で3055人、割合としては7.5%であった。(※10)日本においてはとくに、成人以降のジェンダーギャップが顕著であり、ガラスの天井の存在が大きいことが分かる。

※8 参照:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2022」p.10
https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2022.pdf
※9 参照:内閣府男女共同参画局「男女共同参画の最近の動き」p.4
https://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/ikenkoukan/82/pdf/1.pdf
※10 参照:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」p.121-122
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/pdf/r04_genjo.pdf

ガラスの天井指数

別の指標として、イギリスの経済週刊誌「エコノミスト」が発表している「ガラスの天井指数」(※11)を挙げたい。これは、高等教育進学率、労働参加率、賃金格差、子育て費用、女性の育児休暇の所得保障、男性の育児休暇の所得保障、GMAT(経営大学院)受験者割合、管理職割合、企業役員割合、国会議員割合の10項目から各国におけるガラスの天井の状況を数値化したものだ。2022年3月公表の結果では、日本は29か国中28位とされている。

内閣府男女共同参画局「今週の男女共同参画に関するデータ」

画像出典:内閣府男女共同参画局「今週の男女共同参画に関するデータ」 https://www.gender.go.jp/research/weekly_data/index.html

とくに、「賃金格差」「管理職女性割合」「企業役員女性割合」「国会議員女性割合」において日本は低いスコアがつけられている。ジェンダーギャップ指数と同様に、ビジネス分野と政治分野におけるガラスの天井の存在を強く示唆する結果となった。

※11 参照:The Economist「The Economist’s glass-ceiling index」
https://www.economist.com/graphic-detail/glass-ceiling-index

ガラスの天井とガラスの崖の違い

ここで、ガラスの天井とよく似た「ガラスの崖」についても紹介したい。ガラスの崖(glass cliff)とは、経営不振や不正などにより組織が危機的状況に陥ったときほど、女性がリーダー的な立場に置かれやすいことを表した言葉である。2004年に、エクセター大学のミシェル・ライアン教授とアレックス・ハスラム教授が提唱した造語だとされている。

当然、危機的状況に陥った組織の立て直しには困難が伴い、失敗のリスクが高い。そのような場所に女性を立たせ、実際に失敗すると「だから女性はリーダーには向かない」などとされ、偏見を増幅させるなどの恐れがあるという。
ガラスの崖現象の例としては、2012年に業績不信に陥っていたヤフーがライバル者の副社長であったマリッサ・メイヤーをCEOに抜擢したことなどが挙げられる。

ガラスの天井が生まれる要因

では、なぜこのようなガラスの天井が生まれてしまうのか。要因としては、以下のようなものが挙げられるだろう

出産・育児によるキャリアの中断

共働きは一般的になってきたとはいえ、まだまだ働き方にはジェンダーによる偏りがある。

出産・育児を例に挙げるとわかりやすいだろう。そもそも子どもを産むのは基本的には「女性」とされているので、妊娠した女性は身体的にキャリアが中断されることになる。出産後、育休や時短で働くのも女性の方がはるかに多い。2021年では、育児休業の取得者は女性で85.1% 、男性で13.97% (※12)とその差は歴然だ。さらに、2021年時点で、第1子の出産後に離職する女性の割合は34.7%(※13)とも言われており、決して少なくない数の女性が出産を機に仕事を辞めたり、仕事を変えたりしていることになる。一度ブランクが生まれると、同じ条件の仕事に戻ったり、転職するのが難しくなってしまうのが現状だ。

出産・育児によるキャリアの中断

また、「単身赴任」と聞いてイメージするのは、男性が家族と離れて1人で暮らしている姿だという人は多いのではないだろうか。世界的にジェンダー平等が謳われるようになってきたが、「男は仕事、女は家庭」の価値観はいまだ根強い。

女性が子どもを育てながら働き続けられる仕組みや、「女性がバリバリと仕事をしても良いし、男性が家事に従事しても良い」という価値観がまだ浸透していない。「女性は子どもを産んだら仕事ができなくなってしまう」という実態は、子育てをしながら働くための制度が整っていないことと、「女性は家庭を守るのが仕事だ」といった偏見の2面が絡み合ってできた意識なのではないか。このような意識が、とくに職場におけるガラスの天井を生み出す要因になってしまっていると考えられる。

※12 参照:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」p.21
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/07.pdf(2022年11月1日に閲覧)
※13 参照:リクルートワークス研究所「定点観測 日本の働き方 5-3.女性の第一子出産離職率」
https://www.works-i.com/sp/teiten/detail020.html

女性が昇進を望めない職場環境

同時に、そもそも昇進を希望する女性が少ないという意見もよく耳にする。実際、2020年の調査(※14)では「管理職を『目指したい』もしくは『どちらかというと目指したい』」と回答した人は、男性が80.3%であるのに対し女性が44.9%であった。この結果からしても、間違いだとは言い切れないのかもしれない。同調査内では、以下のようにも書かれている。

管理職志向がない女性は、管理職志向がある女性に比べて「上司はあなたの育成に熱心である」「職場では自分は期待されている」「将来のキャリアにつながる仕事をしている」と感じておらず、「自分からアイデアや企画を提案」している割合も低いことがわかりました。(※14)

ここでもう1つ重要なのが、同調査内で「男性の方がリーダーに向いている」と思う人は男女ともに少数であったという点である。つまり、能力や実績に男女差はないという認識があるにも関わらず、女性が昇進を希望しない傾向にあるということである。

その背景にあるのは、前述の通り、子育てとの両立が難しい家庭環境や、調査内で指摘されているような女性従業員の育成環境の不足などがあるだろう。女性自身が自発的に「昇進したくない」と言っているというよりは、昇進を望むことが現実的ではない状況に追い込まれていると考える方が適切なのではないだろうか。

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※14 参照:内閣府男女共同参画局「共同参画 2020年7月号」pp.8-9
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2020/202007/pdf/202007.pdf

ガラスの天井によるネガティブな影響

それでは、ガラスの天井があることによってどんな弊害があるのだろうか。

女性が昇進できずリーダーになれないということは、意思決定の場に女性がいないということになる。その結果、自然と男性に優位な職場や社会状況ができやすくなる。ビジネスの場であれ、政治であれ、その成果物を享受するのは男性だけではない。いくら「多様な視点を持とう」と言っても、想像力だけでは不足する。女性やマイノリティ当事者の声を取り入れ、それを実行していくためにガラスの天井を取り払う必要がある。

 

ガラスの天井によるネガティブな影響

ガラスの天井を排除する方法

では、ガラスの天井を取り除くためにはどんなことができるのだろうか。ここでは2つの例を紹介したい。

クオータ制

クオータ制とは、組織などにおいて構成員を性別や人種、宗教などを基準にあらかじめ比率を決めて割り当てる仕組みのことだ。たとえば、「議員の半分を女性にする」と決めて当選者の半分は女性から選出できるようにすることや、「会社の役員の4割を女性にする」と決めて積極的に登用していく取り組みなどが当てはまる。クオータ制の導入により先に女性の比率が決められるため、半強制的にガラスの天井を打ち破ることができると考えられる。

政治分野で見てみると、2020年時点のデータで、世界で約60%の国・地域がクオータ制を導入している。地域別では、欧州での導入率が73%を超えている一方で、アジア地域では44%だ。(※15)

この制度の発祥の地はノルウェーで、クオータ制を法制化して政治や一般企業にも取り入れている。上場企業に対し、女性役員比率40%を達成できない場合には会社名の公表や、最終的には企業の解散などの厳しいペナルティまで設けられている。結果、2021年時点で全体として女性役員比率41.5%を達成することとなった。(※16)

※15 参照:内閣府男女共同参画「諸外国における政治分野の男女共同参画のための取組(令和2年3月作成)」p.6
https://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/files/83712/083712/att_0000017.pdf
※16 参照:内閣府男女共同参画局「共同参画 2022年6月号」p.3
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2022/202206/pdf/202206.pdf

育児への男性の積極的参加

また、すでに述べたとおり育児と女性が直面するガラスの天井の関係は根深い。男性が育児により積極的に参加し、育児をサポートしてくれるような外部のサービスが活発になれば、女性がより活躍しやすくなるだろう。

日本国内では2021年6月3日に育児・介護休業法の改正が可決され、男性が2回に分割して育休を取得できるようになったり、従業員1000人以上の企業に対して育休の取得状況の公表が義務付けられたりした。(※17)

女性だけが出産・育児のためにキャリアを中断しなければいけないのではなく、男性も同等に育児参加を求められることで、ガラスの天井への意識も変わってくるのではないだろうか。

※17 一般社団法人 公的保険アドバイザー協会「2022年4月から変わる育休制度とは?」
https://siaa.or.jp/column/58

国際比較:ガラスの天井の状況

先進国におけるガラスの天井の現状

先進国におけるガラスの天井の現状を説明するために、いくつかの具体的なデータや状況を挙げる。

企業のトップリーダー:多くの先進国において、大企業のCEOや取締役などの最上位リーダーの地位は主に男性によって占められている。女性のリーダーの参画は進んでいるものの、そのペースは遅い。例えば、フォーチュン500社のCEOのうち、2023年現在で女性CEOはわずか8.2%に過ぎない。(※18)

政治:政治の世界でもガラスの天井が存在する。多くの先進国で女性が国会議員の半数に達していない、あるいは首相や大統領の地位に就いている女性が少ないのだ。例えば、国連のデータによれば、2023年の時点で、国会議席の女性の割合は全世界平均でわずか26.5%だった。(※19)

給与:給与に関しても、男性と女性の間には未だに格差が存在する。OECDのデータによれば、2020年の全体的なジェンダーペイギャップは11.9%だった。これは、同じ仕事に対して女性が男性よりも平均的に11.9%少ない給与を受け取っていることを示している。(※20)

これらのデータからわかるように、ガラスの天井は依然として存在し、多くの女性やが職場で適切に評価され、昇進する機会を得ることを阻んでいると言える。

※18 参照:Catalyst「Women CEOs of the S&P 500(List)」 (2023)https://www.catalyst.org/research/women-ceos-of-the-sp-500/
※19 参照:United Nations「Women in politics: 2023」https://www.ipu.org/resources/publications/infographics/2023-03/women-in-politics-2023
※20 参照:OECD「Gender wage gap」 (2022)
https://data.oecd.org/earnwage/gender-wage-gap.htm

発展途上国におけるガラスの天井の現状

発展途上国は多くの場合、先進国とは異なる一連の課題に直面している。特に女性やマイノリティは、経済的制約、教育へのアクセスの困難さ、伝統的な性別役割の固定観念など、様々な要因によってキャリアの進展を阻まれることが多い。以下に、具体的な現状と課題について詳述する。

教育へのアクセス:世界銀行のデータによると、多くの発展途上国では女性の初等教育及び中等教育への参加率が男性よりも低い。(※21)教育を受ける機会が制限されることで、女性は職業選択の選択肢が狭まり、経済的独立やリーダーシップの地位に就く機会も減少する。

経済的制約:発展途上国における女性の多くは、経済的な理由からフルタイムの仕事を持つことが難しく、自己実現のための資源や時間が限られている。これは女性が高い地位を得ることを阻む一因となる。(※22)

社会的・文化的規範:多くの発展途上国では、女性の役割は家庭内に限定されているという文化的規範が強い。これは職場での女性の役割を制限し、リーダーシップの地位につくことを困難にする。

政治参加:一部の発展途上国では、女性の政治参加が制限されており、政治的な決定権が男性に偏っている。これは政策や法律が女性の権利と平等を十分に保護しない結果を生む可能性がある。

以上のように、発展途上国におけるガラスの天井は、教育、経済、社会文化規範、政治参加など、様々な側面で現れる。これらの課題に取り組むことで、発展途上国におけるガラスの天井の排除に向けた道筋が見えてくるだろう。

※21 参照:THE WORLD BANK 「Education attainment.」(2020) https://data.worldbank.org/indicator/SE.SEC.CUAT.PO.MA.ZS
https://data.worldbank.org/indicator/SE.TER.CUAT.DO.FE.ZS
※22 参照:内閣府男女共同参画局「 第4回世界女性会議 行動綱領 第4章 戦略目標及び行動 A 女性と貧困https://www.gender.go.jp/international/int_standard/int_4th_kodo/chapter4.html

まとめ

「成果主義」が謳われる現代においても、ビジネスの場でも政治の場でも、実際には成果だけではない理由によって働き方が決まっている。ガラスの天井を破ることができなければ、いつまで経っても男性優位の偏った社会が構築され続けてしまうだろう。属性によって不当にキャリアを遮られることなく、多様な人が多様なまま活躍できるような社会を実現するためには、個々人の意識を変えることと共に、制度の変化が必要だろう。

 

文:武田大貴
編集:大沼芙実子