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写真家・石田真澄を知るための10のポイント【止まった時代を動かす、若き才能 B面】

2019年末から世界を侵食し、今なお我々を蝕むコロナ禍。失われた多くの命や、止まってしまった経済活動や、浮き彫りになった価値観の衝突など、暗いニュースが多い現在。しかし、そんな閉塞的な空気の漂う今でも、むしろ今だからこそ、さらに自身のクリエイティビティを輝かせ、未来をつくっていく素敵な才能を持つ若者たちが存在する。

既成概念にとらわれない多様な暮らし・人生を応援する「LIFULL STORIES」と、社会を前進させるヒトやコトをピックアップする「あしたメディア by BIGLOBE」は、そんな才能の持ち主に着目し、彼ら/彼女らの意志や行動から、この時代を生き抜く勇気とヒントを見つけるインタビュー連載共同企画「止まった時代を動かす、若き才能」を実施。

A面では、その才能を支える過去や活動への思いを、B面では、表舞台での活躍の裏側にある日々の生活や、その個性を理解するための10のポイントを質問した。

A面はこちら から

中学生の頃から日常の写真を撮り始め、今では大塚製薬・カロリーメイトの広告『部活メイト』、俳優・夏帆さんの写真集『おとととい』など、多方面で活躍する写真家・石田真澄さん。1問1答で紐解く「石田真澄を知るための10のポイント」。

写真家・石田真澄を知るための10のポイント

1. 雑誌の編集者に憧れた子ども時代

小学生ぐらいからモデルの女の子たちと服を見たくて、『ニコ☆プチ』『ニコラ』『Seventeen』などの雑誌が好きでした。でも買ってもらえなかったので、本屋で毎月立ち読みしていました。中高生になると、『GINZA』『装苑』『Numero』なども読むようになりました。雑誌が好きだったから、自然に駅のポスターの写真に目がいくようになって、写真のきれいな広告に興味を持つようになりました。なので、雑誌の編集者か広告代理店のプランナーになりたいと思っていましたね。

2. 2000年代初頭の映画を観ていた

部活がない学校だったので、中高6年間はずっと遊んでいて。TSUTAYAでDVDを借りてきたり、土曜日の午後によく映画館に行ったりしていました。ただ、カタカナが覚えられないので洋画が全然ダメで(笑)。ずっと邦画を観ていましたね。特に好きだったのは、2000年代初頭の暗い映画。宮崎あおいさんが主演の『害虫』は、ポスターも素敵です。主題歌がナンバーガールなんですよ。その曲のMVも『害虫』の映像で作られていて、暗くて、好きですね。

3. 生活の写真が好き

最初は広告や雑誌などの商業媒体で見かける写真に興味を持っていた分、写真家の作品集を見るようになったのはそのあとで高校生の頃からでした。森栄喜さんの作品がすごく好きで、有名な『intimacy』という写真集を見ていました。生活のスナップで、 夏の写真なんですけど、カラッとしているのがすごく良くて。逆に、生々しい写真は好んで見ることが少ないです。湿度の高い写真は、なんと言うか、私は審美眼がなくなってしまう。その点、森栄喜さんの写真はカラッとしていてなんだかすごくちょうどいいんです。

4. 1か月休みが取れたら、出雲大社に行きたい

1か月休みがあったら半分は旅行をして、半分は普段の生活をしたいですね。旅行は2週間行きっぱなしではなくて、3泊4日ぐらいを何回か、いろんな場所にいろんな人と行きたい。あとはもうゆっくり、映画を観て、本を読むのが好きなので、そういう風に普段の過ごし方でいいです。旅行で今一番行きたいのは、出雲大社。今、「神社に行きたい」と「寝台列車に乗りたい」の2つの願いがあって、一気に叶えられるのが出雲大社だからです。詳しくはないんですけど、日本の八百万の神に興味があって。漫画なんかを読んでいると「出雲大社に行かないと話が始まらない」と思って。

5. 1つのことを続けるのが苦手(ただし写真は除く)

集中力がなくて、何か1つのことだけを続けることが苦手です。いろんなものを並行して進めていくマルチタスクの方が飽きないので、フリーランスの仕事が合っているんだなとつくづく思います。写真は、1つのことを続けているようにも見えますが、毎回撮るものも違うし、行く場所も違う。『部活メイト』をタイトなスケジュールで撮っていた時も、30競技を撮ったのですが、スタジオではなくて30カ所に行って撮っていたので楽しかったです。

6. 性格は「はっきりしてる」「末っ子っぽい」

友人からは「はっきりしてる」「末っ子っぽい」と言われますね。実際に、末っ子なんですけど(笑)。そう言われたら、何も抗えません。「はっきりしてる」と言われるのも本当にそうで、根に持つことが少ないですし、判断が早い方です。

7. 昼間の明るい時間帯に本を読む

好きなことは夜に回したりすることが多いと思うんですけど、私は人が仕事しているであろう時間にやりたい。昼間の明るい時間帯に本を読んだりしていると、リフレッシュになります。音楽を聴くのも好きだし、映画や漫画、アニメ、ドラマも全部観る。趣味はすごく広いほうだけど、それが写真につながっているかどうかは正直わからないんですよね。

8. 会話がない2人のドライブが好きです

海沿いなどの自然や夜の公園、ドライブなどで誰かといる時間が好きですね。会話がない1人と会話がない2人だったら、会話がない2人の方がいい。誰かと2人でいるけど、喋っていなくても気まずいとはお互いに思っていない関係性が、自分を元気にしてくれます。私は対面して誰かと喋ることが苦手なんですが、散歩やドライブなら対面していないし、喋っていなくても景色は動いているから気まずくないですよね。

9. 写真は、生活に根付いている存在

写真は、中学生で撮り始めた頃から生活の中にいつもある感覚なので、実は写真を撮るために旅行に行ったりすることはほとんどありません。人との生活、自分の生活の流れで、撮りたい瞬間に撮るぐらいの感覚です。「根付いている」に近いですかね。全然撮らない日ももちろんあるし、どこか地方に行ってもあんまり撮らない時もあるんです。

10. 雨上がりの電線、写真に撮れない光を見る

幼い頃から光が気になっていました。具体的なシーンで言うと、例えば教室の窓から見える光。3階だとちょうど電線ぐらいの高さになるんですけど、雨上がりに太陽が出ていて、電線の雨粒が光っているのがすごく好きで見ていて、でもちょっと遠い。iPhoneで撮ろうとすると撮れなくて、フィルムカメラだとなおさら撮れない距離。その時、それを完璧に撮ることはできないけど、すごい好きだなと感じながら、ずっと見ている。あとは、電線の金具が光っているのを、走っている電車の中から見るのがすごく好きです。電線や金具そのものよりも、電線に当たっている光。葉っぱではなくて、葉っぱに当たっている光とか、その物自体にはあまり興味がなくて、光が当たっている部分や光自体を目で追ってしまいます。

中学生時代から、日常的に写真を撮り始めた石田さん。「根付いている」と語るように、もとから写真とともにあった日常生活の延長線上に、写真家としての今がある。さまざまな趣味が「写真につながっているかどうかは正直わからない」と石田さんは語るが、文化的に肥沃な日常を過ごしていることが、人を惹きつける写真を撮り続けられる土壌になっているのかもしれない。

石田 真澄(いしだ ますみ)
1998年生まれ。中学生から日常的に写真を撮り始める。2017年に個展「GINGER ALE」を開催、2018年に写真集『light years -光年-』(TISSUE PAPERS)を出版。大塚製薬・カロリーメイトの「部活メイト」、俳優・夏帆さんの写真集『おとととい』などの撮影を手がけ、注目を集めている。

 

文:遠藤 光太
編集:宮川岳大
写真:内海 裕之