
インターネットやSNSを通じて情報が溢れた社会で、いま、若者は政治にどう関わり、政治をどう見ているのだろうかーー。
そんな疑問から、あしたメディアでは2024年の冬、連載「若者が見る“政治のいま”」を実施。選挙権を持つ若者がどのように政治をとらえ、関わっているのか、様々な角度から深掘りしてきた。
今回は番外編として、2025年7月20日投開票となる参議院選挙を前に、若者が注目する争点をまとめてみたい。
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物価は上がるのに、給料は増えない。
結婚や出産を選ぼうとすれば、制度や経済的なハードルが立ちはだかる。
副業が当たり前になっても、社会保障は追いついていない——。
そんななかで迎える2025年の参議院選挙。
私たちはこの選挙でどんな“争点”を見つめ、どんな“選択”をすべきなのだろうか。
2025年3月に「あしたメディア by BIGLOBE」が発表した調査報告書「あしたレポート 2025」でも、 経済的不安や制度への不信感が若者の生活と選択に大きな影を落としていることが浮き彫りになった。本記事では、それらのデータを引用し、これからの日本を担う若者・デジタルネイティブ世代(※1)のリアルな視点から注目すべき争点・各政党のスタンスを読み解いていく。
自分の気になるトピックスから考えに近い政党を選んでいくのはもちろん、別のトピックスでもその政党が何を公約としているのか、俯瞰した視点で見るのも大事だろう。
※1:「あしたレポート2025」ではデジタルネイティブ世代を1990年代以降に生まれた人と定義し、選挙権を持つ18歳以上を対象に調査した。今回は、その結果の中からデジタルネイティブ世代の関心が高いと判断した項目に関連する争点をピックアップした。
- 今更聞けない、参議院選挙の基本知識
- Point 1:経済的不安を、どう解消する?
- Point 2:多様なパートナーシップは受け入れられる?
- Point 3:少子高齢化対策には、何が重要?
- もっと知りたい、その他の争点
- 情報の偏りを越えて、自分の争点を見つけるために
今更聞けない、参議院選挙の基本知識
参議院は任期が6年あり、3年ごとに半数が改選される。任期が4年で解散のある衆議院選挙に比べて任期が長く、解散もないため長期・安定的な視点で議論を進められることが特徴だ。2025年の参議院選では、合計248議席のうち半数である124議席が改選数となる。
有権者の住む地域の代表者を選ぶ「選挙区選挙」と、全国で政党もしくは候補者を選ぶ「比例代表選挙」の2つの投票を行い、「選挙区選挙」で74名、「比例代表選挙」で50名が選ばれる。
今回、与党である自民党・公明党が参議院で過半数を獲得するには、50議席の獲得が必要となる。与党が過半数を維持するか、野党が過半数を超えるかが注目点だ。各都道府県で当選の定員数が決まっており、代表者の当選数が限られている小規模県においては、より与野党の戦いが顕著となっていくだろう。
また、「国会議員が5人以上」もしくは「国会議員が1人以上、かつ前回の衆院選か、前回と前々回の参院選おける全国を通じた得票率が2%以上」のいずれかを満たした政党は、政党交付金の交付対象となる。今回、あしたメディアでは争点比較するにあたり、この政党要件を満たした政党を取り上げる。

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Point 1:経済的不安を、どう解消する?
物価高・円安・消費税が生活を圧迫
今回の参議院選で年代問わず大きな争点となっているのは「物価高」への対策だ。
「あしたレポート2025」によると、年収に満足していない若者の約7割が、その理由を「生活費をまかなえないから」だと回答。また副業を始めた理由においても「生活費や貯金を補うため」という回答が首位となった。円安の影響で輸入品やエネルギー価格が上昇し、消費税10%の負担も重く感じられるなか、日々の暮らしに余裕がなく、経済的不安が常にのしかかっているのが現状だ。また生活費の不安が広がるなかで、「あしたレポート2025」では今後経済格差が拡大していくだろうと答える人が全体の6割を超えた。
参院選の注目争点をチェック
物価が高いが給料は上がらない、そんな私たちの生活費を政府はどう補うのか?今回は各党が掲げる物価高対策のなかでも「減税」「給付」「社会保険料の軽減」の観点より各政党の主な公約を比較する。与党が現金給付をうたう一方で、野党は継続的な消費税の廃止や減税を掲げる党が多くみられる。与党は、消費税の減税は法改正やシステム変更が必要であるため、時間とコストを鑑みた現金給付が必要だと主張している。

ひとえに「物価高対策」としても、各党の政策は複数にまたがり、多岐に渡る。一方で、NHKが実施したアンケートでは、「最優先で取り組むべきこと」として、「賃上げ環境の整備」「全世帯への支援」「低所得者の支援」「事業者への支援」「減税」「その他」「回答しない」という選択肢のなかから、各党は以下のように答えた。

また、各党がこれらの公約の実現に向けた財源をどのように捻出しようと考えているのかを知ることは、重要なポイントだ。たとえば与党は、現金給付の財源を税収の上振れなどを活用し確保すると述べている。一方、野党では大企業や富裕層に対する減税や優遇を見直すことで財源とすると主張する党や、そもそも財源について明記していない党もある。
「あしたレポート2025」では、19-29歳の半数以上は「格差を是正するために富裕層は貧困層を支援するべきだ」と思うと答えている。給付や減税といった施策で一時的に所得が潤った先にどのような補填を考えているかは、同時に調べておく必要があるだろう。
Point 2:多様なパートナーシップは受け入れられる?
「あしたレポート2025」では、どの年代においても「同性婚は法律で認められるべきである」と回答した人が5割を超えた。一方で「選択的夫婦別姓は法律で認められるべきである」という問いに関しては、女性はどの年代においても「そう思う」と答える人が5割を超えたが、男性においては25-29、35-39歳は5割に満たなかった。
しかし制度面では停滞が続いており、法制化されていないため「姓の選択ができない」「同性の場合、法的に結婚できない」という不合理さが残っている実情がある。パートナーシップ制度の導入自治体は広がっているものの、法律婚と同等の権利が与えられている訳ではない。
参院選の注目争点をチェック
選択的夫婦別姓や同性婚については公約に明記していない党もいるが、NHKのアンケートにて主要各党が以下の回答を示している。
「選択的夫婦別姓」についてはこれまでも制度導入が2度検討されているが、法案提出に至っていない。夫婦同姓を維持すべきと答えた党も旧姓の継承使用を認める法制度について動きを見せており、日本維新の会は先の国会で旧姓の使用拡大に向けた法案を提出している。与野党含めて二分化する意見が、今回の結果でどう影響するのか注目だ。

また同性婚のあり方については、自民党・参政党、日本保守党が反対と回答しているが、与野党含む5党は賛成と答える。

Point 3:少子高齢化対策には、何が重要?
「あしたレポート2025」では、子どもがいない20-34歳の約6割が、子どもをほしいと思っていないという結果となった。その理由として20-34歳で最も多かったのは、「経済的な負担が多いから」であった。
子育て世代の若者が、財政難を理由に出産や育児への希望を持っていないいま、どのように政府がその対策を考えるのだろうか。
参院選の注目争点をチェック
いずれの政党も、子育てをするにあたって安心できるような保障を打ち出しているが、異なるのは子どもの有無に関わらず若い世代の賃上げ施策を行うか、それとも子育てをする人を対象に保障を厚くするのかどうかだろう。ただでさえ物価高で個人の生活が苦しい状況に置かれる今、どのような環境があれば子育てしたくなる世の中となるのだろうか。

もっと知りたい、その他の争点
ここまで、「あしたレポート2025」でとくに若者の意見が顕著に浮き彫りになったデータとともに、各政党の争点を確認してきた。だが、各党が掲げる公約はまだここには記載しきれないほど沢山ある。最後に、より今回の時勢を鑑みて注目されるだろう観点を編集部の視点で取り上げる。
これまでの災害、そして今後の防災についてどう考える?
南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくないと言われているいま、トカラ列島で地震が頻発しており、日本は常に地震に脅かされている。また気候変動による集中豪雨や干ばつなど、地震以外にも災害の懸念は年々増えている。先の東日本大震災や能登半島地震の復興も、風化させてはいけない課題である。そのような自然災害について、各党はどのように捉えているのだろうか。
自民党・公明党・立憲民主党・維新の会・国民民主党が、被災地への対策を公約に明記している。防災に関しては、各党さまざまな観点から対策を提案している。


また、今後のさらなる自然災害を防ぐためには、気候変動への対策も必要だろう。各党が温室効果ガスの排出削減を目標に掲げるなか、参政党は現状の施策に対して疑問を呈し、電気料金高騰・環境破壊・資本流出を助長する再エネ推進を止める必要があると答えている。

連日ニュースを賑わす、令和のコメ騒動は?
もはや話題に上らない日はないほど、巷で話題となっているコメ不足と価格高騰。背景には、円安や生産コストの上昇、農家の高齢化と担い手不足などが複雑に絡む。一方で、政府による減反政策の見直しや、輸出戦略を優先する農政の方向性に対して、「本当に国内の食を守れているのか」という疑問の声も少なくない。今回の参院選では、コメの価格高騰に伴う農業政策や食料安全保障をどう位置づけるかが問われている。
コメの安定供給に向けて、いま政府が最優先で取り組むべきこと

「その他」と答えた政党に関して、詳細は以下の通り。各政党、複合的な施策を検討している。
- 自民党:「米の安定供給と円滑な流通確保を図るため、生産・流通・備蓄の各段階で在庫と流通量を検証するとともに、今後の需給動向に対しては適宜状況を把握し、必要に応じて機動的に対応」
- 立憲民主党:「農業者戸別所得補償制度をバージョンアップし、食料と農地を守る直接支払「食農支払」(食料確保・農地維持支払)制度を創設することが急務。同時に、新たな新規就農対策も拡充・強化する必要がある」
- 公明党:「流通実態の可視化を通じて、適正価格での流通を促すこと。そして、増産方針を明確に示し、生産性向上、資材価格高騰に対する支援、セーフティネット対策の強化といった営農支援を一体的に行う必要がある」
国を守るために、憲法9条をどう捉える?
戦後日本の平和主義の根幹をなす憲法9条は、長年にわたって改正をめぐる議論がなされてきた。近年では、ウクライナ侵攻や台湾有事のリスク、北朝鮮のミサイル発射など、安全保障環境の変化を背景に「自衛のため、いまの憲法を改正し自衛隊の明記が必要」とする声が強まる一方で、「9条こそが戦争を回避する歯止めであり、改正は不要」とする立場も根強い。参議院選挙では改憲発議に必要な3分の2の議席確保がカギとなるため、各党のスタンスが注視されている。
憲法9条を改正し、自衛隊を明記することに賛成か、反対か

情報の偏りを越えて、自分の争点を見つけるために
SNSは、いまや若者にとって最も身近な政治情報の取得手段である。「あしたレポート2025」でも、若者の投票時の情報収集として、18-29歳の投票経験者の4割以上は、選挙で情報収集にSNS(XやInstagram、YouTube等)を利用したことが示されている。
しかし、SNSのアルゴリズムは自分の興味関心に近いものばかりを表示しやすく、フィルターバブルを生みやすい。多くのいいねや拡散が必ずしも正確な情報とは限らないだろう。
一方向の意見ばかりを鵜呑みにせず、多角的に政策や政党を比較できるツールを活用することが重要である。たとえば、以下のような手段が有効だ。
- 政党の公式HPや選挙公報で一次情報を確認する
- 中立的な政策比較サイトやニュースを複数読む
- ボートマッチ(政策マッチングサービス)を活用し、争点ごとに自分と近い政党を可視化する
また、そもそも政治ってどういうふうに見ればいいの?という人には、こちらの記事もおすすめだ。
自分の暮らしや価値観に直結する争点から政党を逆引きすることはもちろん大切だが、その政党が、それ以外の部分でどのような見解があるのかを知ることも同時に大事だろう。一度批判的な目でフラットにすべての政党を見てみることも、正しい判断をするうえでは重要だ。
また今回は主要政党を中心に比較してきたが、比例代表では16の政党を選ぶことができる。時間に余裕のある人は、そのすべての公約も見てみると良いだろう。
投票日まであと少し。よりよい未来をつくるために、自信を持って支持できる先に一票を投じて欲しい。
※本稿に記載の各党の政策・方針に関する記載は以下より出典。
・自民党
・自民党 参院選2025
・自民党 第27回参議院議員通常選挙 選挙公約(PDF)
・公明党
・公明党 2025参院選 重点政策
・立憲民主党
・立憲民主党 2025政策一覧
・日本維新の会
・日本維新の会 2025参院選マニフェスト
・維新八策2025 個別政策集
・国民民主党
・国民民主党 第27回参議院議員通常選挙 特設サイト
・政策パンフレット(PDF)
・日本共産党
・日本共産党 2025参議院選挙政策
・れいわ新選組
・れいわ新選組 参院選2025 #比例はれいわ
・参院選2025マニフェスト れいわ、以外ある?
・社民党
・社民党 2025参院選選挙公約(PDF)
・参政党
・参政党の政策2025
・日本保守党
・日本保守党の重点政策項目
文:橘くるみ
編集:大沼芙実子
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