
「政治、理解するの難しすぎない…?」
日々のニュースや選挙のたびにそう感じる若者は少なくないはずだ。理解しようと思っても、何から勉強すればいいのか分からないし、そもそも政治とどう関わっていけばいいのかも分からない。
そこで今回は、“趣味について語るように政治を語る”Podcast番組『セイジドウラク』のパーソナリティ、澤田大樹さん・宮原ジェフリーさんに「政治を楽しく理解するために何が必要か」を中心に話を伺い、前後編の2回に分けてお届けする。
後編は、国政選挙期間以外の政治の楽しみ方、いま求められる有権者の目線、今週末に控えた参院選の楽しみ方や注意点についても伺った。
▼前編はこちら
『セイジドウラク』が、“面白すぎない”理由
近頃SNSを見ていると、調べればすぐに嘘だと分かるような情報を鵜呑みにしてしまう人が多いなという印象を受けてまして…
澤田:先ほどの「悪いことばかり報道される」というところとも重なりますが、結局極端な意見じゃないと報じられないことが多いんです。
“まともなこと”って、どうしても面白くなりづらいんですよね。でも、“面白いかどうか”と“それが正しい情報か”は、別の問題です。そこを分かっていない場合、“面白い”ばかりを追いかけてしまう。SNSはアテンションに抗うことが難しい装置ですが、だからこそ、頭の片隅には置いておいてほしいですね。
宮原:そういう意味では『セイジドウラク』は“面白すぎない”と思うんですよ。極端なことはそんなに言わないし、特定の誰かを強い言葉で非難したりもしない。
澤田:なぜかというと、どれだけとんでもない発言をしてる人のなかにも、当選することはあるし、実際にそういう候補を支持する人たちがいるんですよね。そして、その1票も、他の誰かの1票も、基本的には同じ重みを持っている。だからこそ、僕らが一方的にどうこう言うことはないんです。ただし、人権や多くの人の命・尊厳に関わるような発言をした場合には、しっかり批判します。
宮原:批判や評価の域を超えたような煽りって、結局右でも左でも良い結果にはならないんですよね。
澤田:たしかに、特定の側に立つ方が目立てるんですよ。ただそれってあまり意味がなくて。『セイジドウラク』では、保守寄りの人もリベラル寄りの人も同じように聴いてもらって、それぞれに怒り、それぞれに共感してもらえればそれでいいというか。むしろ、それが健全な在り方だなと思うんですよね。

次の国政選挙まで、どのように政治を楽しめばいい?
政治の楽しみ方についてもお聞きしたいです。まずは、選挙期間以外の政治の楽しみ方を伺いたいんですけど…
宮原:実は選挙って、意外といつでもやってるもんなんです。
え、そうなんですか?
宮原:選挙をやってない時期は、お正月・ゴールデンウィーク・お盆ぐらいでしょうか。それ以外は、だいたい日本中で選挙が行われてますね。
澤田:『おはよう日本』(NHK)の月曜の関東ローカルのコーナーを見ると、びっくりすると思うんですけど、週末に関東で行われた選挙結果を伝えるコーナーがあるんですよ。議会選挙までは扱ってないかもしれませんが、「〇〇市長選」みたいなのが、ほぼ毎週のように報道されてます。
全く知りませんでした…!ちなみに国政選挙という意味では、直近の参院選挙から当分空きますよね。次の国政選挙まで、どのようにして政治を楽しめばいいのでしょうか。
宮原:1つは、全国の選挙に注目いただくことですかね。たとえば、先月の都議選と同日に沖縄の多良間村という離島で村長選挙が行われたんですけど、投票率が98.2%だったんです。
凄まじい投票率ですね。そんな選挙が日本で行われていたことに驚きです…。
宮原:全国を探すと意外と面白い選挙があるんですよ。澤田さんからの提案は?
澤田:選挙は別に政治のすべてではないので、日頃から「政治を理解する筋肉」を鍛えなければいけません。たとえば、選挙の時にだけ活動が活発になる人や、選挙の時だけSNSが動く政治家もいるんですよ。SNSの使い方を軸に見るのも政治のウォッチ方法の1つだし、自分の中での引っかかりを作っておくのはすごく大事なことなんです。
他にも、自分が投票した人の活動や発信を、月に1度でいいからチェックしてみることもいいかもしれません。あとは自分の生活に関わりの深いニュースを見ておくことですかね。そのなかで良く顔や名前が出てくる議員がいれば、その議員の得意分野が分かってきたりするんですよ。そういうことをコツコツ続けていくと、選挙の時に、より深い情報を得ることができるようになるはずです。

自分以外の人にとってこの政策はどうなのか、まで想像を広げよう
SNSで「これって、もともと民主党政権のときにも言ってた話じゃない?」みたいな指摘を見かけるんですけど、そういう背景って、どうやったら理解できるようになるのか分からなくて。
澤田:分からなくて良いと思いますけどね。
宮原:そういう情報をすべて追うのは無理がありますよね。そのために野党がいるわけであって。
澤田:たとえば、子ども手当は、民主党政権時代に導入されたんですけど財源確保困難が理由で廃止され、政権交代後は「児童手当」として再設計されている。こういう流れは、子どもを実際に育ててると、生活のなかで如実に実感できるんですよね。
宮原:子育て支援なら分かりやすいかもしれませんが、ありとあらゆる分野において、自分の生活と地続きで理解することは難しいかもしれません。だからこそ、野党の仕事が重要になってくる。いま、政治家や政党が何を主張しているのか、意見が分かれているならそれぞれの立場を押さえていくことが大事なのかなと思いますね。
澤田:重要なのは選挙は終わりじゃなくて、始まりということです。日頃の引っかかりポイントをどう作るかという点では、今回の参院選を1つのキッカケにしてみるのもいいかもしれません。投票するときは、政策の差分を確認しながら投票しますよね。そここそが、自分が気になってる分野ということなので、選挙がない間は、その政策がどう進んでいるのかを注目すればいいかもしれません。それを続けていくうちに、興味を持つ分野が1つ、2つと増えていき、いつのまにか頭に流れてくる情報に引っかかりを持つことができるようになるんです。
宮原:身近な関心から政治に興味を持つことはすごく大事だと思うんですけど、“身近”だけで終わると良くないなとも思ってるんです。1つの政策に対して、自分にとってはどうなのか考えると同時に、「自分以外の人に対してこの政策はどうなのか」というところまで想像を広げてほしいんですよね。
たとえば、子育て政策ひとつとってみても、現役世代にとっては有り難いだろうけど、そこから弾き出される人たちにとって、この政策はどうなのかなっていうところまで考える。あるいは、日本に住む外国人には選挙権がないので、その人たちがこの社会で暮らしていくにあたってどうなのかなみたいなところまで含めて総合的に考えていくってことが、本当は求められると思うんです。
自分事として考えることもすごく大事と言われるけど、「自分事からその先に」ってところまで広げられると、より良い社会になっていくんじゃないかなと思うんです。

これからの時代に求められる「有権者としての目線」とは?
SNSを中心に情報を得ていると、「自分の信頼している〇〇さんが拡散しているから、この記事を読もう」いった形で情報に触れることが増えていき、気づかないうちに情報が偏ることもあると思うんです。誰かの発信を介して、情報を摂取することの功罪についてもお聞きしたいです。
宮原:その“誰か”がどういう人なのかも大事だとは思うんですけど、複数のチャンネルを持っておくことが重要でしょうか。たとえば政治家なら、自分の選挙区の人は与野党問わずフォローしておけば良いかなと思います。
澤田:僕もオピニオンとしてみる人はいるんですけど、リベラルな人と保守的な人の両方をみるようにしてますね。で、どっちの側からの意見にも触れてみるんです。そこから、自分にはどう見えるのかっていうのを考えます。どんな問題でも、右も左も中道も、もしくは専門家の意見も、情報の引き出しをたくさん持つようにしてますね。
宮原:「誰か」の発信という点でいうと、昨今の政治が「推し活」にたとえられたり、あるいは「政治のエンタメ化」みたいな風潮がありますけど、これらに少し危うさを覚えるんです。推し活における推しは絶対的な存在ですよね。一方、政治家は絶対的な存在ではなくて、常に批判的な視点を持ちながら見続けなければいけない対象なんですよ。そういう視点を踏まえて、有権者としての選択をすることが大事だと思います。
あと、エンタメ化についても少し思うところがあって。僕らも「政治を面白く考えてみよう」とは言ってるけど、それは「いま私たちが置かれる政治状況をどのように楽しみ、味わうことができるのか」という視点によるものなんです。ただこれが、政治家側からエンターテインしようとして発信されることは、非常によろしくないことだと思うんです。
やっぱり、議員としての活動というのは、世の中に対してのルール作りや、予算の使い道の決定であって、そこを真面目にやってもらわなきゃいけない。インプレッションを稼ぐためのパフォーマンスに重きを置くこと自体はすごく危ういと思うので、そこを見極める「有権者としての目線」が、これからどんどん必要になってくるのではないでしょうか。
ここでも政治の原理原則を理解することが求められるということですね。
宮原:あとは、自分が応援している議員さんと異なる意見の人がいたときに「許せない!」という感情だけで批判するのではなく、一旦反対側の意見も見てみることが必要ですね。

参院選の楽しみ方や、衆院選との違い
政治を知れば知るほど楽しみ方は広がるわけですね。政治を楽しむお二人に、“政治とのちょうどいい距離感”も伺いたいのですがいかがでしょうか。
宮原:別に頑張らなくても良いと思うんですよ。
澤田:同じく、事前のメモに「頑張らない」って書いてある(笑)。関わりたいと思えば、どこまでも深く関われるのが政治なので。
番組へのお便りを読ませてもらうと、『セイジドウラク』がきっかけで面白おかしく政治を見るようになった人もいれば、政治関係の映画やドラマを見るようになった人もいるんです。家族が立候補したから、応援までした人もいます。
つまり、政治への関わり方は個人によるので、「これぐらいが丁度いい」という塩梅はなくて、自分なりの関わり方を見つけるといいかもしれません。
宮原:とはいえ、政治は自分の生活の色々な面で関わってくるので、必要最低限の問題意識を持てればいいのかなと思いますね。
澤田:1日5分だけニュースや新聞に割く、でも全然いいと思うんです。それもひとつの関わり方なので。
ちなみに、政治に触れるうえでオススメのコンテンツがあれば教えてください。
澤田:国内ドラマですが、『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022年、フジテレビ系)『フェンス』(2023年、WOWOW)、あとはNetflixの『離婚しようよ』(2023年)。小説だと、新川帆立さんの『女の国会』(2024年、幻冬舎)は、政治を知る入り口として良いと思いますね。
最後に、今週末に控えた参院選についてもお伺いしたいです。改めて参院選の楽しみ方や、衆院選との違いなどを教えてもらえますでしょうか。
宮原:投票するうえでの注意点でいくと、小選挙区と比例を間違えないようにしないといけませんね。参院選の場合、比例は政党名か個人名が書けるので、そこが衆院選と違うため要注意です。
澤田:あとは投票できる人の範囲がすごく増えます。たとえば衆院選の場合は、小さなブロックごとに分かれていて、政党名しか書けない。
それが参院選の場合は選挙区が広くなるので、1つの選挙区あたりの立候補者が増えて、選択肢も広がるんです。とくに都市部であればあるほど広がっていて、地域によっては複数人が当選します。たとえば東京でいけば、今回の当選者は7人。自分が1票投じた候補が当選する確率も上がるので、参院選の方が“自分が投票してる感”は大きいと思いますね。
あとは、衆院選と違って、比例が全国区なので、個人を名指しで投票できるんです。「この人には絶対に当選してほしい!」と言う場合は、その人に1票投じられます。先ほど話にも出てた「推し活」という点でいえば、衆院選より参院選の方がその色は強いのかなと思いますね。
ちなみに、参院選になると、タレントが立候補したりするのは、この点が関係していて、全国的な知名度が当選に直結する場合があるからなんです。あとは、その業界において知名度が高い人が立候補したりもします。「医師業界では、この人を推してます!」みたいなことが起こるんですよ。あとはパチンコ業界とかも。
宮原:この時期にパチンコ屋に行くと、業界が推してる人のポスターが貼ってあるんですよ。そのポスターをみると、「あ、この候補者はパチンコ業界から推されてる人なんだ」ということが分かる。少しマニアックですが、そういう楽しみ方はあるかもしれません。
本日はありがとうございました。お二人のお話をヒントに、参院選も、その先も政治を楽しみ、考えながらウォッチし続けようと思います!
▼記事とあわせて聴きたい『セイジドウラク』

TBS Podcast『セイジドウラク』
【毎週月曜17時配信!】TBSラジオ記者の澤田大樹さんと、選挙ライターの宮原ジェフリーさんがお送りする「政治を道楽として楽しむ」番組。
X:@ssd_tbsradio
澤田大樹(さわだ・だいき)
TBSラジオ国会担当記者。『荻上チキ・Session』『武田砂鉄のプレ金ナイト』などに出演。取材範囲は政府、国会、省庁のほか、新型コロナ、東日本大震災、高校演劇など。
X:@nankuru_akabeko
宮原ジェフリー(みやはら・じぇふりー)
選挙ライター、キュレーター。大学教員、美術館学芸員、専門学校教師などを経て現在フリーランスで選挙と現代美術を中心にライター、コメンテーターとして活動。
X:@ichiro_jeffrey
取材・文:吉岡葵
編集:篠ゆりえ
写真:服部芽生
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