よりよい未来の話をしよう

レインさんが育む愛の形と、未来に望むイコールな世界|自分と、誰かと、どう生きていく?

個人の生き方、パートナーとの関わり方、そして家族の在り方において、段々と選択肢が広がってきている現代。一方で、多くの人が切実に制度のアップデートを求めていても、なかなか変化は見られない。また恋愛や結婚、子を持ち育てること、あるいはジェンダーにまつわる「こうすべき」といった世間の風潮に対しても、違和感を抱く人は少なくないだろう。

そんななかで、自分と、誰かと、どう生きていくか。どんなパートナーシップや家族を築くか。それぞれがより自分に合った生き方を目指せる社会のために、さまざまな声を取り上げる連載。

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今回話を聞いたのは、元学校教師で、現在は主婦をしながらSNSを中心にライフスタイルの発信などを行っているレインさん。モデルのHIBARIさんと昨年婚約し、現在はふうふでも発信している。

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「たしかに変わるよ、でも愛はもっと深くなっていく」

友人の紹介で出会ったというレインさんとHIBARIさん。初対面を振り返って、レインさんはこう話す。

「HIBARIとは、前の人生かどこかで会ったことがあるような感じがしました。はじめましてのはずなのに、『また会えたね、おかえり』って思うような。ただもちろん初対面なので緊張もして、かわいいシャツを着て行ったんですけど、汗をかいて恥ずかしかったです(笑)」

それから付き合うことになった2人。多くの時間を共有することになり、親密な関係性だったことから、周囲の人々から心ない言葉をかけられたこともあったそう。

「当時、周りの人たちからは『いまはラブラブだけど変わっていくよ』とか『いずれ疲れるよ』などと言われたこともありました。そんなふうに決めつけるのはひどいんじゃないかと思ったけれど、同時にこんなにも好きで愛しているのに、この気持ちや関係性はいつか変わってしまうのかな、と不安にもなって。

でもいま、そのときの自分と周りの人たちには、『たしかに変わるよ、でも愛はもっと深くなっていく』と言いたいですね。時間が経つにつれ愛がなくなるというのは間違ってたよ、と伝えたいですし、不安だった自分にも大丈夫だよと伝えたいです。

たしかに、付き合い始めの頃は若い愛だったとは思います。長い時間をかけて、HIBARIのことも、自分自身のことも、いいこと悪いこと含めて受け入れて、ずっとそばにいることで愛が深まっていったと思います。私は心理学を学ぶのが好きなので、HIBARIと対話をするなかでも、お互いがなにをどう感じ、考えるか、どうしてそうなるのか、掘り下げて考えることが多いですね」

付き合って間もなく始めたという同棲については、こう振り返る。

「私は若い頃からひとり暮らしをしていたこともあり、1人でいるのが好きで、他人が自分のスペースにいるのが苦手なんです。でも、HIBARIとの生活はびっくりするほど完璧なんですよね」

HIBARIさんも頷いてこう続ける。

「共同生活だと衛生面や食事面、生活音など、ストレスになりやすいポイントがあると思うんですけど、自分たちはそのどれも相性がいいんです!たとえば衛生面で家の中が汚くてストレスを感じることもないし、逆に綺麗すぎて落ち着かないということもない。家事の役割分担もピッタリで、レインは整理整頓が得意で、おいらは排水溝とか水回りの汚れを掃除するのが得意ですね」

教師として、自分と同じ悩みを持った子に「1人じゃないよ」と伝えたかった

そんなレインさんは最近、9年ほど続けていた教師の仕事を辞めたそう。

「教師は大好きな仕事でした。子どもたちと長い時間をともにして、泣いている子を支えたり、笑ってる子を素敵だと思ったりする、素晴らしい仕事です。

私は学生時代、さまざまなことに疑問を持っていて、あれはだめ、これはだめ、と決まっていることに対してよく、なんで?と思っていました。それに、聞いてもルールだから、マナーだから、としか教えてもらえないことに対しても疑問を持っていましたね。私はなんで?と問うのは人間として大事なことだと思うので、なにに対してもその理由を説明できる先生になりたかった。そうして、未来を変えていきたかったんです。

あとは、日本では同性婚はできないけれどLGBTQ+の人々はいます。だから子どもたちにも『それは普通のことだよ、だって先生もそうだもん』と言いたくて、実際に機会があるときはそう伝えていました。児童のなかで誰か一人でも、私がかつて『なんで私はこうなのかな』って悩んだことを同じように経験する子がいたら、1人じゃないよ、と伝えたいと思っていました。子どもはスポンジのように吸収力があるので、最初は『どういうこと?』と理解できなくても、説明したらすんなり受け入れてくれることが多かったです。

たとえば学校に出勤するとき、いつもHIBARIが髪のスタイリングをしてくれていたので、子どもたちに『かわいい!自分でやったの?』と聞かれたら『ワイフがやってくれたんだよ』と伝えていました。すると一度、ある子が『変なの!』とみんなに言って回ったことがあったんです。でも周りの子たちは「知ってるよ」といった反応で。別の子が「僕も、男性とも結婚できるし、女性とも結婚できるし、なんでもいいんだよ」と言ったら、みんなに言って回ろうとした子も『そっか』とすぐに納得していました。

一方で、さまざまなバックグラウンドの人々が集まる学校という枠組みのなかでは、セクシュアリティについてオープンに話しにくい事情もありました。働いていた学校には多様な国籍や宗教の児童たちがいたので、私がレズビアンであることを話すのはポリティカルな内容とされてしまう状況があったんです。もちろん、どんな国籍や宗教もリスペクトしたいと思っています。一方で、私たちは誰も傷つけるつもりがないにもかかわらず、私たちの人生を過ごしている事実がポリティカルだとされることには、疑問がありました。

また、セクシュアリティにかかわらず、教師という存在は子どもにとって、どこか人間味のないものなんだと感じたこともありました。学校に出勤する前、朝や夜にどんなことがあったとしても、先生として振る舞うために自分の心を置いておかないといけない難しさがありました」

「みんながイコールの世界が実現したら、きっとこういう感じなんだろうな」

現在は、レインさんとHIBARIさん、2人の発信も人気だ。きっかけは2023年に二人で結婚情報誌の広告に出演したことだそう。

「私はもともと人前に出る仕事をしていませんでしたし、若いときから写真に写るのが苦手で、HIBARIと出会う前は、SNSにも自分の顔をアップしていませんでした。アカウントも非公開で、パーティーとかで出会った人にSNSを聞かれても伝えるかどうか悩むくらい(笑)。

そんななか、初めてHIBARIと一緒に撮影してもらったのが、結婚情報誌の広告でした。撮影のときは掲出場所が確定していなかったのですが、渋谷駅前の目立つ場所に大きく出ることになって。びっくりしましたね。

ある日、本屋さんにいるときに、HIBARIのマネージャーさんからInstagramでメンションされて。投稿を見てみたら渋谷駅前にHIBARIと自分が写っている写真が大きく貼り出されていたので、思わず一旦スマホをしまいました。そのときは自分自身がどう感じているのかまだ分からなかったのですが、その後、多くの人から連絡が来て、すごく嬉しく感じましたね。

ただ、そうしてたくさんの人の目に触れることになったのが初めてだったので、どんな反応があるのか気になって、インターネットで検索して、自分たちに対して書かれたコメントを読んでしまって。そこには、つらいコメントも書き込まれていました。でも、SNSでは温かいコメントばかりでしたし、きっと自分のセクシュアリティを受け止めてもらえないだろうと思っていた人たち、隠さなきゃいけないと思って隠していた人たちからも、温かい連絡をもらいました。それから、SNSを公開して発信するようになったんです」

レインさん個人のTikTokでの発信についてはこう話す。

「お部屋づくりとか、料理とか、メイクとか、レズビアンの主婦として生活をしている日常のVlogを中心にアップしています。『素敵な暮らし』とか『髪型がかわいいですね』とか、そういう何気ないコメントが嬉しいですね。

レズビアンだからって自分と違う存在のように見るのではなく、人間として、一人の女性として、相手が夫か妻かを問わずワイフとして、受け入れてくれるようなコメントがなによりも嬉しいです。みんながイコールの世界が実現したら、きっとこういう感じなんだろうな、と思います」

なによりも「いまの自分」と「いまの相手」を大切に

そんなレインさんは、HIBARIさんと子どもを育てるのが夢だという。

「子どもが大好きなので、将来授かることができたらいいなと思います。それが唯一の夢ですね。でも私が妊娠できたとして、法的にHIBARIもお母さんになることができないのは本当に心が痛いです。一緒に育てていても、子どもは法律上HIBARIと親子関係にはなれない。パートナーシップ制度はありがたいですが、制度の足りない部分やそもそも同性婚ができないことに対してはなぜだろうと思います」

HIBARIさんも、「一番きついのは子どもに関することだね」と話す。

最後に、自分の人生やHIBARIさんとの暮らしにおいて、大切にしたいことを聞いた。

「まずは、いまを大切にしたいと思っています。いまが一番若くて、10分、30分、1時間と時間が経っていくと、もういまの自分には戻れない。私はよく、いいことも悪いこともすべて終わっていくと話すんです。そうするとHIBARIは、いつもそのことが悲しいって泣くんですけど(笑)。

HIBARIとの関係のことでいうと、喧嘩するときも『HIBARI VS レイン』じゃなくて、『HIBARIとレイン VS 問題』だと考えたいですね。本当は愛し合いたいだけで、喧嘩のもとになる問題も愛から生まれているので、私たちはチームとして問題と向き合いたいです。

そうやって、なによりもお互いを大切にしたいと思っています。やっぱり、どうしても相手を大切に思う気持ちを忘れてしまう人は多いと思うんです。でも、初めての人生を初めての体で生きていて、分からないことばかりだから、お互いに優しく、大切にしようね、と思います。

相手を大切にするためにはまず、自分の気持ちを大切にする。もしなにか辛くて自分のことを大切にできないと思ったら、子どもの頃の自分を思い浮かべます。自分の幼少期の写真を見て、この子を大切にしようって思うようにするのもいいかもしれません。

そうしてその頃の自分はなにが欲しかったかなって考えて、パジャマでもいいから出かけて好きなだけアイスを買ったり、散歩に行って、ゆっくり歩いて、お花かわいいって思ったり。もし自分で自分を責めたり、自分に意地悪な言葉をかけているとしたら、それは小さな子どもに意地悪をしているのと同じことです。だって、その子は私だから、私のなかにまだその子がいるし、その子の魂は私の魂だから」

レイン
東京都出身。16歳でひとり海外へ渡り、25歳で帰国。これまで化学教師として学校で勤務。
最近はTikTokで発信するご自身の生活も話題に。動画を見る人にとって、「こんなお姉さんがいたらいいな」と思える存在になれたら、うまくいかない日も含めて、ありのままの姿を見せることで少しでも笑顔や安心を届けられたらとの思いから、ご自身の大切が大切にしている「日々の小さなことに感謝し、丁寧に暮らし、自分自身も周りの大切な人たちにも思いやりを持って接すること」の発信を続けている。
Instagram:@rein_kajj
TikTok:@rein_or_shine 

 

取材・文:日比楽那
編集:大沼芙実子
写真:服部芽生

 

▼連載「心地よいはみんな違う。私たちのパートナーシップ」はこちらから

 

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